地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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内田樹の研究室の「リンガ・フランカのすすめ」を読んで:何故ヨーロッパでは、ゆるいコミュニケーションである「なんちゃってイングリッシュ」が成功するのか?
何時も見てる「内田樹の研究室」というブログに「リンガ・フランカのすすめ」と題する面白いエントリが載っていました。簡単に言うと、現在の英語優位の社会状況下において、英語を母国語としない国々の人々が英語を母国語とする人々と対等にやっていく為には如何なる仕組みが必要か?と言う事をかなり具体的に論じた刺激的な内容です。

グローバリゼーションが進行する現代社会の中において、英語を母国語とする人達が享受出来る優位性については、少しでも海外旅行や国際会議に出席した経験がある人なら誰しも感じる所だと思います。このような状況に対して彼が提案しているのは、「英語」という正式言語の他に、「Poor English(なんちゃってイングリッシュ)」という新しい枠組みを作って、コレを世界共通の言語にしようじゃないか」という事なんですね。では、この「Poor English(なんちゃってイングリッシュ)」って一体何?って言うと、これは英語を母国語とする人達が話す「正しい英語」ではなくて、コミュニケーションを取る為の英語で、必ずしも発音や文法が正確である必要は無いというレベルの英語の事だそうです。

で、この「Poor English(なんちゃってイングリッシュ)」を導入すると何故良いのか?と言うとですね、それはこの言語を母国語とする人は世界に存在しないので、現在の世の中のように、しゃべってる最中に英語を母国語とする人達に発音の悪さを指摘され話の腰を折られたり、文法が間違ってるからと言って、意見を聞いてもらえなかったりと言った不公平さが無くなり、みんなが同じスタートラインに立つ事が出来る訳ですよ。

実は以前、これと似た様な事を提案した事があって、僕の言葉では「なんちゃってトリリンガル論」と呼んでいました(地中海ブログ:2010年、今年最初のブリュッセル出張その2:バイリンガルを通り越してトリリンガルになる日本人達:なんちゃってトリリンガルが変えるかもしれない ヨーロッパの風景

「なんちゃってトリリンガル論」って言うのは、ヨーロッパの各地方で、その土地に根差した言語(フランス語とかスペイン語)で生活している日本人が、英語をしゃべる必要性に迫られた挙句、正確な英語では無く、取り合えずコミュニケーションを取る為だけの英語を身につけた結果、完全なトリリンガルでは無いんだけれども、ちょっとは3ヶ国語がしゃべれる様になっちゃった、そしてその様な日本人が実はポツポツと増え始めているのでは?という論の事です。

「英語をしゃべる必要性って一体なんだ?」とか思われるかも知れませんが、例えば、友達の家で開かれるパーティーなんかに行くと、大抵1人や2人はスペイン語がしゃべれない人なんかが居て、その人達と話す時は英語になると言う事が頻繁に起こります。この時要求されるのが、正確な文法や発音じゃないんだけど、取り合えずコミュニケーションが取れて、お互い冗談が言える程度の英語なんですね。そういう日常を過ごしている内に、知らず知らずの内に、なんちゃってトリリンガルになっていくと、まあ、こういう訳です。

この「なんちゃってトリリンガル論」の中で言ってる「パーティーとかでコミュニケーションが取れるレベル」と、内田さんが提案されてる「Poor English」は全く同じ事だと思います。そして、実はこの様な試みって言うのは、暗黙裡の内に欧州の様々な場面で既に試みられている事でもあるんですね。

僕は職業柄、欧州プロジェクトというのに深く関わっていて、ヨーロッパの様々な国の人達が集まる会合やプロジェクトミーティングに参加したりする機会が多いのですが、そういう所に行くと、必然的に共通言語は英語になります。しかしですね、英語を母国語としないヨーロッパ人達の中で、英語を流暢に話す事が出来る人というのは、きわめて少ない事に気が付きます。中には聞いてるこっちがハラハラするようなぎこちない英語を話す人もチラホラ。

でも、その事を恥ずかしく思ってる人はいないし、非難する人もいません。ましてや、英語がしゃべれないから意見を聞かないなんて事は先ずありえません。英語を母国語とする人が入って来たって状況は一向に変わりません。だって、「なんちゃってイングリッシュ」を話す人の方が多いんだから。時にはそれが仇となる事さえも。「なんちゃってイングリッシュ軍団」が連合を組み始め、聞き取れない「正しい英語」を話す英国人やアメリカ人に対抗する為に互いに助け合い、「ねえ、今なんて言ったの?」なんてやってます(笑)。

何故この様な状況が生まれたのか?・・・ココからは僕の勝手な推測なんですけど・・・。

ヨーロッパの強みは多様性です。星の数程存在する村や都市、そしてそれらの地方が生み出す様々な社会文化。陸続きなヨーロッパでは、道を一本越えた向こう側は違う言語を話す国だったり、隣近所には様々な異人種が住んでて、全く違う文化習慣を行ってるなんて事は日常茶飯事なんですね。

そういう人達と共存し、互いを認め合ってきたのがヨーロッパという社会です。

そんな社会の中では、「隣の人は自分とは異なる」という事が当たり前の前提として生活が営まれてきました。だからヨーロッパの人達にとっては、「コミュニケーションっていうのは、取れなくて当たり前」という感覚があるのでは無いのでしょうか?ヨーロッパ人にとって言語とは何はともあれ、先ずはコミュニケーションを取る為の道具であって、完璧に外国語をしゃべるなんて発想が出てこないんだと思います。つまり「通じれば良い」んです。

反対に、アメリカという国は、どうも英語を完璧に話せない人は「人に非ず」みたいな風潮があるのかな?という感じを受けます(どうなんでしょうか?)。「あなた英語上手くしゃべれないの?じゃあ、あなたの意見は聞きません」みたいな。(ガクブル)

逆にヨーロッパでは多少言語的に問題があっても、「何か面白い事を言うかもしれない」という事で、耳を傾けてくれます。

その辺の違いなのかな?と思うんですが、どうなんでしょうね?
この辺は面白いので、
Twitterで欧州在住組みの皆さんに聞いてみようかな。
| バルセロナ日常 | 21:52 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
cruasanさん、再びこんにちは。

数日前の酷暑から開放されて、少し暑さも収まってきたマドリードです。

私も現在“なんちゃってトリリンガル”に挑戦中。
ただ組み合わせは、日・西&仏です。
英語が出来るわけではないのですが(きっと中学生レベル、、、か、それ以下かも・・・)、私の周りのスペイン人以外の外国人の割合、英語圏皆無、それに、それこそ“なんちゃってスペイン語”で通じちゃってます。

日本に旅行したことがあったり、日本語に興味がある人も多く、片言の日本語で話しかけてきたりするので、それじゃぁ私も相手の言語でって感じです。スペイン語をベースに入りやすい言語ということで、まずフランス語。もうちょっと“なんちゃって”のレベルが上がれば、次はドイツ語の予定。

こんなことやってるより、英語やっておけばいいのに〜と自分でも思いつつ、興味の赴くままに、いろんな言語に手をつけてます。

ただ、大昔に友人に言われた一言、“母国語でない言語は、母国語のレベルを超えない”というのを肝に銘じて、母国語の重要性もおろそかに出来ないと思っています。日本語で読んだり、書いたりするのも忘れないようにしなければ!

それにしてもたとえ“なんちゃって”であっても、数ヶ国語を操る日本人が増えてきたら、面白いですね〜。
| sara | 2010/07/25 8:07 PM |
Saraさん、こんにちは。

へぇー、日、西、仏ですかー。面白い組み合わせだと思います。実はフランス語って、ヨーロッパでは強いんですよね、欧州委員会でもオフィシャル言語になってるし。実は一時期僕もフランス語に挑戦しようとしましたが、結局果たせずにいます。カタルーニャでは地理的に近い事やカタラン語がフランス語に似ている事などから、沢山のカタラン人達が第二言語にフランス語を選んでいるという現実があります。
だからフランス語を学ぶ環境としては申し分無いんですけどね。
機会があれば、是非トライしたいと思っています。
| cruasan | 2010/07/27 3:19 AM |
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