地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
スペイン住宅価格事情:2010年第一期四半期:スペイン経済どん底だけど、ちょっとは明るい兆しか?
今日のスペイン新聞各紙を賑わせている話題は何と言ってもギリシャの格付けがBB+に引き下げられたと言う話題です。で、「BB+って一体何だ?」とか思って記事を読んだら、どうやら「BB+=ジャンク等級」って事らしいですね。で、「ジャンクって何だ?」と思ってWikiを見てみると、一番近い項目で「ジャンク品」って言うのがあって:

ジャンク品(Junk) とは、自動車・オートバイ・音響機器・楽器・カメラ・家電製品・コンピュータ・通信機器・軍用 品・ラジコンモデル等において、そのまま使える見込みがないほど故障・損耗して、製品としての利用価値を失っているが、一般的には有用な構成部品を取り出して再利用できそうな物品のことを指す。

とある。

勿論、国の格付けで使われている「ジャンク」と、ココで言われている「ジャンク品」の間にはそれ相応の違いがあるんだろうけど、それにしても・・・って内容ですよね?ちなみにスペイン語で「ジャンク等級」は「
Bono Basura」と訳されています。Basuraってスペイン語で「ゴミ」とか「くず」って言う意味なんだけど、おいおい、ギリシャ、本当に大丈夫なのか??(冷汗)

さて、ここからは気を取り直して早速今日の話題に。

先週の新聞(La Vanguardia 20 de Abril 2010)にスペインの住宅価格事情に関する記事が載っていました。この所、スペインの住宅価格が下がり続けていると言う事は、当ブログで何度も言及してきた所なのですが、今回の記事によると現在の住宅価格は5年前(2005年)のレベルにまで落ち込んでいるそうです。

“El precio de la vivienda libre baja un 4,7% y vuelve a niveles del 2005”


「住宅価格は4,7%下落し、2005年と同レベルにまで落ち込んでいる」

「じゃあ、今が買い時じゃん」とか思っちゃうんだけど、実はココで一つ問題が。スペインでは不動産バブルが崩壊し、それに追い討ちをかけるようにして始まった世界同時金融危機の影響などから、スペインの銀行がローンを組むのを渋っているんですね。つまり住宅が本当に必要な人達(若者など)が銀行からお金を借りれないので住宅を買う事が出来ず、それらの層が渋々賃貸住宅に舵を切り直している結果、スペインでは現在、驚く程の割合で賃貸住宅契約数が上昇するという現象が起こっています(地中海ブログ:バルセロナ賃貸住宅事情:2009年第四期四半期)。

そんなこんなで、スペインでは販売住宅の価格が下落する事になっているのですが、2010年の第一四半期(1月、2月、3月)の住宅価格は2009年通年(1月から12月)の住宅価格と比べ4,7%下落し、今期の平均住宅価格は1.865,7ユーロ/m2となっています。まあ、それでも去年(2008年と2009年の通年比較)の下落率(6.3%)に比べれば、少しは落着いたみたいなのですが。

この住宅価格の推移に対してスペイン住宅省(Arquitectura y Politica de Vivienda del Ministerio de Vivienda)がコメントを発表してて、それによると、このような価格の下落傾向は地中海の弧地域(つまりバレンシアやカタルーニャ)にその影響がより多く認められるのだそうです。何故ならそれらの地域では、不動産バブル時にボコボコ建てられた住宅ストックが未だ売却されず、余りまくっているからです。

逆にスペイン北部では、今までに蓄積されてきた住宅ストックがそろそろ完売されそうな地域も出始めているのだとか。

ちなみにこのような住宅の売れ行きや価格の地域差というのは、世界中の国々で見られる傾向なんだけど、スペインという国の面白い所は、国内で最大価格を保持している都市が首都(マドリッド)では無いという点ですね。

スペインで最も住宅価格が高いのはサン・セバスチャン(San Sebastian)で、3.644,5ユーロ/m2となっています。ランキング上位にはカタルーニャ地方からも幾つかの都市が名を連ねてるんだけど、例えばバルセロナ(Barcelona)3.441,6ユーロ/m2、サンクガット(Sant Cugat del valles)3.328,8ユーロ/m2となっています。逆に一番安いのはHellin(772,7)Tomelloso(797)と言ったカスティージャ・ラ・マンチャ(Castilla-La Mancha)の各都市です。

さて、この様な状況に対して、APCEPatronal de los promotores y constructors de Espana)のJose Manuel Galindoがコメントを出しているのですが、それがちょっと興味深い。

“ …Los promotores empiezan a pensar en retomar la construccion de obra nueva porque el stock se esta absorbiendo en determinadas zonas de Espana”


“スペインの幾つかの地域では住宅ストックが残り少なくなってきている事から、住宅プロモーター達は住宅建設を再開する事を考え始めている。“

今日の新聞(El Pais 28 de Abril 2010)なんか見てると、失業率が遂に20%を超えて、サパテロ首相(Jose Luis Rodriguez Zapatero)がコメントを発表するなど、「スペイン経済どん底感満載」なんだけど、「建設業が再開するかも知れない」というニュースは、そんな真っ暗闇の中で、出口が無さそうな今回の迷宮の出口へと我々を誘う一筋の光の様に思えました。皆さん、あとひと踏ん張りだと信じてがんばりましょう!

追記
この記事を書いた直ぐ翌日の新聞に、スペインの格付けがAA+からAAに引き下げられるというニュースが出ていました。理由は脆弱な経済成長が予想よりも長く続く見通しであるとか何とか・・・。出口はマダマダ先なのかなー。落ち込んでてもしょうが無いので、今日出来る事を精一杯やろう!

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| バルセロナ住宅事情 | 20:04 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
バルセロナ賃貸住宅事情:2009年第四期四半期
ヨーロッパでは今週からイースター(Semana Santa)が始まり、街全体が暖かい季節に向け活気を取り戻しつつあります。何時もなら僕もこの時期は2週間程の休みを取って建築巡礼でもしているはずなのですが、今年はプロジェクトの締め切りがイースター明けに3つも重なってしまい、何処にも行けず、仕事三昧のイースターを過ごしています(悲)。勿論この借りは2倍くらいにして返してもらう予定で、来月辺り3週間くらい休みとって思いっきりバカンスを楽しんでやる!!!

さて、先週の新聞(La Vangurdia 20 de Marzo 2010)にバルセロナの賃貸住宅価格事情に関する記事が載っていました。住宅というのは我々の生活の基礎となる大変重要なインフラであり、各都市の生活の質を図る一つの指標でもある事から当ブログでは定期的に賃貸住宅価格の定点観測を行ってきています(下記、関連情報参照)。

集まって住む事を喜びとしてきた地中海都市では、都市形態をコンパクトに保って来た為に、当初から都市内における人口密度が非常に高く、必然的に住宅不足に悩まされてきたんですね。地中海都市において公共空間が発達してきた事や、今世界中で話題になっている「コンパクトシティ」が地中海都市をモデルにしている事は何も偶然ではありません(地中海ブログ:バルセロナ公共空間と歩行者空間計画、地中海ブログ:グスタボ・ジリ社( La Editorial Gustavo Gili)Francesc Munoz: UrBANALizacion: paisajes comunes, lugares globales)。

そんな中でもスペインの状況は更に深刻で、元々、住宅問題がテロや移民と並ぶ3大都市問題に取り上げられてきた上に、近年の不動産バブルの崩壊に加え、世界同時経済危機の影響から、ここの所、住宅価格・賃貸価格が不安的な増減を繰り返しています。3ヶ月毎に出るデータはその期間の特徴を良く示しているのですが、今期(2009年第四四半期)の特徴は何と言っても「賃貸住宅契約数の増加」の一言に尽きます。去年の同じ時期に比べて何と35%も増加しています。

何故か?

何故なら銀行が貸し渋りをしている為に誰も住宅を買えなくなっているからです。そしてこれこそが現在のスペインの置かれている社会経済状況を良く表していると思われるんですね。

前回のエントリで書いたように、不動産バブルの崩壊と世界同時経済危機の影響を受けて、バルセロナの住宅価格は降下傾向にあります。だから普通に考えれば、住宅購買の需要が増えて、その反対に賃貸契約数は減るというのが自然な流れだと思うんだけど、雇用状況が不安定な状態のスペインでは銀行がローンを組むのを嫌がっていると、まあ、こんな訳です。だから住宅を買いたい人は沢山いるんだけど、実際には買う事が出来ず、渋々賃貸に回るという現象が起こっているんですね。

ではこの変化はどれくらいか?というと、ここ数ヶ月の契約数の増加は2008年の同じ時期と比べて、2009年第一四半期で1.87%増加、第二四半期で10.3%増加、第三四半期で20%の増加、そして第四四半期で35%の増加となっています。(35%はすごい数字です!)

バルセロナの地区別賃貸価格変動としては、今回は全ての地区において賃貸価格が減少に回っています。最も下げ幅が激しいのがSarria/Sant Gervasi地区で、なんと10%近くも落ちています(9.88%)。それでも市内で最高価格を維持している辺りはさすがか。Horta-GuinardoNou Barris6%台の減少を示していますが、これは前回までの急激な増加の反動といった所でしょうか。反対にEixampleなどは1%以下の減少と言った所で、非常に安定していますね。全体としては平均賃貸価格は1.040ユーロ、第三半期と比べて4.2%減少したという事です。

それにしても賃貸額が月額1000ユーロを超える地区が10地区の内5地区、その他の地区もそれに近い価格を示しています。スペインの最低賃金が600ユーロ前後、30歳前後の人達の平均賃金が2000ユーロ前後である事を考えると、この価格はちょっと異常だと言わざるを得ませんね。やはりバルセロナにおける住宅問題はテロ対策並みの重要課題である事に間違いはありません。

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バルセロナ賃貸住宅価格事情その2

バルセロナ市内街区別賃貸価格リスト
街区名   賃貸価格  上昇(減少)率  平方メートル辺り賃貸価格

Sarria-Sant Gervasi   1.227,6 Euro   -9.88%,   16,7 Euro
Les corts
       1.273,2 Euro  -2.9%,   18,0 Euro
Eixample
       1.145,1 Euro   -0,8%,   15,5Euro
Gracia
        1.002,5 Euro   -4,7%,   17,0Euro
Sant Marti
       1.019 Euro   -2,3%   15,7Euro
Sants-Montjuic
    935,9 Euro   -2,4%    16,1Euro
Horta-Guinardo
    907,8 Euro   -6,5 %   14,6Euro
Nou Barris
      877,3 Euro   -6,1%   15,1Euro
Sant Andreu
      936,1 Euro    -4,0%    15,0Euro
Ciutat Vella
     988,8 Euro   -3,8%    17,5Euro

| バルセロナ住宅事情 | 20:57 | comments(3) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
バルセロナ賃貸住宅事情:2009年第三期四半期
今日の新聞(La Vanguardia, 15 de Diciembre 2009)2009年第三期四半期のバルセロナの賃貸住宅事情に関する記事が載っていました。

スペインにおいて住宅問題はテロに次ぐ最重要課題であり、それらを巡る市民の動向などを見ていると、それこそ正に戦争の様相を呈していると言っても過言では無いんですね。だから賃貸住宅を専門に扱ったIdealista.comのようなサイトが、スペインにおいて近年稀に見る大成功を収めているのも、何も偶然ではありません。これこそスペインの文化社会的な特徴を良く表している「メイド・イン・スペイン」と言えるんじゃ無いかと思います。来年の上海Expo2010も、メイド・イン・スペイン(カタルーニャ)とか宣伝したいんだったら、Idealista.comとか前面に押し出したら良いんじゃないですか?ちなみに上海では今、住宅バブル真っ最中だそうです。先週お会いした中国政府の人達もみんな、数年前に住宅を購入済みで、今その価格が23倍になってるとかで、すごい喜んでいましたし(笑)。

さて、本題のバルセロナの賃貸価格なのですが、ずばり今期の特徴は「下落」の一言に尽きます。前期の特徴が「考えられない程の上昇」だった事を考えると、全くもって住宅価格は予想出来ない動きを見せていますね(地中海ブログ:バルセロナ賃貸住宅価格事情:2009年第二期四半期)。

市内の賃貸平均価格は去年の同じ時期に比べて5.2%減少の1.053ユーロになっています(2008年第三期四半期は1.115ユーロ)。そして今回の大きな特徴として(上述した様に)グラシア地区を除く全てのエリアで賃貸価格が下落している事が挙げられかと思われます。その中でも一番下げ幅が大きいのが歴史的中心地区(Ciudad Vella)で16.7%も下落しているんですね。この地区はデータとして見ると、前回も前々回も下がってる。これはやはり、この所見られる「地区の劣化」とそれに伴う「住みにくさ」が価格に反映されてきていると言う事なのでしょうか(地中海ブログ:バルセロナの中心市街地で新たな現象が起こりつつある予感がするその1:ジェントリフィケーションとその向こう側)。市内では一番賃貸料が安いエリアであるNou Barrisも前年同時期比で10,6%の下落かー(829,52ユーロ)。

逆に上昇傾向を見てみると、前回、「信じられない程の上昇」を示し、Sarria地区から首位を奪ったLes Corts地区が、前年同時期比で4,8%の下落(1282,94ユーロ)を見せ、あっけなく2位に転落しました。そして今回首位に再び返り咲いたのが、言わずと知れたSarria地区です。前年同時期比では1%の下落となっていますが、2位のLes Corts地区に約75ユーロもの差をつけて、圧倒的な勢いで一位に躍り出ています(1357,15ユーロ)。やっぱ強いなー。さすがに山の手のお金持ちが住むエリアだけあるわ。

そしてもう一つの特徴が賃貸住宅契約数の増加です。驚くべき事に前年同時期比で契約数が20%も増加しているんですね。20%増加って、すごいですよね。都市商工会議所(Cambra de la Propietat Urbana)によると、「この数字はバルセロナにおける賃貸住宅市場が爆発的な拡大を謳歌している時期を示している(confirma el momento expansivo que vive el mercado de alguiler residencial en Barcelona)」とコメントを発表しています。

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地中海ブログ:バルセロナの住宅事情2
地中海ブログ:バルセロナ賃貸住宅価格事情と新築価格事情
地中海ブログ:バルセロナ賃貸住宅価格事情その2

バルセロナ市内街区別賃貸価格リスト
街区名   賃貸価格  上昇(減少)率  平方メートル辺り賃貸価格

平均賃貸価格1.052,98Euro -5,2% 16,01Euro
Sarria-Sant Gervasi 1.357,15Euro -1%, 16,90 Euro
Les corts 1.282,94 Euro -4,5%, 18,13Euro
Eixample 1.155,23Euro -3%, 15,90Euro
Sant Marti 1.053,10Euro -4,6% 16,10Euro
Gracia 1.013,52Euro 1,5%, 17,66Euro

Sant Andreu 945,51Euro -5,4% 14,80Euro
Sants-Montjuic 944,78Euro -4,5% 16,10Euro
Horta-Guinardo 939,96Euro -5,1% 15,53Euro
Ciutat Vella 921,65Euro -16,7% 15,32Euro
Nou Barris 829,52Euro -10,6% 14,14Euro

| バルセロナ住宅事情 | 20:50 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
ヨーロッパの賃貸向け公営住宅(ソーシャル・ハウジング)の問題
昨日の新聞(El Pais, 16 de Noviembre 2009, P36-37)にヨーロッパの住宅事情に関するちょっと面白い記事が載っていました。

スペインにおいて住宅問題はテロ問題に次ぐくらいの最重要課題だと言う事は、当ブログで繰り返し述べてきた所なのですが、今回の記事ではヨーロッパ各国の公共住宅事情が比較されていました。まあ、当然、社会的弱者の為に公的資金で住宅を建設して、格安の値段で売ったり賃貸したりするのは何処の国でも変わらないとは思うのですが、面白いのはその割合です。

先ず、各国のGDP(国内総生産)における公共住宅建設に割かれる割合なのですが、一番大きいのがフランスで1,96%。2位はオーストリアで1,7%。3位はフィンランドで1,4%。その後、チェコ(1%)、デンマーク(1%)と続きます。我がスペインは0,81%。一位のフランスと比べると2倍以上の開きがあるけど、これは、スペインが低いというよりも、むしろフランスがものすごく公共住宅に資金を当てていると見た方が正しいと思います。スペインの0,81%と言う数字は、ヨーロッパでは優等生の部類に入ります。

しかしですね、これを「売却」するのか?「賃貸」するのか?という軸で見ると、風景がガラっと変わってきます。スペインの場合、建設された公共住宅の内、なんと1%程度しか賃貸されていないそうです。市場に出回っている賃貸住宅を含めてもスペインにおける住宅全体の13,2%という低い数字が立ち上がってくるんですね。

この賃貸公共住宅1%という数字がどれくらい低いかというと、例えば、ヨーロッパで最も高い数字をはじき出しているのがオランダで35%。その次はスウェーデンとオーストリアで21%。デンマークが20%、フランスが19%、フィンランドが18%と続きます。ビリから数えると、スペインが1%で最下位。その次がルクセンブルグで2%、ポルトガルが3%、ハンガリーが4%と続くんですね。

さて、ココまで「公共住宅が賃貸されていない事が問題だ」というような口調で書いてきたのですが、実はコレが今スペインでは大問題になりつつあります。

何故かと言うと、スペインの不動産バブルで住宅価格が無茶苦茶に跳ね上がり、そこに世界同時金融危機到来→銀行がお金を貸さない→誰も住宅を買えなくなった、という悪循環が出来上がり、その結果、せっかく建てた公共住宅に誰も住む事が出来ない、言わば、空の公共住宅があちらこちらに出現する結果となった訳なんです。

こんな背景から、スペインでは公共住宅を建てるよりも、賃貸する人に補助を出す方が良いのでは?という議論が沸き起こりつつあります。どういう事か?というと、毎月、社会的弱者に400ユーロ程度の手当てを与え、賃貸料の一部に当ててもらうという政策です。

この政策はもう既に一部実行に移されているのですが、コレも問題があって、建物のオーナーが(賃貸者が政府から補助を貰っていると知ってるから)その補助分、割り増しするという問題が起こっている事が判明しているんですね。今検討されているのは、賃貸する人とオーナーに半分くらいずつの補助を与えるという方法。

住宅問題に関しては何処までいっても、ナカナカ解決が難しそうです。正に戦争の様相を呈してきていますね。
| バルセロナ住宅事情 | 19:08 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
バルセロナ賃貸住宅価格事情:2009年第二期四半期
先週の新聞(La Vanguardia, 29, Octubre 2009)にバルセロナ賃貸住宅価格情報(2009年の4,5,6月)が載っていました。住宅価格や賃貸住宅価格はその都市の「生活の質」に深く関わってくる事から、当ブログでは連続的にその変移を追ってきているんですね(下記の関連情報参照)。

しかしながら世界同時経済危機に突入する前のスペインの特殊な社会経済状況(不動産バブル)から、このところの賃貸住宅価格は上がったり下がったりと予想のつかないヘンテコな動きを繰り返していました。例えば7月に出た2009年第一期四半期をレポートした前回のエントリでは、不動産バブル時に建て過ぎた新築住宅に買い手が付かず、仕方無く「新築を賃貸」として募集した結果、市場に賃貸住宅が大量に出回る事となり、(驚くべき事に)賃貸住宅価格が下がり始めたと言う事をレポートしました。

そしてこのまま下がり続けるのかな?と思いきや、今回の報告書ではその傾向がガラリと一変しています。

先ず何と言っても特徴的なのが、賃貸住宅の需要の増加です。前年同時期比で契約数が10%も伸びているんですね。特にそれらの需要が集中しているのが、Sant Andreu地区, Horta-guinardo地区, Nou Barris地区で、それぞれ、32,1%, 26,9%, 26%ずつ伸びています。

そしてもう一つの特徴が、需要が集中している地域の賃貸価格が、考えられない程上昇を示しているという点が今期の特徴と言えるかと思われます。

今回最も変化が大きかったのがLes Cortsエリアです。記事によると前年の同時期比で15,82%も上昇しています。結果としてバルセロナ市内で平均賃貸価格が一番高い地区(1.270,91euro)に躍り出てしまいました。これはちょっと驚きで、長年首位をキープしてきたSarria-Sant Gervasi地区(1.259,19 euro)を抜いてしまったんですね。このLes Corts地区というのは、今でも地元民が多く住んでいる、市内でも比較的「村的要素」が残っている地区であり、有名なバルサの本拠地であるカンプ・ノウがあるエリアです。

もう一つ、変化が大きかったのが、Sant Andreu地区です。前年同時期比で10,16%の上昇を示し、平均価格は948,80euroになっています。Sant Andreuエリアは未だに古き良きバルセロナの村的な雰囲気を残しつつも、中心街から地下鉄一本でアクセス出来る利便さが合間って、最近バルセロナっ子に人気急上昇中のエリアみたいですね(詳しくはココ:地中海ブログ:バルセロナの活気の秘密

さて、市内全体で価格の増減エリア数を比較すると、上昇地域が6つなのに対して、減少地域が5つという結果になっています。前回のレポートでは実に9つのエリアが減少を示していた事から考えると、かなりの変化だと言えると思います。

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バルセロナ市内街区別賃貸価格リスト
街区名   賃貸価格  上昇(減少)率  平方メートル辺り賃貸価格

平均賃貸価格1.034,27Euro -0,31% 16,10Euro

Les corts 1.270,91 Euro 15,82%, 16,99Euro
Sarria-Sant Gervasi 1.259,19Euro -3,5%, 16,61 Euro
Eixample 1.170,47Euro +2,7%, 15,98Euro
Gracia 1.018,94Euro 0,3%, 17,64Euro
Ciutat Vella 980,07Euro 0,8% 17,14Euro
Sant Marti 955,7Euro -5,1% 15,90Euro
Sant Andreu 948,80Euro 10,16% 14,70Euro
Sants-Montjuic 935,80Euro 0% 16,49Euro
Horta-Guinardo 917,1Euro -2,1% 15,24Euro
Nou Barris 855,01Euro -8,53% 14,5Euro
| バルセロナ住宅事情 | 17:46 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
バルセロナ賃貸住宅価格事情:2009年第一期四半期
先週の新聞(La Vanguardia, 29 de Junio 2009)に今年最初の第一期四半期(1,2,3月)のバルセロナの賃貸住宅事情が載っていました。今年2月のエントリ(地中海ブログ:スペインの新築・賃貸住宅のドキュメンタリー (Callejeros: Alquilado, Viernes 13 de febrero a las 22h30, TV Cuatro))では、バブルの波に乗って新築を沢山建てたは良いけど買い手が付かず、挙句の果てには賃貸に変更せざるを得ない状況になっている事。そしてその結果、市場に賃貸住宅が溢れる事となり、驚くべき事に現場では賃貸住宅価格が値下がりし始めているというドキュメンタリーを報告しました。

その後バルセロナではローコスト・エコノミーの波に乗り、ローコスト住宅展覧会が開かれるなど、全体的に「新築・賃貸住宅価格が下がってきている」という空気が都市中を覆っていたのですが、その結果が数字としてはっきりと示されたのが、今回の報告書と言う訳です。

記事によると、今期の賃貸価格は2008年第四期四半期(10,11,12月)と比べて平均賃貸価格が2%(1.081ユーロから1.060,35ユーロ)の下落を示していると言う事です。都市全体として下落傾向にある中、最もその兆候が激しいのがLes Cortsで6.3%の下落(1.218,35ユーロ)。続いて歴史的中心地区であるCiutat Vellaが5.1%の下落で973,59ユーロ。又バルセロナ一の高級住宅地であるSarria-Sant Gervasiも4%の下落を示し1.304,12ユーロという結果になっています。

逆に22@BCNがあるSant Martiは1.8%の上昇で1.060,72ユーロ、セルダブロックのEixampleも0.6%の上昇で1.161,90ユーロの上昇を示しています。Sant Marti地区は22@の影響から、Eixampleはエラスモス(ヨーロッパの大学間交換プログラム)でバルセロナに来る学生達に大人気のエリアである事から上昇を示していると見る事が出来ますね。

さて、今期のデータで注目すべきは賃貸住宅の契約数の変移です。2008年の第一期四半期と比べて契約数が1.87%増加しています。そしてバルセロナにおける全賃貸住宅数の24%がEixampleに集中しているというデータも出ています。コンパクトシティの象徴とも言えるEixampleはやはり人気がありますね。

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地中海ブログ:ローコスト新築・中古住宅販売会(El salon de oportunidades inmobiliarias, Low Cost)
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地中海ブログ:バルセロナ賃貸住宅価格事情と新築価格事情
地中海ブログ:バルセロナ賃貸住宅価格事情その2

バルセロナ市内街区別賃貸価格リスト
街区名   賃貸価格  上昇(減少)率  平方メートル辺り賃貸価格

平均賃貸価格1060,35Euro -2% 16,17Euro
Sarria-Sant Gervasi 1304,12Euro -4%, 16,26 Euro
Les corts 1218,35 Euro -6,3%, 16,49Euro
Eixample 1161,90Euro +0,6%, 15,68Euro
Gracia 1009,83Euro -3,7%, 16,97Euro
Sant Marti 1060,72Euro -1,8% 16,70Euro
Sants-Montjuic 930,69Euro -2,9% 15,79Euro
Horta-Guinardo 973,81Euro +0,2% 16Euro
Nou Barris 925,39Euro -1,3% 16,32Euro
Sant Andreu 966,29Euro -0,9% 14,74Euro
Ciutat Vella 973,59Euro -5,1% 17,53Euro
| バルセロナ住宅事情 | 20:03 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
ローコスト新築・中古住宅販売会(El salon de oportunidades inmobiliarias, Low Cost)
バルセロナでは昨日から新築・中古住宅の大販売会がモンジュイックの丘、Fira Barcelonaで開かれています。住宅の販売会なんて珍しくも何とも無いのですが、この展覧会がちょっと変わっているのは「ローコスト」を全面に打ち出している事なんですね。その名もローコスト住宅販売会(El salon de Oportunidades Inmobiliarias, Low Cost)。

現在僕達の社会は何もかもがエンターテイメントになっていくテーマ・パーク化と、「命」も含めた全てのモノに値段が付き、その値段がどんどん安くなっていく「ローコストエコノミー」化が進展している真っ只中に居るのですが、今回の展覧会はその現れの一端と見る事が出来ます。(テーマ・パーク化についてはコチラ:地中海ブログ:ノーマン・フォスター(Norman Foster)の建築再び:ドイツ国会議事堂(Reichstagsgebäude)、ローコスト・エコノミー化についてはコチラ:地中海ブログ:観光とチープエコノミー:ライアンエアー(Ryanair)などの格安航空機が都市にもたらす弊害

当ブログでシリーズ化している「バルセロナ新築・中古住宅価格事情」では、バルセロナの住宅価格の変移を追跡しているのですが、それによると金融危機以降は住宅価格&賃貸価格共に下落傾向にある事が分かります。(詳しくはコチラ:地中海ブログ:スペインの新築・賃貸住宅のドキュメンタリー (Callejeros: Alquilado, Viernes 13 de febrero a las 22h30, TV Cuatro)など)

下落傾向にあると言っても、一般市民、特に若者に手が出せる程安くはなっていないというのが実情。先週の新聞にはこんな記事が載っていました:

“un joven deberia ganar 3.500 euros al mes para acceder a una vivienda libre”

“若者が住宅を購入するには、3500ユーロ/月の月収が必要である“(La Vanguardia, 10 de Junio 2009)


スペインの最低賃金が約600ユーロ、30歳前後の若者の平均月収が1500ユーロ(くらい?)を考えると、月3500ユーロの月収は若者にとっては夢の又夢なんですね。ちなみにスペインで月3500ユーロというと、大学の名誉教授クラスの月収という事になります。

今回のローコスト展覧会には朝早くから沢山の人が押し掛けたそうですが、その状況が如何にスペインでの住宅問題が深刻であるか?を物語っているようです。さすがに今回はローコストを打ち出しているだけあって、各不動産会社とも、それぞれ値引きを大々的にしているようです。平均して全体で30%前後の割引が行われているという事ですが、サロン全体で一番安かった物件はガリシア地方はLugoにある一軒家で、値段は何と15.000ユーロ!これは安い!更にバルセロナでも、一年前には全く考えられなかった、市内で200.000ユーロという物件が出始めています。

専門家によると、物件の下落傾向はそろそろ底を打つという見方が一般的だそうで、バルセロナ市内ではもう既に幾つかのエリアで価格の上昇が見られるという事です(Eixample(1%)、Montjuic(2%)など)。

早!!!この間下がったと思ったらもう上昇?人々の需要と供給が入り乱れる市場は生き物ですから、何が起こるか分かりませんね。住宅は教育や医療と並んで、都市での生活の質を確保する大変に重要な指標です。引き続き、大注目です。
| バルセロナ住宅事情 | 20:40 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
2008年通年バルセロナ新築・中古住宅価格事情
先週、スペイン国立統計局(INE)から2008年通年新築・中古住宅価格の報告書が発表されました。(El Pais, 1 de abril, 2009 p26, La Vanguardia, 1 de abril, 2009 p 56)

それによると、スペイン全体の中古住宅価格は2008年の初頭と年末との比較で10.7%下落を示しています。この数字は2007年の中間から数えた場合、約20%の下落を意味します。2007年の中間と言えば、未だスペインがバブル真っ只中でスペイン経済危機(世界同時経済危機とは違います。スペインではそれより前に既に経済危機に突入していました)の前、正に住宅価格も賃貸価格も急上昇中だった頃の事ですね。そんな絶頂期と今の状況を比べたら、そりゃ、20%下落くらいにはなるかなー、というのが僕の感じです。

その一方で新築住宅価格は少しばかりの上昇を示していて、2008年の1月から6月が1.2%の下落だったのに対して、通年では0.8%の上昇。

面白いのはこれら中古住宅価格を地域別で見た場合、最も下落が激しいのがバルセロナを含むカタルーニャで、その数字10.3%。それに続くのがマドリッドで8%の下落。その次がバスク地方の8%となっています。一番高く住宅価格が見積もられ、一番下落しているのが首都じゃ無い所がコノ国の面白い所!

昨日の新聞(La Vanguardia, 6 de abril 2009, p12, Zapatero, Obama, Barcelona)にスペインのサパテロ首相(Jose Luis Rodriguez Zapatero)とオバマ大統領(Barack Obama)の対談の内容が書かれてたけど、別れ際にオバマ大統領が、「機会があればもう一度バルセロナに戻りたい」と言ったそうです。それを聞いたサパテロ首相はオバマ大統領が過去バルセロナに来ていた事など全く知らず大変驚き、「何時でも来てください」と答えたそうですが、心中穏やかじゃ無いんだろうなー(笑)。なんでマドリッドじゃ無いんだ!見たいな。まあ、そんなマドリッドとバルセロナの意地の張り合いをしている程、彼も今は暇じゃ無いんだろうけど(スペイン政府崩壊寸前ですから)。

そうこうしていたらカタルーニャ州政府住宅局から、これまたマドリッドと競ったかのように新築・中古住宅価格の独自報告書が公表されました(La Vanguardia, 4 de abril, 2009 p7)。それによると2008年度のカタルーニャの新築住宅価格は7.3%の下落で中古に関しては8%下落しているという事です。(報告書によって数字にかなりの開きがありますが、評価するのがそれだけ難しいという事なのでしょうか?)

こちらの報告書の方はさすが地元だけあって、更に詳しく地域別の統計が載っていたのですが、バルセロナ市内ではこの下落が最も穏やかで5%に留まっています。しかしながら、バルセロナの周辺を含むエリアで見ると、コノ数字が11.2%まで上がるんですね。これはバルセロナ市内に住む人(住める人)がごく限られていて、現実としては皆市外に住み毎日市内に通勤通学しているという、バルセロナの現実を如実に物語っていますね。

世界中からコンパクトシティのお手本とされ、比較的コンパクトな都市形態を保っているバルセロナでさえも、アーバニゼーションの波は避けられないという訳です。

さて、カタルーニャで最も下落が激しい地域がVallsでその数字何と36%!続くのがCastelldefelsで23%、Gava16%、Hospitalet de Llobregat15%、Cornella14.7%となっています。その一方で未だに価格上昇を続けている地域もあって、Tarragonaが9.6%、Lleidaが2.3%となっています。

更に僕が驚いたのが、何と新築住宅を購入した家庭の月収入の内、約88%が支払いに当てられているという統計事実。88%ってちょっとすごい数字ですよね?それでちゃんと食べていけるのか?更にカタルーニャを引っ張ってきた経済モーターのどれも(観光、移民、建設)火の車状態。踏ん張り所ですね。がんばれカタラン人!
| バルセロナ住宅事情 | 19:09 | comments(1) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
バルセロナ賃貸住宅価格事情:2008年第4四半期:賃貸住宅価格下落
今日の新聞(La vanguardia, P1-3, 23 de marzo 2009)に第4四半期(10,11,12月)におけるバルセロナ賃貸住宅価格事情が載っていました。スペインが置かれていた特殊な経済社会的事情から、この所バルセロナの住宅価格が激しく変動しているんですね。特に世界同時経済危機以降の動きはちょっと尋常じゃありません。上がったり下がったり・・・。

先ず、2008年第1四半期(1,2,3月,2008)の価格変動の特徴は「それまでうなぎ昇りだった賃貸住宅価格に陰りが見え始めた」でした。前年同時期比で2%の減少だったんですね(バルセロナ賃貸住宅事情と新築価格事情:地中海ブログ)。バブルの様相を示していたスペイン経済も、ようやく沈静化するのか!と思われた矢先、続く第2四半期(4,5,6月,2008)には状況は一転、価格は又上昇(前年の同時期比で10%)を示していました(バルセロナ賃貸住宅価格事情その2:地中海ブログ)。

何故かというと「世界経済危機」の前に既に訪れていた「スペイン経済危機」によって、あまりにも馬鹿げた住宅価格に国民が着いていけなくなり、「買う」よりも「借りる」方に国民の意識がシフトしたからでした。(ちなみに今日の新聞記事によると、賃貸住宅契約数は前年比で13.5%上昇しています。)

そしてココで何が起こったのか?というと、それまでバブルに乗って作り続けてきた大量の新築住宅が全く売れなくなって、「モノ余り状態」になったんですね。スペインが特殊だったのは、その新築住宅余りの個数が尋常じゃなかった事です。なんてったって、バブルでしたから。そこで困ったのが不動産屋さん達。もうどうしても売れない状況の中、少しでも元を取ろうと知恵を絞って考え出したのが、新築を賃貸として貸し出してはどうか?という案。こうして大量の賃貸住宅が賃貸市場に出回る事になりました。

その結果、信じられない事に、賃貸住宅価格が下がるという、半年前には夢にも思わなかった事態が起こってきつつある、という事をレポートしたのが前回のエントリでした(スペインの新築・賃貸住宅のドキュメンタリー (Callejeros: Alquilado, Viernes 13 de febrero a las 22h30, TV Cuatro:地中海ブログ)。

そんな経緯があるものだから、今回の発表は長い事心待ちにしていたんですね。

先ずバルセロナ市全体で見た時の平均住宅価格なのですが、前年同時期比で3.8%の上昇を示しています(平均価格は1081.32ユーロ,16.18ユーロ平方メートル)。この価格変動は勿論、「上昇」であって、「下降」では無いのですが、これは第3四半期の上昇率が10%だった事を考慮すると、この数字は「たった3.8%の上昇」と読まれるべき数字です。都市財産会議所(巧い翻訳が出来ない!)はコノ変化を「それまで上昇を続けていた市場傾向の変化」と見なしています。

「都市財産会議所の四半期報告書は(賃貸住宅価格の)それまでの傾向の変化と、賃貸住宅の更なる需要があるにも関わらず、価格は下がる事を予想している」

” El informe trimestral de la Cambra de la Propietat Urbana de Barcelona augura un cambio de tendencia y que los precios se vayan “ deshinchando pese a la fuerte demanda de viviendas de alquiler”


この傾向は通年比で見た時にも大変顕著で、インフレ率(1.4%)を除いた2008年の実質価格の上昇率は前年比で5.6%。これは2007年の前年比実質価格の上昇率が9.42%であった事を考えるとかなりの減少だと言えると思います。コレを通年賃貸平均価格で見ると、2007年を通した平均賃貸価格が992ユーロであったのに対して、2008年を通した平均賃貸価格は1062ユーロ。つまり7%の上昇です。そして今年最も上昇率が激しかったエリアがCiutat Vella, Horta, Nou Barriだという事です。

逆に、今期の特徴を地区別で見た時に最も特徴が見て取れるのが、Sant AndreuとHorta-Guinardoです。前年同時期比でSnat Andreuは10%、Horta-Guinardoは10.6%の上昇を示しています。そして今回、唯一の下降を示しているのがSant Martiでマイナス0.4%。Sant Martiといえば22@が位置している街区であり、新築住宅がボコボコと建っていた所。と言う訳で下がって当然か。あと、歴史的中心地区であるCiutat Vellaが今回1000ユーロの大台を突破した事によって、市内全体で見た場合、1000ユーロ突破地域が7地区となりました。

予想によると今年最初の四半期では、この価格降下がもっと顕著に見られるはずだという事です。

バルセロナ市内街区別賃貸価格リスト
街区名   賃貸価格  上昇(減少)率  平方メートル辺り賃貸価格
Sarria-Sant Gervasi 1359.21Euro 4.3%, 17.90 Euro
Les corts 1300.80 Euro 8.5%, 18.50Euro
Eixample 1154.41Euro 2.5%, 15.68Euro
Gracia 1048.97Euro 1.3%, 17.76Euro
Sant Marti 1041.51Euro -0.4% 16.64Euro
Ciutat Vella 1026Euro 8.5% 18.15Euro
Sant Andreu 975.68Euro 10% 15.09Euro
Horta-Guinardo 971.78Euro 10.6% 15,87Euro
Sants-Montjuic 958.57Euro 0.3% 16.27Euro
Nou Barris 937.75Euro 9.6% 16.62Euro
| バルセロナ住宅事情 | 22:06 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
スペインの新築・賃貸住宅のドキュメンタリー (Callejeros: Alquilado, Viernes 13 de febrero a las 22h30, TV Cuatro)
先週の金曜日の夜(2月13日)の事だったのですが、何気なくテレビ(スペインチャンネル:Cuatro)を見ていたら、バルセロナとマドリッドの新築・賃貸住宅関連のドキュメンタリーを放送していました。(Callejeros: Alquilado, Viernes 13 de febrero a las 22h30)

個人的にスペインの住宅事情にはとっても興味があるので、当ブログでは事ある毎に新築住宅価格や賃貸住宅価格の推移などをレポートしてきたんですね。(バルセロナの住宅問題バルセロナの住宅事情2バルセロナ賃貸住宅価格事情と新築価格事情バルセロナ賃貸住宅価格事情その2:地中海ブログ)

それによると、去年の第二四半期(4,5,6月, 2008)の特徴は賃貸住宅価格の上昇でした。前年の同時期比で10%の上昇を示していました。上昇の理由は、スペイン不動産業の崩壊(世界経済危機よりも前)に伴って、それまでバブルの様相を呈し、飛ぶように売れていた新築住宅がさっぱり売れなくなった事に起因すると考えられていました。あまりにも馬鹿げた住宅価格(実質価格の30%増し:EU調査委員会のレポート)と、国民の間に広がった停滞感が住宅を「買う」という選択よりも「借りる」という選択の方にシフトさせたんですね。

今回のドキュメンタリーでは世界同時経済危機後の、スペインを取り巻く住宅事情がレポートされていたのですが、ココに来て状況は又一変していると言う事が報じられていました。

今回の経済危機によって、国民が新築住宅に手を出さなく(出せなく)なっているのは、多分何処の国も状況は同じだと思うのですが、スペインが他の国と一線を画するのは、スペインでは経済危機に入る前は経済的バブル状況が続いており、それを引っ張っていたのは不動産業だったと言う事だと思います。当時はそれこそ破竹の勢いで新築住宅がどんどんと建設されていたんですね。しかしながらその後、経済危機が訪れ、皆、高い買い物は避けるようになりました。

その結果、今の状況はと言えば住宅余り状態。新築を建てたのは良いけど、買い手がさっぱり無いという状況です。そんな中、不動産屋が講じた手段は、それら新築を賃貸にして少しでも収入を得ようという、正に背水の陣的戦法。更にその後、その賃貸住宅を購入したい人には特別価格で売るという、スーパー特別セールまで展開する不動産屋も現れる程。それほど、スペイン不動産業は切羽詰まっていると言う事です。

さて、このような新築住宅余り状況が引き起こしたのは、興味深い事に大量の賃貸住宅の供給でした。その結果、驚くべき事にスペインの賃貸住宅価格が下がってきています。そのドキュメンタリーに登場していた不動産屋によると、平均約20%下がっているとか。一昨年や去年までだったら、2部屋+居間+キッチン+バスルームでそれなりの大きさ(60-90平方メートル)の物件を探そうと思ったら、1200-1500ユーロは当たり前だったのが、最近、1000ユーロを切っても、このクラスの物件が出てきています。

今年の第一四半期の発表はまだ先の事になると思うのですが、ちょっとすごい事になってそうな予感がします。
| バルセロナ住宅事情 | 21:25 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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