地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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ヨーロッパ各国の導入している医療システムについて
スペインと言う国を語る時、その特徴を切り取る観点は色々とあると思うのですが、その内の可能性の一つを「医療システムの充実に見る事が出来るのでは?」という思いを、ここ数年、益々強く持つようになっています。何がそんなに際立っているのかと言うと、スペインではスペイン人は勿論の事、住民票を持っている留学生や移民の人々は病院にかかる費用が(ほぼ全て)無料になるんですね。風邪をひいて病院にかかろうが、盲腸の手術をしようが、心臓の移植をしようが、全てタダなんです。(但し明日病院に行ったからといって、来週即手術が出来るとは限りません。それがスペインが直面している問題なのですが・・・)

もうちょっと詳しく言うと、スペインの法律ではスペインに滞在している人が何かしらの理由で緊急に医療を必要として病院などに駆け込んだ場合、病院側はそれを断る事は出来ないとしています。この法律がある為に、住民票を持っていない観光客や違法移民の人々が救急病院に飛び込んでも、治療を受ける事が出来るという状況が生れている訳です。

こんな状況だから、自国で行う手術などが高くつくために、わざわざスペインの住民票を獲得してまでタダで移植手術をしちゃおうという医療ツーリズムという新たな現象が出てきており、それがスペインの財政を圧迫している要因の一つである事は以前のエントリで書いた通りです(地中海ブログ:健康ツーリズム:スペインの誇る医療サービスの盲点を突いた、グローバリゼーションの闇、地中海ブログ:違法移民の住民登録問題:蛮族というシステム)

しかしですね、今、ヨーロッパ中を徘徊している一匹の経済危機という妖怪によって、このような状況を見直そうという動きがスペインの中で出始めています。つまり病院で医者にかかるのに患者から少し料金を徴収する事にしようとか、専門医にかかる場合や薬のレベルなどによっては、サービス料金を一定額に定めようという動きが出始めているんですね。この手の議論は前々からあったのですが、今回の経済危機の煽りを受けて、様々な分野が予算の見直しを迫られている中、今までは聖地だった「医療」という領域にもメスが入ろうとしていると、まあ、こう言う事です。

こんな状況下で、ヨーロッパの諸各国はどんな医療システムを導入しているのか?という記事が載っていたのですが、それがちょっと興味深かった。例えばお隣の国、ポルトガルでは先週、新しい法律が施行されたばかりらしく、それによると、今までは治療薬の度合いによって料金を徴収していたのに対して、新しい法律では、治療薬の度合いに関わらず、一定料金を取る仕組みになったのだとか。又、今までは年金受給者は治療薬などは全て無料だったのを廃止したりもしたそうです。そしてコミュニティ医療センター(community health centre)を訪問する際の料金は一回につき2.20ユーロ、大きい病院(Hospital Central)の場合は4.5ユーロ、地域の病院の場合は3ユーロを徴収する事にしたらしい。救急病院の場合は3.79.40ユーロ。入院費は最初の10日間は5.2ユーロ、65歳以上の人は50%引きのサービスがあるそうです。妊娠中の人、12歳までの子供、失業中の人などは無料だそうです。

僕的に驚きだったのが英国のシステムなんだけど、英国では全ての医療費が無料らしい(これがスペインの様に英国を訪れている観光客や違法移民にまで適応されるのかは不明)。治療薬に関しては、最初の3ヶ月間は7.20Libra(8.65ユーロ)で、慢性の病気に懸かっているような人は年間104Libra(125ユーロ)払う事によって、全てのサービスが受けられる仕組みだと言う事です(実はここの所の表現が曖昧で、この料金を払う事によって全ての治療薬が受け取れるのかどうか?は不明)。

そしてもっと驚いたのがイタリアのシステムです。イタリアではコミュニティ医療センターの訪問は無料なのですが、検査などには料金がかかるとの事。そして専門医の診療を受けるのに15-20ユーロかかり、すごいのが、救急に駆け込んだ場合、医者がその必要無しと判断した場合には、ペナルティとして25ユーロ払わなければいけないらしい。これは見方によっては結構良いシステムで、というのも、スペインでは用も無いのに救急病院を訪れて、おしゃべりなんかをしている人が多く、その人達の不必要な時間と治療にかかる人件費などがスペインの医療費を膨大なものにしているという現実があるからです。

こうやって見てくると、スペインが導入している医療システムである「全ての人に対して医療費無料」というシステムがヨーロッパではいかに特異なシステムかが分かるかと思います。しかしながら、今後数年、もしくは数ヶ月の単位でこのような状況に変化が訪れるかもしれません。医療はその国の生活の質を担保する重要なインフラである事から、この案件には今後共、注目していきたいと思います。
| ヨーロッパ都市政策 | 23:13 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
>英国では全ての医療費が無料らしい(これがスペインの様に英国を訪れている観光客や違法移民にまで適応されるのかは不明)。

そうです、無料です。通常のNHS(National Health Service)ルート(近所のGPに登録)は登録する必要があるので観光客や違法移民は受けられませんが、病院のA&E(Accident & Emergency、救急病棟)はそこに入ってきた人は誰であろうと無料です。

よって臨月にイギリスにやってきて、陣痛が始まったらA&Eに駆け込み無料で産んで帰国していく外国人が産科を逼迫している、という恐ろしい話を聞きました。

薬はよくわかりませんが(妊婦&産後1年の女性と16歳以下の子供は無料なので今まで払ったことがなかった)、Exempt(薬代免除)の項目はけっこう多いです。
| la dolce vita | 2011/10/23 6:16 AM |
la dolce vitaさん、こんにちは。コメントありがとうございます。

やっぱり、そうなんですか!イギリスも医療は無料なのですね。ヨーロッパに来て一番驚いた事の一つがこの医療体制なのですが、我々日本人からすると、医者が無料って言うのはちょっと信じられない気がします。

ただ、「タダより高いものは無い」と言う言葉通り、何時間も待たされたり、救急の治療が必要なのに、何日も見てもらえないといったような、欠陥がある事も又事実だと思います。

ヨーロッパの社会福祉のインフラについてはまだまだ我々日本人には謎の部分が多いのかもしれません。

それにしても、イギリスでタダで子供を産んで帰って行くって、それもかなり凄い話ですね(笑)。
| cruasan | 2011/10/26 6:10 AM |
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