地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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バルセロナ市への観光税の導入の議論に垣間見える市政の台所事情
暑い!夏だから暑いのは当たり前なんだけど、それにしても暑い!!バルセロナは(日本と比べて)比較的乾燥している事もあって、日陰とか入ると風とか吹いて涼しい事は涼しいんだけど、日向に出ると、もうそれこそ殺人的な日射にやられそうな毎日です。



そんなんだから夏本番を迎えるにあたって、街中を歩いている人のファッションが段々薄着になっていって、挙句の果てにはこんな感じの人がソコココに見られるようになるのも分からないでも無いかな:




「どんだけ薄着!!」ってファッションなんですけどね(笑)。こんな感じの人々が堂々と繁華街を歩いている町、それがバルセロナ近郊に位置する
Salou市内に広がる日常風景です。この町には非常に美しいビーチがある事などから、その地理的恩恵を最大限に生かした観光戦略を、ライアンエアーなどのチープ観光と上手く組み合わせる事によって、英国などから毎年何万人もの若者を惹き付ける事に成功しているんですね(地中海ブログ:観光とチープエコノミー:ライアンエアー(Ryanair)などの格安航空機が都市にもたらす弊



その一方で、ハメを外しすぎた若者による行き過ぎた行為などが、地域住民との間に摩擦を生み出し、それが近年大問題になって来ているという事は、以前のエントリで書いた通りです(地中海ブログ:
エンターテイメント社会におけるチープ観光がもたらす弊害:観光のローコスト化による観光客の質の変化:Salouの場合)。

そんな、観光の良い面も悪い面も見てきた
Salou市なのですが、実はここ数週間と言うもの、この小さな町がカタルーニャ州民全体を巻き込んだ大論争の焦点と化しています。何故かと言うと、実はこの町、町中で裸や水着姿で歩く事を禁止した規則を発表しちゃったんですね。しかも罰金付きで!先日の新聞によると、ビーチや海岸沿いなど市域のごく一部を除いて、裸や水着姿で街中を歩いたら100ユーロから300ユーロの罰金が課せられるとの事です(La Vanguardia, 1 de Julio 2010, vivir, P1)

実は最近、バルセロナ市内や市近郊では、都市内における反市民的な行為を取り締まる規則がドタバタっと成立し、市内の至る所で「アレ禁止、コレ禁止マーク」を目にする様になりました。例えば水着関係で言えばこんなのがあります:




実はこの表示、市内を走るバスの中に貼ってあるんだけど、見ての通り、「裸や水着でバスに乗っちゃダメ!」って言う表示です。日本人の僕達からしたら、「そんなの当然だろ!」とか思うんだけど、当然だと思う事が当然では罷り通ら無いのがこの国の面白い所。見てると本当に水着姿でバスに乗り込んでくる人とかいるから驚きです。こんなのとかもあります:




「街中で立ち小便したら罰金!」みたいな。見つかったら
180ユーロの罰金だそうです。更にコチラ:



「犬の糞はきちんと片付けてね」って言う表示。どうやら犬の散歩なんかをする時、「犬の糞を片付けなかったら罰金」って言う規則が出来たらしい。スペイン人って犬好きだから、買い物する時でも髪切りに行く時でも、何時でも何処でも犬と一緒なんですよね。で、驚くべきはその罰金額なのですが、何と、場合によっては
1800ユーロ(日本円で約20万円)まで跳ね上がる事もあるのだとか!犬の糞で20万円って言うのはちょっとスゴイ!

さて、ここからが今日の本題なんだけど、実はバルセロナでは数週間前から、新たなる税金として「観光税を導入するかどうか?」を巡って、行政や市民を巻き込んだ大論争が巻き起こっています。今まで観光税には反対だったバルセロナ市長が一転、「観光税を国政レベルで調整する必要あり」と説いたのがその始まりだったんだけど、それにしても今回のかなり急な展開に、関係諸氏は動揺を隠せない様子。


取り合えず、「この観光税とは一体何なのか?」と言う所から始めた方が良いと思うのですが、「観光客って言うのは、その都市に税金を収めていないにも関わらず、税金で賄われている都市インフラやサービスなどを滞在中無料で使用している!」と言う理由から、「観光客一人一人から少しずつ税金を徴収しようじゃないか」と言うアイデアの事なんですね。


まあ、このアイデア自体はそんなに驚くべき事では無くって、例えばニューヨークなんかは、
Hotel taxと称してホテルの宿泊費に5.575%を掛けた料金を観光客から徴収するシステムを導入していますし、フランスなんかは、実はこの分野のパイオニアとして知られていて、滞在の仕方(キャンプか星付きホテルかなど)によって0.2ユーロから1.5ユーロを徴収してたりするんですね。実は驚くべき事に、フランスが観光税(La taxe de sejour)を導入したのは100年前の1910年の事だったそうです。その後、何度かの法改正などを経て、現在では半分近くの自治体がこの税を導入しているのだとか。パリに導入されたのは比較的最近で、1994年、シラク政下での事だったと言われています。その他の都市の状況としては、San Petersburgoやローマなんかも観光税導入を検討していると言う事は良く耳に入ってきます。

そんな中、じゃあ、一体バルセロナはどういうプランを考えているのか?と言うと、どうやら「観光客一人に付き
1ユーロ徴収」という事を考えてるらしい。って言うか、この程度の情報しか新聞に載らないって事は、「観光税導入」って言うアイデアだけあって、詳細なプランなんかは(何時ものように)無いっぽいですね(笑)。

まあ、そこはあんまり問題じゃなくて、多分本質的な問題は、「何故、今この時期に観光税導入なんていうアイデアが出てきたのか?」と言う点だと思います。もっと言うと、何故今まで絶対反対だったバルセロナ市長が今この時期に賛成、それも国政に働きかけるくらいの推進者側に回ったのか?と言う事こそ考えられるべき問題だと思うんですね。


観光業はバルセロナの国内総生産(
PIB)の13%を占め、間接的には10万人もの人々に雇用機会を作り出している、都市にとっての重要産業である事から、観光税なるアイデアがもっと前に浮上して実施されてたってちっとも不思議じゃない。もっと言うと、2001年にバレアレス諸島がエコ税(Ecotasa)なるものを始めた時に、バルセロナは観光税を一緒に始める事だって十分可能だったはずです。その時は実施しなかったのに、今になってその話がかなり現実味を帯びてきたのは一体何故なのか?

同じ様な事が上述した「裸や水着で町を歩き回る事禁止令」や「犬の糞罰金令」なんかにも言えて、と言うのも、水着や裸で町中を歩く何て事は、昔からあった訳で・・・。犬の糞に関してはもっと明白で、犬を散歩がてら、その辺に糞を散らかすなんて事は、バルセロナでは昔から日常茶飯事だったはず。そしてココに来て、突然の罰金・・・。


ずばり言っちゃうと、実はバルセロナ、資金のやり繰りに相当困ってるんじゃないのかな?と言うのも、経済危機や財政削減策やらなんやらで、中央政府からの分配金が大幅にカットされ、その残り少ない資金の奪い合いが各部門で始まっていると推測されます。と言う訳でなり振り構わず資金源を探しているんじゃないのでしょうか?そう考えると、何故いきなりこの時期に、今までは何とも無かった行為に突然ノルマが課せられるのか?と言う事の合点がいくんですね。


まあ、でも観光客に課税って言うのはそんなに悪いアイデアではないと思いますけどね。「観光客は都市インフラを使用してるんだから、その分の対価を払うべきだ!」みたいな市当局の言い分も良く分かる。それに対して反対を表明しているのが、ホテル組合なんかなんだけど、彼ら曰く、「1ユーロでも観光客に対して課税したら、彼らは絶対にバルセロナに来なくなるのは目に見えている」のだとか。


この議論、秋頃までには決着が付く見通しなので、どうなるのか見物です。
| バルセロナ都市 | 23:33 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
こんにちは
まだ水着マークの標識は見たこと無いです。
ついでに旧市街のスケートボードと、自転車も規制して欲しい。
観光客の質の低下の記事、まだ読んでいないですが、
超安エアラインのおかげでしょう、年齢も低下して
まさに旅の恥はかき捨て。
多少の客が減ってもバルセロナが魅力ある観光都市として生き残る為には
しかたないことな気がします。
毎回、興味ある記事、うれしいです。
新聞読むのに時間がかかりすぎて、degital el paisの
タイトルぐらいしか読めないので。


| patronistaT | 2010/07/30 10:38 PM |
PatronistaTさん、こんにちは、コメントありがとうございます。
水着のマークはバルセロナータとか行くと、結構見かけます。
80年代のバルセロナ、もしくはヨーロッパ都市って、荒廃した中心市街地を何とかよみがえらせる為に、それこそなりふり構わずもがいた結果、たどり着いたのが観光を活性化の原動力に利用すると言う事だったと思います。それが結構成功していたのが、90年代くらいまで。市当局が無視してきた闇の部分が出てきたのが、この数年の所という所だと思います。

観光の問題は、都市の収入などにも結びついてくるので、かなり厄介な問題ですね。って、僕は人事じゃないんですが・・・。がんばります!
| cruasan | 2010/07/31 10:07 PM |
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