地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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カタルーニャ美術館(Museu Nacional d’Art de Catalunya(MNAC))開館75周年記念展覧会:ドラゴンの違いに見るヨーロッパとアジアの違い
昨日はカタルーニャ美術館開館75周年記念という事で、夕方から深夜にかけてモンジュイックの丘にて様々なイベントが行われていました。ヨーロッパでは休日や特別な記念日などに、公共施設が無料になったりコンサートを開いたりする事が結構多いのですが、夜中の0時まで美術館が開館しお祭り騒ぎをしているというのは、地中海都市の特徴なのでは?と思われます。

MNAC

地中海都市の大きな特徴の一つは「公共空間とそこで行われる活動だと思う」という事は、当ブログで散々繰り返してきた所なのですが、そのような活動が発展して来た背景には、やはり「お天気」が関係しているのかなー?とか思っちゃうんですね。「そんな事、もう何十年も前にフェルナン・ブローデル(Fernand Braudel)が言ってるじゃないか!」とかいう声が聞こえてきそうですが、正にその事実を、本からの知識としてでは無く、自分の体験として蓄積し得たという点こそ、地中海に8年近く住み続けた一つの成果なのでは?と思っています。

都市構造に与えるお天気の重要性、そしてその結果としての都市における公共空間の重要性。そんなバルセロナだからこそ、公共空間を軸とした都市活性化政策が功を奏し、他国から見たら都市再生の「モデル」にまでなったというのは、何も偶然じゃ無いのかも知れません。そしてそういう意味において、バルセロナは今まで、特別な事をして来たつもりも無かったんだと思います。それを特別なものとして「発見」したのは、正に外部の視線だった訳で‥‥

あー、又話が脱線してしまった。今日書きたかったのはこの事じゃ無くて、ドラゴンの事なので、この話はまた今度。

さて、上述した様に昨日の夜は様々な催しが美術館で繰り広げられていたのですが、その中でも感心したのがコチラ:

MNAC

20時頃から始まった、美術館所蔵のお宝についてのプチ説明会。何人もの学芸員が厳選された作品の前に立ち、約15分おきに10分程度の説明をするというサービスです。市民は自分の興味のある作品の前に行き、気軽に説明を聞く事が出来ます。コレは嬉しい!

金曜日の夜にちょっと着飾ってディナーの前後に美術鑑賞。そしてそれをサポートする公共側の仕組み。こう言っちゃなんだけど、やはりコチラの人達は文化の楽しみ方・生活の楽しみ方が分かっている!そこがヨーロッパの奥の深さなのか!

さて現在カタルーニャ美術館ではConvidats d’honor Exposicio commemoratia del 75e aniversari del MNACと題するカタルーニャの歴史にまつわるお宝を集めた展覧会が開かれています。

MNAC

MNAC

ナカナカ面白い企画で、以前紹介したカベスタニーの職人(Maitre de Cabestany)が手がけたと言われているSant Pere de Rodes教会にあるCapitell de la portada occidental de Sant Pere de Rodes(地中海ブログ:ロマネスク美術と地中海:カタルーニャ、トゥールーズ、ピサ、11201180(Romanesque art and the mediterranean, catalonia, Toulouse and Pisa, 1120-1180)や、普段は商工会議所に保存されている Lucreciaによる彫刻作品、Damia Campenyなどが修復を終え、その姿を見せたりしていました。そんな中、僕の目に止まったのがコレ:

MNAC

以前紹介した、アントニ・サドゥルニ(Antoni Sadurni)によってデザインされた「サン・ジョルディ・タピストリー(Sant Jordi Tapestry(1450-1451))」と銀細工(?)の戦士の像(Sant Jordi Dempeus matant el drac(1420−1450))です。両方ともカタルーニャ第1級のお宝として、普段はカタルーニャ州政府庁舎に保存されているのですが、今回は国を挙げての展覧会という事で、こちらに移動されて来たみたいですね。モチーフは言わずと知れたサン・ジョルディの伝説、白馬に乗った王子様がドラゴンをやっつけて、捕われていたお姫様と結ばれると言う、ヨーロッパに古くから伝わる伝説です(地中海ブログ:カサ・バトリョ(Casa Batllo)とサン・ジョルディ(Sant Jordi)、地中海ブログ:サン・ジョルディ(Sant Jordi)とカタルーニャ(Catalunya、地中海ブログ:サン・ジョルディ(Sant Jordi)とカタルーニャ(Catalunya)その2)。

さて、今回どうしてこれらのお宝が僕の目を引いたのかというと、先週の上海訪問で、至る所でドラゴンを見かけた為に、自然と、ヨーロッパと中国、両者のドラゴンの違いに目が行ってしまったという訳なんですね。中国においてはドラゴンというのはとっても神聖な生き物で、ほとんど神様扱いされていました。

dragon

容姿としては、蛇の様な長―い胴体を持ち、角が生え、ヒゲをたくわえ、鋭い爪や牙を持っています。正にドラゴンボールの「神龍」のイメージ。でもそんな龍の中にもどうやら格付けがあるらしいという事が判明したのが先週の事。分かり易いのが爪の数で、数が多い程格が上らしいんだけど(最高5本)、5本爪の龍は皇帝様しか使ったらいけなかったらしいです。例えばこの龍:

dragon

「豫園」を訪れた時に見た、壁と一体となった見事なデザインの龍なのですが、よく見ると確かに爪が3本しか無いんですね。ほら:


上海博物館にあった、見事なお皿とかにも龍が描かれていたけど、どれもこれも爪の数は4本でした。

dragon

逆に皇帝様が座ったとされるこの椅子:

dragon

dragon

この龍の爪は5本。

このような龍の格付けは全く知らなかったので、一つ勉強になりました。

さて、このような中国を起源とする蛇型の龍に対して、ヨーロッパ型の龍はトカゲが二足歩行になった様な恰好をしています。丁度、ドラクエに出てくるドラゴンのイメージですね。

多分、プックリしているお腹に大量の油とかを貯めてて、それで口から火を吐くっぽい。そしてヨーロッパのドラゴンには飛ぶヤツと飛ばないヤツがいる事が分かっています。まあ、あんなにデブっちょだから、飛ぶのも大変なんだろうなー。


で、このドラゴンを、槍を持った王子様が退治する事になってるんだけど、確かにヨーロッパ型のドラゴンなら、何とかすれば勝てる気がしないでもないですよね。大きさもそんなにバカでかくは無いし(王子様が何故、ドラゴンを槍で突き刺してやっつけるのか?剣では無いのか?についてはコチラ:地中海ブログ:サン・ジョルディ(SantJordi)とカタルーニャその2

その一方で、中国系のドラゴンには絶対勝てませんね。先ず何よりデカイし、火とかは吐かなさそうだけど、多分、竜巻や雷とかは呼びますね。戦うにしても、中国系は羽根無しでも飛ぶから、空に逃げられたらもうダメでしょ。まあ、勿論、中国系の龍は神様であって、崇めたりする対象なので、退治したり戦ったりする事はないのだろうけれど。


逆にヨーロッパ系のドラゴンは何時も悪役で登場します。そして絶対にやっつけられる。だから、サイズも御手頃な人間サイズに縮まったのでしょうか?

ここは結構面白い所で、両大陸における自然に対する認識の違いが垣間見られます。つまり東洋においては、「自然」というのは人間社会の一部で、共生していく対象なんですね。

soen

だから建築とかにも、当然のごとく自然の風景を取り入れて、葉っぱの色が変わっていく様や、木々が朽ちていくその情景を時間変化として建築の要素に組み込んでいる。

その一方で、ヨーロッパでは「自然」とは人間が征服し、支配すべき対象であって、そんな論理からドラゴン(自然の表象)は何時も退治されなくてはならない対象という事なのでしょうか?

そう言えば、龍で思い出したけど、数年前に鈴木保奈美と滝沢君がやってた「ニュースの女」というドラマで、滝沢君の役名が龍だった(どうでも良い豆知識)。歴史に残る名ドラマでした(地中海ブログ:ニュースの女

| スペイン美術 | 21:55 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
Feliz Navidad!
中国と西欧のドラゴンの比較考察は興味深いですね。
日本を抜いて世界の経済大国となる勢いの中国ですが、4千年の自国の文化を否定した文化大革命後の中国はまだ文化途上のように思えます。
建築、映画など先に近代化した日本を参考にして自らの伝統文化に向かい合う時期に来ているのではないでしょうか?
| ユーイチ | 2009/12/24 8:05 PM |
ユーイチさん、Feliz Navidad!!!
上海に行って驚いたのは、何よりも先ず、都市のダイナミズムでした。中国の今が日本の高度経済成長期に良く例えられるのですが、ものすごい勢いでした。おっしゃるとおり、文化面でも、日本という好都合なモデルがいますので、同じような道を歩むものだと思われます。何はともあれ、今後、要チェックである事は間違いないですね。
| cruasan | 2009/12/27 6:43 AM |
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