2016.03.23 Wednesday
タイムアウト(TIMEOUT)誌がリスボンで面白いビジネスを展開している件
ポルトガルの某機関から「ビックデータ・オープンデータ系の講演会を企画してるんだけど、そこで基調講演してくれない?」ってお誘いを受けたので、復活祭(イースター)のバカンスも兼ねて、数日前からリスボンに来ています。
当ブログの読者の皆さんにはご存知の方も多いかと思うのですが、僕は以前、「アルヴァロ・シザの建築を根幹から理解したい!」という理由からオポルト(Porto)に1年弱住んだことがあります(地中海ブログ:アルヴァロ・シザ(Alvaro Siza)のインタビュー記事:シザ建築の特徴は一体何処からきたのか?)。
←あの一年があったからこそ、モビリティとかビックデータとか、建築や都市とは一見関係が無さそうな分野を扱っている今でさえ、建築や都市から離れず、寧ろ「建築側から見た新たな視点を発見する」という立ち位置を保ち続けられているのかな、、、と、そう思います。
オポルトに住んでた時は結構頻繁にリスボンにも行ってたんだけど、あれから10年近く経ち、シザが改修したチアド地区の工事も終わり、その周辺一帯は歩行者空間化の影響からか、かなり賑わいを取り戻している様に見えます。
また市内には以前は無かった電気自動車のチャージング場所や、100%電力で走るチョイモビ(公共交通機関(バス)とタクシー(私的)の間)みたいな乗り物が、リスボンの象徴とも言える黄色い路面電車の合間を縦横無尽に走っていたりして、「あー、結構変わったなー」と思うところも多々。
かと思えば、目抜通りから一本裏通りに入っただけで近隣住民の生活が至るところに垣間見えたりと、以前と全く変わらない風景に少し安心感を感じてしまったりもするんですね。
←こういういつまで経っても変わらない街角の風景こそ、その人のアイデンティティを形成する非常に重要なファクターだったりするということは以前のエントリで書いた通りです(地中海ブログ:バルセロナ・オープンハウス2013:その地域に建つ建築(情報)をオープンにしていくということ)。
…変わっていくこと、変わらないこと…これら相反する2つの力学が共存している存在、それこそ我々が興味を惹かれて止まない「都市というものの本質」なのかもしれません。
さて、冒頭に書いたように今回はビックデータ・オープンデータ系のカンファレンスに登壇することがメインだったんだけど、その合間を縫って「久しぶりにリスボン周辺のシザ建築でも見て回るか」と思い付き、幾つかの建築を訪れてきました。それらについては次回以降のエントリで詳しく書き綴っていくこととして、今回のエントリでは「リスボンの食」について少し書いてみたいと思います。まずは今回連れて行ってもらったレストランの中から特に印象に残ったこちらから:
Name: Casa do Alentejo
Address: Rua Portas de Santo Antao 58
Tel: +351213405140
Email: geral@casadoalentajo.pt
今回招かれたカンファレンスの司会者や登壇者の人たちと事前打ち合わせを兼ねたランチで連れて行ってもらったレストランなんだけど、場所はリスボンのど真ん中、フィゲラス広場から歩いて5分くらいのところに位置しています。言われなければ絶対に通り過ぎてしまうほど小さい入り口なので、まさかこの中にレストランが入っているなんて想像もつきません。だって入り口、これですよ↓↓↓
で、この小さいドアを開けて階段を登っていくと現れてくるのがこの風景:
じゃーん、外からは全く想像が付かないかなり立派な中庭の登場〜。更に階段を登っていくと、こんなに広いパーティー会場まであったりします:
最初はワインで乾杯してから魚介のスープ(前菜)、そして今日のメインはこちらです:
タコの雑炊(Arroz de Pulpo)。魚介の出汁が良く効いていて絶品。文句なく美味しい!
他の登壇者達は、豚肉とアサリの組み合わせっぽいものやタラのオーブン焼きなんかを頼んでて、「味見してみる?」って聞いてくれたので、一口食べさせてもらったらんだけど、どれも素晴らしかった!
デザートには手作りプリンを注文。で、これだけ食べて、これだけ飲んで(赤・白ワイン5本)、一人当たりたったの10ユーロ!!これです!これこそポルトガルの醍醐味の一つなんですね。
ポルトガルでは非常に美味しい料理が、非常にお手頃価格で今でも満喫出来てしまうのです。いき過ぎた観光化の弊害で物価が急上昇しているバルセロナでは、これはもう夢のまた夢。というか、なにも考えずに「観光客来い、観光客来い!」と叫んだ結果、観光客が来過ぎてしまった弊害だということは、以前のエントリで書いた通りです(地中海ブログ:観光MICEとオープンデータ:2020に向けて、バルセロナの失敗の学ぶ、データ活用による都市観光の未来)。
初日からかなり良い感じのリスボン滞在だったんだけど、今回の滞在中に訪れたカフェでもう一軒、どうしても日本の皆さんに紹介したいカフェがあってですね、、、それがこちらです:
Name: Landeau Chocolate
Address: R. das Flores, 70 1200-195, Lisbo
email: chiado@landeau.pt
Tel: 911810801
シザが最近リフォームした集合住宅(Complejo Residencial y Comercial Terracos de Braganca)から道一本西側に行ったところにあるんだけど、ここのチョコレートケーキは絶品だった。こちらは自分で調べたわけではなく、登壇者の一人(ポルトガル人)に「リスボン市内で何処か美味しいお菓子屋さん(カフェ)知らない?」って聞いたらここを教えてくれました。
青いタイルが非常にオシャレな外観で、室内はこれまたレンガ素材がそのまま仕上げ材となっていて、建築としてもかなり良い感じに纏まっています。メニューは「コーヒーとガトーショコラしかない」っていうかなり強気な経営方針なんだけど(笑)、騙されたと思って頼んでみたら、これが素晴らしかった!
(基本的に)建築もそうなんだけど、料理というのはその地方の文化や気候、素材などに非常に影響を受けている「芸術」なので、「なにを美しいと思うか」、「なにを美味しいと思うか」はそこに展開している文化圏を考慮すること無しには判断出来ません。だから例えば、ポルトガル人には美しいと思える芸術品が、日本人にとってはゴミ同然に見えるものなんて山ほどあるし、その逆もまた然り。だからこそ文化というのは面白いのだと思うし、ぼくは建築を評価・批評する時は、その様な枠組みを超えた「もう少し普遍的な視点から批評したいなー」と強く思いつつも、その難しさを十分に実感しているつもりなんですね。
ちょっと長くなってしまいましたが、単純化して言ってしまうと、西洋文化圏での評価軸と日本文化圏での評価軸にはかなりの違いがあり、(料理に関して言うと)味付けの好み(文化)が違うことなどから、双方の口に合うものを見付けるのはなかなかに骨が折れると、そういうことを言いたいのです。というか、そういうお菓子に出会うことは極めて難しいというのが現実だと思います。
しかしですね、今回訪れたこのカフェで提供されているガトーショコラは地元ポルトガルでも非常に評価が高いそうなのですが、これは間違いなく日本人の口にも合います。最近日本で流行っている、テレビ番組の撮影の為に海外の有名レストランや有名パティシエの経営するカフェを訪れ、砂糖がたっぷり入った甘いだけのデザートを持ち出して、「な、なにコレー、超美味しい〜」なんて言ってるデザートとは格が違います。その様な砂糖三昧の甘ーいお菓子は、その土地では評価されているのかもしれませんし、その地方の人々にとっては最高のお菓子なのかもしれません。しかしそれが日本人の口に合うかどうかは全くの別問題なのです。なので、いくら海外で有名なお店の商品だからといって、それがそのまま日本人の味覚からして「超美味しい〜」なんてことになるのは寧ろ稀だと思うんですね。だからこそ、もしリスボンに来たらこのお店のガトーショコラは絶対に試す価値があると思います。
そしてデザート系ではもう一軒。日本でもエッグタルトという名前で数年前に大流行したポルトガル発のお菓子パステル・デ・ナタ(Pastel de Nata)の本家本元。
Name: Pasteis de Belem
Address: rua de Belem 84-92
Tel: +351213637423
Email: pasteisdebelem@pasteisdebelem.pt
リスボン市内から路面電車(15番)に揺られること約30分、世界遺産で有名なジェロニモス修道院(Mosteiro dos Jeronimos)の目の前にあるお菓子屋さんなのですが、1837年の創業以来、ジェロニモス修道院から伝えられた配合と作り方を頑なに守り通している「オリジナルが食べられる」とあって、世界中からここのお菓子を一口食べようと連日長蛇の列が出来ています。
しかしですね、このお店の注文方法には裏技があって、(それを知らない人は店頭に何十分も並んで買っているのですが)このお店は奥行きが非常に深く、奥には広々としたテーブルが並べられ、ゆったりと座れる空間が用意されているんですね。
で、勿論そっちはガラガラ。なので、ここを訪れる方は是非そちらへ移動して、コーヒーと一緒に食されるのが良いかと思われます。ちなみにそちらへ移動する途中にはお菓子を作っている工程を見ることも出来ちゃいます。
そんなこんなで、出てきたのがこちら:
じゃーん。これが正真正銘のPastel de Berenでーす。
お好みで粉砂糖とシナモンパウダーを自分で振りかけて食べます。その感想なのですが、、、
こ、これは、、、むちゃくちゃ美味しいぞー!パステル・デ・ナタはいままで様々な場所で食べてきましたが、こんなに美味しい一品は初めてです!焼きたてなので中のクリームがホカホカなのは当たり前なのですが、外の生地は本当にパリパリ。いや、これは本当、どうやったらこんな風に焼けるんだろう???世界中から歓呼客が押し寄せるのも納得です!
そしてですね、今回のリスボン滞在で一番驚いたのがこちらです:
な、なんと、タイムアウト(TimeOut)がコーディネートしたフードコートがリスボンには存在するんですね。
1968年にロンドンで創刊されたタイムアウト誌は「シティガイド」として、現在では世界40都市(35カ国)で11の言語に対応し発刊されています(wikipediaより)。日本語版も普及していることなどから、その存在を知っている人も多いかと思いますが、ヨーロッパではこのタイムアウト誌は書店というよりは路上のキオスコなどで新聞の横に並べられ売られていて、ヨーロッパでは、ロンリープラネットなどと共に、その都市に関する「主要な情報源の一つ」という地位にまで登り詰めています。
「では、なぜタイムアウト誌がこのような地位を築くことが出来たのか?」。それについては様々な要因が考えられると思うんだけど、その一つは、その都市についてかなり地域密着型でありながらも、グローバルな展開を強く意識していること(言語は勿論英語で発刊)、そして都市に関して様々なトピックを取り上げつつ、それをランキング形式で随時発表しているなどのゲーム感覚で楽しめる形式・企画があるのかな、、、と思ったりします。かく云う僕も、「バルセロナで最も美味しいクロワッサン特集」みたいなのが組まれていたりすると、ついついその特集号を買ってしまい、それを片手にクロワッサン巡りをしてしまうんですね。で、こういう人って意外と多いのです!
今回リスボンへ来てみて僕が驚いたのは、これら都市の情報を様々な角度から集めていたタイムアウト誌が、今度はなんと、現在は使われなくなった古い市場(1892に開店したリベイラ市場)を市役所から買い取り、そこを市内でも有数の観光スポットに改修することによって地区活性化の起爆剤にしようとしているという点なのです!
←タイムアウト誌が本当にそこまで考えているのかどうかは僕にとっては特に重要ではなく、僕の眼から見ると「そういう文脈で読める」ということが重要なのです。
体育館のようなだだっ広い空間の真ん中には、おしゃれなテーブルと椅子が並べられ、その間にはビールやワインなど飲み物を注文するスペースが備え付けられています。室内に500席、テラスには250席が設えられているそうです。営業時間は日曜から水曜までが朝10時から24時まで、木曜日から土曜日までは朝10時から深夜2時までやっているというから、観光客にとっては嬉しい限りです。
で、それを取り囲むように、独立店舗を基本としたお店がグルーっとお客さんを取り囲むという形式を取っているのですが、それら独立店舗にはハンバーガー屋さんや寿司屋さん、シーフードを目の前で調理してくるお店から伝統的なポルトガル料理を出すお店まで本当に多彩なお店が揃っているんですね。
また、アイスクリーム屋さんやカフェ、ご丁寧に観光客向けのお土産屋さんまで揃っているという徹底ぶり!これらお店のチョイスには(当然のことながら)タイムアウト誌が独自に選んだランキングがかなり影響していて、そこから最も成功しそうなお店をチョイスし、それらをこの空間に集めた、、、と想像してしまうのですが、逆に、この空間のことを再びタイムアウト誌で宣伝して、、、という逆循環も十分に考えられ、双方で多大なるシナジーが生まれるという結果になっていると思われます。
これは言ってみれば、いままでは出版やウェブ空間でその都市についての情報を握り、その都市を訪れる観光客に活字を通して多大なる影響を与え、更にはそれら観光客の動向をコントロールしていた「単なる一つの雑誌に過ぎなかった」タイムアウト誌が、彼らの持っている情報をリアル空間で最大限に活かすことの出来る「インターフェイスを手に入れた」ということを意味しています。
このインターフィイスという画期的なアイデアのおかげで、タイムアウト誌は単なる情報誌を超えた、もう一つ上の段階の媒体へと変化を遂げている、、、と僕は思います。更に更に、これは言うまでもないことなのですが、今回タイムアウト誌が打ち出したこの戦略は、何もリスボン市だけに限ったことではなく、世界中どこの都市でも展開することが出来ちゃうんですね。
言ってみれば、これは「都市の編集作業」のようなものかもしれません。
←「都市の編集作業」という言葉は、この間日本に帰った時に、学芸出版社の井口さんとお話させて頂いた時に彼女が使われていた言葉で、非常に印象に残っているフレーズです。
これはすごい、というか面白い!
ぼくはこれと非常に似たようなことを「都市に関するビックデータ解析を通した科学的な裏付け」の下、地区レベルでやろうと奮闘しているのですが、今回のタイムアウトの試みは地区レベルの活性化と非常に相性が良いと思います。もちろんそこにはいくつか気を付けなければならない案件も存在して、例えばその中の一つにジェントリフィケーションが挙げられると思うんだけど、今回ぼくが関わっている案件ではそちら負の面もどうにかして緩和していこうと奮闘しているので、もしかしたら、近い将来何かしたらの進展が見られるかもしれません(地中海ブログ:都市の闇:ヴェネチア(Venezia)の裏の顔とジェントリフィケーション(Gentrification))。
なにはともあれ、個人的にタイムアウト誌にはアプローチしてみよっかなー、とか思っています。
乞うご期待!
当ブログの読者の皆さんにはご存知の方も多いかと思うのですが、僕は以前、「アルヴァロ・シザの建築を根幹から理解したい!」という理由からオポルト(Porto)に1年弱住んだことがあります(地中海ブログ:アルヴァロ・シザ(Alvaro Siza)のインタビュー記事:シザ建築の特徴は一体何処からきたのか?)。
←あの一年があったからこそ、モビリティとかビックデータとか、建築や都市とは一見関係が無さそうな分野を扱っている今でさえ、建築や都市から離れず、寧ろ「建築側から見た新たな視点を発見する」という立ち位置を保ち続けられているのかな、、、と、そう思います。
オポルトに住んでた時は結構頻繁にリスボンにも行ってたんだけど、あれから10年近く経ち、シザが改修したチアド地区の工事も終わり、その周辺一帯は歩行者空間化の影響からか、かなり賑わいを取り戻している様に見えます。
また市内には以前は無かった電気自動車のチャージング場所や、100%電力で走るチョイモビ(公共交通機関(バス)とタクシー(私的)の間)みたいな乗り物が、リスボンの象徴とも言える黄色い路面電車の合間を縦横無尽に走っていたりして、「あー、結構変わったなー」と思うところも多々。
かと思えば、目抜通りから一本裏通りに入っただけで近隣住民の生活が至るところに垣間見えたりと、以前と全く変わらない風景に少し安心感を感じてしまったりもするんですね。
←こういういつまで経っても変わらない街角の風景こそ、その人のアイデンティティを形成する非常に重要なファクターだったりするということは以前のエントリで書いた通りです(地中海ブログ:バルセロナ・オープンハウス2013:その地域に建つ建築(情報)をオープンにしていくということ)。
…変わっていくこと、変わらないこと…これら相反する2つの力学が共存している存在、それこそ我々が興味を惹かれて止まない「都市というものの本質」なのかもしれません。
さて、冒頭に書いたように今回はビックデータ・オープンデータ系のカンファレンスに登壇することがメインだったんだけど、その合間を縫って「久しぶりにリスボン周辺のシザ建築でも見て回るか」と思い付き、幾つかの建築を訪れてきました。それらについては次回以降のエントリで詳しく書き綴っていくこととして、今回のエントリでは「リスボンの食」について少し書いてみたいと思います。まずは今回連れて行ってもらったレストランの中から特に印象に残ったこちらから:
Name: Casa do Alentejo
Address: Rua Portas de Santo Antao 58
Tel: +351213405140
Email: geral@casadoalentajo.pt
今回招かれたカンファレンスの司会者や登壇者の人たちと事前打ち合わせを兼ねたランチで連れて行ってもらったレストランなんだけど、場所はリスボンのど真ん中、フィゲラス広場から歩いて5分くらいのところに位置しています。言われなければ絶対に通り過ぎてしまうほど小さい入り口なので、まさかこの中にレストランが入っているなんて想像もつきません。だって入り口、これですよ↓↓↓
で、この小さいドアを開けて階段を登っていくと現れてくるのがこの風景:
じゃーん、外からは全く想像が付かないかなり立派な中庭の登場〜。更に階段を登っていくと、こんなに広いパーティー会場まであったりします:
最初はワインで乾杯してから魚介のスープ(前菜)、そして今日のメインはこちらです:
タコの雑炊(Arroz de Pulpo)。魚介の出汁が良く効いていて絶品。文句なく美味しい!
他の登壇者達は、豚肉とアサリの組み合わせっぽいものやタラのオーブン焼きなんかを頼んでて、「味見してみる?」って聞いてくれたので、一口食べさせてもらったらんだけど、どれも素晴らしかった!
デザートには手作りプリンを注文。で、これだけ食べて、これだけ飲んで(赤・白ワイン5本)、一人当たりたったの10ユーロ!!これです!これこそポルトガルの醍醐味の一つなんですね。
ポルトガルでは非常に美味しい料理が、非常にお手頃価格で今でも満喫出来てしまうのです。いき過ぎた観光化の弊害で物価が急上昇しているバルセロナでは、これはもう夢のまた夢。というか、なにも考えずに「観光客来い、観光客来い!」と叫んだ結果、観光客が来過ぎてしまった弊害だということは、以前のエントリで書いた通りです(地中海ブログ:観光MICEとオープンデータ:2020に向けて、バルセロナの失敗の学ぶ、データ活用による都市観光の未来)。
初日からかなり良い感じのリスボン滞在だったんだけど、今回の滞在中に訪れたカフェでもう一軒、どうしても日本の皆さんに紹介したいカフェがあってですね、、、それがこちらです:
Name: Landeau Chocolate
Address: R. das Flores, 70 1200-195, Lisbo
email: chiado@landeau.pt
Tel: 911810801
シザが最近リフォームした集合住宅(Complejo Residencial y Comercial Terracos de Braganca)から道一本西側に行ったところにあるんだけど、ここのチョコレートケーキは絶品だった。こちらは自分で調べたわけではなく、登壇者の一人(ポルトガル人)に「リスボン市内で何処か美味しいお菓子屋さん(カフェ)知らない?」って聞いたらここを教えてくれました。
青いタイルが非常にオシャレな外観で、室内はこれまたレンガ素材がそのまま仕上げ材となっていて、建築としてもかなり良い感じに纏まっています。メニューは「コーヒーとガトーショコラしかない」っていうかなり強気な経営方針なんだけど(笑)、騙されたと思って頼んでみたら、これが素晴らしかった!
(基本的に)建築もそうなんだけど、料理というのはその地方の文化や気候、素材などに非常に影響を受けている「芸術」なので、「なにを美しいと思うか」、「なにを美味しいと思うか」はそこに展開している文化圏を考慮すること無しには判断出来ません。だから例えば、ポルトガル人には美しいと思える芸術品が、日本人にとってはゴミ同然に見えるものなんて山ほどあるし、その逆もまた然り。だからこそ文化というのは面白いのだと思うし、ぼくは建築を評価・批評する時は、その様な枠組みを超えた「もう少し普遍的な視点から批評したいなー」と強く思いつつも、その難しさを十分に実感しているつもりなんですね。
ちょっと長くなってしまいましたが、単純化して言ってしまうと、西洋文化圏での評価軸と日本文化圏での評価軸にはかなりの違いがあり、(料理に関して言うと)味付けの好み(文化)が違うことなどから、双方の口に合うものを見付けるのはなかなかに骨が折れると、そういうことを言いたいのです。というか、そういうお菓子に出会うことは極めて難しいというのが現実だと思います。
しかしですね、今回訪れたこのカフェで提供されているガトーショコラは地元ポルトガルでも非常に評価が高いそうなのですが、これは間違いなく日本人の口にも合います。最近日本で流行っている、テレビ番組の撮影の為に海外の有名レストランや有名パティシエの経営するカフェを訪れ、砂糖がたっぷり入った甘いだけのデザートを持ち出して、「な、なにコレー、超美味しい〜」なんて言ってるデザートとは格が違います。その様な砂糖三昧の甘ーいお菓子は、その土地では評価されているのかもしれませんし、その地方の人々にとっては最高のお菓子なのかもしれません。しかしそれが日本人の口に合うかどうかは全くの別問題なのです。なので、いくら海外で有名なお店の商品だからといって、それがそのまま日本人の味覚からして「超美味しい〜」なんてことになるのは寧ろ稀だと思うんですね。だからこそ、もしリスボンに来たらこのお店のガトーショコラは絶対に試す価値があると思います。
そしてデザート系ではもう一軒。日本でもエッグタルトという名前で数年前に大流行したポルトガル発のお菓子パステル・デ・ナタ(Pastel de Nata)の本家本元。
Name: Pasteis de Belem
Address: rua de Belem 84-92
Tel: +351213637423
Email: pasteisdebelem@pasteisdebelem.pt
リスボン市内から路面電車(15番)に揺られること約30分、世界遺産で有名なジェロニモス修道院(Mosteiro dos Jeronimos)の目の前にあるお菓子屋さんなのですが、1837年の創業以来、ジェロニモス修道院から伝えられた配合と作り方を頑なに守り通している「オリジナルが食べられる」とあって、世界中からここのお菓子を一口食べようと連日長蛇の列が出来ています。
しかしですね、このお店の注文方法には裏技があって、(それを知らない人は店頭に何十分も並んで買っているのですが)このお店は奥行きが非常に深く、奥には広々としたテーブルが並べられ、ゆったりと座れる空間が用意されているんですね。
で、勿論そっちはガラガラ。なので、ここを訪れる方は是非そちらへ移動して、コーヒーと一緒に食されるのが良いかと思われます。ちなみにそちらへ移動する途中にはお菓子を作っている工程を見ることも出来ちゃいます。
そんなこんなで、出てきたのがこちら:
じゃーん。これが正真正銘のPastel de Berenでーす。
お好みで粉砂糖とシナモンパウダーを自分で振りかけて食べます。その感想なのですが、、、
こ、これは、、、むちゃくちゃ美味しいぞー!パステル・デ・ナタはいままで様々な場所で食べてきましたが、こんなに美味しい一品は初めてです!焼きたてなので中のクリームがホカホカなのは当たり前なのですが、外の生地は本当にパリパリ。いや、これは本当、どうやったらこんな風に焼けるんだろう???世界中から歓呼客が押し寄せるのも納得です!
そしてですね、今回のリスボン滞在で一番驚いたのがこちらです:
な、なんと、タイムアウト(TimeOut)がコーディネートしたフードコートがリスボンには存在するんですね。
1968年にロンドンで創刊されたタイムアウト誌は「シティガイド」として、現在では世界40都市(35カ国)で11の言語に対応し発刊されています(wikipediaより)。日本語版も普及していることなどから、その存在を知っている人も多いかと思いますが、ヨーロッパではこのタイムアウト誌は書店というよりは路上のキオスコなどで新聞の横に並べられ売られていて、ヨーロッパでは、ロンリープラネットなどと共に、その都市に関する「主要な情報源の一つ」という地位にまで登り詰めています。
「では、なぜタイムアウト誌がこのような地位を築くことが出来たのか?」。それについては様々な要因が考えられると思うんだけど、その一つは、その都市についてかなり地域密着型でありながらも、グローバルな展開を強く意識していること(言語は勿論英語で発刊)、そして都市に関して様々なトピックを取り上げつつ、それをランキング形式で随時発表しているなどのゲーム感覚で楽しめる形式・企画があるのかな、、、と思ったりします。かく云う僕も、「バルセロナで最も美味しいクロワッサン特集」みたいなのが組まれていたりすると、ついついその特集号を買ってしまい、それを片手にクロワッサン巡りをしてしまうんですね。で、こういう人って意外と多いのです!
今回リスボンへ来てみて僕が驚いたのは、これら都市の情報を様々な角度から集めていたタイムアウト誌が、今度はなんと、現在は使われなくなった古い市場(1892に開店したリベイラ市場)を市役所から買い取り、そこを市内でも有数の観光スポットに改修することによって地区活性化の起爆剤にしようとしているという点なのです!
←タイムアウト誌が本当にそこまで考えているのかどうかは僕にとっては特に重要ではなく、僕の眼から見ると「そういう文脈で読める」ということが重要なのです。
体育館のようなだだっ広い空間の真ん中には、おしゃれなテーブルと椅子が並べられ、その間にはビールやワインなど飲み物を注文するスペースが備え付けられています。室内に500席、テラスには250席が設えられているそうです。営業時間は日曜から水曜までが朝10時から24時まで、木曜日から土曜日までは朝10時から深夜2時までやっているというから、観光客にとっては嬉しい限りです。
で、それを取り囲むように、独立店舗を基本としたお店がグルーっとお客さんを取り囲むという形式を取っているのですが、それら独立店舗にはハンバーガー屋さんや寿司屋さん、シーフードを目の前で調理してくるお店から伝統的なポルトガル料理を出すお店まで本当に多彩なお店が揃っているんですね。
また、アイスクリーム屋さんやカフェ、ご丁寧に観光客向けのお土産屋さんまで揃っているという徹底ぶり!これらお店のチョイスには(当然のことながら)タイムアウト誌が独自に選んだランキングがかなり影響していて、そこから最も成功しそうなお店をチョイスし、それらをこの空間に集めた、、、と想像してしまうのですが、逆に、この空間のことを再びタイムアウト誌で宣伝して、、、という逆循環も十分に考えられ、双方で多大なるシナジーが生まれるという結果になっていると思われます。
これは言ってみれば、いままでは出版やウェブ空間でその都市についての情報を握り、その都市を訪れる観光客に活字を通して多大なる影響を与え、更にはそれら観光客の動向をコントロールしていた「単なる一つの雑誌に過ぎなかった」タイムアウト誌が、彼らの持っている情報をリアル空間で最大限に活かすことの出来る「インターフェイスを手に入れた」ということを意味しています。
このインターフィイスという画期的なアイデアのおかげで、タイムアウト誌は単なる情報誌を超えた、もう一つ上の段階の媒体へと変化を遂げている、、、と僕は思います。更に更に、これは言うまでもないことなのですが、今回タイムアウト誌が打ち出したこの戦略は、何もリスボン市だけに限ったことではなく、世界中どこの都市でも展開することが出来ちゃうんですね。
言ってみれば、これは「都市の編集作業」のようなものかもしれません。
←「都市の編集作業」という言葉は、この間日本に帰った時に、学芸出版社の井口さんとお話させて頂いた時に彼女が使われていた言葉で、非常に印象に残っているフレーズです。
これはすごい、というか面白い!
ぼくはこれと非常に似たようなことを「都市に関するビックデータ解析を通した科学的な裏付け」の下、地区レベルでやろうと奮闘しているのですが、今回のタイムアウトの試みは地区レベルの活性化と非常に相性が良いと思います。もちろんそこにはいくつか気を付けなければならない案件も存在して、例えばその中の一つにジェントリフィケーションが挙げられると思うんだけど、今回ぼくが関わっている案件ではそちら負の面もどうにかして緩和していこうと奮闘しているので、もしかしたら、近い将来何かしたらの進展が見られるかもしれません(地中海ブログ:都市の闇:ヴェネチア(Venezia)の裏の顔とジェントリフィケーション(Gentrification))。
なにはともあれ、個人的にタイムアウト誌にはアプローチしてみよっかなー、とか思っています。
乞うご期待!