地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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プロヴァンス旅行その5:ル・トロネ修道院(Abbaye du Thoronet)の回廊に見る光について
前々回のエントリ、プロヴァンス旅行その3:シトー会についてとル・トロネ修道院(Abbaye du Thoronet)の行き方、前回のエントリ、プロヴァンス旅行その4:ル・トロネ修道院(Abbaye du Thoronet)の窓に見る神業的デザインの続きです。



暗く荘厳な雰囲気の教会堂を抜けると再び眩しいくらいの光で満たされた回廊へと導かれるのですが、この回廊ほどル・トロネ修道院の素晴らしさ、そしてプロヴァンス地方の陽光の豊かさを体験させてくれる空間は無いんじゃないかと思います。



南側の回廊に石で出来たベンチ(?)みたいなのがあるんだけど、そこに座って何時までも中庭を眺めていたい、そんな気分にさせてくれる空間がここにはあるんですね。



薄暗い教会堂から出て来た時の強烈な光と、その明るい光の下で輝きを増している中庭の緑の木々達との出会いは劇的とすら言える程です。

この空間が何故にこれ程まで素晴らしいのか?それを実現している要素は幾つかあると思うのですが、先ずはこの回廊を構成しているメインの材料である石の特質を挙げる事が出来るかと思います。



この石はこの辺りで採れるものなんだそうですが、元々表面が赤っぽいのに加えて、南仏の強い日差しとミストラルと呼ばれる強風に打たれた結果、石の表面が風化しまくってこんな独特の質感を持つようになったんだそうです。



更にこの石に南仏の強い日差しが当たる事によって、表面が熱されたような赤みを帯び、それがまるでプロヴァンスの刺すような強い日差しを視覚化してくれているかの様なんですね。そして2番目の要素がコレ:



「これでもか!」と言うくらい分厚く切り取られた石の断面です。この石の奥行きが、大変な強固さと堅牢さを醸し出し、まるで光の力強さを表象しているかの様です。更に石の表面がザラザラしている為に、そこに当たった光の表情がのっぺりとせず、まるで光の粒子が石の表面に出来た細かい陰影によって視覚化されているかの様で、大変深い味わいを醸し出しています。そしてその厚みと一体となった何とも不思議な形のアーチ:



このアーチが繰り返される事によってこの回廊に光と影のリズムを創り出し、決して見る人を飽きさせる事が無いんですね。この陰影のリズムが刻々と移りゆく様を見ているだけでも、一日が足早に過ぎていってしまうかのようです。

これら空間の形、材質そして色彩が一体となって、ここプロヴァンスの独特な陽光の視覚化を実現している点こそ、この回廊空間がこれ程までに気持良く又、世界中の人々を魅了し続けている秘密だと思います。そしてこの回廊に展開している光の扱い方でもう一点、僕が素晴らしいなと思ったのがコチラ:



先程見たベンチの突き当たりにある壁なのですが、左手方向から差し込む光の移り変わりを粗い石が見事に視覚化しているデザインです。ポイントは、わざと光源を見せずに、光の移り行く様だけを、粒子が創り出す陰影によって視覚化している点です。このテクニックはバロック建築の空間でよく見られる手法ですね。



バロックの場合は天窓から降り注ぐ光を視覚化する為に、ものすごくキメ細かく掘り込まれた彫刻の陰影によって光の移り変わりを視覚化しているのですが、この場合も勿論光源は見せていません(詳しくはコチラ:地中海ブログ:ベルニーニ(Bernini)の彫刻その3:サンタンドレア・アル・クィリナーレ教会(Sant'Andrea al Quirinale):彫刻と建築の見事なアンサンブル)。現代建築ではコルビジェのロンシャンの教会の煙突がそんな感じになっていますよね。

それにしてもル・トロネ修道院のこの回廊は本当に気持が良くて、心底素晴らしい空間だと感嘆しますね。下の写真は全く同じ所から撮った写真なんだけど、時間帯によって石の表情が全く違うのが見て取れるかと思います。







こんな風景をボーっと何時までも眺める事が出来てしまう時間・・・実はそれが最高の贅沢だったりするんですよね、特に建築家にとっては!
| 旅行記:建築 | 21:24 | comments(4) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
はじめまして。いつも興味深く読ませていただいています。
「プロヴァンス旅行その3」の記事がどうやら「その2」と合わさってしまっているのか、タイトルで検索すると記事が無い状態です。
ご確認くださいませ。
これからも楽しみにしています。
| ウナ | 2010/06/25 1:22 AM |
ウナさん、初めまして、こんにちは。
コメントありがとうございます。
どうやら正常に戻ったみたいです。ご指摘ありがとうございました。
これからもよろしくお願いします!
| cruasan | 2010/06/26 3:46 AM |
cruasanさん、こんにちは。
しつこくてごめんなさい。やっぱり「その3」の記事が載っていないようで・・・。
左の「NEW ENTRIES」欄から「その3」を検索すると、タイトルのみで記事が空欄になっていると思います。
普通にトップ画面で下に降りると、「その3」のタイトルで「その2(レストランについて)」の記事が出てきます。そして「その2」のタイトルがなく「その1」に続きます。
わたしもBCN在住で、トロネ修道院には是非行ってみたいと思っているので、行き方の記事を是非拝見したいと思ったのですが・・・。
わたしのPCだけおかしいのかなあ・・・。
| ウナ | 2010/06/27 7:02 PM |
ウナさん、こんにちは。
僕はMACとVAIOを使っているのですが、今、二つのPCで試してみた所、その3の記事は普通に表示されました。New entriesからの場合も、トップ画面から下に降りていった時も表示されています。グーグルで検索しても記事その3が普通に出てくるので、もしかしたらお持ちのPCの問題なのかも知れませんね。
一応念の為、明日仕事先のPCからもアクセスしてみます。

もし宜しければ、上のプロフィールから僕のGmailの方にご連絡頂ければ、記事その3のWord版で良ければ差し上げます。

ルトロネ、本当に感動的だったので、是非体験して頂きたいです!
| cruasan | 2010/06/27 7:31 PM |
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