地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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ヨーロッパの公立大学の授業料について
最近スペインの大学システムについて質問を受ける事が非常に多くなってきたのですが、今週の新聞(El Pais, 27 de Octubre 2010)にヨーロッパの各国大学授業料事情が載っていました。



Twitter欧州組の間では、何かと各国の大学教育システムの違いや授業料の話題になったりする事がしばしばあるのですが、と言うのも、ヨーロッパの大学システムって、実は未だに謎な部分が多くて、アメリカやイギリスの大学ほど、明らかになっている部分が多く無いと思うんですよね。昔ナポレオンが、


「ピレネーから向こうはアフリカだ!」


みたいな事を言ってたけど、そんなアフリカに属すスペイン(笑)の大学のシステムなんて、未だに海の底よりも深―い謎に包まれている訳なんで、当ブログでは機会がある毎にスペインの教育システムについて取り上げてきました(地中海ブログ:
スペインの大学ランキング:総合ランキングではなく、学部間で競い合うというシステム、地中海ブログ:バルセロナに出来た新しい建築学校その2Barcelona Institute of Architecture:バルセロナ建築スクールの諸問題など

そんな数々のやり取りの中で段々と分かってきた事、それはどうやらヨーロッパの多くの国では大学の授業料が無料な所が多いのでは?と言う事実です。もしくは無料とまではいかないまでも、一年間に何百万円と払わなければいけない日本やアメリカの大学なんかに比べると授業料が微々たるもので良いと言う国が結構あると言う事が分かってきたんですね。


じゃあ、何故それらの国では授業料がそんなに安いのか?




何故ならそれらの国では政府が大学教育にかかる費用の大半を補助金として支給しているからです。今日の新聞によると、ヨーロッパでは平均で大学教育総費用の内、約
75%を各国政府が負担しているそうです。ちなみにスペインでは80%―90%程を負担しているらしく、スペインで大学に通うスペイン人の学生は一人当たり7100ユーロを毎年奨学金として貰っていると言う計算になるんだそうです。

この各国の大学システムを「公立大学の学部」と言う枠組みで、もうちょっと詳しく見てみると、大きく
3つのグループに分ける事が出来る様に思います。



先ず第一のグループは授業料無料グループで、ここには、キプロス共和国
,チェコ共和国,アイルランド、マルタ、ノルウェー、スロバキア、スロベニア、スウェーデンと言った国々が入ってきます。まあ、ただ、これらの国の多くでは、無料とは言っても、EU圏内の国籍を持つ学生に対して無料にしているのであって、それ以外から来る外国人に対しては学費を要求している所が多い様です。更にチェコなんかでは、留年したらその留年分の学費は納めなければいけないとか、ドイツでは、大学によって無料だったり有料だったりするとか、結構なバリエーションも存在するみたいです(ドイツの有料大学の場合、1セメスターの授業料は大体100500ユーロくらい)。

第二のグループは、授業料有料グループで、ここには、スペイン、ベルギー、オランダと言った国々が名を連ねていて、例えばスペインの場合は一年間の授業料は約
900ユーロ前後、オランダの場合は1500ユーロくらい、そしてスイスは流石にちょっと高くて12002900ユーロくらいと言う事でした。

そして第三のグループは、各大学が授業料を決める事が出来るって言うシステムを導入している国々で、イギリスとイタリアがそれに該当します。
20072008年のイタリアでの平均授業料は750ユーロだったそうです。

このような数字を目にした時、日本人の我々が感じる率直な意見は「安い!」でしょうね。なんてったって、一年間の授業料が
10万円前後なのですから。

しかしですね、実は今、この「安い授業料」を巡って、ヨーロッパ中の大学の間で大問題が勃発しています。と言うもの、最近の経済危機の影響などから、何処の国でも授業料を上げようと言う動きが強まっているからなんですね。例えば、つい先日、スペインでも公立大学の博士課程後期の授業料を「
200ユーロから400ユーロに引き上げた」と言うニュースが飛び込んできたばかりでした。

そんな事をされると困るのが、平均収入が(我々日本人にとっては驚く程低い)国々の一般家庭の人達なんですね。ちなみにスペインの平均収入は
1500ユーロ前後で、最低賃金は600ユーロ前後だったと思います。そんな中での年間900ユーロ(学部)、400ユーロ(博士)ですから、その問題の深刻さが分かるかと思われます。

更にヨーロッパでは概して大学と言うのは「入学するのは簡単で、卒業するのが難しい」と言われていて、スペインなんかでは、入学後2年目で約
30%の学生が退学し、無事に学部を卒業出来るのは大体30%程度だと言うデータが出ています。そうすると、1年で7100ユーロを公的な補助金として出したのに、その人が2年で辞めてしまったら約150万円もの公的資金がパーになると言う問題が出てくる訳ですよ。勿論これは公的資金の問題ばかりではなくて、一般家庭の人達にとっては、息子や娘が学部を卒業せずに途中で辞めてしまったら、「今まで払っていた授業料は一体何だったんだ!」と言う事になっちゃうんですね。それこそ死活問題!

こういう状況が分かっているからスペイン政府も奨学金を出してはいるんだけど、スペインの場合、それは
GDP0.08%程度に留まっているのが現実です。これは結構低い数字で、OECDによるとヨーロッパの平均は0.25%、ドイツは平均的で、0.25%、フランスはスペインと同様、0.09%程度らしいです。

教育システムと言うのは、金融システムや病院システムと言った他の社会的共通資本と同様、それがどのように管理運営されているか?を調べる事によって、その国や地域の特徴が分かる重要な指標なんですね。だから、他の国が採用している教育システムに関して一概に「こっちが優れていて、こっちが悪い」なんて事は間違っても言えないんだけど、他の国のシステムを知る事は、「そのような選択肢もある」と言う自国の選択の幅を広げ、最良の選択をする上で不可欠な事だと思います。そういう意味においても、今後もこのテーマは注目に値すると思います。
| ヨーロッパ都市政策 | 04:33 | comments(4) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
興味深いデータでした。

本筋の批判ではないんですが、
「スペインの平均収入は1500ユーロ前後」は
さすがに「平均月収」のことですよね?
| roy | 2010/10/30 11:48 AM |
日本でも普通は一年間に何百万円もかかんねーよw
優秀な奴は東大、京大、九大と金のかからんところだし、
奨学金制度も機能しているので問題ない。
馬鹿は知らん。
| | 2010/10/30 12:49 PM |
Royさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
全くその通りです。1500ユーロは平均月収の事です。
ちなみに2009年のスペイン平均年収は21000ユーロとなっています(税金込み)。税金は収入によって変化しますので(7%くらいから20%くらいまで)、諸々のものを差し引くと、手元に残るのは大体1500ユーロくらい(か、ちょっと下)と言う事になるかと思われます。
| cruasan | 2010/10/31 7:46 AM |
日本は、膨れ上がった国立大学の定員を半分にして、日本人の学費をゼロにすると良い。そうすれば、貧乏人でも優秀ならば大学教育を受けられるようになり、人材を発掘できる。
| fumei | 2015/05/23 10:54 PM |
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