地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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ベルギー王立美術館(Musees royaux des beaux-arts de Belgique)のピーテル・ブリューゲル(Pieter Bruegel de Oude)とかバベルの塔とか
ちょっと話が前後するのですが、先週の3日間に渡るブリュッセル出張の合間を縫ってベルギー王立美術館(Musees royaux des beaux-arts de Belgique)に行ってきました。



この美術館の見所は何と言っても15世紀から18世紀を中心とするフランドル派の絵画コレクションで、その中でもピーテル・ブリューゲル(Pieter Bruegel de Oude)のコレクションは必見です。と言っても、政治的な理由から彼の大半の作品はオーストリアはウィーンの美術史美術館(Kunsthistorisches Museum, Wien)に所蔵されているんですけどね。でも、やっぱり地元の作家の作品は地元の雰囲気の中で見てこそ意味があると個人的には思っているので、ベルギーの街の風情を感じながら見るブリューゲルの作品は、ウィーンで見る彼の作品とは又違った良さを感じる事が出来、それだけでもこの美術館に来る意味もあるんじゃないのかなー?とか思ったりします。

さて、ピーテル・ブリューゲルと言えば、その繊細で精密な描写で知られているのですが、僕にとって興味深いのは、彼が空想の動物や妖怪などをキャンパスの中に目一杯描き込んでいる事です。



上の絵はこの美術館に収蔵されている彼の代表作の一つ、叛逆天使の墜落(The Fall of the Rebel Angels)で、大天使ミカエル率いる天使軍が魔界軍を一刀両断している場面なんだけど、よーく見ると、そこら中に見たことも無い生物が沢山居る事に気が付きます。



どうしてこの人、こんな妖怪達を描いたんでしょうね?って、実はその辺は結構研究が進んでて、彼はルネサンス期のネーデルランドの画家で初期フランドル派に分類されるヒロエニスム・ボッシュの影響を受けている事が既に指摘されています。



ヒロエニスム・ボッシュという画家は想像上の奇妙な妖怪などファンタジー溢れる絵を描く事で知られ、彼の代表作である「快楽の園」は現在、
スペインのプラド美術館に収蔵されています。何故かって、当時のスペイン国王だったフェリッペ2世がボッシュの絵を大変気に入っていたからだそうです。



僕がこの絵の事を初めて知ったのは、確か中学の美術の教科書だったと思うんだけど、恋人達が大きな風船の中に入ってたりして、「ナカナカに楽しげな絵だなー」とか思ってたんですね。実はそれからずーっと忘れてたんだけど、数年前、プラド美術館を初めて訪れた際、不意にこの絵に遭遇して、あの時の淡い感動が蘇ってくるのを感じて、ちょっと郷愁に浸ったりしていました。

そんな事を思いながら広々とした館内を歩いていたら驚くべき一枚に遭遇しちゃいました。それがコレ:



バ、バベルの塔だー!!超能力少年のバビル2世が住んでる塔、バベルの塔です。いやいや、これは冗談なんだけど、こんな所でバベルの塔に出会えるとは思ってもみませんでした。ちなみにこの絵はFrans Francken the Younger作によるバベルの塔。

バベルの塔って一体何か?って言うと、旧約聖書の「創世記」に出てくる巨大な塔の事で、同じ言葉を話す人々がレンガとアスファルトを使って建ち上げた、天まで届く高―い、高―い塔の事です。その建設過程を見た神様が、何とか建設をストップさせようとして、彼らの中に様々な言語を導入し、コミュニケーションを取れなくする事により見事に建設をストップさせる事に成功したと言う逸話ですね。その結果、人々は世界各地へと散らばっていく事となったのですが、キリスト教ではこのお話が世界に様々な言語が存在する説明となっていたりします。

面白いのは、旧約聖書を注意深く読むと良く分かるんだけど、実は良く言われているように神様はバベルの塔を破壊したりはしていないんですね。ただ単に多言語を導入して建設をストップさせようとしただけ。何の役にも立たない豆知識終わり(笑)。

さて、バベルの塔フェチの僕は当然他のバベルの塔も見てるんだけど、その中でも一番有名なのがピーテル・ブリューゲルが描いたこの一枚でしょうね:



この絵画は現在、ウィーンの美術史美術館に所蔵されています。美術館の一角に何気なく飾ってある一枚なのですが、大判と言う事もあって、独特の存在感を示していましたね。そして僕が好きなもう一枚がコチラ:



こちらも同じくピーテル・ブリューゲル作で、現在はロッテルダムのボイマンス・ヴァン・ベーニンゲン美術館 (Museum Boijmans Van Beuningen)に所蔵されていました。こちらのバベルの塔はもう一枚の方に比べると、ちょっと冷たい感じがします。多分、色使いと塔のフォルムによると思うのですが、これはこれで味があって良いなー。

今回の
Frans Francken the Younger作によるバベルの塔は、ブリューゲル作の2枚と比べると先ずはその構図の独特さが指摘できるかと思われます。ブリューゲルの2枚が視点を高い位置に持ってきているのに対して、Frans Francken the Younger作のバベルの塔の視点は人の目線になっているんですね。こうする事で塔の高さが強調されて、ものすごく壮大な物語が絵画の中に展開されているように感じられます。



手前の人と向こうで作業している人、そしてそれに対する塔の圧倒的な高さによる遠近感の効果を十二分に発揮した素晴らしくダイナミックな作品に仕上がっていますね。


短い時間の中で何気なく寄った美術館だったけど、この一枚に出会えただけで大満足でした。こんな予定調和的ではない出会いがあるからこそ、旅行はやめられないんだなー。「次はどんな出会いがあるんだろう?」と考えると、明日からの何気ない世界も輝き出す気がしますね。
| 旅行記:美術 | 23:32 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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