地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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ガウディ建築の傑作、カサ・バトリョ(Casa Batllo)その1:カサ・バトリョに展開する物語を見ていて思う事
カサ・バトリョに行ってきました。





カサ・バトリョに行くのは何と2002年以来7年ぶり!と言うのも2002年はガウディ生誕150周年に当たる年で、世界各地でガウディ祭が盛大に行われていたんですね。バルセロナではその一環として、それまで公開されていなかったカサ・バトリョが初めて一般に公開されました。しかも期間限定(その年だけ)という謳い文句と一緒に。

「不朽の名作が見れるこのチャンスを逃す手は無い」という事で、入場料がバカ高かったのですが、大枚をはたいて行った人も多かったはず。しかしですね、蓋を開けてみたら結局今でも一般公開してる。しかも高い!一般入場料が16ユーロ。バルセロナ居住者は住所証明を持っていけば特別に割引されるのですが、それでも8ユーロ!どうにかなりませんかね、この値段。救いなのは写真撮影が許可されている事ですね。これはブロガーにはうれしい限りです。

さて、カサ・バトリョについてはガウディ研究の第一人者である鳥居徳敏さんが当然の如く詳しく書かれています:鳥居徳敏:ガウディ建築のルーツ:造形の源泉からガウディによる多変換後の最終造形まで:鹿島出版会、2001年。

鳥居さんによると、ガウディがこの建築で試みた事は内部空間を「海底洞窟」、ファサードを「海面」に見立ててデザインしたとの事。

「カサ・バトリョはガウディがそれまでの情報で聞くか読むか見るかした海底洞窟や、同造形の水族館の記憶に基つく。」P203

この事を頭の片隅に置きながら建築を訪れてみると、建築体験がより豊かになって楽しさ倍増です。更に撮った写真を著作と見比べながら思い出したりすると、「そうか、あそこのデザインはこういう事だったのか!」と再発見する事が多くってとても勉強にもなります。

さて、この建築を訪れて僕が感動したのはやはり内部空間です。そしてその魅力がこの建築全体を貫いている「空間物語」。その物語の始まりがココ:



ガウディ建築の中でも抜きん出て卓越した質を持つこの空間から、この建築の物語が始まります。正に薄暗い洞窟をイメージしたかのような空間。そしてそのデザインの質の高さには驚かされます。注目すべきは階段のデザインです。



まるで一匹のドラゴンが天に昇っていくかのような見事なデザイン。そしてここがポイントなのですが、天井のデザインです。この建築には「これでもか!」と言うほど、天井のデザインに力が注ぎこまれている。



何処からが壁で何処からが天井、もしくは手すりだか判らないくらいに融解され、一体化された空間デザイン。そして天井の切り込みから違う種類の光が、まるで「おいで、おいで」と言っているかのように、我々を2階へと誘っているかのようです。

前に何度か書いたのですが、この空間を見るたびに思い出すのがアルヴァロ・シザの建築空間です。シザの建築の特徴は主に3つ。パースペクティブ的空間、アプローチ空間と天井のデザインです。これら3つがシザ建築の特徴を決めていると言っても過言では無いと思うのですが、そのシザに多大なる影響を与えたと思われる(勝手に僕が思っている)のがガウディの建築なんですね。シザはあるインタビューの中で小さい頃にバルセロナを訪れた事、そしてガウディ建築に感銘を受けた事を告白しています。(詳しはコチラ:地中海ブログ*マドリッドの都市戦略その2:アルヴァロ・シザ(Alvaro Siza)について

鳥居徳敏さんが、カサ・バトリョにおける建築デザインの由来についてこんな事を書かれています:

「・・・だとすれば、この作品はどこから生まれたのか。ガウディの想像力から、と人はいう。その想像力はどこから来るのか。想像力は記憶をベースにする、と哲学者は答える。では、その記憶はどこからくるのか。記憶は自らが過去に見、聞き、読み、体験したことに基ずく。すなわち、記憶とは自分以外の外界との接触によって体験したことの記憶である。」P203

これって、シザについてもそのまま当てはまるんじゃないのかな?シザの、あのすばらしい天井のデザイン、あの天井に対する執着は小さい頃に見たガウディから多大なる影響を受けたのではないのか?と思うのは僕だけでしょうか?

さて、そんな事を思いながら2階へと上って行きます。すると、ここで大変面白い体験をする事が出来ます。進行方向左手側の壁、つまり1階から見た時の天井部分がくねっていた事から、階段を上るにつれて2階のロビー空間がチラチラ見えたり、見えなかったりして、面白い視覚効果をかもし出しているんですね。









そして行き着いた先の空間の天井には、潜水艦の天窓を思わせる2つの丸窓がデザインされています。







その後、キノコの形をした暖炉を抜けると、この建築のクライマックス的空間であるメインロビーに行き着きます。それがこの空間:



世界一華やかな歩行者通りと言われるグラシア通りの眺めを独り占めするかのような、大変に贅沢な空間です。この空間については言いたい事は山ほどあるのですが、何か一つ挙げろと言われたら、やっぱり天井ですね。



天井全体が渦を巻いているかのような、大胆かつ美しいデザイン。



天井が溶け出す力と、それを食い止めようとする力、まるでそれらがせめぎあっているかのような、「動」と「静」を同時に表現したかのような見事なデザインです。この天井については鳥居さんがこんな事を言われています:

「大通りに面した中央サロンの彫りの深い渦巻き状に回転する天井は海底から見た渦潮を造形化したものであろう。この渦巻き天井はノーチラス号の図書室を思い出させる。ヴェルヌは、「電灯が、そのよく調和のとれた部屋全体を照らしていたが、その光は渦巻型の天井に半分ばかりはめこまれた曇りガラスの電球四個からさしていた」と書いているのだ」P205

ヴェルヌで思い出したけど、友達にビーゴ出身のスペイン人がいて、「ビーゴは何にも無いけど唯一の誇りが、ノーチラス号の資金源がビーゴ近郊に沈没した船からだった事だ」という、かなり微妙な自慢話をしていました。へぇー、へぇー、ヘェー。

それにしてもどうしてガウディってこんなにも海中や潜水艦に興味を抱いていたのでしょうか?世界で最初に潜水艦を作ったのはカタラン人のモントゥリオル(Narcis Monturiol)だという事は以前書いたのですが、やっぱりその辺りと関係があるんですかね?

ちょっと長くなってしまったので、パート2に繋げます。

ガウディ建築の傑作、カサ・バトリョ(Casa Batllo)その2:カサ・バトリョを訪れる観光客の行動に見るグローバリゼーションの一側面に続く。
| 旅行記:建築 | 23:00 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
コメント
すばらしい、そうなんだよね。階段室凄くいいよね。
階段を上がることでの高揚感みたいな物を感じるよね。
これって、カサミラも同様だよね。
あの吹き抜けと、階段のアプローチも巧みだと本当に
感じます。現代建築の失った物がある気がするのは、
ひいき目かな。素晴らしい!
ビバ ガウディ!
| プルーデンス | 2009/04/20 10:10 PM |
いやー、やっぱりガウディ、良いですよね。今回、カサ・バトリョに行ったのは何年かぶりで、普段は歩いて3分の所にあるサグラダ・ファミリアにすら行かないのですが、これを機にガウディ巡りでもしてみようかな、と思っちゃいました。
| cruasan | 2009/04/23 4:59 AM |
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