地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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スペインで働くという選択肢:長期滞在を見込んだ建築家の場合その1
前回の続きなのですが、今回のランチで話題に上った事の一つが、スペインでの就職事情に関する事でした。この案件は僕が最も質問を受けるタイプのもので、事ある毎に当ブログでも言及して来ましたし、各国・各都市を代表するブログを見ていても、その国における就職事情に関するエントリは頻繁に更新されています。記憶に新しい所では、つい最近、渡辺千賀さんが「海外で働いている人の体験談募集」というエントリを自身のブログで発表して、ネット界で大反響を巻き起こしたばかりです。

渡辺さんが海外体験談を募集した背景には、彼女なりの「日本はもうダメだから、みんな海外に出て働く道を探そう」という、これ又、ネット界を揺るがしたエントリ「日本はもうダメだ論」が元になっているのですが、コレは逆に言うと、それだけ、この話題に対する興味が世界的に広がっている証拠だと思うんですね(地中海ブログ:日本はもうダメだ論を読んで思った事:スペインで生活するという選択肢)。

そんな訳で、僕もスペインという異国の地で働いているものとして、何かのお役に立てればと思い、エントリ(地中海ブログ:渡辺千賀さんのOn Off and Beyondで「海外で働いている人の体験談募集」というエントリがあったので:スペインの場合)を書いた訳なのですが、その後の反響などを見ていると、どうやら状況が一昔前とは違ってきているという事に気が付き始めました。どう言う事かというと、一昔前のように、大学の奨学金などで1,2年という比較的短期の滞在で帰ってしまうのではなくて、5年、10年という大スパンで考えている人が増えてきているのでは無いのか?という感じを受けているんですね。

コレは多分、海外旅行やネットなどの急速な進化によって留学という敷居が下がった事や終身雇用形態の崩壊に伴う日本社会に対する夢や希望の喪失、隣の芝生は青く見える(現実とは決して対応していない)など、様々な要因に起因すると思われるのですが、問題はですね、短期滞在を前提とした場合と長期滞在を前提とした場合とでは、とるべき戦略が変わってくるという点なんですね。特に建築家の場合は、両者の間にものすごい開きがある為に、自分が将来何処に向かって進みたいのか?を見極めながら動く必要があるかと思われます。

今までは、このような情報は捜しても無かったし、発信する人もいませんでした。だから僕を含めた日本人建築家は、それこそ手探りで色んな事を試しながら「あーでも無い、こーでも無い」とやってきた訳なのですが、それらの過程を経て段々と「日本人がスペインの中で生きていくシステム」みたいなのがおぼろげながら見えてくるに至りました。更に上述したように、近年少しずつではありますが、スペインで働きたいという人も増えてきています。そういう人達の為に、我々先人が自身の体験を掻き集めて、それらを皆で知識として共有する事によって、後続の人達の為になるべく多くの選択肢を用意するのも、又一つの使命なのかな?と最近思うようになりました。

そんな折、今回は比較的スペインに長く滞在している建築家3人が集まったと言う事もあって、大変興味深い議論が展開されたので、少しココに記しておきたいと思います。(ちょっと長くなっちゃったので、3回くらいに分けて書きます)

先ず僕達3人に共通する事は、3人とも日本の4年制大学を卒業してからコチラへ来たという事です。つまり大学卒業の資格と「何らかのタイトル」を持っているという点が先ずは強調されてしかるべきだと言う事なんですね。ココで僕は敢えて「何らかのタイトル」と書いたのですが、ココが非常に重要。というのも(これも以前に書いたのですが)、ヨーロッパの建築家教育と日本の建築家教育にはものすごい違いがあって、ヨーロッパでは建築学科は建築学部という独立した学部に属していて、5−6年程度の学部の授業+半年くらいの実務+卒業設計を経ると、建築家のタイトル(Architect)が授与されるというシステムとなっています。

それに対して、日本の場合は建築学科は大抵工学部に属しているんですね。だから日本の建築学科を卒業した人が授与されるタイトルは「工学(Engineering)」な訳です。例外があって、それは美大系の建築学科の場合です。東京藝術大学の場合は建築学科は美術学部に属していて、授与されるタイトルは「芸術学士」。武蔵野美術大学の場合は建築学科は造形学部に属していて、授与されるタイトルは「造形学学士」だそうです(藤井香さん情報)。

ココで重要な事は、日本の建築学科を卒業した人が持っているタイトルは「建築(Architect)」では無いという点。どんなに有名な建築家でも、日本の大学を卒業した以上、彼(彼女)の持っているタイトルは「建築」では有り得ません。するとどういう事が起こるか?というと、こちらで働こうと建築事務所などに履歴書を提出した場合、そこに記されるタイトルが「建築」では無い為、取り合えず議論になります。

「あなた、建築家って言ったじゃない。でも、タイトルは「工学(エンジニア)」よね。って言う事は「なんちゃって建築家」?面白いわね、ハハハ」みたいな。

さて、ココが今日のメインポイントなのですが、スペインの建築事務所などで働こうとした場合、(つまり2−3年という比較的短期間の場合)建築家のタイトルは特に必要ではありません。現に僕達3人は今までこの問題(タイトルの問題)が原因で、就職が出来なかった、もしくは事務所から拒絶されたという事はありませんでした。(他の理由での拒絶は勿論あります)

建築家のタイトルが無いと困るのは、工事の契約にサインをしたり、建築事務所を立ち上げる時に必要だったりと、比較的長期滞在を目指している人が困難に出くわすんですね。

では、日本の建築学科を卒業した人がスペインで「建築家のタイトルあり」=「建築家」として働こうとするにはどうするのか?そういう道は我々に残されているのか?というと、勿論あります。それが、俗に言う、地獄へと通じる道「タイトル読み替え過程(Homologacion)」です。

スペインで働くという選択肢:長期滞在を見込んだ建築家の場合その2:タイトル読み替え過程(Homologacion)について、に続く。
| 仕事 | 18:24 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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