地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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Euroregion(ユーロリージョン)とカタルーニャの都市戦略:バイオ医療を核としたクラスター形成
昨日の新聞(La Vangurdia, 19 de Junio 2009)のメインは何と言っても、毎年この時期に行われるSONAR関連記事だったのですが、La Vanguardia(スペインの主要新聞の一つ)なんてこんな写真を一面に持って来ていました。



みんな踊りまくっています。夏ですね、夏!

バルセロナ現代文化センター(CCCB)とバルセロナ現代美術館(MACBA)を核として行われるこの世界最大級のエレクトロニック音楽祭には、毎年何万人もの観光客が、コンサートや関連フェスティバル目当てにバルセロナにやって来ます。でも僕が現代文化センターに居た頃(5年くらい前)は未だ、今程大きなお祭りじゃ無くて、中心街だけで細々とやっていたものだったんですね。それが何時の間にかこんなに大きなお祭りに発展してしまいました。驚き桃ノ木です。

さて、バルセロナの街はそんなこんなでお祭りムード一色なのですが、昨日の新聞の片隅(El Pais, 19 de Junio 2009, P22)にちょっと興味深い記事が載っていました。

“Montilla y Antich reactivan la Euroregion con el apoyo frances”

“Jose Montilla(カタルーニャ州政府大統領)とFrancesc Antich(Baleares州大統領)はフランスの助けを得てEuroregionを再活性化する“


と題された記事の内容は勿論、Euroregionに関する記事です。

Euroregionとは何か?っていうと、国という単位を超えてある共通の目的(環境保護、交通、研究や文化など)の為に、隣接する地域同士が国境を跨いで協力しちゃおうという、簡単に言えばまあ、そういう事です。

このようなEuroregionは欧州圏内では結構あるのですが、我らがカタルーニャの場合は2004年にスペイン側のCatalunya,Baleares,Aragonとフランス側のLanguedoc-Roussillon,Midi-Pyreneesが合意に至り、スペインーフランス間にPyrenees-Mediterranean Euroregionが設立されました。というのも、約160.000ヘクタールに広がるこのエリアは、ヨーロッパ内でも有数の人口高密度を誇り(フランスとスペインの総人口の約13%)数字にしておよそ1300万人が居住するエリアなんですね。しかも、この地域は地中海の弧の一部を形成している事から、EU内でも断トツな成長を見せている諸都市、Barcelona、Toulouse, Montpellier, Zaragozaを含んでいます。

という訳で、地域のポテンシャルとしては申し分無く、これら諸地域が一体となって「何かをしよう」と言うのは全く理にかなっていると思うのですが、問題は「一体何をするのか?」という、中身なんですね。

今日の新聞によると、どうやらこのエリア一帯を「知の集積地帯」に変えようとしているという事らしいのですが、詳細については一切記述無し。怪しい!!!何も無いっぽい(笑)。

こんな時、僕が良く例えに出すのがイギリス人、フランス人そしてスペイン人の思考の違いを良く表している以下の様な例え話。

イギリス人というのは走り出す前に「何故走るのか?」を考えてから走り出す。フランス人というのは「何故走るのか?」を走りながら考える。スペイン人というのは、「何故走るのか?」を走った後に考える。つまり、このEuroregionも(もしかしたら)「何か」をやろうとして条約とかしちゃったけど、じゃ一体何をするんだ?って事なんじゃないのかな?(笑)

とか思って、さっきチラッとウェブを見たら、「バイオ医療関連で行こう」みたいな記事を発見しちゃいました(EuroBIOtechとか言う名前も出て来た。)。バイオ医療に関してはカタルーニャは相当力を入れていて、それと関連付けるんだったら、「あー、なるほどね」とは思いますね。(カタルーニャのバイオ医療戦略についてはコチラ:地中海ブログ:カタルーニャの打ち出した新しい都市戦略:バイオ医療( BioPol, BioRegio))一先ず安心。

うーん、これを見た時僕が思った事は以下の様な事。

新聞には勿論書いてないし、そんな事多分誰も気にしていないと思うんだけど、このような各地域間連携の基礎になっているのは明らかにインフラ整備です。もっと言っちゃうと高速鉄道(AVE)が整備されなきゃ、お話にならないんですね。

上述したように、このエリアはAVEの建設が予定されている諸都市(Barcelona, Toulouse, Montpellier, Zaragoza)を含んでいます。つまりそれら諸都市は連結されるという前提の元で計画が動いているという事なんですね。更に言っちゃうと、フランス側としてはボルドー(Bordeaux)との連結も考えているに違いない。つまり、Zaragozaを拠点としてバスク地方からフランス側へと抜けるルートですね。

もしこれらが近年中に実現される事になれば、カタルーニャの思惑である「バイオ医療の世界的中心地域」という夢は満更でも無くなってくるはずです。そして「物流戦略」と対をなすこのバイオ医療が、カタルーニャの未来である事は間違いないと思われますね。
| 都市戦略 | 22:17 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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