地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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2009年のスペイン観光事情と21世紀の都市問題について
先週の新聞(La Vanguardia, 31 de Enero 2010)に2009年のスペイン観光動向情報が載っていました。

観光は21世紀最大と言われている産業であり、ここカタルーニャにおいてはカタルーニャ経済を支える3大柱の一つにまでなっている程なんですね(地中海ブログ:移民について:カタルーニャの矛盾)。更に現在ヨーロッパの都市で見られるほとんどの都市現象は観光に関連するものであると言っても過言では無いと思われる事から、当ブログでは定期的に観光における定点観測を行っています。

さて、スペインでは「太陽とビーチ(Sol y Playa)」をモデルとして観光産業は90年代から順調に発展してきた訳なのですが、そういう大局的な目で見た場合、去年(2009年)の特徴は何と言っても「最悪の年」の一言でした。新聞の見出しも:

観光:最も暗かった年(TURISMO, El ano mas negro

とかなり直接的。やはり経済危機や、その前から顕著だったスペインの不動産バブルの崩壊などの影響が劇的に観光産業にも及んだ年だったようです。

数字で見るとそのすごさが一目で分かるのですが、一昨年の同じ時期(2008年)に比べて、去年スペインを訪れた観光客数は9%の減少、国内総生産(GDP)に占める観光の割合は5.6%減少し、換算すると50億円近く(6.380M Euro)の損失を被ったという事でした。

2000
年初頭からのもう少し詳しい観光動向を見てみるとスペインにおける観光産業の成長過程が良く分かると思うのですが、驚くべき事にGDPのピークは2000年なんですね。その一方で、当時の観光客数は4820万人止まりで、観光関連の雇用も140万人に留まっています。観光客数がピークに達するのは2007年で、その数なんと5920万人。GDPのピークは前述した様に2000年がピークだったのですが、観光関連の雇用数がピークになったのは、2004年と2006年で共に10.9%を示しています。

ちょっと深刻なのが観光客数の動向で、2000年から2007年までは毎年3%前後の成長を示していたのが、2008年は2.3%の減少、そして2009年に至っては8.7%の減少となっています。10年間くらいのスパンで見た場合、やはりこの下げ幅は尋常では無い事が分かるかと思われます。

ここまで書いて、引っかかる事が一つあるんだけど、それは観光客数とGDPの割合の不釣合いです。観光客の増加に伴って雇用数はそれに比例する様に増加してるんだけど、何故かGDPは緩やかな減少を示している。

何故か?

詳しくは分からないのですが、コレって近年見るチープ観光の影響なのでは無いのでしょうか?(チープ観光についてはコチラ:地中海ブログ:観光とチープエコノミー:ライアンエアー(Ryanair)などの格安航空機が都市にもたらす弊害)つまりライアンエアーがロンドン−バルセロナ間、5ユーロとかいう訳の分からない価格で飛行機チケットを販売したり、ホテルやレストランなどもどんどんとファーストフードやジャンクフードの様相を呈してきたりしている。更に深刻なのが、以前紹介した金曜日の夜に来て金曜、土曜とクラブで踊りまくったり、公共空間で一晩中ビールを飲みながら騒ぎまくって、そのまま日曜日の昼にライアンエアーでトンボ帰りするという、究極のローコスト観光が出てきた事です。そういう悪影響が引き起こした最近の現象が、中心市街地の質的悪化である事は以前書いた通りです(地中海ブログ:バルセロナの中心市街地で新たな現象が起こりつつある予感がするその3:街頭売春が引き起こした公共空間の劣化など

これらはかなり極端な例にしても、観光という現象の多くがローコスト化に向かっているのは確かだと思うんですね。そうすると、いくら都市が観光客を惹き付けたって、思った程のお金は落としてくれないわ、都市の資源を無駄使いするわ、騒音やゴミなど都市にとってはありがたくないお土産だけ置いていくわという、市役所側としては大変頭の痛い問題が発生してきている訳ですよ。例えばこんな感じで:

“2007年、バレンシアを訪れた65%の観光客は滞在に1ユーロも使わな かった。格安航空は製品の地盤沈下を引き起こしている。つまり観光客は製品を消費しなくなった代わりに、ビーチを占有し、水や電気を消費しゴミを出す。様 々な都市の生活インフラを崩壊させるのである。

“ En 2007, el 65% de los turistas que llegaron a Valencia no se gasto ni un euro en alojamiento. Los vuelos de bajo coste hunden el producto: un turista que no gasta, pero que llena las playas, colapsa las infraestructuras, consume agua, electricidad y genera basuras”. (El Pais, P31, 5 de marzo 2009)

多分、21世紀の都市が直面するのがこれら観光に付随する都市問題とその解決法だと思われます。それは1980年代からヨーロッパ都市が行ってきた観光を軸とする都市活性化とは又違ったレベルの話であり、中心市街地への公共空間挿入によるシャッター通りの再活性化ほど単純には答えの出ない問題だと思うんですね。ジェントリフィケーション、街頭売春、騒音、ゴミ、交通・・・頭の痛い問題多しです。

付録:スペインの観光関連動向

年:海外からの観光客数、成長率、雇用率、GDP

2000: 48.2, +3%, 1.4 Millones, 11.6%

2001: 49.5, +0.8%, 1.5 Millones, 11.5%

2002: 51.7, +3.3%, 1.5 millones, 11.1%

2003: 52.4, +0.3%, 1.6 Millones, 11.0%

2004: 53.6, +3.4%, 1.7Millones, 10.9%

2005: 55.6, +6%, 2.3 Millones, 10.8%

2006: 58.4, +4.5%, 2.5Millones, 10.9%

2007: 59.2, +1.7%, 2.6Millines, 10.8%

2008: 57.3, -2.3%, 2.6 Milliones, 10.5%

2009: 52.2, -8.7%, 2.3 Millines,

| 都市戦略 | 20:25 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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