地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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デイヴィッド・チッパーフィールド(David Chipperfield)の建築:裁判都市(La Ciutat de la Justicia):建築間の対話による都市風景の創出
先週末1日だけ一般公開されたデイヴィッド・チッパーフィールド(David Chipperfield)のデザインによる裁判都市に行ってきました。「裁判都市とは何か?」というと、現在はバルセロナ市内にバラバラに点在している司法、裁判機能を一箇所に集め、コミュニケーションを円滑にする事によって、少しでも効率的に司法行政を行おうという試みの下に建設された都市(建築群)エリアの事です。



この裁判都市が位置するのはバルセロナ郊外のホスピタレット市(Hospitalet de Llobregat.)、丁度、伊東豊雄さんが計画されている2本の棟の目と鼻の先です。3億2,000万ユーロをかけて建設された8つの建物には、3,000人の労働者と1日13,000人の訪問者が想定されています。

先ず初めにとても巧いなー、と思った事はそのネーミングですね。ココでは「建物群」や「エリア」を創り出す事ではなくて、ある種の「都市」を創り出す事が意図されている。つまり、何にも無い郊外に求心力のある「核」を創り出すという、バルセロナのお得意の手法ですね。その証拠に、8つの建物群の一階には既にカフェやレストランなどの店舗がぎっしりと入る事が決まっています。





様々な機能が混在し、正に都市の街路、都市における街角を創出しようと試みていると言う所は、先ず第一に注目すべき点だと思いますね。

さて、そういうバルセロナ市の都市戦略、バルセロナ市にとっての「裁判都市の位置付け」というマクロな話に加えて、僕の関心はやはり「彼(デイヴィッド・チッパーフィールド)がこの建築で一体何をやりたかったのか?」という点に収束します。ずばり彼がやりたかった事、それは「異なる建物間での対話、そしてそれらが生み出す誰も見た事の無い風景」だと思います。

先ずこの建築の「物語」はココから始まります。



4つの独立した建築が重なり合い、少しずつズレる事によって、単体の建築では出現し得ない風景を演出している。これはバルセロナのスペイン広場方面から空港方面へと行く道路側から見た風景なのですが、彼は明らかにコチラからのアプローチを意識している事が分かります。



上の写真は反対側(つまり空港からスペイン広場方面)から建築群を見た風景なのですが、まとまりがあまり無い事に気が付くと思います。リズムが悪いんですね。(このようなアプローチの重要性についてはラペーニャ&エリアス・トーレスの傑作、トレドの大階段についてのエントリで書いた事と一致します:地中海ブログ:マドリッド旅行その4:ラペーニャ&エリアス・トーレス(Jose Antonio Martinez Lapena and Elias Torres)の建築その1

リズムの話をする時に僕がよく例に出すのが「キン肉マン」のオープニングの話です。僕はキン肉マンどんぴしゃ世代で、小学生の頃は毎週欠かさず見ていました。はっきり言って、「友情」とか「信頼」とか、そういう人生にとって大切な事は結構キン肉マンから学んだ気がする。

さて、オープニングにはこんな歌詞が出てきます。

私は、ドジで、強い、つもり、キン肉マーン。走る、すべる、見事に転ぶ。アー心に・・・

ココで、最初の塊は、4つのフレーズ(私は、ドジで、強い、つもり)+キン肉マーンで構成されている事が分かると思います。しかし、次のフレーズでは、「走る、すべる、見事に転ぶ」と3つのフレーズで構成されているんですね。前の規則に従うならば、「見事」と「転ぶ」が分かれ、4フレーズを構成するのが普通なのに、最後のフレーズが2つ重なり、3つのフレーズに収まる事によって、大変良いリズム感を出している事が分かると思います。

チッパーフィールドが作り出したリズムも基本的にはコレと一緒なんですね。



最初の建物(はじまり)を一番高くしておいて、段々に下げて行く。その規則に従うならば、最後が一番低くなるはず。しかしそうはせずに、3番目を一番低くしておいて、最後の締めを少し高くする事によって、アクセントを付けている訳です。一見バラバラに見える建物群でも、ナカナカ良く考えられている事が分かると思います。



更に周りを歩いてみると、如何に彼が建物の重なりによる「空の切り取り方」に気を払っているか?が分かると思います。



渡辺純さんが良く言われていた事を思い出します。「cruasan君ねー、都市スケールの建築において、何が大事かって、それは一本の線が大事なんじゃなくて、その線が端部でどう終わっているか?そしてその線が他の線とどう交わっているか?そしてそれらがどう「空」を切り取っているか?が重要なんだよ」と良く言われていました。





そしてココでは「見え隠れ」による、ある種の「奥行き」が演出されていると言ったら、あまりにも褒めすぎでしょうか(笑)。

そんな事を思いながら、先程の「物語のスタート地点」から少しずつ歩いてみます。



左手には我々の歩行を促進するかのように、緑の壁が進行方向に立ち、橙色の建物(壁)がまるでその運動を受け止めるかのように、優しく(斜め方向に)位置しているのが分かると思います。これらの二つの建物が切り取る「空」もナカナカかっこ良いですね。



そしてココでふと前をみると、エントランスが我々に向かって真正面ではなく、ハスに構えて出迎えてくれるのが分かると思います。この演出もナカナカ巧い。



緑色の建物が進行方向を向き、それを受け止める橙色の建物と一対となる事によって、自然と生まれた三角形地帯なのですが、それを上手く、斜め方向からのアプローチとして使っている事が分かると思います。



このような「斜に構える」デザインの好例は坂本一成さんがやられた住宅S、槙さんのヒルサイド、そしてジャン・ヌーベルのレイナ・ソフィアなどがあると思いますが、そういう観点から見るならば、この建築も明らかに「斜に構えるデザイン」において成功している好例だと言う事が出来ると思います(地中海ブログ:マドリッド旅行その2:ジャン・ヌーヴェル(Jean Nouvel)の建築:国立ソフィア王妃芸術センター(Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofia))。

デイヴィッド・チッパーフィールド(David Chipperfield)の建築その2:裁判都市(La Ciutat de la Justicia):内部空間に続く。
| 建築 | 19:09 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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