地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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スペインで働くという選択肢:長期滞在を見込んだ建築家の場合その3:短期滞在と長期滞在に取るべき戦略の違い
前回前々回と2回に分けて論じてきた「スペインで働くという選択肢」編も今回が結論部分です。

もとはと言えばこのような話の展開になったのは、最近、「スペインで働きたいんですー。」的なメールを沢山もらった事に起因するのですが、そのような中にも2通りの考え方の人達が居るのでは無いか?という所が出発点だったんですね。

一つ目のグループは比較的短期間の滞在(2−3年)を考えている人達で、もう一つのグループはじっくりと腰を据え、反永住みたいな勢いで考えている人達。そして僕等の蓄積した経験から、それら別々のグループには別々の戦略が必要になってくるという事がココ数年で学んだ事でした。

先ずは、両グループに共通して言える事なのですが、大前提としてスペインに3ヶ月以上滞在する為には何かしらのビザが必要になります。大きく分けてスペイン滞在用のビザは2種類。一つ目は学生ビザで、もう一つが労働ビザ。

こう言っちゃ何だけど、はっきり言って、現在のスペインで労働ビザを取る事は至難の業です。スペインでは近年、移民政策がどんどんと厳しくなり、年々ビザを許可しなくなってきているんですね。そんな中で最も一般的&スピーディーな方法はというと、やはり語学学校や大学のマスターコースなどに入り、学生ビザを申請するという方法だと思われます。(コレは未確認情報なのですが、近年の移民政策により、学生ビザでさえもナカナカ降りないという状況になってきつつあるという事を耳にしました)

そしてココこそが今日のメインポイントなのですが、短期滞在を目指している人であれば、迷わず大学のマスターコース(もしくは語学学校)を探して、ビザを申請するのが最も効率の良い選択だと思われます。そして一日も早くこっち(スペイン)に来る事(コレが大事!)。現地の情報と、日本で手に入る情報とでは雲泥の差がありますから。こっちに来て初めて分かる事なんて、幾らでもあります。逆に言うと、こっちへ来なければ分からない事が山程あるという事なんですね。

その後の戦略としては、大学の授業がある2年間の内に語学に磨きをかけ、更に就職の情報収集をしておく。授業が比較的少なくなる2年目くらいからは、どこかの事務所でアルバイトなどをしつつ、卒業と同時に労働ビザに切り替えてもらえるように交渉しておくのも悪く無いと思います(アルバイトに関しては、学生ビザの場合、賃金や時間などに制限が生まれますが、不可能ではありません。労働ビザへの変更は上述した様に、難しいと思っていた方が無難ですね)。このように2−3年の経験をヨーロッパで積んで晴れて帰国、というのが短期留学の王道かなと思われます。

さて、問題は長期滞在を考えている建築家の皆さんの場合です。この場合、何が問題かと言うと、2−3年こちらの事務所で働いた後「自分の事務所を立ち上げよう」とか、「もっと責任のある職(チーフ・アーキテクト)に着きたい」と言った場合に、建築家のタイトルを保持していない事がネックとなり、全く先に進め無いという壁に必ずぶち当たります。

タイトルを取得する為には、前回のエントリで書いた「魔のオモロガシオン」を通過しなくてはならないのですが、それははっきり言って気の遠くなるような長―い話です。(時間にして3年以上、しかも確実にタイトルが読み替えられるという保障は無い。)では、もっと巧いやり方は無いのか?というと、実はあるんです、抜け道が。

それこそ僕達が知恵に知恵を絞って考え出した結論、「タイトルが読み替えられ無いんだったら、スペインでもう一度タイトルを取得しちゃおう作戦」です。

ココからは今まで(多分)誰も試した事が無い道なので、推定の下に話を進めます。

先ず、マスターコースやドクターコースに入る事を考えるのではなくて、学部に編入するという可能性を考えます(ちなみに学部編入は誰も経験していないので、それが可能かどうか?は未確認)。同時にオモロガシオンを申請して、そこで確実に不足している授業(スペイン建築史など)を取り始めます。オモロガシオンの結果が来る頃には、結構単位が溜まって、巧く行けば卒業設計が出来るレベルに進行しているかも。事務所での経験(半年くらい)が要るけど、就職の事を考えたらアルバイトなどはWelcomeだから問題無し。という事で、2−3年でスペインの建築家のタイトルが取得出来る計算になります(ちょっと楽観的???)。でも、確実に言える事は、この道は、マスターやドクターに入りながらオモロガシオンをしていくよりも、よっぽど効率の良い方法だと言う事です。

スペインで最も大事なのは「学部のタイトル」です。幾ら、マスターを持ってたって、幾ら博士号を取得したって、学部のタイトルが無ければお話になりません。

先日、僕の親しいメキシコ人の建築家がドクターコースを終え、論文審査に通り、晴れてカタルーニャ工科大学から博士号を授与されたのですが、彼女はオモロガシオンをしておらず、スペインでの学部のタイトルを持っていなかった為、「スペインでは博士を名乗る事を許され無い」という大変理不尽な現実に直面していました。何故ならスペインでは「博士のタイトル」は「学部のタイトル」があって初めて認められるからです。

何度でも言いますが、スペインで重要なのは「学部のタイトル(Architect)」です。コレが僕達がスペインに来て以来、この数年間で身を持って学んだ事です。今後留学、もしくは就職を視野に入れてらっしゃる方は、この辺の事を良―く考えて選択してもらえればと思います。

あー、かなり書いてしまった。今日は金曜日!という事で、今からパーティーに行ってきまーす。
| 仕事 | 19:00 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
こんにちは。現在大学二年生で、住環境学科で建築を勉強しています。スペインの大学院に進学したいと考えているのですが、そもそも学部卒業を認めてもらえないのであれば、大学院への入学もみとめてもらえないのでしょうか?
大学滞在中にオモロがシオンを日本でとる方法はないのでしょうか?
| lijo | 2016/05/22 9:43 AM |
 こんにちは。初めまして。ためになる情報をありがとうございます。
 僕は現在高3で、将来スペインで建築を学び、そしてスペインで建築士として働きたいと思っています。
 建築士のタイトルを得るためには学部(grado?)に編入するという手があるということですが、master universitarioのタイトルも必要ですか?
 また、日本の学部卒業後にmaster universitarioに入る場合は、オモロガシオンは必要ですか?僕が志望している日本の大学は美大系でスペインのurbanisticaにあたりそうな単位がなく、スペイン建築史も当然ないのですが。

 よろしくお願いします。
 
| ssa | 2018/04/19 12:23 AM |
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