地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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オープンハウス in バルセロナ(48 OPEN HOUSE BCN)その2:ホセ・ルイ・セルト(Josep Lluis Sert)の集合住宅
前回のエントリ、オープンハウス in バルセロナ(48 OPEN HOUSE BCN)その1:ジョセップ・リナス(Josep Llinas)Institut de Microcirurgia Ocularに見る視覚コントロールの巧みさの続きです。

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時に始まった、建築家ジョセップ・リナス自身の案内による病院建築巡りをじっくり楽しんだ後は、その後に予定していたホセ・ルイ・セルト(Josep Lluis Sert)の集合住宅へと足を急がせました。



この建築はセルトがアメリカへ亡命する前の1930-31年にデザインされたものなのですが、見てください!もう、ヒルサイドテラスの原点ここにあり!って感じじゃないですか!!



単純な四角いボリュームに何かを加えるのではなく、引いていく事によって影を作り出したり、庇や細かいエレメントを表面にチョコチョコッと付けていく事で、ファサードの分節化(アーティキュレーション)を行っていたり、一目見ただけでも、さりげなさに加え、ものすごくセンスが良い事が分かります。

セルトと言うのは生粋のカタラン人で地中海の光を目一杯受けて育った地中海人である事から、情熱的で自分を前面に押し出した「これだ、これだ」と言うデザインをするのかな?と思っていたら、こういう控え目なデザインもやってたんですね。このような「静のデザイン」に日本人の槙文彦さんが大変共感されたと言うのは、とっても良く分かる気がするなー。槙さん、セルトに最大限の賛辞をおくってますからね:

「‥‥1953―56年は私が建築家として巣立ちしていく上でもっとも充実した、また重要な数年であった。私のもっとも尊敬する数少ない師であり、建築家の一人であるセルトのその後の業績についていまさら述べる必要はないであろう。‥‥そして、おたがいにとって初心の数年間に師弟として触れることができたことを、私自身建築家の生涯においてもっとも幸せなことだと思っている。」記憶の形象:槙文彦

バルセロナ新市街地のちょっと上の方に位置するこの建築は、現在は集合住宅兼オフィスとして使われている様なのですが、私的な建物である事から普段は一般公開はされていません。今回のイベントで一般に公開されるのは、多分この建築が建てられて以来、初めてなんじゃないのかな?そういう事も手伝ってか、僕が着いた時にはもう既に小さな入り口付近には長蛇の列、列、列!それでも何とか1時間待ちで最終グループに滑り込む事が出来て、ホッと一安心。入場までちょっと時間があったので、その時間を利用して外観をじっくり見て回ろうと思い、あっちからこっちから舐める様に見ていたのですが、何はともあれ、最初に気が付く点は、やはり周りの建物とのギャップですね。



ほら、隣とのギャップがすごいでしょ?今でこそ何の飾りも無い四角い形をしたビルは僕達の都市風景として当たり前のモノになってるんだけど、この建築が建てられた1930年代には、まだまだゴツゴツした装飾なんかが柱や壁にガッツリ付いてたモデルニズモ建築全盛期。そんな時代にこんなツルッツルの建物が建ったんだから、周りの住民はさぞかし驚いた事でしょうね。

僕がこの建築を初めて見たのはもう何年も前の事だったのですが、個人的に非常に驚いたのは外壁の色でした。なんでかって、彼の師匠であるコルビジェとモダニズム建築のイメージによって、勝手にこの建物は白色だと思い込んでたんですね。人間が一つの思い込みをして、それとは違った事象に出会った時の驚きとはすさまじいものがあるんだけど、この建築はそんな「人間の思い込みとは恐ろしいものだ」と言う事を体験した建物でもありました。




目を薄く瞑るとこの建築のシルエットが浮かんでくるんだけど、上述した様に、細かいものを表面に貼り付けて分節化していくのと同時に、それが作り出す影までをもデザインに取り込んでいるんですね。それを見るに付け、「この単純な箱の中に注ぎ込まれているデザイン量と言うのは途方も無いものがあるなー」と思わずにはいられません。そうこうしている内に、今日の最終グループ訪問の順番がやっと回ってきました!という訳で、いよいよ中へと入っていきます。

今回一般公開に快く応じてくれたのは、どうやらこの建物の2階部分にオフィスを構える建築事務所の方だったそうなのですが、そんな彼らの設計事務所が入っている住居ユニットがコチラ:



多分、日本初公開のセルトの集合住宅内部空間なんだけど、光に溢れる素晴らしい空間になっていますね。どうやらこの集合住宅は一つのユニットがメゾネットになってるらしく、大変ゆったりとした作りになっています。その中心がこの吹き抜けの空間なんだけど、その中の中心がココ:



彫刻的な階段です。明らかにこの階段がこの空間の主役になっている。逆に言うと、この階段の周りに様々な風景が立ち上がっています。ここで生活をしていたならば、それが記憶となり、正に「忘れられない風景」となってくるだろう事を予感させるに十分な質を伴った空間です。



それにしてもこの階段、見れば見る程、「なるほどなー」と思うくらい良くデザインされていますね。



そして勿論、コルビジェ宜しくの連続水平窓も健在です。これだけ小さな住居の中で、これだけ豊かな空間体験が出来るのは、ある意味ちょっと驚きでした。

オープンハウス in バルセロナ(48 OPEN HOUSE BCN)その3:ホセ・ルイ・セルト(Josep Lluis Sert)のスペイン館に続く。
| 建築 | 05:48 | comments(6) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
GATEPACの建物は、今回いくつも見学対象になっていましたね。
同じSertの設計のDispensario antituberculoso(Parc de recerca biomedica)も公開されたのに、ほかのものを優先してしまい、残念ながらどれも見逃してしまいました。
でもcruasanのおかげで内部を見ることができてうれしいです! 内部の写真は初めてみました。
Racionalismoの建物、今見ても少しも古臭くなく、美しいですね。
友人の建築家が、この建物はバルセロナで一番美しい建物だ、と言い切りました。
| gyu | 2010/10/20 3:33 PM |
はじめまして、いつもTwitterを楽しく読ませていただいております。この内部空間、マルセイユのアパルトマンを思い出す同じフィーリングですね。
| カイシャ | 2010/10/21 11:47 AM |
>cruasan様、
ご無沙汰です。5枚目の画像の電気スタンド(中央)はIKEA製
ですね〜電球が二箇所ついている物はモリーズでも使用していますが
カタルーニアでも世界中で愛用されているのですね〜
| Mory's | 2010/10/21 3:21 PM |
gyuさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
Dispensario antituberculoso、ものすごい行きたかったんですよ!だけど、他の建築の公開時間と被ってしまって、泣く泣く断念しました。バルセロナで一番美しい建物‥本当にそうかも知れませんね。僕はかなり感動しました!
| cruasan | 2010/10/22 7:14 AM |
カイシャさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
そうそう、やっぱりセルトってコルビュジェの弟子だなー、と思うのは、何処かにコルビュジェのにおいがするんですよね。2日目に行ったスペイン共和国館でも、コルビュジェのオマージュっぽいのが見えて、とっても興味深かったです。
| cruasan | 2010/10/22 7:16 AM |
Morysさん、お久しぶりです、お元気ですか?
IKEA制とは気がつきませんでした。というか、ヨーロッパではIKEAはかなり幅を利かせているので、友達の家とか行くと、かなり似通ったインテリアになっていて、それはそれで興味深いなーと思う今日この頃です。
| cruasan | 2010/10/22 7:18 AM |
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