地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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セルダとポストメトロポリス(Cerda Postmetropolis):エドワード・ソージャ(Edward W.Soja)の空間的正義(Spatial Justice)
今週は「セルダとポストメトロポリス(Cerda Postmetropolis)」と題された大規模な国際カンファレンスがバルセロナ現代文化センター(CCCB)で行われていて、その関係で世界各地から建築家や都市計画家、地理学者なんかがバルセロナに大集合していました。カンファレンスでは様々なプログラムが組まれていたんだけど、バルセロナモデルやバルセロナ都市戦略、はたまた「ヨーロッパ公共空間賞」の発表と授賞式なんかもあったりして、建築や都市計画関連のイベント目白押しの一週間だったんですね。

ちなみに僕はCCCBのイベントにものすごく行きたくて、何週間も前から予定を空けておいたんだけど、直前にどうしても外せない急用が入ってしまった為に泣く泣く断念。結局行く事が出来たのはバルセロナ高等建築学校(ETSAB)で行われたエドワード・ソージャ(Edward W.Soja)のカンファレンスのみという散々な結果に終わってしまった(悲)。



エドワード・ソージャと言えばロサンゼルスの研究でその名を馳せた泣く子も黙るアメリカ西海岸を代表する地理学者です。いわゆるシカゴ学派に対するロサンゼルス学派(あるのか?)というやつですね。伝統的なシカゴ学派の潮流にグローバル資本主義の視点を持ち込み、都市社会の様態の変化を説明したサスキア・サッセンに対して、ソージャなどロサンゼルスを中心とする学派は、移民の様態と、それらが引き起こす都市や地域のプランニングの変化に焦点を絞っている様に思われます(僕的には)。

僕が彼の事を知ったのはもうかれこれ7年程前の事でした。と言うのもソージャさんはイグナシ・デ・ソラ・モラレスと仲が良かった為に、イグナシの死後も頻繁にメトロポリスプログラムのゲストスピーカーとして講演しに来ていたからです(地中海ブログ:イグナシ・デ・ソラ・モラレス(Ignasi de Sola Morales)とマスター・メトロポリス・プログラム(Master Metropolis))。だから今までにも何度か彼の講演を聞く機会があったり、他の学生と一緒にコーヒーを飲みながら、ゆっくりとロサンゼルスの現状についての話を聞く機会があったりしたのですが、今回の彼の講演を聞いていて面白いなと思ったのは、彼が最近提案している、「空間的正義(Spatial Justice)」という考えについてでしたね。(ちなみにこのコンセプトは彼が最近出版したSeeking spatial justiceという本に依っているそうです。)

Justiceって言うと、今日本で大変話題になっているマイケル・サンデル(Michael J.Sandel)教授の「ハーバード白熱教室」を思い出す人も多いのではないかと思われます(実はサンデル教授も5月初めにバルセロナに来てCCCBでカンファレンスをしていました!)。



僕もネットで彼の授業を見たりしているのですが、まあ、とにかく分り易くて面白い!彼の授業は主に政治哲学という、普通だったらちょっと身構えちゃうようなテーマを扱っているんだけど、彼の何が凄いって、僕みたいな素人にもちゃんと分かる言葉で、その分野の概念をきちんと説明している所ですね。つまり難しい事を分かりやすく説明出来ているという事です。これって当たり前の事なんだけど、実はこの当たり前の事が出来ない人が世の中には意外に多い。ブログでも何でもそうだと思うんだけど、同じ分野の人やプロの人に自分の考えを伝えるのはそれ程難しくありません。そうじゃなくて、何にも知らない人や子供、お年寄りなんかにも自分がしている事を自分の言葉で伝える事。目指す所は究極ココですね。(あー、又脱線してしまった・・・。)

さて、では一体、空間的正義とは何なのか?

ソージャさんは大変分かり易い例を挙げながら説明していたんだけど、最近ロサンゼルスではバス会社が、インフラ投資の不平等性を理由に市当局を訴えるという事件が起こったそうです。何故なら市当局は、お金持ちや白人が住むエリアのみに莫大なお金を注ぎ込み、地下鉄など公共交通インフラを充実させる一方で、人口集中が激しく交通インフラが明らかに不足している貧困エリアには投資を殆どせず、その状況が全く改善されなかったのがその理由なのだとか。その貧乏なエリアに住んでいる人達は当然車を買うお金なんかあるはずも無く、仕事や学校などに行く移動は公共交通(バス)に限られてくる訳なんだけど、投資不足が原因で生活に支障が出てきている地域もあるんだそうです。

この話を聞いていて僕が思い出したのは、現在バルセロナが進めている市バス路線変更プロジェクトのミーティングにおける、とある一コマの光景でした。2年程前の寒い日の朝だったと思うのですが、その時の議論は僕にとっては忘れられないくらい衝撃的だったんですね。その時の様子を僕は当時のブログにこんな風に書いています:

現在進行中のプロジェクトに新バス路線プロジェクトがあります。何かと言うとその名の通りバルセロナのバス路線を全て新しく変えるというプロジェクトです。バスの路線って都市の成長と共に発達してきたものなのでぐにゃぐにゃなんですね。つまり無駄が多い。これを最適化しようというのが趣旨。何の為に?エネルギーの無駄を減らす為に。新たな路線は単純明快。山方向から海に向かう路線郡と左から右に向かう路線郡。ただそれだけ。

さて、今日来てたお客さんがこんな質問をしました。 「新しい路線は現状のバス待ち間隔15分を4分にするんだろ?しかも走行距離が減って現状のバス必要台数よりも25台分減らせる。だからエネルギーも減るって訳か!」

大間違いです。一見、バスの台数が減るのでその分エネルギーが減るように思えるかも知れません。しかし現状待ち時間15分を4分に改善する為にバスの走行頻度を上げる事になるのです。結果として総走行距離は現状よりも長くなる為、必要エネルギーも増加するのです。

しかしそれでもこの新路線は現状よりもよっぽど効率的だと考えられています。何故だか分かりますか?実は新路線がカバーする都市範囲が現状の88%から98%に上がる為に自家用車の利用が減ると予測されているからです。その差分を計算すると新路線の方が現状よりもエネルギー効率が良い計算になるんです ね。

つまりバス路線だけでみると増加するエネルギーも都市全体で見るとエネルギー需要が激減し、結果サステイナブルシティになると言う訳です。

・・・ここまで書いてきて何なんだけど、この事例、あんまり関係ないかな(笑)。「都市、バス、カバーしているエリア」って言うキーワードで頭の中を検索したら、「パッ」とこの事例が出てきたもので。まあ、それでも、公共交通インフラがカバーしているエリアを現在の88%から98%に上げる事によって、その結果、環境的にも優しくなるという視点の導入プロセスは結構重要だとは思いますけどね。今度、ソージャさんにも教えてあげよう。(5年後かな(笑))
| バルセロナ都市計画 | 21:50 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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