地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
<< グローバリゼーションの中における現在のナショナリズムについて:ワールドカップとカタルーニャ新自治憲章案 | TOP | スペイン、ワールドカップ優勝!:イニエスタのメッセージやカシージャスとサラ・カルボナルのハプニング映像など >>
スペインの民主主義始まって以来の歴史的なデモ:新カタルーニャ自治憲章案に関して
710日午後6時、バルセロナの目抜き通り、グラシア通りを中心にバルセロナの中心街を赤と黄色のカタルーニャの国旗を羽織った人々が多い尽くしました。



その数なんと110万人!当然の事ながら市内の交通は麻痺状態で100メートル程度の道を横断するのにも、何と30分もかかる始末!!僕は比較的中心に近い所に住んでるので、昨日のデモには自宅から歩いて行ったんだけど、まさかこれ程の人達が集まっているとは夢にも思いませんでした。




昨日のエントリでチラッと書いた通り、このデモはカタルーニャが長い事温めてきた州レベルの憲法に相当する「新カタルーニャ自治憲章案」の一部内容が憲法裁判所によって拒否された事に端を発しているんですね(地中海ブログ:
グローバリゼーションの中における現在のナショナリズムについて:ワールドカップとカタルーニャ新自治憲章案)。

カタルーニャとしては、欧州(EU)やスペインといった関係の中でカタルーニャの発言権を最大化する事を目的として今回の新憲章を練り上げてきたのですが、その甲斐あって、2005年にはカタルーニャ州議会で可決され、翌年20065月には国会で承認されるに至りました。しかしですね、それに不服を唱えたのがスペイン保守の国民党(PP)。「新カタルーニャ自治憲章案には違憲な部分が含まれている」と憲法裁判所に訴え、度重なるイザコザを経て憲法裁判所が審議に入ったのが数年前の事。そしてようやく先週、憲法裁判所の見解が帰って来たのですが、その内容が不服だという事で昨日のデモに至ったという事は昨日のエントリで書いた通りです。




新カタルーニャ自治憲章案に対する憲法裁判所の見解については次回のエントリに書くとして、ここでは昨日僕がデモに参加してみた感想と今日の新聞に載っていた記事なんかも加えて検証してみたいと思います。


先ず初めにハッキリさせておかなければならない事があるのですが、それは昨日のデモの目的なんですね。何故なら「昨日のデモが何故行われたのか?」、それをとかく勘違いしているカタラン人が多いのではないか?と思うからです。昨日のデモの真の目的、それは「新カタルーニャ自治憲章案に対する憲法裁判所の見解に対する異議申し立て」であって、それ以上でもそれ以下でもありません。そしてもう一つハッキリさせておきたい事、それは「新カタルーニャ自治憲章案の中では一言もカタルーニャの独立を謳ってはいない」と言う事実です。


しかしですね、昨日のデモに集まった人達の言動なんかを見ていると、どうもその辺を明らかに勘違いしている人が多かった様に思います。例えばこんなプラカードなんかを平然と掲げている人とかまでいる始末:




言わずと知れたフランス独立戦争の代名詞的存在、ドラクロア
Ferdinand Victor Eugene Delacroix)による"民衆を導く自由の女神"です。ちなみにこの絵は去年のパリ旅行の際にルーブル美術館で見たのですが、「ドラクロア最高!」とか思っちゃいました(地中海ブログ:パリ旅行その8:公共空間としての美術館)。

昨日のデモは1975年にフランコ独裁政権が終わり、スペインが民主主義に移行して以来、今までで最大のデモだったらしいんだけど、これ程の人達を動員出来たのは、一概にこの「勘違い」が大きな原因だったのでは?と思います。つまり何時の間にかデモのテーマが「新憲章に対する異議申し立て」から「独立」にすげ替えられてしまったという事です。そしてそれはカタルーニャ州政府大統領Jose Montillaを初め、昨日のデモに参列していた元カタルーニャ州政府大統領で元バルセロナ市長だったカリスマ政治家、Pasqual Maragall氏や、民主化後長きに渡って州政府大統領の座に君臨し続けたJordi Pujol氏などの意図では無かった。


その点をきちんと分析出来ていたのは、やはりEl Pais紙でしたね。まあ、El Pais紙は労働左派の機関誌であるという点も関連してはいるんだろうけど、やっぱり記事や分析に関してはそれなりの質を持ってる気がします。反対に、カタルーニャ保守(CiU)の機関誌であるLa Vangaurdiaなんて、「どれだけの人が昨日のデモに参加したのか?」とか、そんな事しか言ってない。La Vanguardiaだって、やれば出来るんだから、しっかりやってよね!(地中海ブログ:
スペイン高速鉄道(Alta Velocidad Espanola:AVE)に見る社会変化の兆し



さて、その一方で、昨日のデモを見ていて印象的だったのは、おじいちゃんから孫まで、一家総出でデモに参加している人達の姿が多かった事なんですね。まるで家族行事であるかの様に・・・。




カフェに入れば運動会の如く子供達が走り回る中でコーヒー片手に議論に花を咲かせているし、夜は夜で普通の週末なんかよりもレストランに家族連れが多かった様な気がします。そしてそんな彼らが話している事と言えば、勿論今日のデモの話題。「憲法裁判所の判断は偏ってる!」だとか、「今後の教育にはカタラン語をもっと使用する方が良いと思う!」、「でも、そうするとスペイン語が苦手になって将来就職に不利になるような気がするから、家の子にはカステリャーノ語を優先させるわ」とか、聞こえてくるのは、「今後のカタルーニャをどうするのか?」と言う安否と希望が交じり合った声ばかり。そんな中には、「我々カタラン人は独立した方が良いのかも?」なんて言う、ちょっと度を超した議論も聞こえて来たりしたんだけど、それでもこの国の形を真剣に議論している姿には、見ていて心打たれるものがありました。


何時も怠けてて仕事とか全然やらないし、6時以降に仕事してる姿とか見た事無いにっくきカタラン人なんだけど、そんな彼らでも、自分の国を愛する気持ち、自国の文化に誇りを持っていると言う気持ちだけは、世界の誰にも負けてはいません。そしてそれはこの地に住んでいると嫌と言う程良く分かる。


勿論そこには民族主義の行き過ぎた議論に発展するって言う危険性もあるんだけど、でも、家族全員で自分の国の将来の形を真剣に考える機会があるというのはそんなに悪い事では無い気がします。


奇しくも今日は日本では参院選の投票日なのですが、我々日本人は日本の将来の形を、カタラン人程真剣に考える事が出来ているでしょうか?
2010年の710日、街中を黄色と赤の国旗で埋め尽くしたカタラン人達の光景を僕は一生忘れる事は無いでしょう。


(友達のMontseちゃんがくれた、昨日のデモに来てた元カタルーニャ州政府大統領、Pasqual Maragallの写真)


追記:
このデモの一週間後に行われたアンケートの結果が結構面白い(La Vanguardia 18 de Julio 2010, P14)括弧の中の数字は2010年5月に行われた同じ質問への回答率

質問1:もし明日、カタルーニャ独立の市民投票があったら独立に投票しますか?
ハイ:47%(37%)
イイエ:36%(41%)

質問2:独立派はカタルーニャで増加していると思いますか?
増加している:66%(48%)
減少している:13%(20%)

質問3:自分のアイデンティティについてどう思いますか?
自分はカタラン人である:18%(13%)
スペイン人というよりもカタラン人である:24%(18%)
カタラン人でもありスペイン人でもある:41%(52%)
カタラン人というよりもスペイン人である:8%(6%)
スペイン人である:7%(10%)
| スペイン政治 | 23:30 | comments(1) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
独立云々の前にこれだけは分かって下さい。
歴史的に、カタルーニャは抑圧されすぎ...
俺が保証します。カタルーニャの歴史を見てみて下さい。
| L'enigma d'en T | 2012/04/30 11:31 PM |
コメントする