2011.01.10 Monday
まるで森林の中に居るかの様な建築:サグラダファミリアの内部空間
昨日、Twitterの方でもお伝えした様に、今月の土曜日、1月8日、15日、22日、29日の9時から14時までの間、サグラダファミリアが無料開放されるそうです。
観光客の皆さんは勿論の事、バルセロナ市民である僕達にとっても大変嬉しいニュースなのですが、多分この無料開放の裏には、昨年11月上旬のローマ法王訪問時におけるテレビの生中継が関係していると思われるんですね(地中海ブログ:バルセロナの都市戦略:ローマ法王のサグラダファミリア訪問の裏側に見えるもの)。
この時の映像がバルセロナ市民に与えた衝撃は相当大きいものがあって、サグラダファミリアなんて殆ど行った事が無いカタラン人達にとっては、テレビに映し出された教会堂内部の映像は大変なショックだったのでは?と予想されるんですね。何でかって、カタルーニャに生まれ育ったカタラン人達にとっては、サグラダファミリアなんて、高いお金(12.5ユーロ)を払ってまで訪れる対象なんかでは無く、せいぜい小さい頃に学校の遠足か何かで数回訪れたと言うのがいい所だと思われるからです。それは名古屋で生まれ育った人が名古屋城になんて行った事が無いって言うのと全く一緒。そんな彼らにとって、工事中だと思い込んでいた教会堂が何時の間にか出来てた!しかも、今まで見た事が無い様な斬新な内部空間じゃないの!ってな感じだと思う訳ですよ。
かく言う僕も、目の前に住んでる割には、サグラダファミリアなんて滅多に行く事なんか無くって、ローマ法王訪問の生中継を家のテレビで見てて、その内部空間のあまりの変わり様に驚いた類いなんだけど、確かにテレビで見る限り、「一度、自分の眼で見てみたいな」と思わせるくらいの質は持っていたと思います。
個人的に、僕は出来る限り建築を実際に訪れて評価したいと思ってる方なんだけど、と言うのも、建築って、空間に身を置いてみないと分からない事が山程あるからなんですね。雑誌で見た時は素晴らしいと思ったのに、実際に来て見たらそれ程でもなかったとか、その逆もしかり。本当に素晴らしい建築って、写真には絶対に写らない「質」みたいなものを持っていると思うんですよ。だから僕は、時間とお金が許す限り、出来るだけ建築を訪れて、自分の五感を通してその建築を体験し、そして自分の言葉で評価してみたいと思っています。
今日は入場無料&お天気が良かったと言う事もあって、「沢山の人が来てるんだろうなー」と、数時間待ちを覚悟してたんだけど、意外にも入場待ちの最後尾は受難のファサード(入場口)の殆ど前(驚)。「あ、これなら5分程度で入れるかな、ラッキー」とか思いつつ、列に並んだのは良いけど、何か様子がおかしい・・・。何でかって、何時もはサグラダファミリア唯一の入場口になっている受難のファサードからどんどん人が出てきてるじゃないですか!
「あれ?」とか思って警備員の人に聞いてみたら、どうやら今日は多くの入場者が見込まれると言う事で、何時もとは違う所から一括して人を入場させているとか何とか。で、そこは何処かと言うと、何と、それが今居る「受難のファサード」とは全く反対側にある「生誕の門」を更に超えた角っこと言う事が判明。つまり、当初、20メートル程度だと思われた入場待ちの列は、実は教会をぐるっと取り囲む様に、420メートル近くあったと言う訳なんですよ!
「これは流石に2時間待ちかな(悲)」とか覚悟したんだけど、意外にも列はスムーズに動き、結局、入場するのに待った時間は、たったの20分程度でした(ちなみに今日1日の入場者数は2万人と言う事でした)。そんなこんなで、ちょっとやきもきした入場だったんだけど、中に入ったら入ったで、そんな気持ちを吹っ飛ばすかの様な風景が目の前に現れたんですね:
「ア、アレ、なんか、ちゃんと出来てる!」って言うのが、工事中の状態を知る人達の第一印象だと思います。常用風景と化していた工事用の柵やら建築資材は何も無く、以前は立ち入る事すら出来なかった教会堂の真ん中付近を、今は沢山の人達が埋め尽くしています。そしてまるで天空にまで伸びるかの様な数々の柱や、その柱が先っぽの方で枝分かれしている様を見るに付け、ガウディが目指していた「自然=森林の中の雰囲気」が見事に表現されているのでは?と思うんですね。特にこの方向:
ナウシカが腐海の最深部で出くわした清浄化された場所、高い木々に支えられ、其の天井の隙間から微かに陽の光が指している‥‥この空間は僕にそんな風景を思い起こさせました。
天井から差し込む光が、まるで深い森の中に居るかの様な、そんな感覚を与えてくれるんですね。
この階段もなかなか上手くデザインされている。コロニアグエルとかに行くと、カタランボールトを用いて創られた本当に薄い螺旋階段を今でも見る事が出来るんだけど、今回、サグラダファミリアでデザインされたこの階段は、そのガウディデザインによるオリジナル階段の現代版って感じかな(地中海ブログ:アントニ・ガウディ(Antoni Gaudi)の建築:コロニア・グエル(Colonia Guell)その2:コロニア・グエルの形態と逆さ吊り構造模型)。コールテン鋼を補強財として用いる事によって、この階段をなるべく薄く、そしてシャープに見せる事に成功していると思います。そして振り返るとこの風景:
サグラダファミリア教会の名に恥じない、見事な内部空間だと思います。
多分、この教会を訪れた人なら誰でも感じる事だとは思うんだけど、サグラダファミリア教会は、明らかに他の教会とは一線を画していると思うんですね。それは勿論、現代の技術と材料を用いて建てられたと言う事が大きいとは思うんだけど、それでも、それらを超えた所で、この教会は、「楽しさ」や「陽気さ」、そして何よりも「幸せ」に満ち満ちていると思うんですね。そういう意味において、現在のサグラダファミリア教会は、教会のあるべき一つの姿の様なもの、その可能性を示している様な気がします。そしてこの様な教会が、太陽が燦燦と降り注ぐ地中海の都市で実現された事を大変嬉しく思うと同時に、バルセロナに住む者として、こんな素晴らしい建築が自分の街に出来た事をとても誇りに思います。多分、それが今、バルセロナに住む多くの人が抱いている率直な感情なんじゃないのかな?そして皆、こう言うんじゃないのでしょうか、「素敵な贈り物をありがとう、ガウディ!」と。
追記:
サグラダファミリアの無料公開はバルセロナ市民に大好評の様で、初日の1月8日は2万人、1月15日は4万人、そして1月22日は51.000人の入場があったそうです。
観光客の皆さんは勿論の事、バルセロナ市民である僕達にとっても大変嬉しいニュースなのですが、多分この無料開放の裏には、昨年11月上旬のローマ法王訪問時におけるテレビの生中継が関係していると思われるんですね(地中海ブログ:バルセロナの都市戦略:ローマ法王のサグラダファミリア訪問の裏側に見えるもの)。
この時の映像がバルセロナ市民に与えた衝撃は相当大きいものがあって、サグラダファミリアなんて殆ど行った事が無いカタラン人達にとっては、テレビに映し出された教会堂内部の映像は大変なショックだったのでは?と予想されるんですね。何でかって、カタルーニャに生まれ育ったカタラン人達にとっては、サグラダファミリアなんて、高いお金(12.5ユーロ)を払ってまで訪れる対象なんかでは無く、せいぜい小さい頃に学校の遠足か何かで数回訪れたと言うのがいい所だと思われるからです。それは名古屋で生まれ育った人が名古屋城になんて行った事が無いって言うのと全く一緒。そんな彼らにとって、工事中だと思い込んでいた教会堂が何時の間にか出来てた!しかも、今まで見た事が無い様な斬新な内部空間じゃないの!ってな感じだと思う訳ですよ。
かく言う僕も、目の前に住んでる割には、サグラダファミリアなんて滅多に行く事なんか無くって、ローマ法王訪問の生中継を家のテレビで見てて、その内部空間のあまりの変わり様に驚いた類いなんだけど、確かにテレビで見る限り、「一度、自分の眼で見てみたいな」と思わせるくらいの質は持っていたと思います。
個人的に、僕は出来る限り建築を実際に訪れて評価したいと思ってる方なんだけど、と言うのも、建築って、空間に身を置いてみないと分からない事が山程あるからなんですね。雑誌で見た時は素晴らしいと思ったのに、実際に来て見たらそれ程でもなかったとか、その逆もしかり。本当に素晴らしい建築って、写真には絶対に写らない「質」みたいなものを持っていると思うんですよ。だから僕は、時間とお金が許す限り、出来るだけ建築を訪れて、自分の五感を通してその建築を体験し、そして自分の言葉で評価してみたいと思っています。
今日は入場無料&お天気が良かったと言う事もあって、「沢山の人が来てるんだろうなー」と、数時間待ちを覚悟してたんだけど、意外にも入場待ちの最後尾は受難のファサード(入場口)の殆ど前(驚)。「あ、これなら5分程度で入れるかな、ラッキー」とか思いつつ、列に並んだのは良いけど、何か様子がおかしい・・・。何でかって、何時もはサグラダファミリア唯一の入場口になっている受難のファサードからどんどん人が出てきてるじゃないですか!
「あれ?」とか思って警備員の人に聞いてみたら、どうやら今日は多くの入場者が見込まれると言う事で、何時もとは違う所から一括して人を入場させているとか何とか。で、そこは何処かと言うと、何と、それが今居る「受難のファサード」とは全く反対側にある「生誕の門」を更に超えた角っこと言う事が判明。つまり、当初、20メートル程度だと思われた入場待ちの列は、実は教会をぐるっと取り囲む様に、420メートル近くあったと言う訳なんですよ!
「これは流石に2時間待ちかな(悲)」とか覚悟したんだけど、意外にも列はスムーズに動き、結局、入場するのに待った時間は、たったの20分程度でした(ちなみに今日1日の入場者数は2万人と言う事でした)。そんなこんなで、ちょっとやきもきした入場だったんだけど、中に入ったら入ったで、そんな気持ちを吹っ飛ばすかの様な風景が目の前に現れたんですね:
「ア、アレ、なんか、ちゃんと出来てる!」って言うのが、工事中の状態を知る人達の第一印象だと思います。常用風景と化していた工事用の柵やら建築資材は何も無く、以前は立ち入る事すら出来なかった教会堂の真ん中付近を、今は沢山の人達が埋め尽くしています。そしてまるで天空にまで伸びるかの様な数々の柱や、その柱が先っぽの方で枝分かれしている様を見るに付け、ガウディが目指していた「自然=森林の中の雰囲気」が見事に表現されているのでは?と思うんですね。特にこの方向:
ナウシカが腐海の最深部で出くわした清浄化された場所、高い木々に支えられ、其の天井の隙間から微かに陽の光が指している‥‥この空間は僕にそんな風景を思い起こさせました。
天井から差し込む光が、まるで深い森の中に居るかの様な、そんな感覚を与えてくれるんですね。
この階段もなかなか上手くデザインされている。コロニアグエルとかに行くと、カタランボールトを用いて創られた本当に薄い螺旋階段を今でも見る事が出来るんだけど、今回、サグラダファミリアでデザインされたこの階段は、そのガウディデザインによるオリジナル階段の現代版って感じかな(地中海ブログ:アントニ・ガウディ(Antoni Gaudi)の建築:コロニア・グエル(Colonia Guell)その2:コロニア・グエルの形態と逆さ吊り構造模型)。コールテン鋼を補強財として用いる事によって、この階段をなるべく薄く、そしてシャープに見せる事に成功していると思います。そして振り返るとこの風景:
サグラダファミリア教会の名に恥じない、見事な内部空間だと思います。
多分、この教会を訪れた人なら誰でも感じる事だとは思うんだけど、サグラダファミリア教会は、明らかに他の教会とは一線を画していると思うんですね。それは勿論、現代の技術と材料を用いて建てられたと言う事が大きいとは思うんだけど、それでも、それらを超えた所で、この教会は、「楽しさ」や「陽気さ」、そして何よりも「幸せ」に満ち満ちていると思うんですね。そういう意味において、現在のサグラダファミリア教会は、教会のあるべき一つの姿の様なもの、その可能性を示している様な気がします。そしてこの様な教会が、太陽が燦燦と降り注ぐ地中海の都市で実現された事を大変嬉しく思うと同時に、バルセロナに住む者として、こんな素晴らしい建築が自分の街に出来た事をとても誇りに思います。多分、それが今、バルセロナに住む多くの人が抱いている率直な感情なんじゃないのかな?そして皆、こう言うんじゃないのでしょうか、「素敵な贈り物をありがとう、ガウディ!」と。
追記:
サグラダファミリアの無料公開はバルセロナ市民に大好評の様で、初日の1月8日は2万人、1月15日は4万人、そして1月22日は51.000人の入場があったそうです。