地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
<< プロヴァンス旅行その6:ル・トロネ修道院の絶景スポット発見! | TOP | 風の谷のセナンク修道院:天空の城の後に見る風の谷:リアル宮崎駿ワールド >>
プロヴァンス旅行その7:天空の城、ゴルド(Gordes)の風景
フランスで最も美しいと言われている田舎プロヴァンス、その中でも特に美しいと評判の村、ゴルド(Gordes)へ行ってきました。この地方には山の頂に創られた村などが結構残っているのですが、その中でもゴルドほどその姿が見事な景観として残っている村は無いと言われているんですね。フランスでは田舎の風景を保存する目的などから「フランスで最も美しい村協会」なるものが設立され、「人口2000人以下である事」やら、「最低2つの歴史遺産を持つ事」などを条件に「美しい村」を名乗る事を許された村々がフランス中に散らばっているのですが、そんな数ある美しい村の中でもゴルドの人気は高いらしく、特に気候が良くなるこの時期には、村中が観光客でごった返すのだとか。



ちなみにこの「フランスで最も美しい村協会」から美しいと認定された村には上の様なプレートが村の入り口などに掲げられていて、「美しい村ガイドブック」なるものもフランスの書店で売られているんだそうです。そんな訳で早速車を走らせて行って来たのですが、その「美しい風景」は僕の想像を遥かに超える美しさを放っていました。その風景がコチラ:



じゃーん、天空の城です。幻想的とは正にこの事!何故この村がフランスで最も美しい村に選ばれたのかも納得の風景です。



山の傾斜を利用して、石造りの家々が階段状に折り重なる様に創られています。



近寄ってみるとどんな風に建てられているのかが良く分かるんだけど、正に岩と一体になった建築とでも言う様な構造なんですね。こんな感じで緑のツタに囲まれた住居やテラスなんかも多く見受けられます:



このような一つ一つのディテールが積み重なって、圧倒的で纏まりある素晴らしい風景を創り出していると言う事が良く分かります。

さて、天空の城と言えば勿論、「天空の城ラピュタ」なんだけど、ラピュタという名称はガリバー旅行記に出てくるラピュータ王国に由来していると言う事は良く知られている事実です。しかし、ガリバー旅行記の作者であるスウィフトがどうしてラピュータという名称を思い付いたのか?はナカナカ知られていないと思うんですね。実は彼がスペインに旅行中に偶然耳にした、スペイン語の発音、「ラ・プータ」、つまり売春婦に由来していると言われています。だからスペイン語版の「天空の城ラピュタ」のタイトルは、発音でスペイン人が売春婦を想像してしまう「ラピュタ」という語は外されて、「天空の城(El castillo en el cielo)」という名称だけが使われていると言う訳です(どうでもいい豆知識)。

さて、僕がこの風景を「ボケー」っと見ていて思った事:

「南仏の陽光に照らされて明暗がくっきりとした家屋の面々が、あたかもキュビズムの抽象化された画面の様に見えるなー」



ほら、このあたりなんて、小さな家屋が集まってるんだけど、あちらこちらを向いた家屋の壁が、様々な表情を見せていて、あたかもそれら全ての面を使って「一つの家という物体」を説明しているかの様に見えるんですね。正に複数の視点から見た世界を平面状に共存させているかの様です。



ピカソに大変なインスピレーションを与えたと言われているセザンヌは、プロヴァンス地方の出身(エクス・アン・プロヴァンス)なので、勿論このような風景を熟知していたはず。更に、彼がアトリエを構えていた辺りには、切り口が大変鋭くシルエットが「キリッ」としている岩山があり、その風景もまるで一つの物体を多方面から見た様な景観になっているんですね。

ル・トロネやセナンクに代表される、シトー派の極限までミニマル化された近代建築のようなロマネスク教会が何故にそれ程までにシンプルなのか?という問いには、「シトー派の教義による為」と言ったような単純な回答では十分答えられないのではないか?と言う事は前回のエントリで書いた通りです。つまり、ロマネスクと言う様式の特徴−地方の文化と交じり合う事によって、様々な変化を起こす事−を考慮すると、プロヴァンス地方に残るシトー派の教会郡のシンプルさと言うのは、実は、「プロヴァンス地方の建築の特徴である」と言う事も出来るのではないのか?と思う訳です。

同様に、セザンヌからインスピレーションを受けたピカソ(とブラック)が発展させたと言われているキュビズムという様式も、実はその始まりは、この地方の文化、ゴルドの風景やエクス・アン・プロヴァンス近郊の岩と言ったこの地方が持っている風景がセザンヌにインスピレーションを与えたと言う事が言えるのかなー?なんて、又、「トンでも話」を思い付いてしまいました(笑)。

後の画家達に多大なる影響を与えた、生前セザンヌが言ったとされる言葉がコチラです:

「自然を円筒と球と円錐体によって処理しなければならない」

む、む、む・・・ゴルドの幻想的な風景を「じー」っと見ていると、強烈な陰影によって角が立った家々の面々が直方体に見えてくる・・・かな、なんて思ったりして。
| 旅行記:都市 | 00:22 | comments(4) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
天空の城ゴルダ、美しいですね〜 
この南フランスの陽を浴びた景色と、ピカソに影響を与えたセザンヌとの考察、とても面白いです! そしてピカソ自身もまた、「アヴィニオンの娘たち」を描く前に、どこかでこんなキュービックに捉えられた色調の風景を見たのかもしれませんねー♪
| Ana | 2010/06/27 11:29 PM |
Anaさん、こんにちは。
そうそう、この地に来ると、本当にそんなロマンチックな事を考えたくなっちゃうような風景が広がっているんですよ!
食べ物は美味しいし、ワインは最高だし、気候もあったかくて、もう、言う事ありませんでした!!
| cruasan | 2010/07/02 5:44 AM |
セナンクもゴルドも今度いってみたいです。以前、芸術新潮のロマネスク特集で3週間ぐらいカタルーニャとスペイン各地のロマネスク取材にいきましたが、どの修道院もすごい僻地&秘境にあって、命がけ?でした。苦労の甲斐があったと思うところが大半だけれど。
ピカソは、トルトサの郊外にあるオルタ・デ・サン・ジュアンというとところで、キュビズムに目覚めたっということに、現在のピカソ研究者たちの間ではなってるようですが、セザンヌの影響もあったでしょうね。オルタ、ものすごい秘境です。ここまでトルトサから徒歩で野宿しながら来たと聞いただけで、ピカソのこと尊敬しましたよ。アラン谷とかピレネー方面じゃなく、バルセロナの南にもあんな、すごい秘境があるなんて。山が円錐形でした。
| kyoko | 2010/07/05 2:54 PM |
Kyokoさん、こんにちは。
ロマネスクって本当に魅力的ですよね。僕も何時か、カタルーニャのロマネスク巡りしてみたいと思ってるのですが、未だに実現出来ず。今後の楽しみにとってあります。
ピカソが滞在したって言うオルタ・デ・サン・ジョアンも実は長い間僕の訪れたいリストの上位にランクインしているんですが、こちらも未だ行けず。
こんな秘境に行けたKyokoさんが、さぞかし羨ましいです!!
| cruasan | 2010/07/06 6:32 AM |
コメントする