地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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地域通貨:人と人の信頼を構築するシステム:タラゴナ市で実験が始まるらしいです
先週の新聞に大変面白い記事(タラゴナ市が新しい通貨を発明した:Tarragona reinventa su modena, La Vanguardia, 7 de Septiembre, 2009)が載っていました。何でもバルセロナの近郊の都市タラゴナ市(Tarragona)で、その地域にしか使えないお金が発行されたとか。「え、それって、地域通貨じゃん!」と思った人はかなり鋭い。そう、どうやらタラゴナ市が地域通貨の大々的な実験に踏み切ったそうなのです。



先ずは地域通貨とは何か?と言う所から始めた方が良い気がするのですが、地域通貨とは、上述したように、その地域でしか使えないお金の事です。その地域に住む住民達が各々の信頼に基ついて創り出した、いわば手作りのお金の事なんですね。

「え、通貨って創れるの? お金って勝手に作っていいの?」とか思ってしまいますが、実は通貨を発行するのはそんなに難しい事ではありません。元々、僕達が使っているお金だって、「この紙切れをお金と呼び、価値があるものだと言う事にしよう」という、共同幻想の上に成り立っているようなものなのですから。昔、岩井克人が「貨幣論」の中で「お金とは何か?」と言う問いに、「お金とはお金であるからお金である」みたいな説明をしていたけど、そうとしか言いようが無いのがお金の正体なんですね。逆に言えば、お金とはその程度のシステムだという事です。



で、実際このような地域通貨は他にも存在するのか?というと、実は僕達が思っているよりも遥かに多くの地域通貨が世界中に存在し、有効に機能しています。その数ざっと、2800!(5年くらい前に読んだ本のデータ且つ、裏覚えなので確かではありませんが)つまり約3000近いコミュニティが独自のシステムを持ち、貨幣を流通させているようです。

一時期、日本でも地域通貨はかなりの話題になったのですが、そのブームに火を付けたのが、1999年頃にNHKで放送された、地域通貨を扱った特集番組、「エンデの遺言」(だったかな?)みたいな題名のテレビ番組だったんですね。そこでは、世界中で実際に使われている地域通貨と、その使用法、そしてその効果などが紹介されていました。

今ふと思い立って、Youtubeで探してみたら、何とありました:



Youtubeって凄い!!!
さて、その後、この番組を見た少なからぬ人達が、「私達もやってみよう」と日本各地で次々と地域通貨を生み出していく事になります。その波が最高潮に達したのが、2002年。批評空間コンビの2人(浅田彰と柄谷行人)が、NAM(New Association Movement)なるグループを立ち上げて、そこに坂本龍一なんかが加わり、結構な数の出版物などを刊行していた頃が地域通貨ブームのピークだったと思います。

どうしてこんな事を知っているかというと、実は僕は地域通貨には結構興味があって、一時期かなり調べていたからです。お隣のイタリアで使用されている、タイムダラー(自分がサービスした時間だけ、他の人から違うサービスを受けられる仕組み)だとか、アルゼンチンなどで広く使用され、90年代後半に起こった破局的な経済危機を乗り越えるのに一役買ったRGTだとか、その当時は結構興奮しながら調査していたものでした。勿論その時に、スペインの状況も調べてみたのですが、残念ながらスペインでは、地域通貨の活動はそれほど活発ではなく、バルセロナ郊外の都市ジローナ市に微かに1つだけ存在したぽっきりだったと記憶しています。

何故僕が「お金の仕組み」なんかに興味を持ったのか?というと、地域通貨は人と人との信頼を構築する道具として大変役に立ち、うまく使えば市民意識を生み出す事により、都市の活性化に役立つのでは?と考えていたからです。

話せば長くなるので深くは突っ込みませんが、この地域通貨というテーマは非常に奥が深く、面白いテーマだと思います。ココでは、一つだけ事例を簡単に紹介したいと思います。

当時の僕が非常に感銘を受けたのが、シルビオ・ゲゼル(Silvio Gesell)が開発した「劣化するお金」という考え方です。彼は確かこんな事を言っていました:

「我々は公共の交通機関を使うのに使用料を払っている。お金とは物と物を媒介する公共財であり、それを使う為には使用量を徴収すべきである。」

こんな感じの事を言い、お金に毎月一定額の使用量を課す事を彼は提案しました。コレは何を意味するかというと、お金の価値が時間と共に減っていくと言う事を意味します。つまり、長く持っていればいるだけ損するという事です。だから、人はお金を速く使おうとし、通常の通貨よりも何倍も流通が加速される事になります。「金は天下の回り物」じゃないけど、お金が流通すればするほど、その地域が豊かになり、彼が実験した地域は非常に豊かになったそうです。

このシステムはその後、「マイナス利子の通貨システム」と呼ばれたそうです。

今の僕らの貨幣システムでは、利子がプラスなので、お金は時間と共に価値を増し、その利益率を上回る収益を得られる事業にのみ巨大な投資が向けられる様になります。それが、道路や原発などが過大評価される原因なんですね。しかし、逆に、持っていれば持っている程、価値が減っていくマイナス利子の貨幣システムにおいては、人は、長期的な見通しから投資をしようと考えます。つまり、森の木を育てる事など、長期的に価値を持続出来るものに向けられる事となるんですね。(何故なら森の木は何十年も残る事になるので。)

つまり、マイナス利子のお金とは、環境を保全する機能を持つお金だと言う事が出来る訳です。

これには驚きました。世の中色んな人がいて、色んな面白い事を考える人がいるもんなんだなー、と仰天したのを覚えています。

今は猛烈に忙しいのですが、時間が出来たら、タラゴナに行って、是非地域通貨を見てきたいと思います。
| バルセロナ都市 | 08:30 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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