地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
欧州統一通貨ユーロとヨーロッパの未来:ギリシャ再選挙
今日6月17日、渦中のギリシャではヨーロッパの統一通貨ユーロの未来、ひいてはヨーロッパの未来を決めると言っても過言では無いギリシャ再選挙が行われています。

世界経済に大打撃を与えかねない案件故に、日本でも連日報道されていると思うので知ってる方も多いとは思いますが、今回ギリシャで行われている再選挙では、財政緊縮路線継続の是非を巡って、緊縮擁護派、反緊縮派が激しく対立し、もし反緊縮派勝利なら「ギリシャがユーロ離脱を余儀なくされる」という見方が強まっているんですね。つい先日行われた世論調査では、選挙結果は五分五分、つまりどちらも勝つ可能性があるという結果が出ている為、ヨーロッパ各国の政府関係者を始めとする世界中の人々が固唾を飲んで見守っていると、そういう状況になっています。



奇しくも僕がヨーロッパに来たのはユーロが導入された正にその年でした。古い通貨(ペセタ)と新しい通貨(ユーロ)が混在するややこしい状況の中で、ヨーロッパ各国間の障壁が取り除かれ、正に「今からヨーロッパを創っていくぞ!」という活気の中に居たのが本当に昨日の事の様に思い出されます。



まあ、正直言って、来た当初はあまりの社会文化の違いに戸惑うばかりで、「自分の周りで一体何が起こっているのか?」という事がハッキリとは分からなかったんだけど、しかしそれでも「何かしら一つの新しい動きが勃興しつつある」という事、そして「我々はその喜びの真只中に居る」という事が、日々の生活の中からヒシヒシと伝わってくる、そんな刺激的な毎日だったんですね。

今思えば僕は本当に幸運にも、そんなEUの誕生からヨーロッパが一番幸せだった時期に、正にそのド真ん中で生きる事が出来、そしてその中枢で働く事が出来たと、そう言う事が出来るかも知れません。

そんなヨーロッパが今大転換を迫られています。

ヨーロッパがこれから何処へ行こうとしているのか?何処へ向かっているのか?それは僕には分かりません。しかしですね、毎日の様に新聞を賑わしている経済問題、政治汚職、軒並み上がってきている各国の失業率などを見ていると、僕の脳裏にはある一つの場面が繰り返し流れ込んできます。と言うか、この場面こそ本当に今のヨーロッパ、特に政府関係者の間に流れている空気みたいなものを表していると、そう思えてきさえするんですね:



漫画版風の谷のナウシカ。世界中の人々が自分自身の私利私欲の為に戦争を繰り返している一方で、突然変異の粘菌を救う為に次々と犠牲となって死んでいく蟲や王蟲達の意図にナウシカが初めて気が付いた場面です。ここで発せられるナウシカの言葉、この言葉こそ正に今ヨーロッパの政局全体に漂っている雰囲気なのではないでしょうか?



「もうなにもかも手遅れだ‥‥。こんなに世界は美しいのに‥‥こんなに世界は輝いているのに」

注意:手元にあるのはスペイン語版なので台詞はこんな感じだったかなという意訳


ちょっと悲観的過ぎるかも知れないけど、僕がこの数週間、各国から訪れてくる政府関係者、市役所関係者(研究者はちょっと置いといて)、私企業関係者の人達なんかと話していて感じたのは正にこのレベルの悲観的なものでした。

その一方で、街路レベルの人々の間には未だに楽観論が漂っていると言えるかも知れません(スペインだけかも)。つまりは僕が見た感じ、中央と街路でかなりの温度差、意見の2極化が見られるという事なんですね。まあ、僕の希望も兼ねて言っておくならば、この様な街路レベルに生きる人々の間に未だに楽観論が多数を占めているという事、みんな暗くならずに生きる意志を持っているという事、それこそがこの様な状況の中における唯一の希望であると、そう付け加えておく事にします。

さあ、ヨーロッパの未来を決める投票結果の開票が今から始まります。

追記:
たった今(21時)、選挙速報が出ました。開票率40%の時点で、右派(緊縮財政擁護派)の勝利確定だそうです。これで一応ギリシャはユーロ圏残留という方向性で動いていくと思います。
| ヨーロッパ都市政策 | 03:40 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
(速報)フランス大統領選はオランド氏が勝利:ヨーロッパの都市における公共空間の重要性を垣間見た
たった今、ヨーロッパ中が注目していたフランス大統領選の結果が出ました。結果は51-52%を獲得したオランド(Hollande)氏の勝利に終わりました。



詳しい選挙結果などは明日の新聞を待つ事として、今回の選挙をテレビで見ていて非常に印象的だったのは、オランド氏の勝利が確定すると同時に、途方も無い数の人々が街中の公共空間に集まり出し、そこでシャンパンを開けたり、抱き合いながら勝利を祝ったりと、正にワールドカップ顔負けの祝祭が繰り広げられていた光景だったんですね。



これを見ていて、「政治が生きてるなー」と思うと同時に、「この様な空間の使い方、都市の使い方って、とってもヨーロッパ的だなー」と思っちゃいました。

スペインの哲学者、オルテガ・イ・ガセットの言葉にこんなものがあります:

「人は家の中にいるために家を創る。そして人は、家から出る為に、同じ様に家から出てきた人達と会う為に都市を創る」
“la ciutat, pero, es funda per sortir de casa i reunir-se amb altra gent que tambe ha sortit”. (Ortega y Gasset)

ヨーロッパ都市における公共空間とは、単なる住居と住居の間に空いている空間、もしくは目的地から目的地へと向かう為の単なる街路なのではありません。そこは人々が集う場所であり、共に喜ぶ場所であり、討議を通して民主主義が花咲く場所でもあるのです。故にその都市の公共空間の賑わい具合を見れば、その都市にはどれだけ活気があるのか?その都市はどれくらい豊かなのかを感じ取る事が出来るんですね。

今回のフランス大統領選で垣間見られた人々の反応は、フランスという国の豊かさ、そしてそこに住む人々の底力を見せ付けただけなのではなく、正にパブリックスペースの真の力、「都市は我々のものである」という現象が垣間見られた瞬間でもあったのです。
| ヨーロッパ都市政策 | 07:30 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
ベルルスコーニ伊首相、党の名前を「レッツゴー、いい女達」党に変える事を示唆
今週は何か忙しかった。って言うか、「歯が痛いなー」って思ってたら、何時の間にか一週間が終わってたって言う方が正しいかな(苦笑)。



週の始めは、マニュエル・カステルがバルセロナに創った「新しいテクノロジーが引き起こす都市への影響」を研究してる(っぽい)研究所に突然呼ばれて発表させられたり、道を歩いてたら欧州投資銀行の元都市投資部門のディレクターにバッタリ出会っちゃったり、結構ビックリ系の事が続いた一週間だった気がします。

そんな中、今週僕が一番驚いたのがこのニュース:

「ベルルスコーニ伊首相、自分の政党の名前を「レッツゴー、いい女達」党に変える事を示唆!」

って言うニュースだったんですね。まあ、今更ベルルスコーニの発言にはちょっとやそっとの事じゃ驚かないけど、今回のはちょっと驚いた(笑)。ちなみに日本ではあまり流通してないベルルスコーニのマル秘映像はコチラ:



もう、言葉がありません・・・。本当にこの人、一国の首相か?
スペインの新聞は今回の事件をこんな風に伝えています:

「ベルルスコーニといい女達党(Berlusconi y el Partido Tias Buenas)」



ベルルスコーニ:「我々の党の名前、自由国民党と言う名前は国民の胸には響かない。こんな名前では何も伝わらないんだよ!と言う訳で名前を変えようと思うんだが、何か良い案はないかね?アンケートをしてもいいんだけどね・・・私としては、我が党の新しい名前に最も相応しいのは、「レッツゴー、いい女達」党なんていいと思うんだがなー。絶対成功間違い無しだと思うんだが、どうかね、諸君?」
"Cambiaremos el nombre del Pueblo de la Libertad porque no le llega a la gente al corazón. Aceptamos sugerencias y realizaremos sondeos…Pero por lo que me dicen el nombre que mayor éxito tendría es Adelante Macizas"

「いい女達」党って、ベルルスコーニさん、あなた、一体何考えてるんですか(笑)。で、もっと分からないのは、このベルルスコーニの発言のあった翌々日の昨日、イタリアではベルルスコーニ内閣に対する信任決議案があったんだけど、それが下院で可決されたって事。実は前にも似た様な事があって、「ベルルスコーニが未成年売春してるんじゃないのか?」っていうのがイタリア社会全体を巻き込んだ大問題になった週、イタリアではベルルスコーニ政権の支持率が2%上がったんですよね(苦笑)。

謎です、イタリアって国は本当に謎に包まれています。未知の世界です。
| ヨーロッパ都市政策 | 11:53 | comments(4) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
ヨーロッパ各国の労働時間と有給休暇について
今週はバルセロナの市内各所でSONARや地区祭りなんかが行われてて、それらのお祭りに呼応するかの様に、先週までは曇り気味だった空もようやく地中海らしい晴れ渡った青空に変わってきました。いよいよバルセロナも夏本番!街中に活気がみなぎっているのが肌で感じ取れる季節となってきましたね(SONARについてはコチラ:地中海ブログ:初音ミクに使われている技術ってメイド・イン・カタルーニャだったのか!って話)。



この季節になるとバルセロナではお日様が夜9時過ぎくらいまで沈まずに、夕涼みをしながら公共空間で飲むワインなんかが最高に美味しい季節となってくるのですが、6月末から9月中旬にかけて、バルセロナの多くの公共機関や企業なんかでは、「夏時間」と呼ばれる、「暑くなる前に仕事を集中してやって、午後からは休みましょうね」っていう、何ともラテン系なアイデアに基づいた時間割を適応し始める所が多いんですね。勤務時間は企業なんかにもよるんだけど、大体朝8時から始まって11時くらいに30分程度の朝食タイムを挟んでランチ前の15時に仕事終わりって所が多いんじゃないのかな?15時からはみんな何をするかって、そりゃ、お昼寝したり、ビーチに繰り出したり、はたまた、夜のディナーやディスコに行く為に体力を温存したりする訳ですよ(笑)。



そんな、「ピレネーからあっちはヨーロッパじゃない地中海丸出しの生活リズム」を未だに保ってるから、ドイツのメルケル首相に、「スペイン人、遊んでばっかりいないで、ドイツ人みたいにもっと働いてよ!」とか言われちゃうんですね(苦笑)。まあ、メルケル首相がそう言いたい気持ちも分からないでもないけど、その発言に速攻で反論したのがスペインの労働大臣。統計データとか持ち出して、「労働時間で見たら、スペイン人はドイツ人よりも遥かに働いている!」とか何とか‥‥。でもそれって、「労働時間の長さで見るんじゃなくて、生産性で見ないと意味無いんだよねー」って思った人多しの事だと思いますけど。

そんなこんなで、「じゃあ、一体ヨーロッパ各国の労働状況がどうなっているのか?」、「その中でスペインは一体何処に位置しているのか?」などを探る為、先々週にEl Pais紙が持って来たのがこの企画、「ヨーロッパ各国の労働時間と休暇について」と題した記事でした(El Pais, 7 de Junio 2011, P35)。そこにはこんな見出しが:

 「今回のデータは南ヨーロッパの人達がその他の地域よりも働かないと言う、長年言われてきた事が偽りである事を示した。」
“Los datos desmienten que en el sur de Europa se trabaje menos”

「あ、そうなの?」とか思ってデータを見てみると、確かに週の労働時間が40時間のグループの中に、ハンガリー、ポーランド、スロバキアなんかと一緒にギリシャが入ってる!ギリシャ、そんなに働いてるなら何で国があんな風になるんだ??先日の新聞には、4500人ものギリシャの公務員が、死亡後もその家族に不正に年金が支払われてる事が発覚したって言うとんでもないニュースが載ってたし‥‥。4500人って、そりゃ、財政再建もしなきゃいけないわなって感じなんですけどね(苦笑)。

そのギリシャに続くのが、アイルランド(39時間)、オーストリア(38.8時間)、ベルギー(37.6時間)なんだけど、何とスペインはその次の38.4時間!!この数字はオランダ(37.5時間)、イギリス(37.3時間)そしてドイツ(37.7時間)なんかよりも上に位置しています。そしてヨーロッパで最も働かないのはフランスで35.6時間!フランス人って結構働きそうなイメージあるんだけどなー。

更に面白いのはヨーロッパ各国の有給休暇を比較した時なんだけど、有給休暇がヨーロッパで一番多い国はスウェーデンで40.5日!これは多い!!2番手に付けたのがフランスで40日!フランス人、週の労働時間も短いし、有給休暇も多いし、良いなー。そして、そして、3番手につけたのがドイツで37日!メルケルさーん、スペインはドイツの下の36日なんですけどー(笑)。

労働時間をEU27カ国の平均で見ると、38.7時間、有給休暇の平均は33.5日となっています。って言っても、まあ、労働にとって一番大切なのは生産性だと言う事は変わらないんですけどね。そう考えると、フランス人って言うのは、物凄く生産性が高い民族なのかも知れませんね。(関連情報:ヨーロッパ各国シリーズについてはコチラ:地中海ブログ:ヨーロッパ各国の導入している医療システムについて、地中海ブログ:ヨーロッパの公立大学の授業料についてなど

追記情報: ヨーロッパ各国の労働時間と有給休暇リスト
国名:労働時間:有給休暇日数

ハンガリー:40時間:28日
ブルガリア:40時間:29日
エストニア:40時間:30日
リトアニア:40時間:30日
ポーランド:40時間:30日
ルーマニア:40時間:30日
リトアニア:40時間:31日
スロヴェニア:40時間:31日
ギリシャ:40時間:33日
マルタ:40時間:36日
アイルランド:39時間:33日
スロヴァキア:39時間:34.1日
ルクセンブルグ:39時間:35日
オーストリア:38.8時間:37日
ベルギー:37.6時間:30日
スペイン:38.4時間:36日
ポルトガル:38.2時間:35日
オランダ:37.5時間:34日
チェコ:38時間:31.6日
イギリス:37.3時間:34日
フィンランド:37.5時間:32.8日
イタリア:38時間:35日
スウェーデン:37.1時間:40.5日
ドイツ:37.7時間:37日
デンマーク:37時間:36日
フランス:35.6時間:40日
| ヨーロッパ都市政策 | 01:40 | comments(5) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
ヨーロッパ各国の失業保険について
近年世界中で猛威を振るっている経済危機の影響などから、各国政府は何とかして現在の状況を打開しようと必死の対応を続けているのですが、昨日はロンドンで英国政府の打ち出した新しい政策に対する大規模なデモが行われていました。



何故にこんな大規模なデモがロンドンで行われたのか?


実はその元凶はキャメロン政権が最近打ち出した新しい政策が原因で、イギリスの大学の授業料を現行の
3倍に引き上げるという、ちょっと過激な内容だったんですね。ヨーロッパの公立大学の授業料については、前のエントリで書いたばかりだったのですが、幾らイギリスの授業料が安いとは言っても、いきなり3倍はちょっと辛いかな(地中海ブログ: ヨーロッパの公立大学の授業料について)。その事に激怒したのが、普段は大変おとなしい(おとなしく見える?)イギリスの学生達。



僕はこのデモの事を昨日の夜のニュースで知ったんだけど、その映像を見るや否や、「かなり驚いた」と言うのが率直な意見でした。と言うのも、商店街のガラスをバンバン壊したり、警官と取っ組み合いしたりと、今までのイギリス学生のイメージからは、かなりかけ離れたショッキングな映像が飛び込んで来たからです。学生デモの過激さであれば、フランスやギリシャ、もしくはスペインと言った南欧が先ずは頭に浮かぶと思うのですが、「あー、イギリスもとうとう野蛮組の仲間入りか」と多くの人が感じた事だろうと思います。


そんな中、今日の新聞
(El Pais, 12 de Noviembre 2010)には、現在キャメロン政権が着々と準備しつつある「経済危機対策の過激な政策案パート2」とも言うべき、イギリスの失業保険改善計画案の概要と、それに関連するヨーロッパ各国の失業保険情報が載っていました。

「若者よ、新聞は読むな、金持ちと結婚しろ!」

とは、とあるシンポジウムでイタリアのベルルスコーニ首相が言い放った言葉なのですが(苦笑)、「金持ちと結婚しろ」はともかくとして、「欧州の新聞はある程度疑ってかかった方が良いのでは?」と言うのは、毎日スペインの主要
2(El Pais, La Vanguardia)を読んでいる僕の経験から来る意見でもあり、かなり納得する所でもあります。まあ、新聞を発行していたベルルスコーニ自身が「新聞は信じるな!」って言うんだから、説得力はありますよね(笑)。

と言う前置きをした上で、今日の新聞に載ってたイギリス国内の失業状況を書いていきたいと思うのですが、どうやらイギリスでは、失業者に対する手当が相当厚いらしく、その状況に甘んじて、仕事があっても仕事に就く事をせず、失業保険で暮らしている人がかなりいるらしいんですね。つまり働いて得られる給料よりも、失業中に失業保険から下りる金額の方が大きいが為に、それを受け取って暮らしていると言う人がかなり居ると言う事らしいのです。


この典型的な例が、失業保険が毎月
1000ユーロくらい下りている所に、雇用促進事務所みたいな所から毎月800ユーロくらい稼げる仕事のオファーがあった場合、「その仕事を断る」と言う人が多いらしいのです。そして年々そのような人達が増えているが為に、今では失業保険給付額が膨らみすぎて政府の財政を根本から圧迫しているのだとか。そんなこんなで、キャメロン政権は何とか手を打ちたいともがいているみたいなのですが、そんな彼らが最近打ち出した政策がコチラの4点でした:

1.失業中の人に雇用促進事務所が仕事のオファーをし、当事者がそのオファーを断った場合、翌月から3ヶ月の間は失業保険受給停止。


2.更に2回目のオファーも断った場合、以後の6ヶ月間は失業保険受給停止。

33回目は3年間の失業保険受給停止。

4.失業保険給付額が1000ユーロ下りている人の所に、800ユーロの仕事のオファーがあり、当事者がその仕事を引き受けた場合、その差額分の200ユーロは政府が支払う事にする。


こんな感じでイギリス政府は何とかして、失業保険受給率を減らそうと必死で戦略を張り巡らしているそうなんだけど、それにしても、イギリス人がこんなに怠慢だとは全く知りませんでした。てっきり、働き屋さんだとばかり思っていたのですが‥‥。更にこの話題の関連情報としてヨーロッパ各国の失業保険システム情報が載っていたのですが、まあ、何時もの事ながら、国によってシステムが全く違うのは、結構興味深い所です。


ドイツの場合

ドイツの失業率は現在
6.7%で280万人が失業中だそうです。ドイツのシステムでは、最低でも2年間失業保険を支払っている事が条件で、その場合、失業前の6ヶ月間に毎月受け取っていた給料平均の60%を月々受け取る事が出来るのだとか。もしも子供が居た場合には、この数字が67%まで上がるそうです。期間は失業保険を払っていた期間にもよるのですが、最長で1年だそうです。55歳以上は最長18ヶ月まで延長出来るそうです。

フランスの場合

フランスの現在の失業率は
10%で、国内で290万人が失業中だそうです。フランスの場合は、失業前の28ヶ月の内(50歳以上の場合は36ヶ月間)、4ヶ月間以上失業保険を払っている事が受給条件で、受給期間は最長で24ヶ月(50歳以上の場合は36ヶ月間)だと言う事です。受給金額は失業前に受け取っていた給料の57%を受け取る事が出来、最低でも日割りにして一日27ユーロを下回る事は無いそうです。

イタリアの場合

イタリアの現在の失業率は
8.3%で、200万人が失業中だと言う事です。受給条件は失業前の2年間で最低でも12ヶ月間失業保険を払い続けている事。その場合に限り、50歳以下の場合は最高で8ヶ月、50歳以上の場合は12ヶ月間受け取る事が出来るそうです。受給額は最初の6ヶ月間は失業前に受け取っていた給料平均の60%で、続く2ヶ月間は50%、その後は40%となるそうです。

スペインの場合

そして我らがスペインなのですが、現在のスペインの失業率は
19.8%。この数字は他のヨーロッパ諸国に比べて断トツに高い失業率である事が分かるかと思います(地中海ブログ:スペインのニートはニニ(Ni Ni)と言うらしい:世界のニート事情 )。そしてスペイン国内では460万人が失業中なんだとか。スペインで失業保険を受け取る為には、失業前の6年間に最低でも360日間失業保険を払わなければいけません。受給期間は保険を払っていた期間にもよるのですが、最低でも6ヶ月から、最高で24ヶ月受け取る事が出来るのだとか。受給金額は、最初の6ヶ月間は失業前の180日間に受け取っていた給料平均の70%で、その後7ヶ月目から、この数字は60%になるんだそうです。

失業保険制度と言うのは、教育や医療と並び、その国や地域を特徴づけるシステムに他なりません。逆に言えば、それらのシステムを考察する事によって、それぞれの地域固有の特徴や特色が浮かび上がってくると思うんですね。故に当ブログではスペインの医療制度や教育システムと言った話題を頻繁に取り挙げている訳なのですが、今回取り上げた失業保険制度もこれらと並び、カタルーニャもしくはスペインと言う国を考察するのに大変有益なシステムだと思われます
(地中海ブログ:ヨーロッパ各国の導入している医療システムについて、地中海ブログ:ヨーロッパの医療システム事情:日本の導入している医療システムって実は少数派なのかな?)。今後もこの話題、要注目です!
| ヨーロッパ都市政策 | 06:54 | comments(4) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
ヨーロッパの公立大学の授業料について
最近スペインの大学システムについて質問を受ける事が非常に多くなってきたのですが、今週の新聞(El Pais, 27 de Octubre 2010)にヨーロッパの各国大学授業料事情が載っていました。



Twitter欧州組の間では、何かと各国の大学教育システムの違いや授業料の話題になったりする事がしばしばあるのですが、と言うのも、ヨーロッパの大学システムって、実は未だに謎な部分が多くて、アメリカやイギリスの大学ほど、明らかになっている部分が多く無いと思うんですよね。昔ナポレオンが、


「ピレネーから向こうはアフリカだ!」


みたいな事を言ってたけど、そんなアフリカに属すスペイン(笑)の大学のシステムなんて、未だに海の底よりも深―い謎に包まれている訳なんで、当ブログでは機会がある毎にスペインの教育システムについて取り上げてきました(地中海ブログ:
スペインの大学ランキング:総合ランキングではなく、学部間で競い合うというシステム、地中海ブログ:バルセロナに出来た新しい建築学校その2Barcelona Institute of Architecture:バルセロナ建築スクールの諸問題など

そんな数々のやり取りの中で段々と分かってきた事、それはどうやらヨーロッパの多くの国では大学の授業料が無料な所が多いのでは?と言う事実です。もしくは無料とまではいかないまでも、一年間に何百万円と払わなければいけない日本やアメリカの大学なんかに比べると授業料が微々たるもので良いと言う国が結構あると言う事が分かってきたんですね。


じゃあ、何故それらの国では授業料がそんなに安いのか?




何故ならそれらの国では政府が大学教育にかかる費用の大半を補助金として支給しているからです。今日の新聞によると、ヨーロッパでは平均で大学教育総費用の内、約
75%を各国政府が負担しているそうです。ちなみにスペインでは80%―90%程を負担しているらしく、スペインで大学に通うスペイン人の学生は一人当たり7100ユーロを毎年奨学金として貰っていると言う計算になるんだそうです。

この各国の大学システムを「公立大学の学部」と言う枠組みで、もうちょっと詳しく見てみると、大きく
3つのグループに分ける事が出来る様に思います。



先ず第一のグループは授業料無料グループで、ここには、キプロス共和国
,チェコ共和国,アイルランド、マルタ、ノルウェー、スロバキア、スロベニア、スウェーデンと言った国々が入ってきます。まあ、ただ、これらの国の多くでは、無料とは言っても、EU圏内の国籍を持つ学生に対して無料にしているのであって、それ以外から来る外国人に対しては学費を要求している所が多い様です。更にチェコなんかでは、留年したらその留年分の学費は納めなければいけないとか、ドイツでは、大学によって無料だったり有料だったりするとか、結構なバリエーションも存在するみたいです(ドイツの有料大学の場合、1セメスターの授業料は大体100500ユーロくらい)。

第二のグループは、授業料有料グループで、ここには、スペイン、ベルギー、オランダと言った国々が名を連ねていて、例えばスペインの場合は一年間の授業料は約
900ユーロ前後、オランダの場合は1500ユーロくらい、そしてスイスは流石にちょっと高くて12002900ユーロくらいと言う事でした。

そして第三のグループは、各大学が授業料を決める事が出来るって言うシステムを導入している国々で、イギリスとイタリアがそれに該当します。
20072008年のイタリアでの平均授業料は750ユーロだったそうです。

このような数字を目にした時、日本人の我々が感じる率直な意見は「安い!」でしょうね。なんてったって、一年間の授業料が
10万円前後なのですから。

しかしですね、実は今、この「安い授業料」を巡って、ヨーロッパ中の大学の間で大問題が勃発しています。と言うもの、最近の経済危機の影響などから、何処の国でも授業料を上げようと言う動きが強まっているからなんですね。例えば、つい先日、スペインでも公立大学の博士課程後期の授業料を「
200ユーロから400ユーロに引き上げた」と言うニュースが飛び込んできたばかりでした。

そんな事をされると困るのが、平均収入が(我々日本人にとっては驚く程低い)国々の一般家庭の人達なんですね。ちなみにスペインの平均収入は
1500ユーロ前後で、最低賃金は600ユーロ前後だったと思います。そんな中での年間900ユーロ(学部)、400ユーロ(博士)ですから、その問題の深刻さが分かるかと思われます。

更にヨーロッパでは概して大学と言うのは「入学するのは簡単で、卒業するのが難しい」と言われていて、スペインなんかでは、入学後2年目で約
30%の学生が退学し、無事に学部を卒業出来るのは大体30%程度だと言うデータが出ています。そうすると、1年で7100ユーロを公的な補助金として出したのに、その人が2年で辞めてしまったら約150万円もの公的資金がパーになると言う問題が出てくる訳ですよ。勿論これは公的資金の問題ばかりではなくて、一般家庭の人達にとっては、息子や娘が学部を卒業せずに途中で辞めてしまったら、「今まで払っていた授業料は一体何だったんだ!」と言う事になっちゃうんですね。それこそ死活問題!

こういう状況が分かっているからスペイン政府も奨学金を出してはいるんだけど、スペインの場合、それは
GDP0.08%程度に留まっているのが現実です。これは結構低い数字で、OECDによるとヨーロッパの平均は0.25%、ドイツは平均的で、0.25%、フランスはスペインと同様、0.09%程度らしいです。

教育システムと言うのは、金融システムや病院システムと言った他の社会的共通資本と同様、それがどのように管理運営されているか?を調べる事によって、その国や地域の特徴が分かる重要な指標なんですね。だから、他の国が採用している教育システムに関して一概に「こっちが優れていて、こっちが悪い」なんて事は間違っても言えないんだけど、他の国のシステムを知る事は、「そのような選択肢もある」と言う自国の選択の幅を広げ、最良の選択をする上で不可欠な事だと思います。そういう意味においても、今後もこのテーマは注目に値すると思います。
| ヨーロッパ都市政策 | 04:33 | comments(4) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
ヨーロッパの医療システム事情:日本の導入している医療システムって実は少数派なのかな?
前回のエントリ、ヨーロッパ各国の導入している医療システムについての続きなのですが、ヨーロッパ各国の医療事情についてTwitterを通じて欧州在住の皆さんに質問してみた所、とっても興味深い返信が返ってきたので、ちょっと紹介したいと思います。

先ずは先日の新聞記事に載っていた、僕的にはかなり驚きだった事の一つに、「イギリスでは病院がタダ」っていう情報がありました。スペインの新聞(La Vanguardia)の言ってる事だし、「本当かなー???」ってかなり疑心暗鬼だったのですが()、英国在住の皆さんの生情報によると、どうやら噂は本当らしいと言う事が判明しちゃいました!National Health Serviceを国が税金で運営していて医療費は無料だと言う事らしいです。

ただシステム上幾つかの問題もあるそうで、例えばその一つに、何時まで経っても空かないベッド、もしくは専門医の予約が取りにくいと言う事があるそうです。この辺の問題は現在のスペインが抱えている問題とほぼ一緒ですね。


オーストリア在住の方からのコメントでは、オーストリアでは診察が無料で薬代がかかるのだとか。そして公的な保険に加入が必要で、(その方の)保険料は毎月1万円くらいだそうです。面白かったのは、その方がつぶやかれていた事の中で、歯の治療には保険が適応されない為、オーストリア国内では治療費が高くついてしまうので、治療費の安い東欧で診察を受ける人が多いのだとか。

これは以前のエントリで書いた健康ツーリズムと基本同じですね(地中海ブログ:健康ツーリズム:スペインの誇る医療サービスの盲点を突いた、グローバリゼーションの闇)。健康ツーリズムと言えば、最近流行っている手口の一つに、自分の国では手術をするのに何ヶ月も待たなければならないので、既に体が悪い状態でスペインに観光客として入国して救急に駆け込み、そのまま無料で手術をするというケースが増えているそうです。スペインでは救急に限り、住民票を持たない観光客や違法移民の人達まで病院に無料でかかる事が出来るので、このようなアクロバッティブな裏技が出来るのだと思います。つまり法の網を掻い潜るというやつですね。

さて、こうしてヨーロッパ各国の医療システム状況を見てくると、日本が導入している医療システムっていうのは、(ヨーロッパ諸国に比べると)実は少数派だと言う事が見えてくるかと思います。だって、風邪を引いて病院とか行ったらそれだけで1000円とかするんだから、「病院はタダ」っていう感覚になれたヨーロッパ人にしたら、「なんじゃそりゃ!」ってなるのが自然な反応だと思うんですね。

そんなヨーロッパ人がアメリカなんて行ったらもう大変!

アメリカの医療を取り巻く「異常な状況」は、オバマ大統領のおかげ(?)で世界的に有名になりましたから。まあ、そんな異常な状況であっても、ヨーロッパの若い頭脳がアメリカへ流入し続けているという事実は、アメリカと言う国が持つ魅力が、医療費の問題なんかよりも遥かに眩しいと言う事の現れだ・・・と思わない事もないかな(地中海ブログ:欧州工科大学院 (European Institute of Innovation and Technology)の鼓動その2:ネットワーク型システムに基づくシティ・リージョンのようなコンセプトを持つ大学院)

このようなアメリカとヨーロッパの医療事情の比較を行った面白い映画に、マイケル・ムーアが撮ったSiCKOという映画があると言う事もTwitterで教えもらいました。機会があったら是非見たみたい映画です。
| ヨーロッパ都市政策 | 00:30 | comments(6) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
ヨーロッパ各国の導入している医療システムについて
スペインと言う国を語る時、その特徴を切り取る観点は色々とあると思うのですが、その内の可能性の一つを「医療システムの充実に見る事が出来るのでは?」という思いを、ここ数年、益々強く持つようになっています。何がそんなに際立っているのかと言うと、スペインではスペイン人は勿論の事、住民票を持っている留学生や移民の人々は病院にかかる費用が(ほぼ全て)無料になるんですね。風邪をひいて病院にかかろうが、盲腸の手術をしようが、心臓の移植をしようが、全てタダなんです。(但し明日病院に行ったからといって、来週即手術が出来るとは限りません。それがスペインが直面している問題なのですが・・・)

もうちょっと詳しく言うと、スペインの法律ではスペインに滞在している人が何かしらの理由で緊急に医療を必要として病院などに駆け込んだ場合、病院側はそれを断る事は出来ないとしています。この法律がある為に、住民票を持っていない観光客や違法移民の人々が救急病院に飛び込んでも、治療を受ける事が出来るという状況が生れている訳です。

こんな状況だから、自国で行う手術などが高くつくために、わざわざスペインの住民票を獲得してまでタダで移植手術をしちゃおうという医療ツーリズムという新たな現象が出てきており、それがスペインの財政を圧迫している要因の一つである事は以前のエントリで書いた通りです(地中海ブログ:健康ツーリズム:スペインの誇る医療サービスの盲点を突いた、グローバリゼーションの闇、地中海ブログ:違法移民の住民登録問題:蛮族というシステム)

しかしですね、今、ヨーロッパ中を徘徊している一匹の経済危機という妖怪によって、このような状況を見直そうという動きがスペインの中で出始めています。つまり病院で医者にかかるのに患者から少し料金を徴収する事にしようとか、専門医にかかる場合や薬のレベルなどによっては、サービス料金を一定額に定めようという動きが出始めているんですね。この手の議論は前々からあったのですが、今回の経済危機の煽りを受けて、様々な分野が予算の見直しを迫られている中、今までは聖地だった「医療」という領域にもメスが入ろうとしていると、まあ、こう言う事です。

こんな状況下で、ヨーロッパの諸各国はどんな医療システムを導入しているのか?という記事が載っていたのですが、それがちょっと興味深かった。例えばお隣の国、ポルトガルでは先週、新しい法律が施行されたばかりらしく、それによると、今までは治療薬の度合いによって料金を徴収していたのに対して、新しい法律では、治療薬の度合いに関わらず、一定料金を取る仕組みになったのだとか。又、今までは年金受給者は治療薬などは全て無料だったのを廃止したりもしたそうです。そしてコミュニティ医療センター(community health centre)を訪問する際の料金は一回につき2.20ユーロ、大きい病院(Hospital Central)の場合は4.5ユーロ、地域の病院の場合は3ユーロを徴収する事にしたらしい。救急病院の場合は3.79.40ユーロ。入院費は最初の10日間は5.2ユーロ、65歳以上の人は50%引きのサービスがあるそうです。妊娠中の人、12歳までの子供、失業中の人などは無料だそうです。

僕的に驚きだったのが英国のシステムなんだけど、英国では全ての医療費が無料らしい(これがスペインの様に英国を訪れている観光客や違法移民にまで適応されるのかは不明)。治療薬に関しては、最初の3ヶ月間は7.20Libra(8.65ユーロ)で、慢性の病気に懸かっているような人は年間104Libra(125ユーロ)払う事によって、全てのサービスが受けられる仕組みだと言う事です(実はここの所の表現が曖昧で、この料金を払う事によって全ての治療薬が受け取れるのかどうか?は不明)。

そしてもっと驚いたのがイタリアのシステムです。イタリアではコミュニティ医療センターの訪問は無料なのですが、検査などには料金がかかるとの事。そして専門医の診療を受けるのに15-20ユーロかかり、すごいのが、救急に駆け込んだ場合、医者がその必要無しと判断した場合には、ペナルティとして25ユーロ払わなければいけないらしい。これは見方によっては結構良いシステムで、というのも、スペインでは用も無いのに救急病院を訪れて、おしゃべりなんかをしている人が多く、その人達の不必要な時間と治療にかかる人件費などがスペインの医療費を膨大なものにしているという現実があるからです。

こうやって見てくると、スペインが導入している医療システムである「全ての人に対して医療費無料」というシステムがヨーロッパではいかに特異なシステムかが分かるかと思います。しかしながら、今後数年、もしくは数ヶ月の単位でこのような状況に変化が訪れるかもしれません。医療はその国の生活の質を担保する重要なインフラである事から、この案件には今後共、注目していきたいと思います。
| ヨーロッパ都市政策 | 23:13 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
都市データ比較その2:都市こそが鍵である
前回のエントリ、都市データ比較その1:実はマドリッドって生活の質とか高いのかも?とか思ったりして、の続きです。

今回の都市間比較データでもう一つ衝撃的だったのが、各都市の犯罪率の比較でした。この比較は10万人の市民に対して、どれだけ殺人があったか?という指標だったのですが、結果はこの様になっています:

ドバイ:
no data
バルセロナ:
10,5
メキシコシティ:
17,6
上海:
1,5
マドリッド:
2,0
ロンドン:
2,1
ベルリン:
1,4

南米のメキシコシティが176っていうのは分かるけど、バルセロナが105って言うのはちょっとすごい。他のヨーロッパ都市の約5倍の危険率ですから。確かに最近、市内の治安が見る見る悪くなってきていて、毎週のようにそれら酷い状況が新聞紙面を賑わせるまでになりつつあります(地中海ブログ:バルセロナの中心市街地で新たな現象が起こりつつある予感がするその3:街頭売春が引き起こした公共空間の劣)。Twitterの方でもバルセロナに旅行中の日本人観光客の皆さんから、「スリにあいました」系のつぶやきが結構出て来ている様な気もしますし。当ブログでは、そんな人達の為に、典型的なバルセロナのスリ手口を図入りで紹介したりもしました(地中海ブログ:在バルセロナ&観光客の皆さん注意です!:バルセロナの地下鉄スリの典型)。

こんな問題だらけの都市なのですが、このデータを作成したUrban Age ProjectRicky BurgettPhilipp Rodeがちょっと良い事を言っています:

“Las ciudades no representan solo la concentracion de los problemas- anuque asi sucede-, sino que son los lugares donde esos problemas se pueden resolver”


「都市は問題が蓄積する場所であるだけなのではない。そうではなくて、それらの諸問題を解決出来る場所でもあるのだ」

僕達は都市の時代に生きています。そして都市というのは、何時の時代も様々な新しい問題を噴出し続けてきた場所だったんですね。多分今後数十年と言うのは、都市への人口が過度に集中する事などから、これまで以上の挑戦と努力が強いられるのでは?と予想され、又、そんな状況下では、今まで人類が経験した事も無かったような大問題にぶち当たるかもしれないし、予想も出来ないような困難が待ち受けているのかもしれません。

しかしながら、このような状況を「未だかつて無い危機」と捉えるのか、はたまた「問題を解決出来る機会」と捉えるのか、それは我々次第です。そしてその機会を生かすも殺すも我々次第。今正に、人間としての知恵が試されようとしているのです。
| ヨーロッパ都市政策 | 19:07 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
都市データ比較その1:実はマドリッドって生活の質とか高いのかも?とか思ったりして
毎週日曜日の新聞にはちょっとした小冊子(Magazine)が付いてくるのですが、今週のEl Paisの小冊子(El Pais Semanal)の特集は「都市」でした。

上海が「より良い都市、より良い生活」を謳い文句に上海万博を開幕したり、今後40年間で全世界人口の内、約70%もの人達が都市に住むだろうと言う予測が出ていたり、近年益々都市への関心が高まりつつあります。具体的な数字で見ると、今世紀始め(1900年)に都市部に住んでいた人の数は22000万人(世界人口の約10%)程度だったのが、100年後の世紀の終わりにはこの数字が10倍以上(28億人)にまで膨らんだと言うから、ちょっと驚きです。

今回の特集では現在の都市の問題点を様々な角度から検証しようと言う事で、7つの都市(ドバイ、バルセロナ、メキシコシティ、上海、マドリッド、ロンドンそしてベルリン)が選ばれ、様々なデータを用いながら比較が行われていたのですが、その中でも僕が大変興味深く思ったのが、各都市の平均年収と平均賃貸料のデータです(データの源泉はUrban Age Project):

平均年収(ユーロ)
ドバイ:
31.397,86
バルセロナ:
23.000,00
メキシコシティ:
12.260,12
上海:
5.158,22
マドリッド:
31.100,00
ロンドン:
29.454,18
ベルリン:
21.156,17

賃貸住宅費(一ヶ月の家賃)
ドバイ:
1.495,14
バルセロナ:
1.134,00
メキシコシティ:
605,53
上海:
269,12
マドリッド:
1.107,00
ロンドン:
1.786,69
ベルリン:
566,66

むむむ・・・先ず驚きなのが、ベルリンの平均年収の低さですね(ベルリンの平均年収は21.156ユーロ、日本円で約280万円)。驚くべき事にベルリンの平均年収はバルセロナの平均年収(23.000ユーロ、日本円で約300万円)よりも20万円も下となっています。えー、結構稼いでそうなイメージがあるんだけどなー。まあ、でもベルリンの場合は賃貸料が桁外れに安いから良いのか(ベルリンの一ヶ月の平均賃貸料は566ユーロ、日本円で約73.000円)。この住宅費の安さが、近年、ベルリンが世界中のアーティストやらクリエーターやらを惹き付けている大きな理由なのかな?と思います。

そしてその次に驚きなのが、バルセロナとマドリッドの賃金格差です。バルセロナの平均年収が23.000ユーロ(日本円で約300万円)なのに対して、マドリッドのそれは何と31.100ユーロ(日本円で約400万円)!その差、約8000ユーロ(約100万円)!!コレはすごい。更に賃貸料を見てみると、僅かだけどバルセロナの方が上。何時もながらに思うんだけど、都市内の不動産価値において首都が一番じゃない所がこの国の面白い所なんだなー(詳しくはコチラ:地中海ブログ:スペイン住宅価格事情:2010年第一期四半期:スペイン経済どん底だけど、ちょっとは明るい兆しか?)。

そしてそして、今回一番の驚きは、マドリッドの平均年収がロンドンの上をいっていると言う発見でした(ロンドンの平均年収は29.454ユーロ、日本円で約380万円)。「えー、そおなのー???」としか言いようが無いのですが・・・。
更にこのデータを賃貸住宅費と比較してみると更に驚くべき事実が判明します。ロンドンの賃貸住宅費が一ヶ月約
1.800ユーロ(日本円で約23万円)なのに対して、マドリッドのそれは1100ユーロ程度(14万円)。つまりマドリッドはロンドンよりも収入が高いのに、賃貸料はその3分の2程度に収まっている訳ですよ!!

こう考えると、実はマドリッドって、生活の質が結構高いんじゃないのかな?いや、住んでないから実際の所は分かりませんが、この2つのデータを見る限り、そう言わざるを得ませんね。最近は文化政策にも力を入れているみたいだし、もしかしたら、この先、「生活の質が高い都市ランキング」にマドリッドが頭角を現してくるのかも?という予感がしないでもありません(マドリッドの文化政策についてはコチラ:地中海ブログ:マドリッドの都市戦略その1:美術(美術館)を軸とした都市活性化、地中海ブログ:マドリッドの都市戦略その2:アルヴァロ・シザ(Alvaro Siza)について)。

なんか、マドリッドの良い噂とかを聞くと、無性に腹が立ってくる僕は、何時の間にかカタラン人に洗脳されているのでしょうか?(苦笑)

都市データ比較その2:都市が鍵である、に続く。
| ヨーロッパ都市政策 | 20:05 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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