2010.07.24 Saturday
EUプロジェクト交通分野説明会2010
前回のエントリの続きです。 EUプロジェクト交通分野(FP7 Information Days for Transport (Including Aeronautics)の説明会(Infoday)2日目の昨日は、陸系(車と鉄道)と海系の公募についての欧州委員会のプレゼンテーションと質疑応答が行われました。前回のエントリで書いた様に、今年から日程がちょっと変わって、例年だと初日の午前中を陸・海系の説明に、午後を航空系の説明に割り当てていたのですが、参加者の急増に対応する為に今年から2日間に分ける事にしたようですね。
何でかって、500人収容の大会議室が昨日も今日も満員御礼になるくらいの状況でしたから、2日間に分けたのは非常に賢い選択だったと思います。テレビカメラも何台か来てましたしね。
さて、この説明会には毎年欧州各国から関連企業や研究所、大学関係者、各国政府や市役所関連の人達など、実に様々な職種の人達が駆けつけるのですが、そんな人達の間に去年辺りからある傾向が見られるようになりました。それは、スペインからの参加者の多さです。去年は本当に多くて、参加者リストの4分の1くらいはスペイン人じゃないのか?って言うくらいだったのですが、今年も去年ほどではないにしても、コーヒーブレイクやランチの最中に聞こえてくる言語と言えば圧倒的にスペイン語。さすがにカタラン語はそれ程でもなかったけど、スペイン語の多さには本当にビックリしました。
理由は明らかで、ギリシャ危機を受けスペイン政府の打ち出した財政削減策によって一番打撃を受けたのがR+D+i分野だったからです。つまり自国の予算には期待出来ないが故に、みんなでEUの予算を取りに来たと言う訳。まあ、経済が危機に直面した時に一番最初に削られる予算と言えば文化政策やR+D+iと言う事は何処の国でもそれ程変わらないとは思うんですけどね。それでも説明会後の質問タイムにおけるスペイン人による質問の多さや、午後から開かれたパートナー探しにおける彼らの真剣な態度を見るに付け、それが逆にスペインの置かれた経済危機の深さを暗に物語っている様にも見えましたね。
さて、気になった事が一つ。
今年の公募が始まる前日、各種メディアを賑わせていた記事に、「今年の欧州委員会がR+D+iに割り当てる予算は過去最大である」みたいな事が載っていました。この話はコーヒーブレイクの間中、そこここで議論されていたのですが、交通分野に関して言えば、予算配分はそれ程変わっていない様に見えます。鉄道、海系で言えば、若干増えた気がしないでもないけど、それでもそれぞれ26M euro(約30億円)程度ですからね。これを多いと見るか、少ないと見るかは人それぞれ。
で、興味深いのが欧州委員会がプレゼン中に発表してたデータなんだけど、それによると、去年のプロポーザル応募総数は1600で、その内360余りのプロポーザルが予算を勝ち取ったのだとか。つまり勝率21%。これは実際にプロポーザルを書き、コーディネートしている僕からしたら、「本当かな?」と思っちゃう数字ですね。僕の感覚からしたら、「5%程度じゃないの?」みたいに感じるからです。
例えば今年の4月に締め切られたICT関連の交通系の公募には約100の応募があったそうなのですが、その内予算が付くのは多くて3つと言う事ですから、この公募に関しては勝率は3%しかない事になります。ただ、欧州委員会は様々な形の公募を行っていて、予算を振り当てるシステムも様々ですから、全体として見ると確かに20%程度なのかなー?と言う気はしないでもありません。
もう一つ気になった事は、(分かりきっていた事ではあったのですが)、やはり欧州委員会のサステイナビリティやエコに対する姿勢と言うのは年々強くなっていってますね。昨日だけで、クリーン、グリーン、エコ、サステイナビリティ、CO2、エネルギー消費、効率性なんて言葉を200回は聞いた気がします(笑)。この方向性が良いのか悪いのかは別として、もはやこれらのテーマを扱わない限り、欧州委員会から予算を勝ち取るのは難しいのかな?と言う現実を物語っているのかもしれません。
まあ、何はともあれ、今年も無事に説明会が終わり、約一年ぶりに会った人達とも又来年の再会を誓い合い、ある人達とは一緒にプロポーザルを立ち上げる約束を交わしつつも、長かった一日が終わっていきました。
さて、来週からは長−い戦いの幕開けです!がんばろうっと。