地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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グローバリゼーションの中におけるローカリゼーション:何故カタルーニャの戦略は次々にポジティブな結果を生んでいるか?
昨日Twitterで教えてもらったんだけど、どうやらバルセロナにあるポンペウ・ファブラ大学(Universidad de Pompeu Fabra)、バルセロナ自治大学(Universidad de Autonoma de Barcelona)そしてCREi(Centre de Recerda Economia Internacional)という3つの大学機関が連携して、バルセロナという地域をヨーロッパにおける経済学の研究拠点に押し上げているそうです。数年前、知り合いがバルセロナ自治大学経済学部のドクターコースに通っていて、結構良い噂などを聞いてはいたのですが、まさか、複数の機関が集まり協力体制を築きながらヨーロッパ中に響き渡る程の名声を獲得していたとは予想していませんでした。知らなかったよー♪

更にバルセロナには、しばしば世界ランキング一位の座に輝いているビジネススクールIESEや常に世界ランキング10位に入っているESADEなんかがある事から、明らかに都市として「経済やビジネス研究」という一つの特化分野を創り出そうという意志がある事が見て取れます。これは前回の記事とも関連する点なんだけど、このような地域の特性を生かして競争力にしていく戦略や手腕は本当にすごい!心底感心しますね(地中海ブログ:新たなる経済モーターとしての医療:カタルーニャのバイオ医療戦略

では何故、スペインのカタルーニャ地方においてこのような都市戦略が次々とポジティブな結果を生み出しているのか?

うーん、これに答える事はすごく難しいんだけど、今日の話題である「スペインの大学システムに見る日本との違い」を通して、少しだけその手掛かりを示す事くらいは出来るかもしれません(スペインにおける大学ランキングに関してはコチラ:地中海ブログ:スペインの大学ランキング:総合ランキングではなく、学部間で競い合うというシステム)。

面白い事に、スペインには上述した様な「超競争力がある研究機関」が揃っているかと思えば、その一方で「大学ランキングなんかには微塵の興味も示さない」という人達が大半を占めている社会、それがスペインなんですね。

昔聞いた話でぶったまげたのが、ポンペウ・ファブラ大学で文学を専攻していたカタラン人の友達に、「どうしてポンペウを選んだの?」って聞いたら、「家から一番近いし、何よりメトロの出口から一番近かったから」という返事が返ってきました。しかも彼女はふざけてそう答えた訳ではなくて、「至極当然、なんか文句ある?」みたいな感じで自信満々に答えてくれました(笑)。そして同じ様な基準で大学を選ぶ人達が実にスペイン人の90%以上を占めるという事実が分かってきたのはごく最近の事です。

スペイン人にとって大学を選ぶ際の一番重要な要因は何か?それはその大学の知名度や有名教授の有無、もしくは就職率などではありません。それはずばり「家から近い事」です(笑)。

スペイン人は大学を選ぶ際、自分の住んでいる街から出る事は先ずありません。自分の住んでる街に大学が無かったり、行きたい学部が無かったりした場合に限り、同じ州にある大きな街に行ったりするのですが、その場合には、毎週末に家に帰れる事が絶対条件になります。

何故か?

何故ならスペイン人は「スペインが世界で最高の国」だと信じ込んでいて、更に、自分が生まれ育った町や村はそんな最高のスペインの中でも「最も住みやすい場所」だと確信しているからです。それほど自分が育った街や村に愛着を持ち、誇りを持って生きている民族、それがスペイン人なんですね。極端に言うと、彼らはものすごく狭い世界に生きていて、その中からナカナカ出ようしません。だから自ずと、「自分達が住んでいる街や自分達が住んでいる地区をより住みやすくしよう」というコンセンサスが全市民の間に取り易く、全ての力がそちらの方向に向かって行き易いんじゃないのか?と思う訳です。「自分が動かないんだったら環境を良くしちゃえ」と、まあ、単純なんだけど、僕的にはちょっと目から鱗的な逆転の発想な訳です。

そしてその根底にある考え方や価値観の基礎になっているのは間違い無く、「家族と友達」です。彼らは人生の中における最も重要な事項の一つとして、「家族や友達と過ごす時間」に比重を置いているんですね。

何故スペイン人は自分の家から遠く離れた大学には行かないのか?それは、そんな所に行ったら家族や友達と会えなくなるからです。そう、彼らにとっては、「良い大学に行って名声を獲得したり良い企業に入って沢山お金を稼ぐ事」なんかよりも、「大切な家族や気の知れた友達と一緒に楽しく過ごす時間」の方が何よりも大切なんですね。つまり日本人とは価値観が全く違うと言う事です。

何時も言うように、これはどちらが良くてどちらが悪いとか、どちらが優れていてどちらが劣っているといった問題ではありません。ただ単に両者は違う価値観に基ついている、ただそれだけの事です。

こういう事を真っ直ぐな目で語りかけてくる時ほど、スペイン人が魅力的に見える瞬間はありません。

何時もは仕事サボってたり、人に仕事を押し付けて自分だけ先に帰ったりして、憎っくきカタラン人なんだけど、彼らの生き方を見ていると、とっても人間らしくて、忙しい毎日の中で僕が忘れかけていた何か大切なものを、日常のふとした一言から思い出させてくれるような気がします。

近年グローバリゼーションが進行する中で各都市が己のポジションやビジョンを打ち出そうと必死になってるけど、カタラン人が無意識にも示しているこの姿勢は、グローバリゼーションの中におけるローカリゼーションの問題にある一つのモデルを示している様な気がします。勿論それは他の都市がコピー出来る様な物ではないのですが、やはり、「僕が彼らから学ぶべき事はまだまだ山程ありそうだな」と感じる今日この頃です。
| 都市戦略 | 21:00 | comments(4) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
こん**は。いつも読むのをを楽しみにしています。東京でカスティージャ語のクラスを取っているのですが、丁度先週授業中に似たような話になったので、そうそうと相槌を打っていました。ガリシア人の先生によれば、就職の際どこの大学を出たかはあまり重要とされないので、近くの大学に行くのが普通だという話でした。日本と違って、大学には入りやすく出にくい、つまり入試はやさしいが卒業試験は厳しい、ということのようです。就職の際には大学名ではなく在学中の成績がものを言うということなのでしょう。カタルーニャでも同様の状況なのでしょうか。
| Huesoypiel | 2010/03/22 7:00 PM |
Huesoypielさん、コメントありがとうございます。
多分、スペインなら何処でも状況は同じだと思いますよ。カタルーニャでも学生は試験前は必死で勉強しています。その代わり試験が終わった後は、1週間ぐらいぶっ通しでパーティーが続くそうですが。それくらい終了するのは厳しいと言う事なのでしょうね。
| cruasan | 2010/03/25 5:20 AM |
いつも楽しみに拝読しております。

なるほど。。。
自分の郷土をそこまで愛することができるというのは、素晴らしいですね。アメリカ人も、ご存知のとおり、自分の土地が大好きな人達ではありますが、とはいえ経済合理的に動き回っている気がします。

自分の住む街に対する愛着の強さがあるから、文化や自然を含む環境を守っていくことができるんですよね。うらやましいなあ。
| knj79 | 2010/04/12 5:36 AM |
knj79さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
何時も「バークレーノート」の更新楽しみにしています。とっても面白いし勉強にもなります。
ここに住んでいると、彼らの町に対する愛情がいやと言う程伝わってきます。それこそがこの都市を良くしている原動力であるという事も。
こういうことは多分、その土地にジックリと腰を据えて観察してみて初めて分かる事だと思うんですね。多分それこそ、僕達海外在住組が貢献できる事なのでは?と思います。お互いがんばりましょう!
| cruasan | 2010/04/15 4:48 AM |
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