地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
<< ベルリンミーティング:夏休みの取り方に見る文化の違い | TOP | バルセロナの食べ歩き方:バルセロナにおけるイタリアンNo1の呼び声高いBella Napoli >>
ノーマン・フォスター(Norman Foster)の建築再び:ドイツ国会議事堂(Reichstagsgebäude)
ベルリン・ミーティングの最終日は思った程議論が長引かず、予定より早く終わったので、帰りの飛行機までのちょっとした時間を利用して市内に繰り出してきました。搭乗時間まで2時間ちょっとしかなかったので、どうしても見たいもの一点に絞った所、ノーマン・フォスターが改修したドイツ国会議事堂を見に行く事に。

何と迷ったかって、I.M.Peiの美術館(ドイツ歴史博物館(Extension of the German Historical Museum))と死ぬ程迷ったんですね。(地中海ブログ:Berlin その1:I.M. Pei について、地中海ブログ:I.M.Pei (アイ・エム・ペイ)について





あの天才的な造詣と独特なガラスとのコンビネーションをもう一度見てみたい気もしたのですが、何を隠そうノーマン・フォスターは先日、スペインのアスツリアス王子賞(Premio Principe de Asturias de las Artes 2009)を取ったばかりで、スペインでは時の人(?)ですし、コレも何かの機会かなとも思ったりして・・・。



そんなこんなでタクシーを飛ばす事10分、目的の建築が見えてきました。重厚な石造建築を通して透明で現代的なクーポラがちらちら見えます。先ずはこの対比が素晴らしいですね。

入り口を潜るとすぐにセキュリテリチェックがあり、それを抜けるとエレベーターで屋上まで一気に運ばれます。そしてエレベーターを降りた所の風景がコレ:



ガラスのクーポラです。中に見える銀色に光っている大木が光を集め、真下の議事堂に自然光を送る仕組みになっているそうです。



更に大木の表面に取り付けられたソーラーパネルが太陽エネルギーを集め、建物全体の電力消費にも役立っているとの事。ヘェー、ヘェー、ヘェー。



このクーポラは中に入って螺旋階段をクルクル昇り、テッペンまで行く事が出来るようになっているのですが、屋上からの眺めがナカナカ爽快。ベルリン市内を一望する事が出来ます。



環境先進国のドイツらしく、国会議事堂の真上に政府が率先して環境対策を施し、更にそれを市民に教育的にアピールしている所などはさすがですね。

さて、ココで僕が思った事は次の2点。

先ず第一点目は、何と言ってもノーマン・フォスターとフォスター事務所の底力です。彼の事務所の凄い所は、天才ノーマン・フォスターが思い描く卓越なアイデアをきちんと形に出来る所ですね。そしてそのアイデアがどんなに奇抜であっても、それを陳腐に見せないだけのデザイン力がある。ここがバカトラバ、失敬、カラトラバと違う所ですね。

例えばこの建築でフォスターが思い描いたアイデアは、天井に穴を開けてそこに透明なクーポラを乗っけて自然光を取り入れ、更に太陽エネルギーも蓄えるという、言ってみれば至極単純な卒業設計にでも出てきそうな学生レベルのアイデアです。しかしですね、そのようなファースト・スケッチから今まで誰も見た事が無いような風景を創り出せてしまう所がフォスター事務所の底力です。例えばコレ:



表面はソーラーパネルで覆われているのですが、巨大な大木の如く、誰も予想もしなかったデザインに仕上がっています。

そしてその周りを取り囲んでいる螺旋階段のデザインも秀逸。もしこの螺旋階段がこれ程滑らかで無かったなら、この建築の印象は随分と違ったものになっていたはずです。近年の彼は随分と螺旋階段、もっと言っちゃうと「滑らか系」のデザインに熱を入れているようですね。こんな風に:





ロンドン旅行の時に見た、新しいロンドン市庁舎の螺旋階段のデザインです。



更に、この巨木の根っこ部分がガラス張りになっていて、真下の議事堂が見えるのですが、そこに自然光を導き入れる為のインテリアのデザインが大変優れていると思います。



さて、僕が注目する第二の点なのですが、それはこの建築が「広告」になっているという事です。

当ブログでシリーズ化している「広告としての建築論」なのですが、この建築は見事に「ドイツが環境に気を使っている国である」、「開かれた民主主義の国である」という事を表象していますよね。

どうやってか?

透明なガラス、燦燦と降り注ぐ太陽、そしてエネルギー循環などを可能とする最新テクノロジーによってです。そしてそれらを統合し、一つのデザインとして具現化したのが、建築家ノーマン・フォスターな訳です。

じゃあ、それらは一体誰にとって「環境先進国である」という事をアピールしているのか?というと、実は国外の人に向かってなんですね。そもそも、ここに来る人って誰かというと、その多くが市民ではなく、観光客な訳ですから。だからある意味、この建築は観光客の為に創られたと言っても過言ではない訳です。

国会議事堂というのは国の表象であり、その国家の国力や権力を表象している正に国家の顔です。だからどの国も出来るだけ重厚で、出来るだけ大きく、最新テクノロジーと財力をつぎ込んで建設に当たっています。

しかし今や、そのような表象すべき権力や国力といった表象内容、そして誰にとっての表象か?といった表象対象が変わって来ているように思われます。

国家や都市が今一番やりたい事、それは出来るだけ多くの観光客を自国や自分の都市に呼び込む事です。国家を表象する議事堂でさえ、そのような広告の一つに成り下がってしまったという事実がココに来ると良く分かると思います。

真の建築家であるノーマン・フォスターは、真の建築家であるが故に、本来の建築家の能力「権力の欲求を表象するという能力」を無意識下に発揮してしまいました。その結果が、国家権力の空洞化=テーマパーク化による観光客の呼び込みという現代都市の病とも言える状況を浮き彫りにしてしまったのです。

開かれた議事堂を目指したドイツでは、光の天井を通して議会が何時でも見られるようになっているそうなのですが、それを覗き見る観光客の目には、ディズニーランドで毎晩行われている「ミッキーマウスのショー」と「茶番を繰り返すドイツ議会」が、何ら変わる事無く目に映るものだろうと思います。(ちょっと意地悪過ぎるかな(笑))

フォスターによる国会議事堂はこのような我々の現代都市の一断面を見せてくれているようで、大変興味深い建築だと思います。
| 旅行記:建築 | 19:15 | comments(4) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
>cruasan様、
お久しぶり、バルサおめでとうございます。
森田さんも私の画像でコメントしています。
ありがたいです。

多分、'03の私と都さんの二人でベルリンを
訪れた時、歴史博物館が出来た頃と記憶して
います。ノーマン・フォスターの議事堂は
沢山の見物客でお待ち状態、とても数時間、
待てません。レストランを夜予約、満席で
ダメ、旧東ドイツのテレビ塔のレストランも
満席、

結局、ハイヤットの中のイタリアンレストランで
素晴らしいサービスと美味しい食事を頂きました。

ラファエル・モネオの設計とポツダム広場の再開発
がどうしても見たく、テーゲル空港とテンペルホフ
空港も利用してなつかしいです。
ヒットラーが今でもこの空港に出てきそうな所でした。

都市計画の中で素人の我々が訪問するには同時代の
スター(スーパー)アーキテクトの作品(目印)を
目掛けて、旅をする。
建築行脚が趣味になってしまった
のですね〜。

元気な活気あるドイツに再度行きたくなりました。
| mory's | 2009/05/30 3:57 AM |
mory'sさん。BCNの今週はバルサの話題で持ち切りでした。優勝が決まったのが丁度ベルリンから帰ってきた日で、飛行機から降りたのが丁度優勝が決まった時刻。デッキを運ぶ人や運搬する飛行機会社の人の喜び様で、あー、バルサの優勝が決まったんだなと気がつかされました。

フォスターの議事堂はものすごい人でした。3年前に訪れた時も確か1時間待ち。でも、並んででも行く価値がある建築ですよね。

なんだかんだ行って、ドイツには見るべきものが多いですよね。僕は未だベルリンとフランクフルトしか行った事が無いのですが、今年はもうちょっとドイツに繰り出してみようかなと考えています。
| cruasan | 2009/05/31 7:51 AM |
こんにちは。僕も一昨年、環境関係の会議でベルリンを訪れた時に、中には入れなかったのですが、この近代的なガラス張りの国会議事堂度肝を抜かれたことを覚えています。なるほど、あれは環境先進国としての主張だったのですか・・・。面白いです。
| knj | 2009/06/02 2:39 PM |
knjさん、コメントありがとうございます。

最も有効な広告というのは、それが広告だと気が付かせない、広告の振りをしない広告だそうです。ベルリンのあの議事堂は正に、「ドイツが環境先進国だ!」という事を、人の無意識下に訴えかけ、サブリミナル効果を発揮していますよね。もともと建築って、都市や権力の広告であって、その高さや大きさで国力などを宣伝してきたのですが、最近現れているのは、環境を訴えた建築です。そうする事で企業なども自分の企業が「緑の企業である」と暗黙に言っている訳です。

そういう目で見ると、見慣れた風景でも又、違った風景が現れてきて面白いですね。
| cruasan | 2009/06/03 4:45 AM |
コメントする