地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
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ミース・ファン・デル・ローエ・パビリオン(Mies van der Rohe Pabillion)/ バルセロナパビリオンBarcelona Pavillion:アントニ・ムンタダス(Antoni Muntadas)のインスタレーションその2
前回のエントリで書いたように、バルセロナパビリオンってものすごく視線操作が充実している且つ、溢れんばかりの透明性故に「視覚の建築」って思われがちなのですが、実は触覚でも大変に楽しませてくれるんですね。(視覚と触覚の関係と言えばアロイス・リーグルが思い起こされます。興味のある人はこちら:ミラノ旅行その5:パヴィア修道院(Certosa di Pavia)その2:アロイス・リーグル(Alois Riegl)に見る視覚・触覚と距離の問題

良く知られているようにパビリオンの建築的質に最も強い影響力を及ぼしているのが4種類の大理石です。



床や外壁を覆っている大きな大きな肌色のトラバーチン。確か槙さんと谷口さんの対談で、「もし予算が許すならばアレくらい大きなサイズの大理石を使ってみたい」みたいな事を言われていたのを思い出します。そう、ミースパビリオンの建築の質の高さの秘密は、一つにはこの均質で大きな単位の大理石パネルが寸分のくるいも無く、表面全体を覆っている事だと思うんですね。

そしてこのトラバーチンに抜群の相性なのがクロムメッキ仕上げの十字柱です。



一昨年、プラハ旅行に行った時に見たミースのチューゲンハット邸の玄関ホールにも同じ組み合わせ+半透明ガラスから降り注ぐ柔らかい光が演出されていましたが、息を呑む程の素晴らしい空間でした。(プラハ旅行:トゥーゲントハット邸(Villa Tugendhat):地中海ブログ)

ミースパビリオンの大理石と柱を見ていて思ったのですが、ミースって結構、装飾的だと思いませんか?一般には究極のミニマリストみたいに言われてるけど、柱は十字架だし・・・。赤大理石の模様、面白いですよね。同じ石をスライスしたのだから当たり前なんだけど、上下で模様が反転してる。



昔読んだ論文で、確かロザリンド・クラウスだったか誰かが、ミースパビリオンが国家を表象する建築でありながら対称軸や正面性を持たず、隠された対称性として上下対象性を持つ見たいな話しをしていました。オリジナルではそれが隠されていたのですが、復元では「無意識的に」その対象性が明らかになってしまった。

多分、コレを読んだイグナシは「一本取られた!」とか思ったのでは無いでしょうか。何故なら「無意識」は彼の十八番ですから。

さて話を戻して、巧いな!と思ったのはココ:



両隅が大理石の塊で、中間はスライスパネルです。このように両隅から厚さが2倍の大理石で中間を挟み込む事によって、コノ壁一枚全部が大理石の塊だと思わせるようなディテールになっている。ちなみに外壁も同じ仕掛けになっていますね。



さて、その他のマテリアルがこれら:



大理石の冷たく硬い感じとは打って変わった、温もりのあるカーテン。



真っ白なバルセロナチェアーは滑々した感じです。



水って透明で冷たいんだなーと言う事に改めて気が付かされます。



コレなんて、人工的に一直線に切られた石の境界をあたかも自然物が侵食しているかのようです。

さて、こんな視覚・触覚感覚溢れるパビリオンにおいて、今回のアントニ・ムンタダスによるインスタレーションは大変意表を付くものでした。というのも、彼の展示は視覚や触覚に訴えるものではなくて、嗅覚に訴えるものだったからです。





彼はバルセロナパビリオンが壊されてから(1929)再構築されるまで(1986)の間、そのプランや写真のみが亡霊のようにずーっと眠っていたアーカイブ(お墓)の匂いをパビリオン内に再現しました。そのおかげでパビリオン内は無茶苦茶カビ臭かったのですが。

これは何をしたのか?というと、死んじゃったんだけど、復活するのを待っている故人(壊され、再構築される事を待っているパビリオン)の記憶、つまり生と死の境にいる曖昧な存在を出現させたんですね。まあ、多分ヨーロッパだったらコレをキリストの復活と絡めて語る事も可能でしょうが、ちょっと深読みし過ぎでしょうか(笑)。でも、深読み出来る、もしくはしたくなるというのは、それがそうする事に値するような優れた作品だからです。

ナカナカ面白い試みだと思いました。
| 建築 | 22:18 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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