地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
タイムアウト(TIMEOUT)誌がリスボンで面白いビジネスを展開している件
ポルトガルの某機関から「ビックデータ・オープンデータ系の講演会を企画してるんだけど、そこで基調講演してくれない?」ってお誘いを受けたので、復活祭(イースター)のバカンスも兼ねて、数日前からリスボンに来ています。



当ブログの読者の皆さんにはご存知の方も多いかと思うのですが、僕は以前、「アルヴァロ・シザの建築を根幹から理解したい!」という理由からオポルト(Porto)に1年弱住んだことがあります(地中海ブログ:アルヴァロ・シザ(Alvaro Siza)のインタビュー記事:シザ建築の特徴は一体何処からきたのか?)。
←あの一年があったからこそ、モビリティとかビックデータとか、建築や都市とは一見関係が無さそうな分野を扱っている今でさえ、建築や都市から離れず、寧ろ「建築側から見た新たな視点を発見する」という立ち位置を保ち続けられているのかな、、、と、そう思います。



オポルトに住んでた時は結構頻繁にリスボンにも行ってたんだけど、あれから10年近く経ち、シザが改修したチアド地区の工事も終わり、その周辺一帯は歩行者空間化の影響からか、かなり賑わいを取り戻している様に見えます。



また市内には以前は無かった電気自動車のチャージング場所や、100%電力で走るチョイモビ(公共交通機関(バス)とタクシー(私的)の間)みたいな乗り物が、リスボンの象徴とも言える黄色い路面電車の合間を縦横無尽に走っていたりして、「あー、結構変わったなー」と思うところも多々。



かと思えば、目抜通りから一本裏通りに入っただけで近隣住民の生活が至るところに垣間見えたりと、以前と全く変わらない風景に少し安心感を感じてしまったりもするんですね。
←こういういつまで経っても変わらない街角の風景こそ、その人のアイデンティティを形成する非常に重要なファクターだったりするということは以前のエントリで書いた通りです(地中海ブログ:バルセロナ・オープンハウス2013:その地域に建つ建築(情報)をオープンにしていくということ)。

…変わっていくこと、変わらないこと…これら相反する2つの力学が共存している存在、それこそ我々が興味を惹かれて止まない「都市というものの本質」なのかもしれません。



さて、冒頭に書いたように今回はビックデータ・オープンデータ系のカンファレンスに登壇することがメインだったんだけど、その合間を縫って「久しぶりにリスボン周辺のシザ建築でも見て回るか」と思い付き、幾つかの建築を訪れてきました。それらについては次回以降のエントリで詳しく書き綴っていくこととして、今回のエントリでは「リスボンの食」について少し書いてみたいと思います。まずは今回連れて行ってもらったレストランの中から特に印象に残ったこちらから:



Name: Casa do Alentejo
Address: Rua Portas de Santo Antao 58
Tel: +351213405140
Email: geral@casadoalentajo.pt


今回招かれたカンファレンスの司会者や登壇者の人たちと事前打ち合わせを兼ねたランチで連れて行ってもらったレストランなんだけど、場所はリスボンのど真ん中、フィゲラス広場から歩いて5分くらいのところに位置しています。言われなければ絶対に通り過ぎてしまうほど小さい入り口なので、まさかこの中にレストランが入っているなんて想像もつきません。だって入り口、これですよ↓↓↓



で、この小さいドアを開けて階段を登っていくと現れてくるのがこの風景:



じゃーん、外からは全く想像が付かないかなり立派な中庭の登場〜。更に階段を登っていくと、こんなに広いパーティー会場まであったりします:



最初はワインで乾杯してから魚介のスープ(前菜)、そして今日のメインはこちらです:



タコの雑炊(Arroz de Pulpo)。魚介の出汁が良く効いていて絶品。文句なく美味しい!



他の登壇者達は、豚肉とアサリの組み合わせっぽいものやタラのオーブン焼きなんかを頼んでて、「味見してみる?」って聞いてくれたので、一口食べさせてもらったらんだけど、どれも素晴らしかった!



デザートには手作りプリンを注文。で、これだけ食べて、これだけ飲んで(赤・白ワイン5本)、一人当たりたったの10ユーロ!!これです!これこそポルトガルの醍醐味の一つなんですね。



ポルトガルでは非常に美味しい料理が、非常にお手頃価格で今でも満喫出来てしまうのです。いき過ぎた観光化の弊害で物価が急上昇しているバルセロナでは、これはもう夢のまた夢。というか、なにも考えずに「観光客来い、観光客来い!」と叫んだ結果、観光客が来過ぎてしまった弊害だということは、以前のエントリで書いた通りです(地中海ブログ:観光MICEとオープンデータ:2020に向けて、バルセロナの失敗の学ぶ、データ活用による都市観光の未来)。



初日からかなり良い感じのリスボン滞在だったんだけど、今回の滞在中に訪れたカフェでもう一軒、どうしても日本の皆さんに紹介したいカフェがあってですね、、、それがこちらです:



Name: Landeau Chocolate
Address: R. das Flores, 70 1200-195, Lisbo
email: chiado@landeau.pt
Tel: 911810801


シザが最近リフォームした集合住宅(Complejo Residencial y Comercial Terracos de Braganca)から道一本西側に行ったところにあるんだけど、ここのチョコレートケーキは絶品だった。こちらは自分で調べたわけではなく、登壇者の一人(ポルトガル人)に「リスボン市内で何処か美味しいお菓子屋さん(カフェ)知らない?」って聞いたらここを教えてくれました。

青いタイルが非常にオシャレな外観で、室内はこれまたレンガ素材がそのまま仕上げ材となっていて、建築としてもかなり良い感じに纏まっています。メニューは「コーヒーとガトーショコラしかない」っていうかなり強気な経営方針なんだけど(笑)、騙されたと思って頼んでみたら、これが素晴らしかった!



(基本的に)建築もそうなんだけど、料理というのはその地方の文化や気候、素材などに非常に影響を受けている「芸術」なので、「なにを美しいと思うか」、「なにを美味しいと思うか」はそこに展開している文化圏を考慮すること無しには判断出来ません。だから例えば、ポルトガル人には美しいと思える芸術品が、日本人にとってはゴミ同然に見えるものなんて山ほどあるし、その逆もまた然り。だからこそ文化というのは面白いのだと思うし、ぼくは建築を評価・批評する時は、その様な枠組みを超えた「もう少し普遍的な視点から批評したいなー」と強く思いつつも、その難しさを十分に実感しているつもりなんですね。



ちょっと長くなってしまいましたが、単純化して言ってしまうと、西洋文化圏での評価軸と日本文化圏での評価軸にはかなりの違いがあり、(料理に関して言うと)味付けの好み(文化)が違うことなどから、双方の口に合うものを見付けるのはなかなかに骨が折れると、そういうことを言いたいのです。というか、そういうお菓子に出会うことは極めて難しいというのが現実だと思います。



しかしですね、今回訪れたこのカフェで提供されているガトーショコラは地元ポルトガルでも非常に評価が高いそうなのですが、これは間違いなく日本人の口にも合います。最近日本で流行っている、テレビ番組の撮影の為に海外の有名レストランや有名パティシエの経営するカフェを訪れ、砂糖がたっぷり入った甘いだけのデザートを持ち出して、「な、なにコレー、超美味しい〜」なんて言ってるデザートとは格が違います。その様な砂糖三昧の甘ーいお菓子は、その土地では評価されているのかもしれませんし、その地方の人々にとっては最高のお菓子なのかもしれません。しかしそれが日本人の口に合うかどうかは全くの別問題なのです。なので、いくら海外で有名なお店の商品だからといって、それがそのまま日本人の味覚からして「超美味しい〜」なんてことになるのは寧ろ稀だと思うんですね。だからこそ、もしリスボンに来たらこのお店のガトーショコラは絶対に試す価値があると思います。

そしてデザート系ではもう一軒。日本でもエッグタルトという名前で数年前に大流行したポルトガル発のお菓子パステル・デ・ナタ(Pastel de Nata)の本家本元。



Name: Pasteis de Belem
Address: rua de Belem 84-92
Tel: +351213637423
Email: pasteisdebelem@pasteisdebelem.pt


リスボン市内から路面電車(15番)に揺られること約30分、世界遺産で有名なジェロニモス修道院(Mosteiro dos Jeronimos)の目の前にあるお菓子屋さんなのですが、1837年の創業以来、ジェロニモス修道院から伝えられた配合と作り方を頑なに守り通している「オリジナルが食べられる」とあって、世界中からここのお菓子を一口食べようと連日長蛇の列が出来ています。



しかしですね、このお店の注文方法には裏技があって、(それを知らない人は店頭に何十分も並んで買っているのですが)このお店は奥行きが非常に深く、奥には広々としたテーブルが並べられ、ゆったりと座れる空間が用意されているんですね。



で、勿論そっちはガラガラ。なので、ここを訪れる方は是非そちらへ移動して、コーヒーと一緒に食されるのが良いかと思われます。ちなみにそちらへ移動する途中にはお菓子を作っている工程を見ることも出来ちゃいます。



そんなこんなで、出てきたのがこちら:



じゃーん。これが正真正銘のPastel de Berenでーす。



お好みで粉砂糖とシナモンパウダーを自分で振りかけて食べます。その感想なのですが、、、



こ、これは、、、むちゃくちゃ美味しいぞー!パステル・デ・ナタはいままで様々な場所で食べてきましたが、こんなに美味しい一品は初めてです!焼きたてなので中のクリームがホカホカなのは当たり前なのですが、外の生地は本当にパリパリ。いや、これは本当、どうやったらこんな風に焼けるんだろう???世界中から歓呼客が押し寄せるのも納得です!

そしてですね、今回のリスボン滞在で一番驚いたのがこちらです:



な、なんと、タイムアウト(TimeOut)がコーディネートしたフードコートがリスボンには存在するんですね。



1968年にロンドンで創刊されたタイムアウト誌は「シティガイド」として、現在では世界40都市(35カ国)で11の言語に対応し発刊されています(wikipediaより)。日本語版も普及していることなどから、その存在を知っている人も多いかと思いますが、ヨーロッパではこのタイムアウト誌は書店というよりは路上のキオスコなどで新聞の横に並べられ売られていて、ヨーロッパでは、ロンリープラネットなどと共に、その都市に関する「主要な情報源の一つ」という地位にまで登り詰めています。



「では、なぜタイムアウト誌がこのような地位を築くことが出来たのか?」。それについては様々な要因が考えられると思うんだけど、その一つは、その都市についてかなり地域密着型でありながらも、グローバルな展開を強く意識していること(言語は勿論英語で発刊)、そして都市に関して様々なトピックを取り上げつつ、それをランキング形式で随時発表しているなどのゲーム感覚で楽しめる形式・企画があるのかな、、、と思ったりします。かく云う僕も、「バルセロナで最も美味しいクロワッサン特集」みたいなのが組まれていたりすると、ついついその特集号を買ってしまい、それを片手にクロワッサン巡りをしてしまうんですね。で、こういう人って意外と多いのです!



今回リスボンへ来てみて僕が驚いたのは、これら都市の情報を様々な角度から集めていたタイムアウト誌が、今度はなんと、現在は使われなくなった古い市場(1892に開店したリベイラ市場)を市役所から買い取り、そこを市内でも有数の観光スポットに改修することによって地区活性化の起爆剤にしようとしているという点なのです!
←タイムアウト誌が本当にそこまで考えているのかどうかは僕にとっては特に重要ではなく、僕の眼から見ると「そういう文脈で読める」ということが重要なのです。



体育館のようなだだっ広い空間の真ん中には、おしゃれなテーブルと椅子が並べられ、その間にはビールやワインなど飲み物を注文するスペースが備え付けられています。室内に500席、テラスには250席が設えられているそうです。営業時間は日曜から水曜までが朝10時から24時まで、木曜日から土曜日までは朝10時から深夜2時までやっているというから、観光客にとっては嬉しい限りです。



で、それを取り囲むように、独立店舗を基本としたお店がグルーっとお客さんを取り囲むという形式を取っているのですが、それら独立店舗にはハンバーガー屋さんや寿司屋さん、シーフードを目の前で調理してくるお店から伝統的なポルトガル料理を出すお店まで本当に多彩なお店が揃っているんですね。



また、アイスクリーム屋さんやカフェ、ご丁寧に観光客向けのお土産屋さんまで揃っているという徹底ぶり!これらお店のチョイスには(当然のことながら)タイムアウト誌が独自に選んだランキングがかなり影響していて、そこから最も成功しそうなお店をチョイスし、それらをこの空間に集めた、、、と想像してしまうのですが、逆に、この空間のことを再びタイムアウト誌で宣伝して、、、という逆循環も十分に考えられ、双方で多大なるシナジーが生まれるという結果になっていると思われます。

これは言ってみれば、いままでは出版やウェブ空間でその都市についての情報を握り、その都市を訪れる観光客に活字を通して多大なる影響を与え、更にはそれら観光客の動向をコントロールしていた「単なる一つの雑誌に過ぎなかった」タイムアウト誌が、彼らの持っている情報をリアル空間で最大限に活かすことの出来る「インターフェイスを手に入れた」ということを意味しています。



このインターフィイスという画期的なアイデアのおかげで、タイムアウト誌は単なる情報誌を超えた、もう一つ上の段階の媒体へと変化を遂げている、、、と僕は思います。更に更に、これは言うまでもないことなのですが、今回タイムアウト誌が打ち出したこの戦略は、何もリスボン市だけに限ったことではなく、世界中どこの都市でも展開することが出来ちゃうんですね。

言ってみれば、これは「都市の編集作業」のようなものかもしれません。
←「都市の編集作業」という言葉は、この間日本に帰った時に、学芸出版社の井口さんとお話させて頂いた時に彼女が使われていた言葉で、非常に印象に残っているフレーズです。

これはすごい、というか面白い!

ぼくはこれと非常に似たようなことを「都市に関するビックデータ解析を通した科学的な裏付け」の下、地区レベルでやろうと奮闘しているのですが、今回のタイムアウトの試みは地区レベルの活性化と非常に相性が良いと思います。もちろんそこにはいくつか気を付けなければならない案件も存在して、例えばその中の一つにジェントリフィケーションが挙げられると思うんだけど、今回ぼくが関わっている案件ではそちら負の面もどうにかして緩和していこうと奮闘しているので、もしかしたら、近い将来何かしたらの進展が見られるかもしれません(地中海ブログ:都市の闇:ヴェネチア(Venezia)の裏の顔とジェントリフィケーション(Gentrification))。

なにはともあれ、個人的にタイムアウト誌にはアプローチしてみよっかなー、とか思っています。

乞うご期待!
| 地球の食べ歩き方 | 21:43 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
皇室御用達の鯉料理の老舗、大黒屋その2
前回のエントリで書いたように、今年の年末年始は日本で過ごしていました(地中海ブログ:新年あけましておめでとうございます2015)。

ヨーロッパの元旦というのは、基本的にどの都市でも1月1日の0時と同時に「これでもか!」というくらい花火を打ち上げまくって始まります。どれくらい打ち上げるのかというと、それこそ「サグラダファミリア、壊れるんじゃないの?」っていうくらい打ち上げるんですね(笑)。



そんなヨーロッパにおける元旦の思い出として記憶に新しい所では、3年くらい前に過ごしたパリでのこと、、、「まあ、一応パリに来てるんだし、シャンゼリゼ通りでも見に行ってみるか」ということで、午前0時の花火に合わせて外出したら、もう凄い人、人、人!そんな中、「若者グループがあっちの方で騒いでるなー」とか思ってたら、そのうち警官隊と揉み合いになり、あろうことか催涙弾を投げつける始末!その近辺にいた人みんな涙目(苦笑)。僕もその時、生まれて始めて催涙弾とか受けたんだけど、眼がショボショボするわ、鼻水は出るわで、散々な年明けだったことを今でも覚えています。

さて、我がcruasan家は一年を通して「何月何日はココへ行く!」みたいな年中行事が目白押しで、それこそ物心つかない頃から「無理矢理」色んな所へ連れて行かれてたんだけど(苦笑)、何を隠そう、そんな年中行事が最も集中しているのが年末年始なんですね。

どんな年中行事か?
←ズバリ、食べ三昧の毎日です(笑)。



一月一日のなだ万(日本料理の老舗)のお正月ランチに始まり、1月4日の下呂温泉にいたるまで、もう食べまくり。特に1月2日に訪れる多度大社(三重県)へのお参りと、その麓にある鯉料理のお店(大黒屋)での会食は、それこそ僕が生まれる前から何十年と続けている伝統ですらあります。



 「馬が崖を掛け上がれるかどうか?」で、その年の豊穣を占うとされる「上げ馬神事」で有名な多度大社なんだけど、その麓には歴史の重みを感じさせるのに十分な風景が未だに残っています。そんな旧街道を歩いて行くこと10分、見えてきました、お馬さんが駆け上がる崖が:



これ、駆け上がるの大変だよなー。僕が馬なら絶対無理!(笑)。で、こちらがそのお馬さん:



今日は元旦なのでお正月っぽい服を着ています。白馬だし、服が青くて高貴っぽいので、暴れん坊将軍が乗ってる馬っぽいなー(笑)。目の前には角切りにされた人参が載ったお皿が置いてあって、100円払うと一皿あげることが出来ちゃいます。このお馬さんに人参をあげて、おみくじをひいたり、抹茶を飲んだりしていると、そろそろランチの時間に、、、。という訳で、先ほどの街道をもう一度歩いていくと表れてくるのが今回目指すべき建築です:



じゃーん、堂々たる門構えの鯉料理の名店、大黒屋の登場〜。創業280年というこの大黒屋は、「皇室御用達の料亭」として知られているんですね。ただ‥‥このお店の前を通り掛かった人達が、このお店を「鯉料理のレストラン」と認識し、鯉を求めて入ってくる‥‥とは到底思えません。お品書きも無いし、何よりこの立派過ぎる門構えが、このお店の前を通る人々の足を惹き止め、門の中へと誘い込みながらも、全く関係の無い人達をはじき返す力強さを兼ね備えているからです。



このような表現は東西の違いこそあれ、ファサードが波打つ事により、人々を惹き寄せては打ち返すバロック建築の最高峰、サン・カルリーノ・クワットロ・フォンターネ教会に通じるところがあるのかもしれません(地中海ブログ:サン・カルリーノ・アッレ・クアットロ・フォンターネ教会(San Carlino alle Quattro Fontane)から学ぶ歴史の重み:現地へ行ってみて始めて分かる事は山程ある



もっと言っちゃうと、この門構えをチラッと見ただけでも、この建築、ひいてはこのお店が徒者ではないことが分かってしまうんですね。この門から中庭空間へは視線が一直線に抜けてるんだけど、この空間では来館者をエントランスまでダイレクトに進ませるのではなく、効果的に石畳を使う事によって、「わざわざ」右寄りに進行方向を曲げているのが見て取れるからです。

また、真っ正面に見える風景(=エントランスの空間構成)を一度に全て見せるのではなく、中央左寄りに「敢えて」樹を植える事により、あちら側の風景を遮りながらも、クライマックス的空間に対する来館者の期待感を高めてもいるのです。



この辺のアプローチ空間の妙については以前のエントリでも書いた気がするんだけど、先日訪れた京都にある村野藤吾の佳水園、もしくはスペインとポルトガルの国境付近に位置するアルヴァロ・シザ設計によるヴィアナ・ド・カストロ図書館にも通じる所があるかと思います(地中海ブログ:アルヴァロ・シザの建築:ヴィアナ・ド・カストロ図書館その1:外部空間(アプローチ)について)。



様々な文化圏における表象文化の比較という観点で見ていくと、自ずと「日本建築の特徴」みたいなものが浮かび上がってくると思うんだけど、それは「建築が完全に開く」のではなく、かと言って「完全に閉じてしまう」のでもない「曖昧な境界」とそれを可能にする皮膜、そしてその様な皮膜が何重にも折り重なる事によって襞の様になり、その中に存在する「奥」を大切に守っていることだったりするのです。

 「奥」とは日本文化の核に位置するアイデアであり、我々の日常生活の至る所に見られる事象でもあります(槙文彦さんが詳しく書かれています)。ふとデパートなどで買い物をした際、包み紙を開けると箱が現れ、その箱も包装紙に包まれていて、それを取り除いて箱を開けると、更に包装紙が現れ、「いつになっても中身に辿り着けない」‥‥みたいな(笑)。もしくは神社などで売られている「お守り」も「奥」が存在する事によって成り立っているものですね。

あー、また脱線してしまった‥‥。
と、とりあえず中へと入って行きます。



真っ赤な絨毯があちら側へと我々を誘う、エントランス空間の登場〜。



右手側にはお正月らしい立派なお飾りが我々を出迎えてくれます。ここにこの真っ赤な絨毯があるのと無いのとでは大違いで、あちら側に見える中庭の緑色を「補色として」活き活きさせるという仕掛けでもあるんですね。この赤絨毯に誘われるがままにココで靴を脱ぎ、奥へと入って行くと広がっているのがこの風景:



前日に降った雪がちらほらと残っている、大変美しい日本庭園です。もうホント、何十年も前から変わらない風景がココには広がっています。



このお庭を眺めながら左手側に進んで行くと、その突き当たりには「待合室」があるんだけど、その待合室は皇族の方々が来た時にしか開けないということを以前聞いたことがあります。しかしですね、それこそ20年くらい前のこと、たまたま僕達の部屋がまだ準備中だった為、その開かずの待合室に通されたことが一度だけありました。



個人的に歴史の年号を覚えたりするのは苦手なんだけど、一度見た風景などはまるで写真にパシャっと撮った様に鮮明に覚えることが出来る僕の記憶によると、大変良く設えられたそのお部屋の真ん中には戦国時代の甲冑が飾られ、木を基調とした大変質の高い空間が広がっていた事を今でも鮮明に覚えています。



さて、この料亭は中庭空間を中心に構成されていて、ほぼ全てのお部屋からこの素晴らしい庭を眺めて食事を楽しむことが出来るのですが、この長―い廊下を歩いて行き、さっき入ってきた赤絨毯が敷いてあるエントランス空間を反対側から見返してみます:



狸の後ろ姿(笑)。裏側からみると、先ほど通ってきたエントランス空間の構成が「如何に直線的ではないか」がよーく見て取れるかと思います。



ほら、真っ赤な絨毯に対して、その脇に植えられている樹があちら側へ視線を抜けるのを邪魔してるでしょ?



cruasan家はこの中庭の真ん中付近の部屋をいつも取ってあるのですが(上の写真に見える障子のお部屋)、昔は一番奥の部屋、ちょうど狸の裏側くらいの部屋を予約してあって、料理を楽しみながらも下駄を履いて中庭を歩き回るのが、この料亭で食事をする1つの楽しみでした。でも、最近みんな歳をとってきた為に、中庭を歩き回るよりは、お手洗いが近い部屋がいいらしい(苦笑)。 ←ということで、中庭の真ん中付近の部屋になったそうです。

そんなこんなでお庭を堪能していたら、先付けが運ばれてきました:



毎年大変楽しみにしている鯉のすり身の揚げ団子と頬肉です。この鯉のすり身の揚げ団子が絶品で、小さい頃はこればかり注文してたんだけど、いまにして思えば、そんな融通が利いたのも古き良き時代だったのかな‥‥と、そう思います。



続いて出てきたのが、鯉の鱗の酢の物と、鱗の唐揚げです。



鯉の鱗の唐揚げなんて、このお店以外では見たことがありません。サクサクで美味しい〜。



そしてそして、出てきました!このお店に来たら絶対に味わって頂きたい一品!白みそ仕立ての鯉こく!!いままで色んな所で鯉こくを食べてきたんだけど、これほど味わい深い鯉こくは本当に珍しいと思います。



で、こちらが鯉の洗い。このお店では酢味噌ではなく、ワサビ醤油で頂きます。

普通、鯉というと独特の臭みがあるものなんだけど、創業280年を誇るこのお店の知恵と経験から、群馬から仕入れた鯉を屋敷内にある池に餌無しの状態で2ヶ月ものあいだ泳がすことによって、鯉独特の臭みをさっぱりと消しながらも、身を引き締めているのだとか。上の写真で身が縮れているのが分かるかと思うんだけど、これは新鮮な魚の身を洗った場合にしか出ない現象なんですね。つまり最高のクオリティだという事です。



続いては鯉の塩焼き。レモンと酢を少しだけたらして食べると、もう最高。そして去年から料理のラインナップに追加されたのがこちら:



あばらのミソ焼き‥‥かな(?)
←いや、このお店、お品書きもなければ、特に何も説明してくれないので、自分が何を食べているのか、イマイチ良く分からないのです(笑)。そしてそして、この料亭のメイン料理がこちら:



鯉の素揚げの和風あんかけ風の登場〜。鯉が丸ごと一匹揚げてあり、そこへ野菜炒めあんかけを載せた一品!お、美味し過ぎる〜。

最後は勿論、ご飯とお味噌汁なんだけど、この鯉のあんかけが美味し過ぎて、ご飯の写真撮るの、忘れたー(笑)。

満足、大満足です。

この料亭の良い所は、料理の質もさることながら、それらが運ばれて来る間に中庭へ出て行って庭園の風景を思う存分楽しめる所かな、、、と思います。そしてこういう体験から僕が学んだこと、それは「食事を楽しむということ」は、なにも料理の味だけでなく、そこから見える風景、音、雰囲気など、我々の五感全てを使った総合芸術なのだということです。



大変美味しゅうございました!
星、三つです!!!
| 地球の食べ歩き方 | 10:18 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
ボストン/ケンブリッジ市のカフェ事情:美味しいコーヒー屋さんについて
寒い、非常に寒い!今年の北米には近年稀に見る大寒波が襲来してるらしくって、ナイアガラの滝が凍ったり、中東部の州ではマイナス40度にまで気温が下がったりと、それこそ人間が住む環境じゃあ無くなってきてる感があります←大げさに聞こえるかもしれないけど、本当に寒いんですよ!



スノーストーム(大雪)だって頻繁に(しかも突然)起こるから溜まったもんじゃありません。確かに去年も信じられないくらい雪が積もったりしてた記憶があるんだけど、今年はスノーストームの回数が多いんじゃないのかな?なんか3日に一回は降ってる様な‥‥←どうなんでしょうか、ボストン在住の皆さん?



さて、早いものでボストンに来てからもう既に一ヶ月が経ってしまいました。そろそろこちらでの生活リズムにも慣れてきたんだけど、いま思えば今回のボストン滞在はトラブル続きの幕開けだったんですね。トランジットで立ち寄ったロサンゼルス空港でまさかの飛行機のエンジントラブルに巻き込まれてしまい、なんだかんだと10時間近く待たされた挙げ句、ボストン空港に着いたのは深夜の3時過ぎ!実に日本を出てから36時間後の事でした。ロスからの飛行機の中では「ボストンに着いたらタクシーとか走ってるのかな?」とかなり不安だったのですが、空港を出たら深夜4時近くにも関わらずホテルからのお出迎えのバスが待っててくれて超感激(涙)。さすが世界のヒルトンホテル!



更に更に、ホテルのカウンターでチェックインした際のこと、「長旅の上、真夜中のチェックインでお疲れでしょうから、明日のチェックアウトはサービスで2時間遅れにさせて頂きます」という非常に嬉しい申し出が!ヒルトン、最高!

そんなこんなで幕を開けた今回のボストン滞在記(2014年版)なのですが、現在僕が住んでいる所は丁度1年前に住んでいたのと同じアパート、そして同じ部屋に入ることが出来ちゃいました(実は来る前までこのアパートは満室だと聞いていたので「今回は無理かなー」と思ってたんだけど、大変ラッキーな事に急に空き部屋が出たらしい)。



この家は間取りが非常にゆったりとしていて(地上3階、地下一階)、ロケーションも抜群でMITとハーバードの丁度真ん中に位置しています。家の周りにはカフェ、レストラン、スーパー、銀行と何でも揃っていて非常に便利。MITは歩いて10分の距離なので、その日の気分に合わせて時々バスに乗ってみたり歩いたりしています。



「アメリカの都市」と聞くと、どうしても「自動車が無いと生きていけない」的な事を連想してしまうのですが、ボストン/ケンブリッジ市の雰囲気は非常にヨーロッパの街並に似ている所があると個人的には思っていて、と言うのも地下鉄は通ってるし、街はコンパクトだし、何より歩いて楽しめる街路が広がっているのは嬉しい限りです。

そんな理由も相俟ってか、この街にはヨーロッパ出身の人が結構多くて、僕の所属してる研究室なんて8割がヨーロッパ人だったりする訳ですよ。で、面白いのが、そんな人達が集まると必ず話題に上るのが「コーヒーの話」なんです。


(上の写真はバルセロナの家の近くのカフェで出される非常に美味しいコーヒー/クロワッサン)

何故か?

何故ならアメリカ(ボストン/ケンブリッジ)のコーヒーは非常に不味いから(笑)。勿論、お店にも依るとは思うんだけど、「美味しいコーヒーを出しているカフェなんて殆ど無いんじゃないの?」と思うほど、この街では美味しいコーヒーに出逢うのは至難の業なのです。

だいたいですね、こちらで出されるコーヒーって、コカコーラみたいな大きいコップにいっぱい入ってきて、「あんなのコーヒーじゃなくてスープだ!」というのがヨーロッパのコーヒーに慣れ親しんだ人達の一般的な見解だと思います。更に最悪な事に、一杯のコーヒーの値段が高い!コーヒー一杯で平均約$3.5ドルというはバルセロナから来た僕にしたらちょっと信じられません(怒)。


(ルーヴル美術館内に併設されてるカフェ)

$3.5ドル(=3ユーロ)のコーヒーというのはバルセロナで言えば、サグラダファミリアの真ん前で飲むコーヒー、つまりは「観光客相手にぼったくってるカフェの値段」に相当します(地中海ブログ:在バルセロナ&観光客の皆さん注意です!:ランブラス通りで最近増えてきている詐欺行為について)。もしくはパリで言うと、ルーブル美術館の中にあるカフェで出されるエスプレッソがそれくらいの値段だったかな(地中海ブログ:世紀末の知られざる天才彫刻家、カミーユ・クローデル(Camille Claudel)について)。で、それだけ払って美味しいコーヒーが出てくるならまだしも、出されるのがスープの様に大量で薄いコーヒーっていうからやってられない!

と言う訳で最近では、研究室に居るイタリア人、フランス人、スペイン人なんかで集まって「何処のコーヒーが美味しいかリスト」を作ってるんだけど、たまたま昨日、知り合いのイタリア人から教えたもらったカフェが丁度僕の住んでる家から直ぐ近くにある事が判明したので、日曜日の朝に散歩がてら行ってきました。



実際に行ってみたら本当に家から歩いて5分の所にあったんだけど、いつもは行かないエリアだっただけに「え、こんな所にカフェなんてあったの?」と驚きを隠せませんでした。外から見る分にはかなり良い雰囲気。で、中に入ってみるとこんな感じ:



店内は広々としていて明るく、これまたかなり良い感じ。「おー、これは期待出来る!」とメニューを見てみると、な、なんとエスプレッソがあるじゃあないですかー!という訳で、チョコレート・クロワッサンと一緒に早速頼んでみる事に。



アメリカのカフェとしては非常に珍しく、このお店では一杯一杯丁寧にコーヒーを入れてくれます。で、飲んでみたら、これが結構美味しい!と言うか、アメリカに来て初めて本物に近いエスプレッソを飲みました!チョコレート・クロワッサンもそれほど甘過ぎず、バルセロナで食べるものに非常に近い感じで素晴らしい出来映え。また店内では(欧米のカフェでは当たり前なのですが)wifiが使えるのも嬉しいポイントです。気に入りました、非常に気に入りました!という訳で、週末の朝はここに来る事にします。



お店情報:DwellTime
住所:364 Broadway, Cambridge MA 02139
営業時間:M-F: 7:00-18:00 Sat:8:00-18:00 Sun:9:00-17:00
コーヒー一杯の値段:エスプレッソが$2.5ドル。
クーポン券:クーポン券は無いっぽい。
ネット環境:wifiあり。無制限。


せっかくなのでこの機会にケンブリッジ(セントラル周辺)にある僕が見付けた美味しいコーヒーを出すカフェを紹介しておこうと思います。



先ずは僕の家から歩いて3分の所にあるカフェ、1369 Coffee House。それなりに美味しいコーヒーを出していて雰囲気も良く、帰り道にあるのでほぼ毎晩20時30分頃から閉店の22時30分頃までいます。ここに来ればかなりの確率で僕に会えます(笑)。

住所:757 Massachusetts Ave, Cambridge MA 02139
コーヒー一杯の値段:1.7ドル
クーポン券:10杯飲むと1杯無料になるクーポン券あり
ネット環境:Wifiあり。一日45分までという制限付きだけど、日毎に変わるパスワードを入れ直せば何時間でも利用可能っぽい。




こちらはMITの直ぐ近く、僕のラボからは歩いて5分の所にあるFlour Bakery。このお店はサンドイッチ専門店なので、コーヒーというよりもそっちの方が美味しいかも。



Applewood-smoked bacon ($7.95ドル)が僕のイチオシ。注文してから作ってくれるのでパンは焼きたてのホカホカ。僕がボストンで食べたサンドイッチの中ではダントツに美味しかった気がします。1つ難点を言えば、かなりの人気店なので、いつ行っても満席でゆっくりとコーヒーを飲むという雰囲気ではありません。

住所:190 Massachusetts Ave Cambridge MA
営業時間:M-F:7:00-20:00 Sat:8:00-18:00 Sun:9:00-17:00
コーヒー一杯の値段:$3.5ドル
クーポン券:クーポン券無し
ネット環境:wifiあり。無制限。




こちらはKendall/MIT駅を出た直ぐの所に最近出来たカフェClover。こちらも一杯一杯きちんとコーヒーを入れてくれます。それほど混んでなくて、平日と土曜日は23時まで、日曜日も16時まで開いてるのは非常に嬉しい。また、机も大きくて友達と連れ添って行く事も出来るし、一人でパソコンを広げて作業するのも全く苦にならなくて重宝しています。

住所:5 Ccambridge Center, Cambridge, MA
営業時間:M-F:7:00-23:00 Sun:10:00-16:00
コーヒー一杯の値段:$3ドル
クーポン券:クーポン券無し
ネット環境:wifiあり。無制限。




言わずとしれたスターバックス。個人的にはスターバックスのコーヒーはあまり好きじゃないんだけど、ハーバード大学前の店は深夜1時まで開いてるし、2階は広々としているので空間的にはかなり好き。



週末になると、時々即興のジャズセッションなんかが始まったりして結構楽しめます。

住所:1380 Massachusetts Ave, Cambridge, MA
営業時間:M-F:5:00-01:00 Sat and Sun:05:30-01:00
コーヒー一杯の値段:$3ドル
クーポン券:クーポン券無し
ネット環境:Wifiあり。無制限。




MIT関係者でも知らない人が多いと思うんだけど、MITの都市計画/建築学部が入ってる建物の4階にちょっとしたカフェが入っています。コーヒーは不味いけど、建築学部の学生がパソコンや図面を広げて作業出来る様にとの配慮からか、かなり大きめの机が備え付けられていて、天井も高く、大きな窓からは光が燦々と降り注いで空間的には抜群。昼食時にはちょっとしたランチもやってて、それなりに美味しいと評判です。因みに僕は、毎日の朝食はここのカフェで取っています。朝の8時30分から9時30分頃にここに来れば僕に逢える可能性大(笑)。

住所:MIT7号館4階。
営業時間:M-F:9:00-15:00 Sat and Sun:Close
コーヒー一杯の値段:$1.7ドル
クーポン券:クーポン券無し
ネット環境:wifiあり。無制限。
| 地球の食べ歩き方 | 03:55 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
多度大社から歩いて3分の所にある皇室御用達の鯉料理の老舗、大黒屋
年末から年始に掛けて、実はひっそりと日本に帰っていました。今回の帰国は1週間程度だったんだけど、そんな短い間にも下呂温泉に行ったり、お節料理を食べたりと、久しぶりに典型的な日本のお正月を過ごす事が出来たのは嬉しかったかな。



また、日本で紅白歌合戦をリアルタイムで見る事が出来たのは(バルセロナを出て以来)14年ぶりのことで、「え、紅白ってこんなに面白かったっけ?」という、良い意味における「驚き」を受けたのは個人的には嬉しい誤算でした。「あまちゃんを見てないと絶対に分からない演出」、つまりは「日本人だったら朝の連ドラくらい当然見てるよね?」っていうNHKの強気の姿勢とか、かなり笑った。もっと言っちゃうと、今年の紅白がここまで盛り上がったのは、(一時的、そしてかなり独特な文脈だったとは言え)「日本国民全般に認知され得る国民歌の様なものが戻ってきた」ということが大きいと思います。



正にそれが「潮騒のメモリー」であり、それを核とした演出(ユイちゃんが東京に行けたこと等)だったんだけど、その様な文脈をみんなが共有出来ていたからこそ、あそこまで盛り上がった訳であり‥‥潮騒のメモリーと言う曲は、過去の記憶を継ぎ接ぎにする事で実現した歌であり、これは「失われた未来論」に位置づけることが出来て‥‥と、今回の紅白を巡る現象について語り出せばキリが無くなるので、それはまた別の機会に。



さて、僕の家族は「毎年○月○日にはココに行く!」みたいな恒例行事を幾つも持っていて、僕も物心つく前から色々な所へ「無理矢理」連れて行かされてたんだけど(笑)、その内の1つが今日紹介する鯉料理の老舗、大黒屋なんですね。毎年1月2日は多度大社にお参りに行ってから、この料亭で出される鯉料理に舌鼓を打つというのが、それこそ僕が生まれる前から何十年間も続けられているcruasan家の恒例行事なのです。



「多度大社‥‥何それ?」という人でも、馬が崖を駆け上がる動画を眼にしたことがある人は結構多いのでは無いでしょうか?そう、多度大社とは「上げ馬神事」で有名な、あの多度大社のことなのです。



‥‥毎年ここに来る度に思うんだけど、「こんな直角の崖を上るなんて、馬も大変だなー」‥‥と。崖の上には、真っ白なお馬さんがいて、いつも美味しそうに人参をムシャムシャと頬張っています(笑)。



このお馬さんを横目に見つつ、おみくじを引いて甘酒を飲みながら、昔ながらの街並みが残る参道を歩いていきます。歩くこと3分、見えてきました目指すべき建築が:



じゃーん!創業280年という歴史を誇る鯉料理の老舗、大黒屋さんの堂々たる門構えです(今回は雨が降っていた為に良い写真が撮れなかったので、下記の解説には以前撮った写真を使います)。



見上げると、門の上には大黒様の姿が。



‥‥この門構えをチラッと見ただけでも、もう既にこのお店が徒者ではないことが分かるかと思うんだけど‥‥。と言うのもですね、この門から中庭へは一直線に視線が貫いているのですが、来館者をそこまでダイレクトに進ませるのではなく、石畳を使いながら「わざわざ」右寄りに進行方向を曲げているのが見て取れるんですね。



また、真っ正面に見える風景を一度に全て見せるのではなく、中央左寄りに「敢えて」樹を植えることにより、あちら側の風景を遮りながらクライマックス的空間に対する来館者の期待感を高めているのです。



この様なアプローチ空間の妙は、去年の夏に訪れた村野藤吾の佳水園、もしくはスペインとポルトガルの国境付近に位置するアルヴァロ・シザ設計によるヴィアナ・ド・カステロ図書館にも通ずる所があるかと思います(地中海ブログ:アルヴァロ・シザの建築:ヴィアナ・ド・カステロ図書館(Viana do Castelo)その2:内部空間編:パノラミックな風景が売りの敷地においてパノラミックな風景を見せないという選択肢)。

また、この威風堂々とした門構えのデザインは、このお店の前を通る人々の足を惹き止め、門の中へと誘い込みながらも、全く関係のない人々をはじき返す強靭さをも兼ね備えています。



この様な表現は(ファサードを波打たせながら)訪れる人々を惹き寄せては打ち返すというバロック建築の最高峰、サン・カルリーノ・アッレ・クアットロ・フォンターネ教会にも通じる所があるのかも知れません(地中海ブログ:サン・カルリーノ・アッレ・クアットロ・フォンターネ教会(San Carlino alle Quattro Fontane)から学ぶ歴史の重み:現地へ行ってみて初めて分かる事は山程ある)。

様々な文化圏における表象文化の比較という観点で見ていくと、自ずと「日本建築の特徴」みたいなものが浮かび上がってくると思うんだけど、それは「建築が完全に開く」のではなく、かと言って「完全に閉じてしまう」のでもない「曖昧な境界」とそれを可能とする皮膜、そしてその様な皮膜が何重にも折り重なる事によって襞の様になり、その中に存在する「奥」を大切に守っているのです。

「奥」とは日本文化の核に位置するアイデアであり、我々の日常生活の至る所に見られる事象でもあります(槙文彦さんが詳しく書かれています)。ふとデパートなどで買い物をした際、包み紙を開けると箱が現れ、その箱も包装紙に包まれていて、それを取り除いて箱を開けると、更に包装紙が現れ、「いつになっても中身に辿り着けない」‥‥みたいな(笑)。もしくは神社などで売られている「お守り」も「奥」が存在する事によって成り立っているものですね。



そんな事を思いつつ、一番外側に位置する先程の門を潜り、エントランス空間へとアプローチして行ってみます。くねくねとした石畳を通り過ぎると現れるのがコチラです:



靴を脱ぐ為の大きな大きな沓脱ぎ石。高さといい、少しくぼんだ感じといい、この空間に素晴らしくマッチしています。そしてふと眼を上げるとこの風景:



床に置かれた真っ赤な絨毯が素晴らしい。この色、そしてこの長さ。この絨毯がココにあるのと無いのとでは大違いで、この真っ赤な絨毯があるからこそ、あちら側に見えている日本庭園の緑が「これでもか!」と映えてくる訳です。



僕は昔から歴史の年号などを覚えるのは苦手だったんだけど、空間的な記憶力だけは抜群で、何年前だろうが、何十年前だろうが、一度行った場所や空間の詳細を殆ど忘れる事はなく、壁の色や家具の配置に至るまで詳細に覚えていることが出来ます。そんな僕の記憶を辿っていくと、このエントランス空間を形作っている石畳や屋根の形状は勿論のこと、この真っ赤な絨毯の配置などは僕の物心付いた頃から殆ど変わっていない気がします。堂々とした空間展開、そして格式の高さは「さすが皇室御用達!」という感じでしょうか(上の写真はお正月に撮ったものなのですが、大変立派なお飾りを見る事が出来ます)。

さて、ここで靴を脱ぎ、スリッパに履き替えると眼に飛び込んで来るのがこの風景です:



じゃーん!大きな池を中心とした、大変見事な日本庭園の登場です。ホテルや旅館ではなく、食事をする為だけの料亭で、ここまで見事な庭園はなかなかお目に掛かれるものではありません。



見下ろせば鯉が気持ちよーく泳いでいる姿が見えます。



この庭園を囲む様にして個室が展開してるんだけど、何十年も変わらない渡り廊下なんかも素晴らしく趣があるなー:



以前はこの廊下の一番奥に出入り口があって、そこから庭へアプローチ出来る様になっていた為に、その直ぐ右隣の部屋を予約していました:



小ちゃい頃は、廊下を挟んだ反対側のお部屋をよく覗き見してたものだけど、そっちのお部屋からは、これまた見事な裏庭が見えたりしちゃいます。



次の料理が運ばれてくる間を縫いつつ、大きな下駄を履いて広い庭を散策するのがこのお店に来る1つの楽しみだったんだけど、最近はみんな歳になってきた為に、あまり歩き回りたくないもんだから(笑)、出来るだけ入り口に近いこちらの部屋を取っています:



この料亭は、1つの家族に1つの部屋を割り振ってくれて、基本的に「何時間居ても良い」という、近年では大変珍しくゆったりと食事を楽しむ事が出来るシステムになっているんですね。



さて、お料理が運ばれてくる前に我々を出迎えてくるのが、この地方の名物、多度マメ(黄粉と蜜を練ったものに大豆が包まれているというもの)です。独特の食感と絶妙な甘さが素晴らしい!これを味わいながら世間話をしていると、先付けが運ばれてきます:



先ずは鯉のすり身の揚げ団子と頬肉。



このすり身の団子が本当に美味しくて、こればっかり注文していたという時期もありました(笑)。それこそ幾つも幾つも注文してたと思うんだけど、今思えばそんなわがまま良く聞いてくれたな‥‥と(笑)。そういう融通が利いたのも、古き良き時代という事だったのでしょうか。続いて出てきたのがコチラです:



鯉の鱗の唐揚げ。カリカリです。そしてお次ぎは鱗の酢の物の登場〜:



こんな感じで、このお店では鯉の全ての部位を様々な形で楽しませてくれるんですね。ここまで食べ尽してくれるなら、鯉も成仏してくれるだろうと思います。



続いては鯉の子供の甘露煮。頭からしっぽまで丸ごと食べられます。そして南蛮漬け。



と、ここで出てきました!このお店に来たら絶対に味わって頂きたい一品!



白みそ仕立ての鯉こくです。素晴らしくコクがあって味わい深い一品となっています。今まで色んな所で鯉こくを食べてきたけど、このお店の鯉こくが一番美味しいかな。そしてそして、来ました、このお店自慢の一品!



鯉の洗いの登場〜。このお店では酢味噌ではなく、ワサビ醤油で頂きます。



普通の身と尾に近い部分が出されるのですが、シコシコとしていて全く臭みはありません。よーく見ると、身が反っていて少し縮れているのが分かるかと思うんだけど、これは本当に新鮮な活きた魚の身を洗った場合にしか出ない現象なんですね(←どうでもいいマメ知識)。この鯉の洗いを食べる為だけにココに来ても良いと思える、そんな素晴らしいクオリティとなっていると思います。

ちなみにこのお店では、群馬から仕入れた鯉を、餌無しの状態で屋敷内の池で2ヶ月間泳がせる事によって川魚独特の臭みを消しながら身を引き締めた上でお客さんに出しているそうです。そしてこの洗いに続くのがこちら:



鯉の塩焼き!塩味だけでもいけるけど、ここにレモンや酢を少し加えるともう絶品!鮭などとは又ひと味もふた味も違った、何とも言えない味わいが広がります。そして鯉の煮付けも:



真ん中に見えるのは鯉の卵なのですが、大変上品なお味に仕上がっていると思います。



こんな感じの鯉料理が次から次へと出てくるんだけど、比較的ゆっくりと出てくるので、その間に庭へ出掛けて行って、庭園の風景を楽しむ事が出来ちゃう所がこのお店の醍醐味!やはり「食事を楽しむ」とは、料理の味もさる事ながら、そこから見える景色、音、そして雰囲気など、我々の5感全てを駆使して楽しむ総合芸術だと僕は思います。

そしてそして、このお店のメイン料理がコチラです:



鯉の素揚げの和風あんかけ風の登場〜。鯉が丸ごと一匹揚げてあり、そこに野菜炒めあんかけを載せた一品。



鯉の身が一口サイズに切ってあって凄く食べ易い。そして見た目ほど辛く無く、ご飯がすすむ、すすむ!

満足、大満足です!

上述した様に、僕は生まれた時からこの料亭(=絶品料理もさる事ながら、滅多にお目に掛かる事が出来ない質を伴った日本庭園と日本建築)へ毎年1月2日に訪れるという生活を続けてきました。もしかしたら、この様な素晴らしい建築に小さな頃から触れてきたこと、その様な空間に身を置きながら、そこに展開する空間のプロポーションや色使い、更には空間構成などを知らず知らずの内に体験してきたことが、現在の僕の建築的な感覚の基礎となっているのかも知れません。



更に言うならば、この様な体験は、現在の僕の趣味となっている「食べ歩き」、ひいては「食事とは、そこで提供される料理の味だけではなく、その場の雰囲気などを含めた総合芸術なのである」という考え方や、コンビニやファーストフード全盛期の現代において、一日掛けてわざわざ美味しい料理を楽しみに行くという行為を、何の迷いも無く素直に受け入れる素地を育んだのだと思います。

だからこそ、お昼のランチに2―3時間も掛けてゆったりと食事をする、バルセロナを中心とした地中海の社会文化にすんなりと溶け込む事が出来たとも言えるのです。



素晴らしい日本庭園を眺めながら鯉料理に舌鼓を打つ事が出来る鯉料理の老舗、大黒屋。大変おいしゅうございました!星、三つです!!
| 地球の食べ歩き方 | 16:03 | comments(3) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
ボストンは牡蠣が美味しいという事を発見してしまった!:ネプチューンオイスター(Neptune Oyster)
寒い。非常に寒い!!未だ10月上旬なのに、ボストン(ケンブリッジ)の最低気温は10度以下で、トレーナー無しじゃあ過ごせないくらいになってきました。Tシャツを着てカッターを着て、その上にトレーナーを着て、更にその上にパーカーを羽織って外を歩くなんて、バルセロナだったら12月中旬の格好ですよ!今からこんなに寒くて、冬本番になったら一体どうなるんだろう‥‥。



聞く所によると、ボストン市からMITに掛かっているこの長―い橋(MITの真ん前に掛かってるのに何故かハーバード橋と言うらしい)も、冬になるとピューピューと強風が吹き付けるので、歩いて渡るのが不可能になるんだとか。それよりも何よりも、12月になるとこのチャールズ川が凍るっていうんだから、この地方の冬の厳しさが分かると言うものです。



さて、こっちに来て偶々知り合いになった深見さん(慶応大学からMITに来られてた方)にスタタ・センター(MIT Stata Center)を案内してもらった事は以前のエントリで書いた通りなのですが(地中海ブログ:フランク・ゲーリーの建築その2:スタタ・センター(Stata Center)の内部空間)、帰国される直前に「美味しいオイスターバー知ってるよ」と言われるものだから、「これはチャンス!」とばかりに一緒に連れて行ってもらう事に。

今思えば、バルセロナでは一度も生牡蠣を食べた事はありませんでした。牡蠣で有名なのは、それこそ毎年夏にバカンスで滞在しているスペイン北部のガリシア地方なんだけど、今年も生牡蠣の屋台の前を通っただけで、ひたすらワインとタコ煮だけを食べてた様な気がする(地中海ブログ:磯崎新さんが「生涯食べた中で一番美味しかった」と絶賛する程のガリシア地方の名産、タコ煮 (Pulpo a Feira))。



多分僕が初めて生牡蠣を食べたのは、小学校1年生か2年生くらいの時の事、実家にドサッと殻の付いた生牡蠣が届いた事があって、その時食べたのが初めてだったかなと思います。何か良く分からないけど、僕の家には時々箱に入った伊勢エビが届いたり、何やかんやと色々なものが何処からともなく届く不思議な家だったんですね(笑)。しかも衝撃的だったのは、その伊勢エビとか箱の中で未だ生きてて、ゴソゴソと動いてた事を今でも鮮明に覚えています。

おっとっと、又脱線しそうなので話を元に戻すと、そんな小さな子供には生牡蠣の美味しさなんて分かる筈も無く、又、それ以来生牡蠣を食べる様な事もそれ程無く‥‥ましてやオイスターバーなるお洒落な響きのするお店に寄りついた事も無く‥‥つまり「オイスターバー初体験!」と言う訳で、ルンルン気分で行ってきたと言う訳なんです。

今回連れて行ってもらったのは、ボストンの港近くにあるイタリア人街(ノースエンド)に軒を連ねるNeptune Oysterというお店。どうやら知る人ぞ知る美味しいお店らしい(深見さん、ありがとう!)。



コンタクト
Address: 63 Salem St.Boston, MA 02113
Tel: 6177423474


狭い店内には普通に座って食事が出来るテーブル席の他、カウンター席が用意されていて、一人で来ても全く問題無い雰囲気。ただ、相当な人気店らしく、店の中は勿論、外にまでお客さんが溢れ出していた事などから、ゆっくり&ゆったりと食事を楽しむって言う雰囲気じゃあ無いかなと思います。かく言う僕達も、行ったは良いけど席が無く、待ち時間を聞いてみた所45分くらいだと言われたので携帯の番号を伝えて近くのカフェで時間を潰す事に。で、感心したのが丁度45分くらい経った頃に、ちゃんと携帯電話に「空きましたよー」みたいな電話がかかってきた事!これ、スペインだったら絶対1時間以上の誤差があって、下手したら携帯に電話なんか掛かってきませんからね(苦笑)。と言う訳で、お腹もいい具合に空いてきた事だし、早速お店に入って先ずは飲み物から:



これは発泡酒みたいなものだったと思うけど‥‥名前は忘れた(笑)。飲み易くてなかなかイケル。そうこうしている内に、店員のお姉さんが何十種類という牡蠣の名前が書かれた伝票を持ってきて、「好きな牡蠣にチェック入れてね〜」とか言ってる。え、いや、こんなに種類があったら何が美味しいのかさっぱり分からないんですけど‥‥(値段はどれも1つ2,5ドルくらい(日本円で200円くらい))。と言う訳でオススメを聞いたら、ボストン近郊で採れたのが美味しいという事で、その中から4種類を注文しました。そしてメインの生牡蠣の前にはこちらを:



ボストンに来たら絶対に食べなきゃいけない名物料理の1つ、クラムチャウダーです。クラムチャウダーって言う名前だけは良く聞くので知ってたんだけど、実はどんな食べ物なのかはさっぱり知らず‥‥。で、出てきてみれば、まあ、早い話がシジミの入ったクリームスープって所だと思います。食べてみた感じは普通に美味しいかな。っていうか、正直アメリカでの食事には全く期待して無かった為に、僕の料理に対するハードルがかなり下がっている事も手伝って、このスープが絶品に思えてきた(笑)。特に冬場とかの寒い日には、こういう暖かいスープはありがたいに違いない。こういう場面に遭遇すると、料理というのはその地方の地理的特異性を汲み取りつつ、味付けや食事をする環境など全てを考慮した総合芸術だという事を思い出させてくれますね。さて、そうこうしている内に今日の主役の登場です:



氷の上にのった、如何にも「新鮮そのもの!」って感じの生牡蠣〜。真ん中にあるのはお好みに合わせて付けるソースらしいけど、個人的に牡蠣にはレモンが美味しいと思うので、ソースは付けずに頂く事に。というわけで、かなり久しぶりなんだけど、早速レモンを少しだけ絞ってパクリ。こ、これは‥‥美味しいぞー!!!



いや、本当に美味しい!ちょっとビックリしました。牡蠣ってこんなに美味しい食べ物だったんですね。すっかり忘れていました。強過ぎない潮の風味が良い感じに口の中に広がり、更に新鮮この上ないので身もプリプリ。料理記者歴3年程度の僕だけど、久しぶりの「大変美味しゅうございます!」(岸朝子)。



ちなみに、深見さんを通じて最近知り合いになった慶応大学SFCからMITにいらっしゃってる中島博敬さんには、街のど真ん中にあるLegal Sea Foodsというお店に連れて行ってもらい牡蠣フライを試食させてもらいました。これが又美味しかったんだな!しかもこのお店、シンボルマークは何処からどう見ても「およげたいやきくん」にしか見えない所が笑える。



もう1つちなみに、このお店が入ってるPrudential CenterというデパートはApple Storeの真ん前にあるんだけど、その中にはコレ又Apple Storeを思いっ切り意識したと見られるMicrosoft Storeなるものが入ってて、かなり笑った。その上、Microsoft Store店内ではポップコーンが無料で配られてて、かなりアメリカチックでここでも爆笑。

ボストンは牡蠣が安くて美味しい。歯も治った事だし、この機会に食べまくろう(笑)。
| 地球の食べ歩き方 | 10:12 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
スペインのガリシア地方にある元貴族の居城を改築したレストランその2
長かった様な短かった様なガリシア地方滞在も終わりバルセロナに戻って来たんだけど、8月中にやらなきゃいけない事が溜まりに溜まってて、帰って来てる筈なのにバルセロナには殆ど居ないという状態が続いています(悲)。実はこのエントリも空港から書いてて、「地中海に帰ってきた途端に忙しさと暑さで日常生活に引き戻されるのもチョットなー」とか思うので、しばらくは楽しく快適だったガリシア滞在を思い出して書いてみる事にします。



ガリシア地方にはローマ時代に作られた遺跡だの中世に繁栄を誇った貴族の居城なんかが所々に残ってるんだけど、と言うのもこの地方はスペインの中において最も貧乏な地域に分類され、慢性的な貧困に苦しんできたが故に都市開発を行う為の資金が無く、偶々それらの遺産が残されたという背景があるんですね(地中海ブログ:パン屋さんのパン窯は何故残っているのか?という問題は、もしかしたらバルセロナの旧工場跡地再生計画を通した都市再活性化と通ずる所があるのかも、とか思ったりして)。高い山々などが連なり、それら豊かな自然が他地域との断絶を促したっ言う背景もあるんですけどね。



僕が滞在していた村から車で20分くらい行った所にも、昔の居城を改築したと見られる4つ星ホテル兼レストランがあって、暇を見つけてはコーヒーを飲みに行ってたんだけど、「たまには」と思い、滞在中にランチを楽しんできました。と言うのも、去年このお城を発見した時に食べたランチが非常に美味しく、又とてもお値打ちだったので今年も訪問してみたという訳なんです。



何がそんなにお値打ちなのかと言うと、実はこのレストラン、かのミシュラン推薦のレストランなのに、お昼の定食メニューが何と15ユーロという超お値打ち価格なんですね。パン、飲み物、デザートに食後のコーヒーまで付いてこの値段っていうから驚きです。で、何より僕が気に入っているのがこのレストランを取り囲んでいるこの風景:



裏側には緑溢れる中庭空間が広がっていて、それを取り囲む様にホテルの個室やら、家族で過ごせるコテージなんかが配置されているんですね。



更にその広大な敷地内には、昔この地方で使われていたと見られる農具なんかが鏤められていたりして、気分はもう中世って感じ(笑)。その中でも面白かったのがコチラです:



Horreoと呼ばれる、この地方によく見られる昔ながらの穀物庫を再現したモノっぽいんだけど、ネズミや小動物が穀物庫の中に入って来られない様に、柱にネズミ返しが付いています。



「支えるもの」と「支えられるもの」と言う関係性を見事なまでに視覚化しつつ、それがそのままこの建築のデザインにもなっている。‥‥なんだか思いっ切り脱線しそうだからこの話はここで止めにしておこう。と言う訳で早速ランチを頂こうと思い席に案内してもらったんだけど、前回はお城の雰囲気を味わおうと室内で食べたんで、今回はテラス席で食べてみる事に。



この日は気温が35度近かったんだけど、日陰に入るとカラッとしていた上に、吹いてくる風が大変心地良かったので、大変気持ち良くランチを取る事が出来ました。という訳で先ずはパンから:



3種類のパンはどれも中身がギュッと詰まってて、非常に美味しかった。そして今日のワイン:



名前は‥‥忘れた(笑)。何度も書いている様に、ガリシア地方というのはワインの名産地で、どんなワインを飲んでも本当に美味しい!‥‥という事で誤摩化しておこう(笑)。で、今日の一皿目がコチラです:



で、出たー!去年も頼んで、その味が忘れられなかったCecina de Leon con Pimientos asados del Bierzo!コレ、一体何かと言うとですね、ガリシアの直ぐお隣のレオン地方の特産品である牛の干し肉にピーマンの付け合わせなんですね。



早い話が牛の生ハムみたいなものかな。って言っても、豚ちゃんをベースにした生ハムとは風味も旨味も全く違って、大変美味しゅうございます!‥‥ふと思ったんだけど、今から20年くらい前に放送してた料理の鉄人での岸朝子さんのキャッチフレーズが「料理記者歴40年」だったから、今なら料理記者歴60年かー。60年もやってるって事は、地球上に存在する美味しいもの、殆ど食べたんだろうなー。で、今日の2皿目がコチラです:



ガリシア牛のステーキ!ガリシア地方って海が近い事から「お魚」ってイメージが強いんだけど、実はガリシアの牛と言うのは「スペインで最高の牛肉」って言われる程の質を誇ります。つまり言ってみればスペインの神戸牛って事。ちなみにスペイン語で牛はVacaなので、スペイン人は神戸の事を「バカ(牛)の都市(la ciudad de las vacas)」と言っています(笑)。



このお肉はステーキソースではなく、粒の大きい塩を振りかけて食べるんだけど、柔らかくジューシーで、もう最高!言う事はありません。



何時もの事ながら、ここまでで本当にお腹が一杯だったんだけど、デザートには今日のオススメと言う苺のムースを頼んでみました。これが又、苺のエッセンスだけを取り出したかの様な、そんな濃厚なムースでこの上なく美味しかった。で、締めは勿論コチラで:



食後のコーヒーです。以前のエントリでも書いたんだけど、ガリシア地方ではコーヒーミルク(Café con leche)を頼むと、バルセロナで言う所のコルタード(コーヒーにミルクを少しだけ入れたもの)が出てきます(どうでもいいガリシア地方のマメ知識終わり)。で、上述した様に、これだけ食べて飲んで、お値段は15ユーロぽっきり!信じられません!15ユーロですよ、15ユーロ!



この空間に身を置いてゆったりと食事を楽しんでいると、やはり食事というのは料理の質だけではなく、それを楽しむ空間も非常に重要な要素なんだなという事を思い出させてくれます。そう、料理とは味覚だけの問題なのではなく、その場の雰囲気や環境が非常に重要な要素となってくる総合芸術なんですね。



良く考えたら僕はこの様な「食事の楽しみ方」というものを、小さい頃からごく自然に学んできた様な気がします。と言うのも僕の家族は「食べるの大好き家族」で、休日になっては、やれあっちだ、やれこっちだと、色んな所に強制的に連れて行かれ(笑)、美味しいものを食べ歩いていたからです。で、これ又何でか知らないけど、彼らが好んだのは「美味しいものを見つけ出す」というだけではなく、そこに展開している風景や情景、はたまたそこに辿り着くまでの道のりや、ちょっと趣向の変わった場所を敢えて選んでいた様な気がするんですね。



‥‥小さい頃、毎年の様に行っていた川岸のレストランがあったんだけど(小さかったからそのレストランが何処なのかは不明)、そのレストランは大きな大きな川の向こう側に、まるで竜宮城か何かの様に川に身を乗り出す様にして建っていました。で、そのレストランがちょっと変わっていたのはアクセス方法で、と言うのも近くにはアチラ側へ渡る橋も何も無い為に、川のコチラ側に車を止めてから、無線か何かで「着いたよー」みたいに連絡をすると、そのレストランの船乗り場から小さなボートが出て、それに乗ってアチラ側の岸まで行くというアプローチ方法だったのです。

今思えば、多分駐車場はアチラ側のレストランの真ん前にもあったとは思うんだけど、そのボートに乗るのが一興だったみたいで、「敢えてコチラ側に車を止めボートを呼んでいた」様な気がします。しかもそのボートが川を渡っている間、大音量で歓迎の音楽が流れたり(笑)、レストランの軒先を見ると、女中さん達が皆で旗を振って「ようこそー」みたいにやってたり(笑)、帰る時は「蛍の光」が流れ、軒先を見るとみんなで「サヨナラー」とか言って旗を振りまくってるという、全くもって近所迷惑も甚だしい(笑)、非常に「変わった」レストランだったんですね。

何故変わっているのか?

何故ならレストランというのは元々食べる事が目的であって、その機能だけに特化してみれば、上述の様な演出はネガティブでこそあれ、ポジティブに働く事など全く無いと思われるからです。いちいち客をボートなんかで渡してたら、それこそ時間の無駄だし燃料費も馬鹿にならないし、そこを効率化する事によって客の回転率を上げる事だって十分に可能な訳ですからね。



しかしですね、実はそういう「無駄」と思える様な演出こそが、レストランでの滞在を非常に楽しいものにし、そこで味わう料理にも特別の味わいを加味しているのかな?と、子供心にもそんな事を思っていました。ひいては、効率だけでは推し量れない生活の質とは、「早く食べられる」とか、「ご飯だけ食べてサヨウナラ」とか、「出されたご飯が美味しかった」とか、そういう事ではなく、「実はこういう無駄の中にあるのでは?」と言う事を、こんな日常生活の中から「体験として」学んでいった様な気がします。



今思うと、あのレストランは客を船に乗せて川を渡らせる事で、「ここからは日常の世界とは違う非日常的な世界に入って行くんだぞ!」という、今で言う所のディズニーランドも真っ青の物語創出を試みていたのでは?と思います。そして食事というのは、何も味覚だけで楽しむという問題なのではなくて、それを目的としつつ、そこに至るまでの一連の物語、風景をも含めた演出が非常に重要な要素であるという考え方を僕に教えてくれたりもしました。



このガリシア地方のど田舎のレストランで食事をしていると、そういう、結構基本的な事なんだけど、最近ではなかなか出来なくなった「食事を楽しむ」と言う体験、味覚だけではない5感全てを使った総合芸術という体験を僕に思い出させてくれます。

こんなスペインのド田舎、日本人の皆さんは多分行く様な事は無いとは思うんだけど(笑)、もしO Barcoという町の近くに行かれたら是非寄って頂きたいレストランです。

星三つです!
| 地球の食べ歩き方 | 07:13 | comments(4) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
サンティアゴ・デ・コンポステーラの美味しいレストラン情報:O DEZASEIS
せっかくサンティアゴ・デ・コンポステーラまで行くのだから、美味しいものを食べようと思って、事前にネットでレストランを検索したのですが、これが予想に反して上手くいかず‥‥。僕の経験上、地方の中核都市には一人や二人くらいは日本人が住んでて、その人達が地元のお勧めレストラン情報などを提供してくれていると言うのが今までのパターンだったんだけど‥‥サンティアゴ・デ・コンポステーラには誰も住んでないのかな?‥‥と呟いてみよう。



この街には非常に歴史が古く、由緒正しいサンティアゴ・デ・コンポステーラ大学(この大学の起源は1495年にまで遡る)もあって、大学ブランドが大好きな日本人には人気が出てもおかしくは無いと思うんですけどね(スペインの大学ランキングについてはコチラ:地中海ブログ:スペインの大学ランキング:総合ランキングではなく、学部間で競い合うというシステム)。話が逸れたついでにもう1つ。街中を探索していたらこんなものに遭遇しました:



キティちゃん巡礼者バージョン(笑)。日本人なら誰でも知ってるキティちゃん!ヨーロッパ中何処へ行っても見掛けない都市は無くて、その影響力は本当に凄いなと、そう思わされます。日本のキャラクター文化とヨーロッパの観光地におけるその影響などについては、話し出すと長くなるので次回のエントリに譲る事にします。で、話を元に戻すと、「サンティアゴ・デ・コンポステーラ、レストラン、お勧め」などのキーワードで検索して出てくるのは、トリップアドバイザーとか、その辺のサイトばかりなんですね。



と言う訳で、今回は現地で探してみる事に。ネットでの検索が今ほど発達していなかった頃、旅先で僕が良くやっていたのが、ホテルのフロントや商店街のおばちゃん、スーパーのレジの人など10人くらいに、自分が良く行くレストラン、美味しいと思うレストランを3つくらい挙げてもらうという方法です。この方法は特に中ぐらいの街だと非常に有効で、と言うのも、それらリストアップしてもらったレストランがかなり重複する事になるからです。いわゆるマニュアル版の集合知(笑)。とか思ってたら予想通り!10人中なんと7人もの人が挙げたレストランがありました。それがコチラ:



O DEZASEIS: casa de Xantar

Address: Rua de San Pedro 16, 15703 Compostela
Tel: 981564880
Email: researvas@dezaseis.com
Web: www.dezaseis.com

場所は前回のエントリで書いたアルヴァロ・シザ設計によるガリシア現代美術センターの直ぐ近く(地中海ブログ:サンティアゴ・デ・コンポステーラ:アルヴァロ・シザのガリシア現代美術センターその2)。San Pedro通りと言われるこの通りには結構沢山のレストランが犇めき合っているのですが、その内の1つが今回のレストランに当たります。間口が狭かったので、「結構こじんまりしてるのかな?」と思いきや、中に入ってビックリ!



奥が深くて、しかも2階建て!



下階に降りて行くと、何と中庭空間まであるじゃないですかー!壁には昔の調理器具(?)なんかが掲げてあって雰囲気は抜群。



で、「早速食事を」と思ったのですが、超人気店らしく14時15分の時点で既に満席の状態でした。店員さんに聞いてみた所、「今からなら1時間くらいは待たなきゃいけないけど‥‥」って言われたんだけど、「まあ1時間くらいなら良いか」という事で待つ事に。



さっき見て来たばかりのガリシア現代美術センターに戻りつつ、極上の空間に酔いしれていたら、あっという間に約束の時間に。で、今回通された席がコチラです:



じゃーん、中庭の一番奥の特等席!やったー!客層を見てみると、半分くらいが観光客、半分くらいが地元客といった感じかな。で、明らかな違いは、観光客がガリシア風タコ煮を中心にアラカルトで注文しているのに対して、地元客と見られる人達は一様にランチ定食を頼んでるという点。郷に入れば郷に従え。と言う訳で今日はランチメニューを試してみる事に。飲み物、そして勿論パンも付いてきたんだけど、写真撮るの忘れた!そうこうしている内に、今日の一皿目の登場〜:



ラコン(Lacon a la Gallega)と呼ばれる、豚の塩漬けモモ肉(ガリシア風)です。これはタコ煮やししとう(Pimiento de Padron)と並ぶガリシア地方の名物料理!で、早速いただいてみると、これがコクがあって、しかもジューシーで大当たり!上に振りかかってるパプリカとオリーブオイルとの相性も抜群!ラコンはジャガイモを蒸したものと一緒に出てくる事が多いんだけど、このお店では特製のチーズと一緒に出てきました。これが又合うんだな!あまりに美味しかったので調子にのってバクバク食べてたら、これだけで結構お腹が一杯に!そうこうしている内に今日の2皿目の登場〜:



サーモンに車エビのソース和え(Salmon en mollo de langostinos)。このサーモンがコレ又大当たり!フォークでツツいてみると身がポロポロとこぼれ落ちるほど新鮮なサーモンの上に、車エビのエッセンスだけを摂ったかの様な重厚なソースの美味しい事!もうここまででお腹が一杯だったんだけど、サンティアゴ・デ・コンポステーラに来てこれを食べない訳にはいきません!



サンティアゴケーキ(Tarta de Santiago)こと、アーモンドケーキです。中世に発明されたと言うこのケーキは、バルセロナのレストランでも見掛ける事があるのですが、お味の方はイマイチな場合が殆ど。それに比べ、このお店のケーキは自家製という事もあり大変美味しかった!で、締めは勿論こちらで:



コーヒー。非常に面白い事なんだけど、ガリシア地方でコーヒーミルク(Café con Leche)を頼むと、バルセロナで言う所のコルタード(ブラックコーヒーに少しミルクを入れたもの)が出てきます。で、更に面白い事に、この地方ではコーヒーを頼むとクッキーなんかが付いてくる場合が殆どなんですね。しかも一杯120円程度とバルセロナ市内に比べて圧倒的に安い!

これだけ食べて飲んで、食後のコーヒーまで付いてお会計は12ユーロポッキリでした。これは安い!そして美味しい!

今までサンティアゴ・デ・コンポステーラ市内の美味しいレストラン情報ってナカナカ無かったんだけど、このお店はお薦めです。シザの建築を見に行ったら、その帰りに寄るのも良いかもしれません。只1つだけ注意しなければいけないのは、お店の店員さんに聞いた所、連日超満員なので必ず予約をする事を勧められました。どうやらこのお店はランチタイムに2回転させるらしく、予約をしていない飛び込みのお客さんは、一回目のお客さんが出て行く15時15分頃まで待たなきゃならない事を告げられるそうなのですが、日によってはそれでも入れない事があるのだとか。という訳で、必ず電話して確認してから行きましょう。

何はともあれ、星三つです!
| 地球の食べ歩き方 | 18:43 | comments(9) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
磯崎新さんが「生涯食べた中で一番美味しかった」と絶賛する程のガリシア地方の名産、タコ煮 (Pulpo a Feira)
ガリシア旅行から帰ってきて、早1ヶ月が経とうとしています。



虫達の涼しげな合唱で夜が更けていき、鶏の鳴き声と共にさわやかな朝を迎えていたあの日々から、もう一ヶ月も経つのかと思いつつ、帰ってきたら帰ってきたで何だか急に忙しくなっちゃったりして、それはそれで結構充実した8月かなーと思わない事も無いかな。



スペインでは、銀行のお偉いさんから路上清掃のおばちゃんまで、働いている人は誰しも3週から1ヶ月程のバカンスを取るので、7月から8月にかけては市役所からレストランまで、都市は殆ど機能しないと思った方が無難なんですね。どれくらい都市機能が麻痺するかと言うとですね、朝晩にやってるニュースが分かり易いと思うんだけど、何時も見ているスペイン国営放送(TVE1)では、7月辺りから看板アナウンサーの姿がチラホラと消えかけて、8月に入った途端、メインキャスターの姿がパッタリとなくなってしまいました(笑)。



スペイン国営放送が誇る、美人過ぎるニュースキャスター、Maria Casadoさんなんて、7月頭から一度もテレビで見かけませんしね(地中海ブログ:スペインの美人過ぎるニュースキャスター、Maria Casadoさんって‥‥)。まあ、ニュースキャスターだって夏休み取りたいのは当然で、それは全然構わないんだけど、みんながみんな一斉に集団でバカンスをとって、それが公共サービスの質に影響を与えてるって所が如何にもスペインらしいかな(苦笑)。朝のニュースの劣化ぶりなんてちょっと凄くって、見習いだと思われるキャスターに20分くらいの原稿を読ませて録画し、それを永遠に流してるだけって言う体たらくぶり(笑)。だから毎朝家を出る前にニュースを見て、その後ジムに行って運動しながら同じ局を見てると、さっき家で見てたものと全く同じ映像が流れてたりする訳ですよ!まあ、つまりはこの時期にはスペインでは真っ当な情報が入ってこないので、こんな時にこそ、それを受け取る側のメディアリテラシーが試されるって事なんですけどね。そうか!スペインのメディアは時期によってはまともな情報を流さないと分かっているからこそ、スペイン人のメディアリテラシーは驚く程高い訳だ!・・・なんか妙に納得してしまった。

と言う訳で、今月はガリシア&ポルトガルに焦点を当てた記事を中心に書いていこうかなと思っているのですが、今日はちょっと息抜きに食べ物の話題で行きたいと思います。食べ物、ガリシア・・・と言ったら、そう、勿論タコです。何でか知らないけど、ガリシア人ってタコが大好きなんですよねー。ちょっと前に、知り合いのガリシア人が「日本語を覚えたからちょっと聞いてー」とか言ってきたので、何を言うのかな?と思いきや:

「タコを食べますか?」

とか言ってきた(笑)!
「他に覚える事あるでしょ!」とか思ったけど、何でもかんでもタコに結び付けようとする、その執念には恐れ入った瞬間でした。そんなガリシア人達のタコ好きを良く表していると思うのが、ガリシア地方でよく見かけたのがコチラです:



タコの絵が付いてるトラック(笑)。更に驚くべき事に、ガリシアではどんな山奥にある小さな村にも、毎日の様にタコが届けられ、月に一回は村を揚げての「タコ祭り(Pulpo a feira)なるものが開催されるらしいんですね。で、僕の滞在中にも近くの村などで何度かタコ祭りが行われていたので、ここぞとばかりに行って来たと言う訳です。



村のメイン通りや広場などが歩行者空間にされ、所狭しと様々なお店が軒を連ねています。美味しそうなチーズやソーセージ、手作りケーキなどのお店の中に、ありました!お目当てのお店が:



タコの直売店!一つの村のお祭りとは言え、結構沢山のタコ関連のお店が出てたんだけど、何処も長蛇の列、列、列!!茹でたタコをその場で捌いてもらって、その裏に用意してある、即席テーブルでワインと一緒に頂くのがこの上なく美味しいのだとか。で、ちょっと驚いたのがコチラです:



実は今回初めてタコを煮ている所を直に見たのですが、土管の様な大きな大きな鍋の中に何匹ものタコを入れてかなり豪快に煮ていたんですね。お店の人によると、タコを美味しく煮る秘密は実はこの鍋にあるのだとか。と言うのも、鍋の素材がタコの味に大きく関わってきて、美味しく煮る事が出来る鍋は銅で出来てるものじゃないといけないのだそうです。そしてその中に一匹ではなく、なるべく沢山のタコを入れて一緒に煮るのがコツなんだって。ヘェー、ヘェー、ヘェー。そして更に驚くべきものを見てしまいました:



鍋の中から良い具合に茹で上がったタコを取り出したと思ったら、それを包丁ではなく、何と、鋏で切り始めたんですね。こんなやり方で捌いていたとは、ハッキリ言って思いもよりませんでした!一口サイズに切り分けられたタコを、これ又、この地方独特の木で出来たお皿に盛って、塩コショウ、そしてオリーブオイルで味付けをして出来上がったのがコチラです:



ガリシア風タコ煮。硬すぎず、柔らかすぎず、絶妙な硬さに茹で上がっている。「大変おいしゅうございます!」そしてこのタコに相性が良いのが、この地方で栽培された葡萄から作られたワイン!あまり知られてないんだけど、実はガリシア地方って言うのは、上質なワインが作られている事で非常に有名なんですね。

昔、何処かの雑誌の特集で、磯崎新さんに「今まで食べた中で一番美味しかったものは何ですか?」って聞いてるインタビューがあって、てっきり何処かの3星レストランの名前でも挙げるのかと思いきや、「(ガリシア地方の)ア・コルーニャの大衆食堂で食べたタコ煮は最高だった」と答えられていたのを今でも覚えています。それを読んだ時、「また、またー、さすが捻くれものの磯崎さん、3星レストランと言わず、大衆食堂のタコって言う所が如何にも通っぽい」とか思ったものだけど、実際にガリシアでタコを食べてると、「本当にそうかも」と思えてくるから不思議です。それほど美味しいんですよ、ガリシアのタコ煮って言うのは!
| 地球の食べ歩き方 | 06:00 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
ガリシア旅行その10:元貴族の居城を改修したレストラン:Pazo do Castro
ガリシア地方にはローマ時代の遺跡や昔の貴族の邸宅なんかが沢山残ってたりするのですが、その内の幾つかは改修され、観光名所やホテル、もしくはレストランなんかに生まれ変わり、今でもその趣きある空間を体験する事が出来るんですね。



上の写真はPetinと言う人口500人にも満たない小さな小さな町に残っているローマ時代に建設された橋なんだけど、この町の住民はみんな、この橋の事を大変誇りに思い、そして町の自慢として大切にしてきました。この町の人は誰でも1や2つ、この橋に関する思い出があるみたいで、僕がこの橋の近くを歩いてたり、佇んでいたりすると、「この橋はねー・・・」とか、「私が小さい時、ここでね・・・」みたいな感じで話しかけてきてくれるんですね。多分、こういう所から人のアイデンティティっていうものは生まれ、町に対する愛着が芽生え、それが原風景というものを守り、その町の絆みたいなものに育っていくのかなー?とか、なんか、こんな小さな田舎に身を置いていると、そんな町の成り立ちの原型みたいなものを感ぜずにはいられません。

さて、先日はこの町から少し内陸部へ入ったお山の上にある元貴族の居城に行ってきました。と言うのも数年前、このお城がガリシア州政府の管轄の下改修され、4つ星ホテル兼レストランとして生まれ変わったと言う事を聞きつけたからなんですね。



何でも聞く所によると、このお城はピレネー山脈を越えてサンティアゴ・デ・コンポステーラへと抜ける唯一の谷道を山の上から見張る為に15世紀にこの辺を収める領主によって造られたのだとか何とか。故にお山の上からの見晴らしは抜群!そして何よりも周りには何も無いので静寂そのものです。



お城の入り口付近にはテラス席が用意され、新鮮な空気を感じながら食事が出来る様になっています。僕が訪れた日はちょっと曇ってて肌寒かったので室内で食事をと思いレセプションへ行ったのですが、そこで先ず第一のビックリが待ち構えていました:



今までこのホテル&レストランを訪れた著名人達の写真が飾ってあったんだけど、このレストラン、野党第一党の党首、マリアノ・ラホイ氏を始め、民衆党(PP)の議員の人達が結構訪れてるじゃないですか!・・・そうか!もともと、ガリシアという地は、フランコやフラガと言った、民衆党の前身にあたる党の有力者を数多く輩出した地でもあり、今でも民衆党のお膝元として知られているから、夏の暑い間とかに、このホテルを拠点に党大会とか開いてても別に不思議じゃない訳だ。なんか妙に納得してしまった・・・。そして第二のビックリがコチラでした:



なんとこのレストラン、かのミシェランに名を連ねるくらいのレストランだったんですね。しかもですよ、入り口にあるメニューを見てたら、つい先日辺りからお昼のランチメニューを始めたとか書いてる。しかもその値段、15ユーロ!15ユーロですよ、15ユーロ!!今時、15ユーロって、バルセロナのその辺のレストランと同等か、もしくはそれ以下って感じの激安ランチじゃないですか!!しかもあの天下のミシェランに名を連ねる程のレストランとくれば、否が応にも期待が高まるってものです。



ワインを醸成する為の昔の器機などが飾られた空間を抜けて通されたレストラン空間がコチラ:



うーん、豪華だー!



石造りの壁に重厚な窓から差し込む光がこの上なく良い雰囲気を醸し出しています。いやー、お城ですからね、お城。ヨーロッパのお城で食事なんて初めてかも(笑)。そうこうしている内に今日のワインの登場です:



名前は・・・忘れた(笑)。ガリシアって、実は隠れたワインの名産地で、その辺に沢山のボデガと呼ばれるワイン畑と醸成場があるんだけど、白といい、赤といい、何処でどんなワインを飲んでも美味しい!



パンは4種類ある中から選べます。おかわりは自由。そして今日のAperitivoがコチラです:



チーズのムース。深い味わいのある一品、そして何より飾り付けが綺麗ですね。そうこうしてる内に、今日の一皿目の登場〜。



Cecina de Leon con Pimientos asados del Bierzo 直ぐお隣の県、レオン地方の特産品という牛の干し肉と、ピーマンの付け合わせ。初めて食べたけど、コレ何??無茶苦茶美味しい!生ハムとは又違った風味と旨味、そしてこの付け合せのピーマンの美味しい事!ハムとピーマンの組み合わせって最高かも。そして今日の二皿目がコチラ:



Morcillo de Ternera Gallega estofado al godello con patatas de abuela ガリシア地方で育成された特別な牛の首の部分を使い、長い時間をかけて白ワインと一緒に煮込んだビーフシチューです。このお肉、フォークですくい上げるだけで形が崩れる程柔らかい。そしてこのスープの美味しい事。す、素晴らしい!ここまででお腹は既に一杯だったんだけど、一応デザートには、ヘーゼルナッツのムースを頼んでみました:



Mousse de Avellanas ヘーゼルナッツの実を磨り潰して作った、これまた濃厚な味のするムース。そして勿論〆はコーヒーで。

もう本当にお腹が一杯。そして大満足。何と言ってもこんなすばらしい空間で食事が出来るって言うのが、この上なく幸せ。こういう空間で食事をしていると、やっぱり食事って言うのは、そのレストランで提供される「料理の質」だけではなく、それらの料理を「どういう空間で食すのか?」、「どういう空間の中で楽しむのか?」っていう、「5感をフルに活用した芸術なんだなー」と言う事を再認識させられます。

で、気になるお値段の方なんだけど、ここでビックリ仰天な事が起こってしまいました。普通ランチメニューにはデザートかコーヒー、もしくはデザートを選んだらその後のコーヒーは別料金っていうのが常識だと思うんだけど、このレストランのランチメニューにはデザート&食後のコーヒーまで込みだったんですね。と言う訳で今回のお勘定は本当に一人15ユーロぽっきり!これにはかなり驚きました。

料理の質良し、サービス良し、空間良し、そして料金最高(笑)。場所が場所だけにココに来る人(来られる人)っていうのは少ないかもしれないけど、近くに寄ったら是非訪れてほしいレストランだと思います。星三つです!!!
| 地球の食べ歩き方 | 19:33 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
バレンシア出張その1:ローマ時代の遺構を楽しみながら食事が出来るレストラン:ORIO
今週月曜日、バルセロナはカーニバル関連の休日だったのですが、(悲しい事に)僕は仕事で朝からバレンシアに行っていました。と言うのも、定期的に開かれているバレンシア州政府やバレンシア市役所の人達とのプロジェクト•ミーティングに参加する為だったんですね(地中海ブログ:バレンシア・バルセロナ・サラゴサ計画とカンプス(Francisco Camps)氏の汚職疑惑騒動)。このミーティング、いつもは州政府の建物で行われるのですが、今回は何故か中心市街地に位置する市役所で開かれると言うお達しが事前にあり、更に予定時間も朝から始まって13時から15時までの間中断、その後18時まで続くと言う、超変則的な時間割。「何か何時もと違うなー」とか不思議に思いながらもバレンシア入りしたんだけど、その答えが漸く判明。



どうやら先週から来週末(19日)にかけて、バレンシアでは世界的に有名な火祭りが行われているらしく、この期間は毎日の様に午後14時から市役所前の広場で花火や爆竹を上げまくる行事が行われるのだとか。と言う訳で、「どうせだったら、そのお祭りを皆で見よう!」と言う事になり、コーディネーターが気を利かせて予定を組んでくれたと、まあ、こういう事らしいんですね。

でかした、J君!何時もは、あまりパッとしないJ君だけど、やる時はやってくれるじゃないですか!!更に先週オープンしたばかりと言う、市役所から歩いて5分程の所にある、今バレンシアで話題騒然のレストランを予約してくれたとか何とかで、そこに皆で行く事に:



コンタクト
Orio:Euslal Taberna
Address: San Vicente Martir, 23
Tel: 963511992
Web: www.gruposagardi.com




入り口付近に沢山のピンチョスが並んでて、かなり美味しそう。



しかも天井には船らしきものがデコレーションされてたりして、「なかなか雰囲気が良いなー」とか思いつつも、「でも、ここって、そんな言う程特別か???」とか内心思ったりもしたんだけど、どうやら今日は僕達の為に、地下にある特別室を用意してくれているだとか。で、早速そこに降りてったんだけど、これがビックリ:



何と、ローマ時代の遺跡を利用した、かなりオシャレな空間じゃないですか!!!



昔の石が積まれている所に、赤い間接照明なんかを当てて、非日常的な空間を演出してる辺り、かなり絶妙!



僕達が食事をした空間はちょっとしたポケット空間みたいになってて、プライベートな感じで落ち着いて食事が出来る様になっていました。更にその床はガラス張りになってて、遺跡が直に見える仕掛けに:



ローマ遺跡の上に美術館を創って、そこを存分に巡らせるって言うアイデアに基づいたバルセロナ市歴史博物館がこんな感じになってるんだけど、このレストランの特別席はグループでその雰囲気を「これでもか!」って独り占め出来る様で、もう言う事はありません。これにはちょっとビックリしたぞー!!!



料理の方はと言うと‥‥「まあ、普通かな」って言う感じなんだけど、食事と言うのは、その料理の味と共に、それを味わう空間も重要な要素の一つだと個人的には思っているので、そういう意味で、今まで体験した事の無い空間での今回のランチは、大満足に足るものでしたね。星2つです!!!
| 地球の食べ歩き方 | 04:55 | comments(6) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 1/2PAGES
  • >>