地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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バルセロナに出来た新しい建築学校その1:Barcelona Institute of Architecture:山本理顕さんとか、都市のマーケティングとか
今週の月曜日の事だったのですが、バルセロナに新しく出来た建築学校、Barcelona Institute of Architectureの開校を記念するオープニングセレモニーへ行って来ました。マスターコースを機軸とするこの建築学校は、デザイン教育や建築の歴史文化教育を通して、グローバリゼーションが席巻する現代社会の中においても通用する建築家を育てる事を目的としているそうなんですね。結構大々的に宣伝もされてたし、オープニングセレモニーには今や世界的規模でグローバルに活躍している日本人建築家、山本理顕さんが招待されている事だし、「ちょっと行ってみるか」と言うかなり軽い気持で行ってきました。



このオープニングレクチャーは世界中から観光客を集め続けるガウディ建築、カサ・ミラ(La Pedrera)で行われたのですが、会場は「超」が付く程の満員御礼状態。さすがに世界のRiken Yamamoto!スペインでも大人気です。先日スペインでも大々的に報じられたチューリッヒ空港複合施設コンペを勝ち取ったと言うタイミングとも重なり、今正に建築界では「時の人」と言っても過言では無いと思います。



そんな事情があるにせよ、凄い数の報道陣が詰め掛けていて、「時の人とは言え、ちょっと大袈裟じゃないの?」とか思っていたら、その理由は直ぐに判明。どうやら現バルセロナ市長と、前バルセロナ市長であり防衛大臣も勤めた経験がある大物政治家、ナルシス・セラ氏がこのオープニングに駆けつけていたからだったようです(地中海ブログ:スペイン、サパテロ新内閣(Jose Luis Rodriguez Zapatero))。むむむ・・・学校のオープニングと絡めたメディアへの露出を狙った都市の宣伝手法、そしてそれを実現するだけの政治的な根回しはナカナカ上手いなー。やるな、コーディネーターのJ君!(実は偶然にもこの学校の立ち上げ、そして運営をしているのは僕のメトロポリス時代の同級生だったJ君なんですね。ついこの間まで飲みながら馬鹿な事を言ってたかと思ったら、しっかりこんな仕事までしてるとは。時が経つのは早いなー)。

さて山本さんと言えば、最近では東浩紀さんなんかと、「地域社会圏モデル(だったっけ?)」なんかを出版したりして、個人的に大変興味のある、「Twitterなどの新しいテクノロジーが我々の社会にどう影響を与えるのか?」そして「そんな中で建築家はどういった社会像を提案していけるのか?」と言う問題の中心に居る人だと理解しています(地中海ブログ:東さんの「SNS直接民主制」とかマニュエル・カステル(Manuel Castells)Movilizacionとか)。今日はその辺の話が聞けるのかな?とか期待してたんだけど、さすがにその辺りの話には触れられてませんでしたね。

それとは別に、僕的には少し気になる事が。

どうやら山本さんは現在、横浜国立大学にある都市建築スクール(って言うのかな?)と言う所で教鞭を執られているらしいのですが、そこで試みられている方向性はBarcelona Institute of Architectureが目指している方向性と同じ様なものだと感じたとの事。僕は横浜の建築スクールは勿論、バルセロナのこの新しい学校が何を目指しているのかさえもあまり良く理解していないのですが、話のニュアンスからすると、ハードだけではなくソフトの部分である社会とかその中で営まれているルールとか、そういうものにまで建築の枠を広げていって、そこの所を行政、大学、企業など様々な枠を取り払って議論していきましょう、とそう言う事なのかな?と感じました。

そして山本さんが特に強調されていたのが、バルセロナ市役所とこの建築学校との近しい関係についてだったのですが、つまり学生が都市や建築について議論した事が、市役所と密な関係を持つ教授陣達によって都市に適応される可能性があると、まあ、こんなイメージだと思います。

確かにフランコ政権以降、オリンピックに向けてバルセロナが「行くぞー」と上り坂だった時などは、地元のカタルーニャ工科大学と市役所の密な関係がものすごいシナジーを生み出し、都市の活性化がずば抜けて上手くいったと言う時期があった事は確かです。バルセロナの大ファンであるリチャード・ロジャースなんかは、その密なコラボレーションがバルセロナの都市計画や都市戦略が次々に大成功している要因であり、当時のバルセロナ市長だったパスクアル・マラガルなどは、そのような状況を

「市当局と建築学校の幸せな結婚を通した公共空間のデザインの質
("the happy marriage between city hall and the school of architecture)("Foreward", in Towards an Urban Renaissance, p.5-6, London, E&FN Spon)

と表している程なんですね(地中海ブログ:
リチャード・ロジャース展覧会(Richard Rogers + Arquitectes: De la casa a la ciudad))。この古き良き時代の記憶が現代に生きる人々の中で勝手に美化され、後にバルセロナの都市計画を神話にまで押し上げる「バルセロナモデルとしてのイメージ」が出来上がったんだと思います。

今回の新しいバルセロナの建築学校と市役所の蜜なコラボと言うイメージも実はこの幻想の上に載っかってるだけじゃないのかな?まあ、そうする為にわざわざオープニングセレモニーにバルセロナ市長を呼んだり、講演会の場所をガウディの建築で行ったり、それを報道陣に公開して記事をバシバシ書いてもらったりと言う、「バルセロナ=建築の街と言うイメージ」を創り出す為に成された多大なる努力と、マーケティングの上手さには頭が下がりますけどね。

バルセロナに出来た新しい建築学校その2Barcelona Institutes of Architecture:バルセロナ建築スクールの諸問題についてに続く。
| 大学・研究 | 22:51 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
山本さんのレクチャー行きたかったけれど、知ったのが当日で無理でした。この学校、デビッド・アジャイエや中国のYung Ho Changさんなど色んなスター建築家?が顧問ですよね。続きの諸問題の記事、楽しみです。
| Kyoko | 2010/09/18 10:48 PM |
Kyokoさん、こんにちは。
山本さんのレクチャー、結構楽しかったですよ。驚く程の盛況振りでしたし。何より驚いたのが、山本さん、英語が結構流暢なんですよね。さすがグローバルに活躍する日本人!とか思っちゃいました。地域社会圏モデルとか、個人的には結構気になるコンセプトとか打ち出されているし、僕的には今後も注目していきたい建築家の一人です。
| cruasan | 2010/09/21 2:43 AM |
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