2009.06.02 Tuesday
ヨーロッパの人身売買(Human Trafficking):スペインの場合
先々週の新聞(El Pais)に4日間に渡り「人身売買」に関する特集記事が載っていました。(Explotacion sexual en Espana, el pais, 18, 19, 20 de Mayo 2009)
今ヨーロッパでは人身売買が社会問題として大変深刻化しています。特に深刻なのが東欧などから「騙されて」連れて来られて無理矢理売春などをさせられるケース。「モデルにならないか」とか「家事手伝いなどの仕事があるから」みたいな誘い文句で女性を海外へ連れ出し、パスポートを取り上げた上で、「もし命令に従わなかったら家族を痛い目にあわす」とか脅して、無理矢理売春させる「性の搾取」が横行しているんですね。
バルセロナでも一昨年辺りから、歴史的中心地区(Ciutat Vella)のアパートに警察のガサ入れが入り、人間が住むとは思えないような酷い惨状が段々と明らかになってきています。ものすごく狭いアパートに10人とか詰め込まれて生活させられ、夜はクラブや路上で売春。稼いだお金はほとんど持っていかれ、外へ出る事も許されないという正に監獄状態。そんな事になると知っていたら彼女達も絶対に来なかったんだろうけど、彼女達には彼女達なりの騙されてしまう理由が存在します。
その一つが貧困です。ヨーロッパには僕達、平和の国で育った日本人には想像もつかないような環境で生活している人達が大勢居るんです。そういう人達っていうのは、明日のパンを買うお金にも困るような人達なんですね。田舎に住み、互いを支え合って生きている彼らは、概して家族思いであり「自分が出稼ぎに出て少しでも家族に仕送り出来るならば」という思いで甘い話(仕事の話)に乗ってしまうと言う訳です。
田舎に住んでいるが故に無知という事もあるかもしれませんが、そんな小さな町から出た事も無いような彼女達が、意を決して海外へ働きに行く事を決めてしまう、そんな所にこそヨーロッパの闇である貧困の凄まじさを見てしまいます。
これらの女性がどうやって連れてこられるか(騙されるか)というと、先ずは自分の住んでいる国の新聞などに「スペインで仕事あり」見たいな広告が載っていたり、知人の知人みたいな人から口伝えで仕事の話があったりするそうです。そしてそれらの広告を見た女性が広告主(その多くがマフィア)にコンタクトすると、広告主の方がパスポートやら、飛行機のチケットやら一切合財を親切にも手配してくれます。ココでかかったお金は、働いて後に返せば良いよと言うらしい。それらパスポートとチケットを持って、スペインに入ってくると引渡人みたいな人がスペイン側に居て、そこでいきなり驚愕の事実を知らされ、各売春クラブや路上に送られたりするという事です。数ヶ月前にスペインで放送された米国映画、Human Traffickingにこの辺りの巧妙な手口が大変分かり易く説明されていました。
この映画内では、モデルオーディションが大々的に催されて、あたかもモデル選考に通ったかのように女子高校生が他国に送られたり、若い子持ちの主婦がバーで会った男性に「他国で仕事がある」と優しく詰め寄られて、「子供の為に」と他国に出稼ぎに行くなど、その手口は本当に巧妙です。
さて、そのような、スペインへ売春目的で連れてこられる女性の出身国ナンバーワンは、El Paisによるとルーマニアだそうです。
何故か?
何故ならルーマニアは欧州連合に加盟している国である為、スペインへ入国するのにビザが要らないからなんですね。同じ様な理由からブラジルからも多くの女性が連れてこられている様です。(ブラジルもスペンン入国にはビザは要りません)
ではこのような売春クラブがスペインで一体幾つあるのか?というと、公式なデータは一切無く、スペイン全体でおおよそ2.500くらいあるのではないか?と警察当局は予想しています。新聞に載っていた公式データ、つまり警察が把握しているクラブの数が900。つまり、その3分の2が地下経済(ブラックエコノミー)という事になりますね。ちなみに、その経済規模はスペインでは毎年180億ユーロ(18.000 Millones)に上るという事です。(Informe de la Ponencia sobre la Prostitucion en nuestro Pais)
スペインでは売春は違法ではありませんが、合法でもありません。完全なグレーゾーンです。加えて、売春クラブを経営している店主の言い訳がすごい。彼らは売春を斡旋している訳では無く、ただ単に飲食店を経営しているだけ。勝手に女の子が店にやってきて飲み物を頼んで、やってきた男性と自由恋愛をしているだけで、うちには全く関係ないという言い訳。彼女達には食事やら飲み物やらを提供しているが、その代金として一日40ユーロから50ユーロを支払ってもらうらしいです。
この辺は日本も同じで、門倉貴史さんの「世界の下半身経済が儲かる理由」という、大変興味深い著書によれば、ソープランドのカラクリというのは以下のようになっているという事です:
「・・・自分たちが営業しているのは、高級感あるれる「お風呂屋さん」で、店にくるお客さんは入浴料を払って、ゴージャスな入浴を楽しんでいるだけという理屈だ。個室のなかで、何かいかがわしい行為があっても、それは自分たちの知らないお姉さんが勝手にお店のなかに入ってきて、お客さんと自由恋愛をしているのであって、自分たちの営業とはなんら関わりがない。自由恋愛なので、お店としてはいっさい干渉することができない・・・。」P42
スペインでは売春が違法ではない上に上記のような言い訳をされてしまうと、警察ははっきり言って何も出来ない。
更にやっかいなのは、お店の女の子が自分の意思で売春をしているのか、誰かに嫌々やらされているのか、その線引きが難しいという所らしいんですね。嫌々やらされている人達というのは、子供や家族を盾に脅されている場合が多いですから、警察が踏み込んだ場合ですら、素直に白状するシチュエーションには無い訳です。もっと問題なのはスペインではそれらを取り締まる法整備が遅れている事だそうです。
僕達の社会はエンターテイメント型社会へと向かって行っています。エンターテイメント型社会って何かって、娯楽やスポーツは勿論、教育や政治そして人間にとって一番大事な性すらもエンターテイメントになっていく社会の事です。そんな中では性産業というのは都市のエンターテイメント化の度合いと都市のグローバリゼーション化の度合いを計る一つの指標なんですね。(地中海ブログ:フランクフルト旅行その1:フランクフルト(Frankfurt)に見る都市の未来)それが全く良い事だとは思わないけれど、そっちの方向へ向かっていっているのは確かであり、その流れは止めようが無いと思います。
つまり、僕達の社会はもう、それらの現実を認め、直視し無い事には一歩も先へと進む事が出来ない状況まで追い込まれている訳です。
そのような現実を直視した時に出てきているのが、ヨーロッパの各国が取っている多種多様な政策であり、ココに各国の文化の違いを見る事が出来るんですね。つまり、それらを人間社会の必要悪と捉え、その存在を認めた上でどうコントロールするかという姿勢を表しているのが、オランダやドイツなどの国であり、社会にとっては望ましくないので、廃止の方向に持っていこうという姿勢を示しているのが、フランスやベルギーと言う訳です。
反対にそれら現実を直視せず、のらりくらりと議論を先延ばしにしてきた結果、犯罪の温床になっているのが我らがスペイン。スペインは未だ鮮明な自国の立ち位置を明らかにしていません。それが国際犯罪組織が目を付け、良いように弄ばれている理由です。そこは大いに非難されるべきであり、一刻も早く国としてこの問題にどう立ち向かっていくかを決めるべきだと思います。
うーん、こう考えると、今回のEl Paisの企画特集はナカナカ優れた試みだったと言わざるを得ませんね。所詮、社会労働党の機関紙だと高をくくっていたけれども、やる時にはやってくれる。見直したぞ、El Pais!
ちなみに今、El Paisに毎日付いてくるクーポン券を一ヶ月集めると、体重計が貰える為、騙されていると分かっていながらも必死に毎朝買っています(苦笑)。
今ヨーロッパでは人身売買が社会問題として大変深刻化しています。特に深刻なのが東欧などから「騙されて」連れて来られて無理矢理売春などをさせられるケース。「モデルにならないか」とか「家事手伝いなどの仕事があるから」みたいな誘い文句で女性を海外へ連れ出し、パスポートを取り上げた上で、「もし命令に従わなかったら家族を痛い目にあわす」とか脅して、無理矢理売春させる「性の搾取」が横行しているんですね。
バルセロナでも一昨年辺りから、歴史的中心地区(Ciutat Vella)のアパートに警察のガサ入れが入り、人間が住むとは思えないような酷い惨状が段々と明らかになってきています。ものすごく狭いアパートに10人とか詰め込まれて生活させられ、夜はクラブや路上で売春。稼いだお金はほとんど持っていかれ、外へ出る事も許されないという正に監獄状態。そんな事になると知っていたら彼女達も絶対に来なかったんだろうけど、彼女達には彼女達なりの騙されてしまう理由が存在します。
その一つが貧困です。ヨーロッパには僕達、平和の国で育った日本人には想像もつかないような環境で生活している人達が大勢居るんです。そういう人達っていうのは、明日のパンを買うお金にも困るような人達なんですね。田舎に住み、互いを支え合って生きている彼らは、概して家族思いであり「自分が出稼ぎに出て少しでも家族に仕送り出来るならば」という思いで甘い話(仕事の話)に乗ってしまうと言う訳です。
田舎に住んでいるが故に無知という事もあるかもしれませんが、そんな小さな町から出た事も無いような彼女達が、意を決して海外へ働きに行く事を決めてしまう、そんな所にこそヨーロッパの闇である貧困の凄まじさを見てしまいます。
これらの女性がどうやって連れてこられるか(騙されるか)というと、先ずは自分の住んでいる国の新聞などに「スペインで仕事あり」見たいな広告が載っていたり、知人の知人みたいな人から口伝えで仕事の話があったりするそうです。そしてそれらの広告を見た女性が広告主(その多くがマフィア)にコンタクトすると、広告主の方がパスポートやら、飛行機のチケットやら一切合財を親切にも手配してくれます。ココでかかったお金は、働いて後に返せば良いよと言うらしい。それらパスポートとチケットを持って、スペインに入ってくると引渡人みたいな人がスペイン側に居て、そこでいきなり驚愕の事実を知らされ、各売春クラブや路上に送られたりするという事です。数ヶ月前にスペインで放送された米国映画、Human Traffickingにこの辺りの巧妙な手口が大変分かり易く説明されていました。
この映画内では、モデルオーディションが大々的に催されて、あたかもモデル選考に通ったかのように女子高校生が他国に送られたり、若い子持ちの主婦がバーで会った男性に「他国で仕事がある」と優しく詰め寄られて、「子供の為に」と他国に出稼ぎに行くなど、その手口は本当に巧妙です。
さて、そのような、スペインへ売春目的で連れてこられる女性の出身国ナンバーワンは、El Paisによるとルーマニアだそうです。
何故か?
何故ならルーマニアは欧州連合に加盟している国である為、スペインへ入国するのにビザが要らないからなんですね。同じ様な理由からブラジルからも多くの女性が連れてこられている様です。(ブラジルもスペンン入国にはビザは要りません)
ではこのような売春クラブがスペインで一体幾つあるのか?というと、公式なデータは一切無く、スペイン全体でおおよそ2.500くらいあるのではないか?と警察当局は予想しています。新聞に載っていた公式データ、つまり警察が把握しているクラブの数が900。つまり、その3分の2が地下経済(ブラックエコノミー)という事になりますね。ちなみに、その経済規模はスペインでは毎年180億ユーロ(18.000 Millones)に上るという事です。(Informe de la Ponencia sobre la Prostitucion en nuestro Pais)
スペインでは売春は違法ではありませんが、合法でもありません。完全なグレーゾーンです。加えて、売春クラブを経営している店主の言い訳がすごい。彼らは売春を斡旋している訳では無く、ただ単に飲食店を経営しているだけ。勝手に女の子が店にやってきて飲み物を頼んで、やってきた男性と自由恋愛をしているだけで、うちには全く関係ないという言い訳。彼女達には食事やら飲み物やらを提供しているが、その代金として一日40ユーロから50ユーロを支払ってもらうらしいです。
この辺は日本も同じで、門倉貴史さんの「世界の下半身経済が儲かる理由」という、大変興味深い著書によれば、ソープランドのカラクリというのは以下のようになっているという事です:
「・・・自分たちが営業しているのは、高級感あるれる「お風呂屋さん」で、店にくるお客さんは入浴料を払って、ゴージャスな入浴を楽しんでいるだけという理屈だ。個室のなかで、何かいかがわしい行為があっても、それは自分たちの知らないお姉さんが勝手にお店のなかに入ってきて、お客さんと自由恋愛をしているのであって、自分たちの営業とはなんら関わりがない。自由恋愛なので、お店としてはいっさい干渉することができない・・・。」P42
スペインでは売春が違法ではない上に上記のような言い訳をされてしまうと、警察ははっきり言って何も出来ない。
更にやっかいなのは、お店の女の子が自分の意思で売春をしているのか、誰かに嫌々やらされているのか、その線引きが難しいという所らしいんですね。嫌々やらされている人達というのは、子供や家族を盾に脅されている場合が多いですから、警察が踏み込んだ場合ですら、素直に白状するシチュエーションには無い訳です。もっと問題なのはスペインではそれらを取り締まる法整備が遅れている事だそうです。
僕達の社会はエンターテイメント型社会へと向かって行っています。エンターテイメント型社会って何かって、娯楽やスポーツは勿論、教育や政治そして人間にとって一番大事な性すらもエンターテイメントになっていく社会の事です。そんな中では性産業というのは都市のエンターテイメント化の度合いと都市のグローバリゼーション化の度合いを計る一つの指標なんですね。(地中海ブログ:フランクフルト旅行その1:フランクフルト(Frankfurt)に見る都市の未来)それが全く良い事だとは思わないけれど、そっちの方向へ向かっていっているのは確かであり、その流れは止めようが無いと思います。
つまり、僕達の社会はもう、それらの現実を認め、直視し無い事には一歩も先へと進む事が出来ない状況まで追い込まれている訳です。
そのような現実を直視した時に出てきているのが、ヨーロッパの各国が取っている多種多様な政策であり、ココに各国の文化の違いを見る事が出来るんですね。つまり、それらを人間社会の必要悪と捉え、その存在を認めた上でどうコントロールするかという姿勢を表しているのが、オランダやドイツなどの国であり、社会にとっては望ましくないので、廃止の方向に持っていこうという姿勢を示しているのが、フランスやベルギーと言う訳です。
反対にそれら現実を直視せず、のらりくらりと議論を先延ばしにしてきた結果、犯罪の温床になっているのが我らがスペイン。スペインは未だ鮮明な自国の立ち位置を明らかにしていません。それが国際犯罪組織が目を付け、良いように弄ばれている理由です。そこは大いに非難されるべきであり、一刻も早く国としてこの問題にどう立ち向かっていくかを決めるべきだと思います。
うーん、こう考えると、今回のEl Paisの企画特集はナカナカ優れた試みだったと言わざるを得ませんね。所詮、社会労働党の機関紙だと高をくくっていたけれども、やる時にはやってくれる。見直したぞ、El Pais!
ちなみに今、El Paisに毎日付いてくるクーポン券を一ヶ月集めると、体重計が貰える為、騙されていると分かっていながらも必死に毎朝買っています(苦笑)。