地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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バルセロナ・ピカソ美術館の企画展:「秘められたイメージ:ピカソと春画」その1:ピカソ美術館が好企画展を連発する裏事情
今週の水曜日の事だったのですが、バルセロナのピカソ美術館で行われた「浮世絵−春画の特徴」と題したカンファレンスを聞きに行ってきました。お話しをしてくださったのは国際日本文化研究センターの早川聞多さん。世界でも数少ない浮世絵の専門家の方だそうです。



今回のカンファレンスは現在開催中の「秘められたイメージ:ピカソと春画(Imatges secretes. Picasso i lestampa erotica japonesa)」と題された特別展の一環で行われたものなのですが、取り合えず、この展覧会がすごいんです!何がすごいって、日本なら絶対展示不可になるであろう「激しい性行為」をあからさまに描いた春画を、ここぞとばかりに公共の美術館で展示している所。会場にはカップルで来てる人とか、一人でじっくり一点だけを見てる(怪しい)人(笑)とか様々だけど、これは、親と来たら確実にコメントに困る類の展覧会ですね(笑)。親子でバルセロナ観光中の皆様、ピカソ美術館に訪問される場合は、企画展はなるべく避けて、常設展だけ見る事をお勧めします(半分冗談、でも半分本気)。

さて、本題に入る前に一言。

最近のピカソ美術館の企画展の切れ味の良さにはちょっと注目に値するものがあります。今回の展覧会は言うに及ばず(理由は後述します)、去年行われた「ラス・メミーナス、ベラスケスを忘れながら(Olvidando a Velasquez. Las Meninas)」と題された企画展も非常に面白い展覧会でした(地中海ブログ:国際博物館の日(International Museum Day)とピカソ美術館(Museo Pisacco)その2)。



これは、言わずと知れたベラスケスの大作「ラス・メミーナス」が各時代のアーティスト達によってどのように評価されてきたかに焦点を当て分析していたのですが、その裏には勿論、バルセロナのピカソ美術館が所蔵するお宝、58枚のピカソ作によるラス・ミニーナスの連作が基になっていたりします。その辺りの戦略性もナカナカ。

さて、ピカソ美術館がバルセロナに創設された歴史的経緯や美術館を巡る都市戦略、ピカソというイメージを利用したいバルセロナ市の思惑などについては以前書いた通りなのですが(地中海ブログ:国際博物館の日(International Museum Day)とピカソ美術館(Museo Pisacco)その1:ピカソとバルセロナの都市戦略)、ここの所のピカソ美術館の目を見張るようながんばり、それは一重に館長のがんばりに拠る所が大きいのではないのかな?と僕は思います。

今の館長がピカソ美術館に就任したのは2年程前の事だったのですが、その当時、こちらではスペイン中を巻き込んだ大論争がありました。というのも、今の館長はピカソの専門家でもなんでもなく、ピカソに関しては全くの素人、館長経験は勿論無しの若いだけがとりえの一学芸員で、美術関係者の間でさえ、全く知られていない存在だったからなんですね。だからピカソ美術館の新館長がアナウンスされた時には誰もがビックリ。

「誰だ、○○って???」

って事になり、各メディアなどが詳しく調べていく内に、思わぬ裏事情が明らかになりました。実は彼の叔父さんがスペイン人なら誰でも知ってる超大物政治家で・・・ブツブツ、とまあ、はっきり言えば「コネ」という、それだけの理由だったんですね。

笑ったのが、当時、La Vanguardia紙が一面に渡って載せていた彼に対する批判の横に、「応援」みたいな感じで、彼を擁護するインタビュー記事が載っていた事。普通、そういうのって、「○○美術館館長談」とか、「○○教授語る」みたいなそれなりに社会的に認められ、美術館関連のご意見番みたいな人が擁護するのが普通だと思うんだけど、彼の場合は本当に誰にもコンタクトが無かったのか、高校の先生がインタビューされてて、その内容も、「彼はがんばり屋さんだからきっと大丈夫」みたいな、ある意味すごい内容だったのを覚えています。

それから数年。

周りのバッシングや陰口が酷かった事は想像に難くありません。彼もかなり苦労したとは思うのですが、でも、だからこそ、何とか結果を出そうとして、なりふり構わずがんばったんじゃないのかな?そしてその多大なる努力の結果が、近年の、何処の美術館にも負けていない好企画と入場者数に表れているのだと思います。去年のデータによれば、市内で唯一入場者数増加を果たしたのはピカソ美術館だけでした(地中海ブログ:世界の観光動向とカタルーニャの観光動向2008)。

このような彼のがんばりは、我々若い世代にとって非常に励みになります。何故なら僕達には、経験豊富な上の人に勝るものと言ったら「やる気」ぐらいしかないからです。(ちなみに昨日のアムステルダムミーティングではかなり凹みましたし(苦笑))でも、今回のピカソ美術館館長のように、「経験が多少無くても、そこは有り余るエネルギーでカバーできるし、それを結果に繋げる事出来る!」という所を見せてくれる例が増えてくれば、社会的にも「ココは一丁、若者に任せてみるか」という気運が高まってくるかもしれない。

今回のカンファレンスに行って、彼にはものすごい勇気をもらった気がします。
バルセロナ・ピカソ美術館の好企画展:「秘められたイメージ:ピカソと春画」その2:キュビズムの萌芽は春画にあった?に続く。
| スペイン美術 | 18:31 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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