地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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アムステルダム出張:如何に訪問者にスキマの時間を使って街へ出るというインセンティブを働かせるか?:スキポール空港(Schiphol Airport)の場合
今日は朝から、とあるプロジェクト・ミーティングの為にアムステルダムに来ています。結構大きなプロジェクトで7カ国から45ものパートナー達が集まってるんだけど、総勢60人を超える人達が一つの机を囲んで一同に会する風景はナカナカ圧巻。この大所帯を取り仕切っているのが、世界的大企業から来てる経験豊富そうな年配の方なんだけど、見てるとホントに大変そう。一人一人の意見を聞いて、互いの利害が衝突しないように役割を振り分けて行くのは職人技の域に達している。

ここ数年、大変嬉しい事に、このようなEUプロジェクトに参加する機会に多数恵まれ、その為のミーティングに呼ばれる事が多くなってきたのですが、そんなミーティングに集まってくるのは大概、各企業のプロジェクトマネージャー以上の人達なんですね。つまり各企業内で部署を取り締まっていたり、沢山の部下を使ってプロジェクトを動かしていたりするすごく忙しい人達。だからみんなミーティングは出来るだけ効率良くやって、出来るだけ早く切り上げて帰りたい訳です。そしてその際、非常に重要な問題になってくるのが、「一体何処の都市でミーティングを行うのか?」という選択です。

コレは結構難しい問題で、ヨーロッパ中からパートナーが集まってくるので、取り合えず、それらの都市と直通便が飛んでいる都市で無いとお話にならないんですね。つまり第一に考えなければならないのがコネクティビティの良さと言う訳です。次に問題になるのが、その空港で利用可能なファシリティの高さ。そうすると、選択肢が結構限られてきて、ヨーロッパの空港ランキングの上位に何時も顔を出すようなハブ空港の名前が挙がってくる事が多いのですが、僕がこの34年で経験した中で最も快適で利用回数が多かったのが、ドイツ航空のお膝元であるフランクフルト空港です。

当ブログでも何度かこの空港の素晴らしさは紹介しているのですが(地中海ブログ:フランクフルト旅行その1:フランクフルト(Frankfurt)に見る都市の未来)、世界中と繋がっているコネクティビティと言い、その規模の大きさと言い、もう言う事無し。しかも空港から市街地までは電車で15分圏内にある事から、ミーティングが早く終わった場合など、簡単に中心市街地まで行って、帰りの飛行機の登場時間ギリギリまで観光を楽しむ事が出来ます。もし仕事をしたいなら、空港内にあるビジネスルームやカフェを使う事も勿論可能。

多分このフランクフルト空港というのは世界屈指の設備とアクセッシビリティを備えた空港だと思うのですが、実はもう一つ、機能的に全く引けをとっていないと思われるのが、今回のミーティングが行われているアムステルダムのスキポール空港です。

この空港の機能性の高さは以前の記事で紹介した通りなのですが(地中海ブログ:オランダ旅行その1:スキポール空港(Schiphol)アクセッシビリティ評価)、ヨーロッパ空港ランキングナンバーワンの座を守り続けているその実力はダテではありません。ハブ空港としての世界各国とのコネクティビティに加え、空港内に整備されているファシリティの充実性も半端じゃ無い。アムステルダム国立博物館との提携による空港内美術館を始め、教会なんかまであって、もう何でもアリって感じ。勿論宿泊施設系も充実してて、今回のミーティングが行われたのは、それらの内の一つ、空港に隣接する5つ星ホテル、シェラトンホテル(Sheraton Hotel)でした。



飛行機を降り空港のメインロビーまで行くと、そこからホテルへの渡り廊下が架けられていて、ここからホテルまでは歩いて3分の距離にあります。



つまり空港の外に出る事無く、ホテルのミーティングルームまで行く事が出来ちゃう訳です。

更にこの空港の最も驚くべき点が、中心市街地とのコネクティビティです(詳しくはコチラ:地中海ブログ:)。以前書いた様に、この空港の市街地へのアクセッシビリティは欧州最高峰にあり、空港からアムステルダム中心市街地まではなんと20分弱。更に空港のメインロビーに電車の乗り口があり、空港−市街地を結んでいる電車が10分毎に出ているというから驚きも倍増です。



これだけアクセッシビリティが良いと、一日の時間の使い方の可能性が数限り無く広がるんだけど、例えば今日なんて、17時にミーティングが終わって帰りの飛行機が21時。4時間って結構微妙な長さの時間で、普通の都市だと、市街地に行くには短すぎるし、空港で過ごすには長すぎる。パリなんかだと、中心街まで行って帰ってくるのに電車やバスの待ち時間入れて2時間以上。そうすると市街地にいられるのは1時間位しかない訳で、その為に街まで行ってみようかな?という気にはナカナカならないんですね。

その点、スキポール空港の場合は市街地まで往復で40分、帰りの電車の待ち時間はほとんど無しときてるから、どんなに短い時間でも「ビールでも飲みに行くか」というインセンティブが働く訳です。

ココが非常に重要なポイントなんですけれども、都市が今後考えなければならないのは、訪問者が「実際、街に何時間居られるのか?」という事ではなくて、「街まで出てみようかな」というインセンティブを訪問者に働かせる事が出来るかどうか?なんですね。どうしてかって、都市はなるだけ多くの人に市街地に行ってもらって、少しでも多くのお金を落としてもらいたいからです。そうするには取り合えず、街まで入ってもらわなきゃお話にはならないと言う訳です。そしてこのハードルは案外高い。

そういう意味で言うと、やはりスキポール空港やフランクフルト空港はヨーロッパの諸空港に比べて頭一つ抜けている気がします。多分、今後の都市はこのような戦略を真剣に考えなければ生き残れない時代に差し掛かっているんだと思います。
| 都市アクセッシビリティ | 23:20 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
初めまして。
アムステルダムやフランクフルトと比べると、成田空港は比較の対象にもなりませんね!
| Hitomi Ojino | 2010/03/28 8:58 AM |
Hitomi Ojinoさん、始めましてこんにちは。
コメントありがとうございます。
僕、名古屋出身で、実は日本の空港は名古屋空港しか使った事が無いんです。成田とかって何時もテレビで芸能人とか出てて、すごく憧れてたんですけど、実際はイメージとはちょっと違うんでしょうか?って言うか、僕が勝手に妄想を抱いてただけなんですけどね。空港行ったら芸能人に会えるみたいな(笑)。すごく表面的でゴメンなさい!
| cruasan | 2010/03/31 6:56 AM |
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