地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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アレハンドロ・アメナーバル(Alejandro Amenábar)監督作品、AGORA(アゴラ)その2:リアルとフィクションについて
日曜日の新聞(La Vanguardia, 8 de Noviembre, 2009, P50)に現在スペインで公開中の映画、アレハンドロ・アメナーバル(Alejandro Amenábar)監督作品、AGORA(アゴラ)について興味深い記事が載っていました。

この映画はヨーロッパ映画史上最もお金をかけた映画というだけあって、公開初日からバルセロナの映画館には連日列を作る人が見られる程の大成功となっているのですが、今日の新聞によると、興行収入はスペインだけで2000万ユーロが見込まれ、スペイン映画久々の大ヒットになる見込みだとか(ちなみに制作費は5000万ユーロだそうです)。

この映画については以前のエントリで感想を書いておいたのですが、まあ、物語としては、ちょっとは面白いし、歴史の勉強にはなるかなー、と言った所ですね(アレハンドロ・アメナーバル(Alejandro Amenábar)監督作品、AGORA(アゴラ))。今日の新聞記事が面白かったのは、この映画の主人公ヒュパティア(Hipatia)についての、物語中のフィクション部分が指摘されていた所です。



何を隠そう僕はルネサンス絵画の完成者、ラファエロ・サンティ(Raffaello Sanzio)の大ファンなのですが、彼の大傑作の一つ、ヴァチカンの「アテネの学堂」の中に、このヒュパティアが登場します(ラファエロについてはコチラ:地中海ブログ:ラファエロ・サンツィオ(Raffaello Sanzio):アテネの学堂(Scuola d'Atene)、地中海ブログ:幸福の画家、ラファエロ・サンツィオ(Raffaello Sanzio):キリストの変容(Trasfigurazione)



黒板の様なものを片手に持ちながら、何かを必死に伝えようとしている少女がその人ヒュパティアです。

映画の中ではレイチェル・ワイズが演じているように、非常に聡明な美女として描かれているのですが、コレは全くその通りだったらしく、史実によると、彼女は相当美人であった事は間違い無いそうです。にも関わらず、生涯独身を通したのだとか。ただ、彼女が虐殺されたのは60歳だと言われていますから、映画の中にあるように、25歳とは少々違う様ですね。さらにその方法も投石ではなく、貝殻で皮を剥ぐという残忍なものだったらしい(マドリッド自治大学のElisa Garrido教授の話)。まあ、その辺は映画のストーリー構成上、ロマンチックにしたかったという事なのでしょうが。

あと、映画で描かれているようにアレクサンドリア図書館で教鞭をとっていたというのもフィクションで、実際には自分の家で塾の様なものを開き、様々な人達に教鞭を取っていたという事だそうです。

そして驚くべき事に、僕が絶対フィクションだろうなー、と思っていた場面が実は事実だという事が分かりました。その場面とは、ヒュパティアに恋をし求婚を迫る男性を断る為に、自分の生理の血を滲ませたハンカチを見せつけ、「ごらんなさい。私はあなたが思っているような清楚で完璧な人間ではありません!」と求婚を一蹴したというもの。コンスタンティンノープルのソクラテスが書いた、教会史7−15号(Historia ecclesiastrica, libro VII, 15, de Socrates de Constantinopla)の438ページに記述が残っているそうです。ス、スゲー。

日本公開は未だ未定という事なのですが、歴史好きには面白い映画かもしれませんね。
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