2013.05.12 Sunday
バルセロナの食べ歩き方番外編:名古屋の食べ歩き方:滝カフェ、きらら
2年ぶりに日本に帰ってくるにつけ、原風景を含めた日本の社会文化の移り変わりの早さに只々圧倒されるばかりなのですが、そんな中でも「僕が特に変わったなー」と思う事の1つに、名古屋における近年の喫茶店の充実ぶりが挙げられます。
最近では様々なメディアがこぞってご当地グルメを紹介しているので知っている方も多いかとは思いますが、伝統的に名古屋には大変独特な喫茶店文化が存在します。と言うか、「名古屋のカフェ文化は変わってる!」と名古屋人が認識し始めたのは極々最近、それこそテレビ番組なんかが「地方の一風変わった食文化」を報道する様になってからの事なんですね。
例えば朝食の時間帯にはコーヒーを一杯頼むだけでトーストや卵といったものが付いてくる「モーニングサービス」があったり、そのモーニングに付いてくるパンに小倉を載せて食べてみたり(ちなみに小倉だけを頼む事も可)、とってもお得な9枚綴りのコーヒーの回数券が存在して、みんながそれを持っていたりと、名古屋の喫茶店文化とその特徴を語り出せばキリがありません。
「喫茶店(カフェ)、都市、文化‥‥」というキーワードを並べていけば必ず思い起こされるのが、公共空間の変容を謳ったハーバーマスなんだけど(地中海ブログ:東さんの「SNS直接民主制」とかマニュエル・カステル(Manuel Castells)のMovilizacionとか)、こんな独特なカフェ文化を目の当たりにすると、名古屋の喫茶店と言うのは正にヨーロッパにおけるカフェ=公共空間の様な機能を果たしているのかなー?‥‥と、そう思わない事もありません(そちらの話をし出すとまた脱線してしまうので、それは又別の機会にでも)。
と言う訳で、今日は僕が最近行った喫茶店の中でもナカナカ良かった、と言うか、ちょっと驚かされたカフェを紹介しようと思います。それがコチラ:
じゃーん、自然の滝を見ながら美味しい善哉が食べられる喫茶店、その名も「滝カフェ、きらら」です。
住所:(〒480−1201)愛知県瀬戸市定光寺町323−12
電話番号:0561−48−6669
ごくごく普通の住宅地が広がる高蔵寺駅から10分も車で走ると、俄には信じられないくらいの濃い緑が生い茂る風景が出現します。家々が立ち並ぶ人工的な街並みから、この圧倒的な自然への切り替わり方はちょっと凄い。今回お目当てのカフェは、この深―い緑の中、知らなければ絶対に通り過ぎてしまう様な場所に位置しているのですが、そんなカフェの駐車場兼入り口がこちらです:
「え、こんな所に本当に喫茶店なんてあるの?!」って感じなのですが、騙されたと思って標識に従って階段を降りていくと現れてくるのがこの風景:
緑の中に溶け込む様に設えられているテラス席と、そこからチラチラ見え隠れしている滝、そしてそこから大変心が癒される「滝の音」が聞こえてくるんですね。「あー、癒される〜!!」とか思いつつ、もうちょっと歩いていくと現れてくるのがこちら:
た、滝だー!生の滝なんて見たのは一体何年振りだろう‥‥って感じかな(笑)。正直、これだけでかなり興奮するwww。この滝沿いに屋外テラス席が並べられていて、それがそのままアプローチ空間となっています。
このアプローチ空間を言われるがままに歩いて行き、入り口を潜るとそこには我々を出迎えてくれるちょっとした売店兼エントランス空間が用意されていました。
この地方のお土産なんかを売っているこの空間を更に左手方向に折れます:
それほど大きくは無い空間の真ん中に2つのテーブル、そしてそこから更に左手方向に直角に折れると、そこに現れるのがこの風景です:
じゃーん、滝を真っ正面に見る事が出来るカウンター席の登場〜。これは気持ち良い!!
ほら、本当に手が届きそうな所に滝があるんですよー。水が岩に当たる音が非常に心地良く、更に青々とした森林の中に流れる滝はもう絶景としか言い様がありません!で、この滝を見ながらこのカフェで注文すべき一品がこちらです:
日本が世界に誇るべきお菓子、善哉セットです。
このぜんざいがコレ又美味しいんだな!1つ1つの粒がしっかりしていて、それほど甘過ぎず、しつこい感じは全く無し。ケーキセットも捨てがたかったんだけど、やっぱりこういう日本的な風景の中では、この国が育んできたモノを食すのが一番良いかと思います。
で、ここからが面白い所なんだけど、建築家の目から見て、お世辞にも「良い建物」とは言えないこの建築空間の中にさえも、我々日本人が長い年月を掛けて培ってきた「空間文化の様なもの」が垣間見えてくるんですね。
この土地における一番の特徴は明らかにココに存在している滝であり、逆に言えば、この滝の存在こそがこの土地を希有なものにしている要因である事は間違い無いのですが、そんな「掛替えのない滝」を、先ずはアプローチ空間でチラッと見せておきます:
その滝を横目に見せつつ、「敢えて」反対方向に進みながら入り口へと我々を導く仕掛けが施されています。
この時(入り口を入る時)、「我々には一切滝は見えていない」と言う所がポイントかな。先ずは耳だけで滝を楽しんで頂戴‥‥みたいな(笑)。そしてエントランスを入ったら、今度は進行方向とは90度直角方向(左手側)に強制的に進まされます。
更にそこから、もう一度左手方向に(直角に)方向転換させられてから、この空間のクライマックス的な要素である滝を「全面に見せる」という一連の空間的な物語が展開しているんですね。
‥‥と、ここまで書いてきて鋭い人は気が付いたかもしれませんが、そう、エントランスから最後のクライマックス的空間まで、この空間に展開しているのは正に「螺旋の運動」なのです。まるで渦を巻き、上方へと引っ張られる様な螺旋運動がこの空間を支配しているのです(地中海ブログ:パリ旅行その6:大小2つの螺旋状空間が展開する見事な住宅建築:サヴォワ邸(Villa Savoye, Le Corbusier)その1:全体の空間構成について)。
上述した様に、この喫茶店の建物自体には(そのディテールを含め)特筆すべき点はあまりありません。しかしですね、我々が驚くべきなのはこの空間に存在している「空間の流れ」という視点であり、一見平凡なこの建物に展開しているのは、それこそ日本の名建築に見られるのと同等の空間構成を伴った日本建築のDNAなのです。
こんな何気無い、どこにでも存在しそうな建物の中にすらも日本建築の特徴らしきものが垣間見えてしまうという事、意図せざる所にまでも日本的特徴が滲み出てしまうという点にこそ、逆説的に僕は「日本文化の特色」みたいなものを感じてしまいます。
この空間で頂く善哉も絶品だったし、大自然に癒されたい方は是非お立ち寄りください。
最近では様々なメディアがこぞってご当地グルメを紹介しているので知っている方も多いかとは思いますが、伝統的に名古屋には大変独特な喫茶店文化が存在します。と言うか、「名古屋のカフェ文化は変わってる!」と名古屋人が認識し始めたのは極々最近、それこそテレビ番組なんかが「地方の一風変わった食文化」を報道する様になってからの事なんですね。
例えば朝食の時間帯にはコーヒーを一杯頼むだけでトーストや卵といったものが付いてくる「モーニングサービス」があったり、そのモーニングに付いてくるパンに小倉を載せて食べてみたり(ちなみに小倉だけを頼む事も可)、とってもお得な9枚綴りのコーヒーの回数券が存在して、みんながそれを持っていたりと、名古屋の喫茶店文化とその特徴を語り出せばキリがありません。
「喫茶店(カフェ)、都市、文化‥‥」というキーワードを並べていけば必ず思い起こされるのが、公共空間の変容を謳ったハーバーマスなんだけど(地中海ブログ:東さんの「SNS直接民主制」とかマニュエル・カステル(Manuel Castells)のMovilizacionとか)、こんな独特なカフェ文化を目の当たりにすると、名古屋の喫茶店と言うのは正にヨーロッパにおけるカフェ=公共空間の様な機能を果たしているのかなー?‥‥と、そう思わない事もありません(そちらの話をし出すとまた脱線してしまうので、それは又別の機会にでも)。
と言う訳で、今日は僕が最近行った喫茶店の中でもナカナカ良かった、と言うか、ちょっと驚かされたカフェを紹介しようと思います。それがコチラ:
じゃーん、自然の滝を見ながら美味しい善哉が食べられる喫茶店、その名も「滝カフェ、きらら」です。
住所:(〒480−1201)愛知県瀬戸市定光寺町323−12
電話番号:0561−48−6669
ごくごく普通の住宅地が広がる高蔵寺駅から10分も車で走ると、俄には信じられないくらいの濃い緑が生い茂る風景が出現します。家々が立ち並ぶ人工的な街並みから、この圧倒的な自然への切り替わり方はちょっと凄い。今回お目当てのカフェは、この深―い緑の中、知らなければ絶対に通り過ぎてしまう様な場所に位置しているのですが、そんなカフェの駐車場兼入り口がこちらです:
「え、こんな所に本当に喫茶店なんてあるの?!」って感じなのですが、騙されたと思って標識に従って階段を降りていくと現れてくるのがこの風景:
緑の中に溶け込む様に設えられているテラス席と、そこからチラチラ見え隠れしている滝、そしてそこから大変心が癒される「滝の音」が聞こえてくるんですね。「あー、癒される〜!!」とか思いつつ、もうちょっと歩いていくと現れてくるのがこちら:
た、滝だー!生の滝なんて見たのは一体何年振りだろう‥‥って感じかな(笑)。正直、これだけでかなり興奮するwww。この滝沿いに屋外テラス席が並べられていて、それがそのままアプローチ空間となっています。
このアプローチ空間を言われるがままに歩いて行き、入り口を潜るとそこには我々を出迎えてくれるちょっとした売店兼エントランス空間が用意されていました。
この地方のお土産なんかを売っているこの空間を更に左手方向に折れます:
それほど大きくは無い空間の真ん中に2つのテーブル、そしてそこから更に左手方向に直角に折れると、そこに現れるのがこの風景です:
じゃーん、滝を真っ正面に見る事が出来るカウンター席の登場〜。これは気持ち良い!!
ほら、本当に手が届きそうな所に滝があるんですよー。水が岩に当たる音が非常に心地良く、更に青々とした森林の中に流れる滝はもう絶景としか言い様がありません!で、この滝を見ながらこのカフェで注文すべき一品がこちらです:
日本が世界に誇るべきお菓子、善哉セットです。
このぜんざいがコレ又美味しいんだな!1つ1つの粒がしっかりしていて、それほど甘過ぎず、しつこい感じは全く無し。ケーキセットも捨てがたかったんだけど、やっぱりこういう日本的な風景の中では、この国が育んできたモノを食すのが一番良いかと思います。
で、ここからが面白い所なんだけど、建築家の目から見て、お世辞にも「良い建物」とは言えないこの建築空間の中にさえも、我々日本人が長い年月を掛けて培ってきた「空間文化の様なもの」が垣間見えてくるんですね。
この土地における一番の特徴は明らかにココに存在している滝であり、逆に言えば、この滝の存在こそがこの土地を希有なものにしている要因である事は間違い無いのですが、そんな「掛替えのない滝」を、先ずはアプローチ空間でチラッと見せておきます:
その滝を横目に見せつつ、「敢えて」反対方向に進みながら入り口へと我々を導く仕掛けが施されています。
この時(入り口を入る時)、「我々には一切滝は見えていない」と言う所がポイントかな。先ずは耳だけで滝を楽しんで頂戴‥‥みたいな(笑)。そしてエントランスを入ったら、今度は進行方向とは90度直角方向(左手側)に強制的に進まされます。
更にそこから、もう一度左手方向に(直角に)方向転換させられてから、この空間のクライマックス的な要素である滝を「全面に見せる」という一連の空間的な物語が展開しているんですね。
‥‥と、ここまで書いてきて鋭い人は気が付いたかもしれませんが、そう、エントランスから最後のクライマックス的空間まで、この空間に展開しているのは正に「螺旋の運動」なのです。まるで渦を巻き、上方へと引っ張られる様な螺旋運動がこの空間を支配しているのです(地中海ブログ:パリ旅行その6:大小2つの螺旋状空間が展開する見事な住宅建築:サヴォワ邸(Villa Savoye, Le Corbusier)その1:全体の空間構成について)。
上述した様に、この喫茶店の建物自体には(そのディテールを含め)特筆すべき点はあまりありません。しかしですね、我々が驚くべきなのはこの空間に存在している「空間の流れ」という視点であり、一見平凡なこの建物に展開しているのは、それこそ日本の名建築に見られるのと同等の空間構成を伴った日本建築のDNAなのです。
こんな何気無い、どこにでも存在しそうな建物の中にすらも日本建築の特徴らしきものが垣間見えてしまうという事、意図せざる所にまでも日本的特徴が滲み出てしまうという点にこそ、逆説的に僕は「日本文化の特色」みたいなものを感じてしまいます。
この空間で頂く善哉も絶品だったし、大自然に癒されたい方は是非お立ち寄りください。