地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
アムステルダム出張:如何に訪問者にスキマの時間を使って街へ出るというインセンティブを働かせるか?:スキポール空港(Schiphol Airport)の場合
今日は朝から、とあるプロジェクト・ミーティングの為にアムステルダムに来ています。結構大きなプロジェクトで7カ国から45ものパートナー達が集まってるんだけど、総勢60人を超える人達が一つの机を囲んで一同に会する風景はナカナカ圧巻。この大所帯を取り仕切っているのが、世界的大企業から来てる経験豊富そうな年配の方なんだけど、見てるとホントに大変そう。一人一人の意見を聞いて、互いの利害が衝突しないように役割を振り分けて行くのは職人技の域に達している。

ここ数年、大変嬉しい事に、このようなEUプロジェクトに参加する機会に多数恵まれ、その為のミーティングに呼ばれる事が多くなってきたのですが、そんなミーティングに集まってくるのは大概、各企業のプロジェクトマネージャー以上の人達なんですね。つまり各企業内で部署を取り締まっていたり、沢山の部下を使ってプロジェクトを動かしていたりするすごく忙しい人達。だからみんなミーティングは出来るだけ効率良くやって、出来るだけ早く切り上げて帰りたい訳です。そしてその際、非常に重要な問題になってくるのが、「一体何処の都市でミーティングを行うのか?」という選択です。

コレは結構難しい問題で、ヨーロッパ中からパートナーが集まってくるので、取り合えず、それらの都市と直通便が飛んでいる都市で無いとお話にならないんですね。つまり第一に考えなければならないのがコネクティビティの良さと言う訳です。次に問題になるのが、その空港で利用可能なファシリティの高さ。そうすると、選択肢が結構限られてきて、ヨーロッパの空港ランキングの上位に何時も顔を出すようなハブ空港の名前が挙がってくる事が多いのですが、僕がこの34年で経験した中で最も快適で利用回数が多かったのが、ドイツ航空のお膝元であるフランクフルト空港です。

当ブログでも何度かこの空港の素晴らしさは紹介しているのですが(地中海ブログ:フランクフルト旅行その1:フランクフルト(Frankfurt)に見る都市の未来)、世界中と繋がっているコネクティビティと言い、その規模の大きさと言い、もう言う事無し。しかも空港から市街地までは電車で15分圏内にある事から、ミーティングが早く終わった場合など、簡単に中心市街地まで行って、帰りの飛行機の登場時間ギリギリまで観光を楽しむ事が出来ます。もし仕事をしたいなら、空港内にあるビジネスルームやカフェを使う事も勿論可能。

多分このフランクフルト空港というのは世界屈指の設備とアクセッシビリティを備えた空港だと思うのですが、実はもう一つ、機能的に全く引けをとっていないと思われるのが、今回のミーティングが行われているアムステルダムのスキポール空港です。

この空港の機能性の高さは以前の記事で紹介した通りなのですが(地中海ブログ:オランダ旅行その1:スキポール空港(Schiphol)アクセッシビリティ評価)、ヨーロッパ空港ランキングナンバーワンの座を守り続けているその実力はダテではありません。ハブ空港としての世界各国とのコネクティビティに加え、空港内に整備されているファシリティの充実性も半端じゃ無い。アムステルダム国立博物館との提携による空港内美術館を始め、教会なんかまであって、もう何でもアリって感じ。勿論宿泊施設系も充実してて、今回のミーティングが行われたのは、それらの内の一つ、空港に隣接する5つ星ホテル、シェラトンホテル(Sheraton Hotel)でした。



飛行機を降り空港のメインロビーまで行くと、そこからホテルへの渡り廊下が架けられていて、ここからホテルまでは歩いて3分の距離にあります。



つまり空港の外に出る事無く、ホテルのミーティングルームまで行く事が出来ちゃう訳です。

更にこの空港の最も驚くべき点が、中心市街地とのコネクティビティです(詳しくはコチラ:地中海ブログ:)。以前書いた様に、この空港の市街地へのアクセッシビリティは欧州最高峰にあり、空港からアムステルダム中心市街地まではなんと20分弱。更に空港のメインロビーに電車の乗り口があり、空港−市街地を結んでいる電車が10分毎に出ているというから驚きも倍増です。



これだけアクセッシビリティが良いと、一日の時間の使い方の可能性が数限り無く広がるんだけど、例えば今日なんて、17時にミーティングが終わって帰りの飛行機が21時。4時間って結構微妙な長さの時間で、普通の都市だと、市街地に行くには短すぎるし、空港で過ごすには長すぎる。パリなんかだと、中心街まで行って帰ってくるのに電車やバスの待ち時間入れて2時間以上。そうすると市街地にいられるのは1時間位しかない訳で、その為に街まで行ってみようかな?という気にはナカナカならないんですね。

その点、スキポール空港の場合は市街地まで往復で40分、帰りの電車の待ち時間はほとんど無しときてるから、どんなに短い時間でも「ビールでも飲みに行くか」というインセンティブが働く訳です。

ココが非常に重要なポイントなんですけれども、都市が今後考えなければならないのは、訪問者が「実際、街に何時間居られるのか?」という事ではなくて、「街まで出てみようかな」というインセンティブを訪問者に働かせる事が出来るかどうか?なんですね。どうしてかって、都市はなるだけ多くの人に市街地に行ってもらって、少しでも多くのお金を落としてもらいたいからです。そうするには取り合えず、街まで入ってもらわなきゃお話にはならないと言う訳です。そしてこのハードルは案外高い。

そういう意味で言うと、やはりスキポール空港やフランクフルト空港はヨーロッパの諸空港に比べて頭一つ抜けている気がします。多分、今後の都市はこのような戦略を真剣に考えなければ生き残れない時代に差し掛かっているんだと思います。
| 都市アクセッシビリティ | 23:20 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
ローマ(Roma)旅行2008その1:アクセッシビリティ評価
前回のエントリで予告したように、昨日の朝からローマ(Roma)に来ています。
イタリアです。
「ルネサンス、情熱」です。
2年振りのローマの休日です!

前回来た時は滞在期間が3日と短かったので、主要な観光名所を駆け足で回るという、まあなんとも忙しい日程でした。というのも僕はローマをなめていたんですね。「ローマ時代の遺跡なんて見たってなー」とか、「宗教画なんてマドリッドのプラド美術館で死ぬ程見たしなー」とか、かなり生意気な事を考えていました。そんな僕の鼻を見事にへし折ってくれたのがラファエッロ(Raffaello Sanzio)でありベルニーニ(Gian Lorenzo Bernini)だったんですね。彼らの作品を目の当たりにした時の衝撃は今でも昨日の事のように覚えています。

この街って「全ての道はローマに通じる」とか偉そうな事言ってるけど、偉そうな事言うだけの事は確かにある。なんたって1500年の歴史を誇るかつてのローマ帝国(Roman Empire)の首都であり、カトリックの総本山、バチカン市国(State of the Vatican City)がありますからね。ヨーロッパに住んでいるとイヤと言う程思い知らされるのがキリスト教の力であり、その浸透力。日常生活の根幹を担っているのがキリスト教なのですから。そしてそれらが生み出した芸術の数々・・・そんな星のかけら達が至る所に散りばめられている街、それがローマです。

と言う訳で2回目にも関わらず非常に楽しみな旅になりそうです。

まあ、とりあえず何時ものように都市アクセッシビリティ評価からいってみたいと思います。ローマの主要空港であるレオナルド・ダ・ヴィンチ空港(フィウミチーノ空港(Fiumicino))から市内までは電車かタクシーでアクセスする事になります。今回僕は空港⇔テルミニ駅(Termini)間を結んでいる直通列車(Leonardo Express)を利用する事にしました。

飛行機を降り税関カウンターを出て列車のターミナルを探すが・・・案内板が無い?ちょっと焦る(汗)。10分程ウロウロしたけど、結局見つけられず仕方無く係員の人に道を聞く。どうやら飛行機が着いたロビーが連絡通路からはちょっと離れた所だったのと、ローマで使用されている列車マークが列車に見えなかったのが原因。

この間、約20分。案内板の件もあるけど、空港出口からターミナルまでがちょっと離れてて分かりにくいかなとは感じました。

なにはともあれ、テルミニ駅までのチケットを購入して列車に乗り込む。電車は約30分おきに出ているようですが、料金は一人11ユーロ。これは高い!フランクフルトが15分おきで所要時間15分、3,5ユーロ。バルセロナが30分おきで所要時間20分、4ユーロの事を考えると、コレは高すぎ。

更に更に車内で大問題が発生しました。このチケットは窓口で買うだけでは十分ではなくて、乗車前に自動検察機に自分で通して日付けを押さないといけないらしいんですね。しかし時既に遅し。列車が発射してからその事に気が付きました。さもないと最悪罰金を支払う嵌めになるとかなんとか。「え、何ソレ」みたいな(怒)。「聞いてないよー」。おかげで到着までの約30分間はかなり緊張&不愉快な思いをしました。まあ、結局、駅員さんが見回りに来なかったので何事も無かったのですが・・・コレは不親切極まりない!イタリアだからしょうがないのか???皆さんも気を付けてください。



追記その1:腹が立ってたので忘れていましたが、この列車は街の中心までちゃんと連れて行ってくれます。そこは問題ありません。しかし上述のように料金とサービス(列車内はお世辞にも居心地が良いとは言えません。)を考慮すると、都市アクセッシビリティとしては中の下くらいでしょうか。

追記その2:市内から空港までの帰り道も同じ列車に乗ったのですが、2009年度は料金が上がり12ユーロとなっていました。今回は列車発着駅から空港内へと行きとは逆順序で進んでいったのですが、この空港と列車の連結構造は極めてシンプルだという事に気が付きました。各空港ターミナルから連絡通路が腕のように伸びているだけなので、アクセスは分かりやすいはず。問題は搭乗出口が1階で連絡通路入り口が2階であり、その案内表示の分かりにくさの問題だと思いますね。

もう一つは切符のセルフサービスの件ですが、これも帰り際に見てきました。よーく見ると確かに黄色いボックスが列車の前に幾つか並んでいました。



皆さんも気を付けてください。
| 都市アクセッシビリティ | 23:20 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
ウィーン旅行(Vienna /Wien)その1:都市アクセッシビリティ評価
前回のエントリで少しだけ触れたように、先週の水曜日から一週間足らずウィーン(Vienna / Wien)へ行って来ました。今回の主目的は仕事だったのでゆっくりと観光という訳にはいきませんでしたが、要所だけは押さえてきたので今日から数回に分けてレポートしていきたいと思います。

先ずは何時ものように都市アクセッシビリティ評価から。ウィーンへの飛行機は全てウィーン市の南東約20キロの所に位置しているウィーン国際空港(ウィーン・シュヴェヒャート空港( Vienna International Airport))に到着します。ここから市内へは鉄道かバス、もしくはタクシーを利用する事になるのですが、僕は一番手っ取り早かったバスを利用しました。

税関を出た直ぐの所に止まっているバスは30分毎に街のほぼ中心部に位置するモルツィンプラッツ・シュヴェーデンプラッツ( Morzinplatz, Schwedenplatz)へと我々を運んでくれます。料金は6ユーロで所要時間は約20分。これは早い!しかも安い!!本数が少ないのが気になりますが、所要時間だけでいったらフランクフルト並みです。つまりヨーロッパ最高峰のアクセッシビリティを誇ると言えると思います。

市内へのアクセッシビリティの重要性については当ブログで散々議論してきた所なのでココでは詳しくは書きませんが、都市アクセッシビリティ関連でどうしても書いておかねばと思うのが市内の状況です。ウィーン市内には縦横無尽に公共交通機関(地下鉄、バス、路面電車)が張り巡らされていて、何処へ行くのにも先ず不自由はしません。

しかしそれ以上に快適なのがこの街のスケール感なんですね。13世紀以来この地を支配してきたハプスブルグ家(Habsburg)の影響かどうか分からないのですが、この街は非常に人間のスケールに合わせて創られています。長く王朝が置かれた都市というのは王宮やら貴族の邸宅やらで何かとヒューマン・スケールを逸脱してしまう事が多いのですが、ウィーンは不思議と人間のスケールが保持されているように感じます。

そして環状路面電車が走っているリンク内だけでなく、少し中心地から離れた所でさえも至る所に大変賑わっている歩行者空間を見出す事が出来ます。



さて、アクセッシビリティ関連でもう一つ。帰りの空港での出来事だったのですが、驚くべき事に出国ゲートでの荷物検査が無かったんですね。あったのは飛行機チケットのチェックだけ。僕はココ数年、ヨーロッパ都市を旅行しまくっていますが、出国ゲートでの荷物検査が無かったのはウィーンが初めてです。これは気持ちが良い。

手荷物、ポケットの中の物、ベルトからラップトップまで全て空けなければならない苦痛と、長蛇の列を経ずに出国ゲートを通る快感といったらありませんでした。今では幾度となく繰り返される検問が当たり前になってしまったのですが、きっと以前はこんな風に素通り出来たんだろうなー、とか思ってしまいます。

テロを警戒しなくても良い、そんな時代がもう一度来るのでしょうか?不安ベースの社会から信頼ベースの社会への移行。もしくは未だ我々が眼にした事が無いような社会への到達。我々の人間性が真に問われる時代が来そうです。



しかしですね、こんな快感が続いたのはホンの束の間の事でした。ウィーン空港での荷物チェックは出国ゲートではなく、飛行機へ乗る直前の個別搭乗ゲートで行われていたんですね。

これははっきり言って不快感極まりない。普通なら搭乗手続き30分くらい前までに搭乗ゲートへ行けばよいのに、この空港の場合は1時間前に並ばなければなりません。更に一度搭乗ゲートを通ってしまうと、そこから出る事は出来ず、ほとんど監禁状態。つまり旅行の最後の醍醐味である空港でのショッピングが思いっきり楽しめないんですね。これはちょっと酷い。というかシステムとしてかなり下手だと思います。これによってウィーン市は観光客にしてもらえるはずの売り上げの何パーセントかを確実に失っていると思います。

その反対に僕が「へぇー」っと感心したのがコレ。





ウィーン空港のほぼ全域で無線LAN(インターネット)が無料で提供されているんですね。だから空港では至る所でラップトップを広げネットに繋いでいる人達を見かけます。このような試みは結構ありそうで無かったサービスだと思います。実際僕はヨーロッパの空港では見た事がありませんでした。バルセロナは勿論、パリやフランクフルトも有料でしたし・・・。

個人的にネットへの接続障壁は下げるべき(つまり無料化すべき)だと思うのですが、そういう意味で言うとウィーン空港のサイバースペース(大枠で言う所のパブリック・スペース)へのアクセッシビリティに関しては満点に近いような気がしますね。
| 都市アクセッシビリティ | 23:27 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
都市アクセッシビリティ:ヨーロッパの高速鉄道網状況
今日の新聞(La Vanguardia, 8 Junio 2008)にヨーロッパの高速鉄道網の比較情報が載っていました。というのも今年3月に開通したバルセロナ(Barcelona)ーマドリッド(Madrid)間のAVE(Alta Velocidad Espanola)のおかげでスペインは現在ヨーロッパにおいて鉄道網の充実度が第二位らしいんですね。




La Vanguardia, 8 Junio 2008, P2, Vivir

上の図で赤いラインが時速300キロ以上の高速鉄道で繋がれている所。ほとんどの地域をカバーしているグレーのラインは時速200キロ以下の普通電車が走っている所です。
このような図で見ると良く分かるのですが、やはり圧倒的に高速鉄道網が発達しているのはパリを中心としたフランスですね。パリ(Paris)ーロンドン(Londres)間、パリ(Paris)ーマルセイユ(Marsella)間、パリ(Paris)ーブルッセル(Bruselas)間など南北東西に鉄道網が伸びている事が分かります。

そして(驚くべき事に)マドリッドを中心とするイベリア半島も鉄道網が発達しているのが見て取れます。以前はマドリッド(Madrid)―セビリア(Sevilla)間しか敷かれていなかった鉄道網がサラゴサ(Zaragoza)を通りバルセロナまで延びた事によって一気にヨーロッパのトップ集団の仲間入りを果たしました。マドリッドーセビリア間はセビリア万博が開かれた1992年に開通したのですが、どう考えてもスペインで最優先すべきだったのはマドリッド(Madrid)ーバルセロナ(Barcelona)間のはず。そんな事はサルでも分かっていたんだけど、それが出来なかったのが有名なマドリッドとバルセロナのいがみ合い・・・なんて面白い国だ。

そして今バルセロナが一生懸命構築しようとしているのが、バルセロナ(Barcelona)ーパリ(Paris)間なんですね。軸線としてはバルセロナ(Barcelona)ーモンペリエ(Montpellier)ーリヨン(Lyon)ーパリ(Paris)となるのですが、この内パリ(Paris)ーモンペリエ(Montpellier)間はすでに開通している事から問題はバルセロナ(Barcelona)ーモンペリエ(Montpellier)間と言う事になります。まあ、それも時間の問題か。

しかしこう見ると、大西洋の弧であるビルバオ(Bilbao)ーパリ(Paris)間というのは地形的に言ってとても素直な提案のように思えます。ビルバオ(Bilbao)ーボルドー(Burdeos)ーパリ(Paris)という軸ですね。ビルバオ(Bilbao)ービーゴ(Vigo)間は優先順位としては多分最下位に近いと思うけど、ポルトガル側のオポルト(Oporto)ービーゴ(Vigo)は十分に有り得る。ただポルトガル側としては最優先はリスボン(Lisboa)ーマドリッド(Madrid)間でしょうけどね。

さて興味深いのは各国の料金比較です。

下記がスペインの主要都市を結ぶAVEの料金表:

Barcelona-Madrid, 621km 106 euros: 2:38 horas
Madrid-Zaragoza, 306km 50,9 euros: 1:21 horas
Madrid-Valladolid, 180km 32,5 euros: 1:02 horas
Madrid-Sevilla, 471km 74,6 euros: 2:30 horas
Madrid-Malaga, 498 km 78,6 euros: 2:35 horas

それに対してヨーロッパの主要都市間の鉄道料金表がこちら:
Paris-Londres, 383km 231,75 euros: 2:26 horas
Colonia-Frankfurt, 177 km 61 euros: 1:20 horas
Berlin-Hannover, 185 km 58 euros: 1:40 horas
Hannover-Wurzburgo, 327 km 76 euros: 2:00 horas
Paris-Bruselas, 300 km 82 euros: 1:22 horas
Paris-Amsterdam, 490km 105 euros: 4:11 horas
Roma-Florencia, 252 km 51 euros: 1:30 horas

更にコレが走行距離を料金で割ったキロ当たりの料金:

Barcelona-Madrid: 0,17 euro
Madrid-Sevilla: 0,16 euro
Madrid-Malaga: 0,16 euro
Madrid-Valladolid: 0,18 euro

Roma-Florencia: 0,20 euro
Paris-Londres: 0,60 euro
Paris-Amsterdam: 0,21 euro
Berlin-Hannover: 0,31 euro

以前から感じていた事なのですが、こうして数字で見るとAVEがヨーロッパ諸国に比べて圧倒的に安いのが分かりますね。
| 都市アクセッシビリティ | 20:28 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
ミラノ(Milano)旅行その1:都市アクセッシビリティ評価
木曜日から週末を利用してミラノに旅行に来ています。主な目的はゴシック建築の最高傑作と言われているドゥオーモ(Duomo)とラファエロ・サンティ(Raffaello Santi)のアテナイの学童の下書きを見る事です。特に去年のローマ旅行以来、ラファエロの大ファンになってしまった僕にとっては、彼の大傑作であるアテナイの学童関連を見られるのは本当にうれしい。

とりあえず、毎回恒例の都市アクセッシビリティ評価からいってみたいと思います。ミラノにはマルペンサ空港(Malpensa Airport)とリナーテ空港(Linate)という2つの国際空港が存在します。バルセロナからの今回のフライトではマルペンサ空港を利用しました。空港が2つに分かれている為か、国際都市の空港にしてはちょっと小さめかなという印象を受ける。

空港から市内へのアクセスはバス、鉄道があるようですが、今回はバスを選びました。空港を出た直ぐの所にバス停があり、20分おきに1本の割合で運行しています。ちなみに値段は7ユーロ。

20分に1本は国際都市にしては少ない方だと思いますね。値段が7ユーロというのもちょっと割高かな。しかも所要時間が50分。(バルセロナの場合は3.5ユーロで約5分おきにバスが出ています。所要時間は約20分)空港から市内までが50分というのは絶望的に遠い。その間、ヴェネチアのようにロマンチックな光景を見せてくれる訳でもなく、他都市と同様に郊外に広がるアーバニゼーションと高速道路という最悪のコンビネーションを永延と見せられる。しかもてっきり街の中心にあるドゥオーモ(Duomo)に着くのかと思いきや中心街とは程遠いミラノ中央駅(Staz Milano Centrale F.S.)に降ろされる。ドゥオーモよりもこっちの方が便利なのか???ちょっと訳が分からない。

唯一の救いはこのバスが約35分で見本市会場(Fiera Campionaria)を経由する事ですね。35分というのは優良とは言わないまでも、そんなに悪くない数字だと思います。

都市戦略という観点で見た場合、近年の見本市による来街者数と彼らが落としていってくれるお金は馬鹿にならないどころか、主な収入源の一つになりつつあります。その決め手となるのが見本市会場が何処に位置するかという問題と空港からのアクセッシビリティの問題です。この2つの問題が解決出来て初めて見本市という道具が都市の為に機能するようになるわけです。

上記の点を差し引いたとしてもミラノの都市アクセッシビリティはきわめて悪いと言わざるを得ません。僕の持っている2007年度版地球の歩き方によると、マルペンサ空港とミラノ北駅(Stazione Nordo Milano)を30分に一本の割合で約40分で結んでいるらしいけど、それにしたって普通以下の評価しか与えられませんね。

空港という機能が広大な敷地と騒音などの関係によって都市中心街からは遠く離れた所に建設されなければならず、その間を低所得者用の住宅や工場などが占めていくというのは逃れられない都市の宿命なのですが、それにしてもどうにかならないものですかね?せっかくウキウキ気分で旅行に来て飛行機を降りて、「さあ、これから楽しむぞ」という時に、いきなりこんな風景を見せられたらやる気が失せる。
今の所、この問題を解決出来ているのは僕が訪れた中ではフランクフルト空港だけですね。

ミラノ(Milano)旅行その2:ミラノのドゥオーモ(Duomo di Milano):文化の多様性をゴシック建築の多様性に見るに続く。

追記:
市内からの帰りはマルペンサ・エクスプレス(Malpensa Express)というマルペンサ空港への特急を利用しました。市内ドゥオーモ近くのCadorna駅から約30分おきに出ています。料金は11ユーロで所要時間約40分。
| 都市アクセッシビリティ | 06:08 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
マドリッド旅行その1:高速鉄道(Alta Velocidad Espanola:AVE)に乗ってきました
先週末を利用してマドリッド(Madrid)に行ってきました。マドリッドにはポルトガルに居た時以来、実に3年ぶりの訪問になります。

今回の旅の目的は主に3つ。
一つは先月開通した高速鉄道(AVE)に乗る事です。





新しいもの好きの僕としては誰よりも先に乗らずにはいられない。

もう一つは現在プラド美術館で開催中の展覧会、「プラド美術館の19世紀展(The Nineteenth Century in the Prado)」を見る事。この展覧会には19世紀のスペイン美術の重要性を示す95の絵画と20の彫刻が集められています。なんと言ってもカタルーニャが生んだ知られざる天才画家、マリアノ・フォルトゥーニ(Mariano Fortuny)の作品が展示されているらしいという事で期待大。

そして最後の一つがジャン・ヌーベル(Jean Nouvel)による国立ソフィア王妃芸術センター(Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofia)の増築を見る事。はっきり言ってあまり期待はしていなかったのですが、「見ず嫌い」だけは普段から出来るだけ避けるようにしているので。感動する瞬間というのは実はこんな風に期待していないけど、実は良かったという場合の方が圧倒的に多いという事を今までの経験として知っているんですね。という訳で一応。

とりあえず、毎回恒例の都市アクセッシビリティ評価からいってみたいと思います。と言っても今回は通常のように空港から都市中心部へのアクセッシビリティを評価するのではなく、都市間を結ぶ鉄道と飛行機の利便性の比較評価を試みたいと思います。

バルセロナ−マドリッド間を繋ぐ高速鉄道の発着駅はバルセロナサンツ駅(Estación de Sants)−マドリッド・アトーチャ駅(Estación de Atocha)と、どちらも中心街に位置しています。



特にマドリッド・アトーチャ駅というのは、目の前にピカソ(Picasso)のゲルニカ(Guernica)を擁するソフィア王妃芸術センター、歩いて5分の所にプラド美術館(Museo Nacional del Prado)という、立地の良さ。

これに対して、バルセロナ空港からバルセロナの中心カタルーニャ広場までがバスで約30分、マドリッド空港から中心街まで地下鉄で30分と、空港からのアクセッシビリティはどちらも抜群に良いのですが、中心街に位置する駅から発着する利便性にはやはり勝てない。

今回実際に高速鉄道を利用してみて初めて分かったのですが、高速鉄道を使う最大の利便性は待ち時間です。飛行機の場合、少なくとも1時間前には空港に居なくてはなりません。更にそこからチケットやセキュリティの列に並び、飛行機に搭乗しても飛行機が飛び立ち安定飛行に入るまではパソコンも開けない状況。

それに対して高速鉄道の場合には、列車発射の15分前までに行けばよく、入場やセキュリティなどの待ち時間はほとんど無し。列車は必ず定刻に発車し、席に着いたと同時にパソコンの電源を入れられます。何より席のスペースが飛行機よりも断然広いし揺れも少なく非常に快適。





加えて言うなら、列車内にあるカフェテリアでコーヒーを頼んだ所、一杯1.4ユーロでした。これは安い。飛行機なら軽く3−4ユーロはいくでしょうね。

高速鉄道のバルセロナ−マドリッド間の所要時間は約2時間40分なのですが、上述の空港までの移動時間や待ち時間などを考えると圧倒的に高速鉄道の方に分があるように思います。何より観光を目的としてマドリッドに行く人にとって、駅を出た直ぐの所がレイナ・ソフィア美術館であり、プラド美術館だというのは非常にうれしい。

気になる値段の方は、直通で片道119,50ユーロ。往復で買うと20%引きで191,20ユーロになります。格安飛行機に比べるとちょっと高めかな。しかし15日前までに購入すると片道最大40ユーロまでの値下げありです。往復で80ユーロというのは安い。更に高速鉄道には遅延による保障が付いています。15分遅れると半額が戻ってきて、30分以上遅れると全額返済。これはビジネスで行く人にとってはとてもうれしいサービスですね。

長年に渡りバルセロナ市民の気を揉み、最後は大規模なデモにまで発展したAVE問題でしたが、最終的にこのレベルのサービスを提供してくれたのなら、大満足なのではないでしょうか。
| 都市アクセッシビリティ | 19:11 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
ヴェネツィア(Venezia)旅行その1:「奥」のある風景
ヨーロッパは先週末からキリスト教に関する祝日(復活祭)で2週間程のバケーションに入りました。と言う訳で僕はイタリアはヴェネツィア(Venezia)に来ています。8日程の滞在です。目的は勿論、都市と建築。特にスカルパ(Carlo Scarpa)は大変楽しみです。

今回はバルセロナ−フランクフルト経由でヴェネツィアのマルコポーロ空港(Aeroporto Marco Polo)に入りました。ヨーロッパでも僕の大のお気に入りのフランクフルト国際空港(Frankflut International Airport)です。今回はトランジットが2時間30分だった為、大変居心地の良いカフェでパソコンを繋ぎ少し仕事をしました。その後、約1時間のフライトで無事ベネチア到着。

とりあえず毎回恒例の都市アクセッシビリティ評価からいってみたいと思います。といっても、この都市は他都市と簡単に比較は出来ません。何故なら良く知られているようにヴェネツィアは海に浮かんでいるので空港から市内へは主に船(Alilaguna社)でアクセスする事になるからです。(鉄道やバスもあるようですが、今回は利用しませんでした)その船が30分おきに空港と市内を結んでいます。大きな船なのかな?と思っていたらそれ程大きくも無く結構揺れたのにはビックリ。しかし船が島に近付くにつれて街明りが見え、それが次第に大きくなってくる様子は感動的ですらある。これはかなりロマンチックですね。所要時間約60分と、機能性からのみ見た場合、他の都市に比べてアクセッシビリティとしては最悪に近い数値ですが、都市の魅力を高める物語性という要素を考慮した場合、空港から市内へのアプローチとしては必ずしも悪くは無いと思います。

実はこのような物語性こそが他都市に圧倒的に欠けている要素なんですね。何故か?空港というのは大抵の場合、郊外に造られる事がほとんどです。そして都市と空港の間に出来る空間には工場や低所得者の住居といったような、乱雑極まりない風景が広がっています。これは世界中、ほぼどの都市でも言える事だと思います。

僕が日本に帰国する時に使用する中部国際空港は空港機能としては最上級に入る空港だと思います。海に浮いている為に、飛行機はあたかも海の中に入っていくようなアプローチをとります。それを知らない外国人は機内で感動的にその風景を見つめています。そして空港を出た目の前に高速列車が止まっていてスロープを降りてそのまま乗り込むことが出来るという使い勝手の良さ。

ここまでは満点に近い数字です。この後、列車は30分かけて名古屋市内中心部にアプローチするのですが、コレがまずい。空港を出てすぐの所の風景が悪すぎる。汚い看板や日本特有の戸建て住宅が永遠と続く風景ははっきり言って汚い。僕ならこの辺り一体は日本映画村を誘致して、外国人旅行者に「日本は伝説の通り、未だにちょんまげをした侍が街を歩いているのか?」と思わせますね。その後、金山−名古屋に続く超高層ビルを見せ、「おー、日本はやはり伝統とテクノロジーが融合した素晴らしい国だ」とかいう印象を与えて、つかみはOK。その後、昼ごはんには名古屋名物味噌カツで決まりでしょう。

この点、ヴェネツィアは海に浮いているという時点で何もする必要なくロマンチック度満点。なんたって、海からのアプローチですからね。まるでビルゲイツの家のようだ。違うか、ビルゲイツが真似したのか。

さて、ヴェネツィア初日、早速街を歩いてみました。そして直ぐに気が付いた事が車の気配の無い事。そうなんです、この都市には車が存在しません。これはすごい体験です。何故なら普段、当たり前だと思っている環境要素の一つが無いのですから。そしてこの事は僕達に都市というものは五感を通してこそ感じられるものであるという、当たり前の事を思い出させてくれます。車の発する音、路上駐車による視覚、排気ガスによる嗅覚など、普段我々が都市に対して抱いている感受性がこの都市では全く違います。

僕はヨーロッパでは一応、歩行者空間計画エキスパートなので、この都市は僕たちにとっての理想都市だという事になります。僕達が実現したバルセロナのグラシア地区歩行者天国空間22@BCNで現在実現されつつある歩行者空間などでは、居住者の自家用車や救急車両などは通行を許可していますので、完全歩行者空間ではありません。それが実現出来るとも思ってませんし、そこまでやる必要は無いと思います。第一、ヴェネツィアはあまりに特殊解過ぎる。ここでは市民の足は市内を組まなく網羅する運河を流れる舟です。それがあるからこそ車を排除出来た訳ですし。

しかしヴェネツィアを、都市の環境という視点から見たその快適性は圧倒的なのでは無いでしょうか?車の騒音や路上駐車が無い環境がこんなにも気持ちの良いものだとは思っても見ませんでした。そしてこの事は僕たちが目指す方向がそれなりに間違ってはいないものであると言う事を後押ししてくれているような気がします。

そんなこんなで、ヴェネツィア市民の足である公共交通機関である船に乗ってみました。興味深い事にこれらの船は幾つかの種類に分かれていて、それぞれバスやタクシーなど地上の公共交通機関に対応しています。これは2つの事を指し示していると思います。

一つ目はヴェネツィアの人々にとって運河が他都市における道路や街路と同じ機能を持っているという事。つまり生活におけるインフラという事ですね。もう一つはあまりにも浸透してしまった交通という隠喩です。つまりこれらの船に別に「バス」だとか「タクシー」だとかという地上交通系と同じ名前を付けなくても、高速船とか大型船と呼んだ方が自然なような気がする訳です。それにも関わらず、バスやタクシーという隠喩を使うのは、それだけ我々の意識の中にそれらのシステムが刷り込まれている証拠です。

さて、よく知られているようにヴェネツィアのど真ん中には逆S字型に大運河が流れています。この運河に沿って水上バスが運行しているんですが、今朝一番に端から端まで乗ってみて気が付いた事があります。それはこの運河がうねっている為に、いい具合で「奥」が発生している事です。

例えばコレ。



前方に向かって右側に曲がっていこうとする運河は、勿論その先が見えません。自然と想像力を掻き立てられます。一体この先に何があるのかと。

この写真は有名なリアルト橋(Ponte di Rialto)にアプローチしている所の写真です。













同じく右側に曲がっていく為に橋の左側から少しずつ見え始めてきます。段々と近付くにつれて全体像が見え、最後は橋を通して向こうの景色が広がり、更にその向こうの景色の先も曲がっている為に想像力を又掻き立てられるという物語が発生しています。

これは何も大運河に限った事ではなくて、小さな路地や小運河で構成されているヴェネツィアの都市全体が「奥」を生み出す装置になっているのです。そしてこれがこの都市に劇的な豊かさを生み出していると思います。道を歩いていて、もしくは船に乗っていて、こんなにわくわくする都市は珍しい。

そしてもう一つこの都市を豊かにしているのは、曲がりくねった先にある小さな楽園とでもいうべき緑あふれた庭園や中庭空間。





前にも書いたように、地中海都市では居住密度が高いので自分の家を補完するかのように公共空間が存在し使用されます。居間が狭く暗い代わりに自分の家の前に日の良く当たるパブリックスペースがあるといった具合に。ヴェネツィアも例外ではありません。しかしヴェネツィアの街が僕に教えてくれるのは、人はデザインする前提条件が悪くなればなるほど、知恵を絞り、その結果、大変に良いものが出来るという事実です。

僕たちは敷地条件だとか、隣接する家屋のデザインだとかといった、ある程度の縛りがあるからこそデザインを始める事が出来るんですね。そしてそういう中からこそ創造力という人間に与えられた、パソコンなどの機械とは違う能力を使って何かを創り出す事が出来るわけです。もし、何も無い所で白紙から始めろと言われてデザインを発展させる事が出来る人が一体何人いるでしょうか?ヴェネツィアの街は人間の知恵と創造力の奥深さを僕に改めて教えてくれました。
| 都市アクセッシビリティ | 23:37 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
都市化する空港と効率指標としてのアクセッシビリティ
先週、スペインの新聞、ラ・バングアルディア( La Vanguardia)に「空港都市( Aeropolis)」という記事が出ていました。過去、駅や港を中心として都市が発展したように、現在ではその役割を空港が担っているという話から始まって、空港内のアミューズメントパーク化に伴う空港それ自体の都市化といった内容でした。

空港は駅や港と違って必然的に郊外に建設されます。よってそれ自体で完結する事が多く、それ自体が一つの都市と見なされると言う訳ですね。建築の世界ではそんな事、90年代初頭からレム・コールハース(Rem Koolhaas)などによって盛んに議論されてきた所なので取り立てて目新しいという事でもないですけどね。

しかし実際に仕事やプライベートで空港を頻繁に使う僕の経験から言って、空港の都市化よりももっと重要で切実なのが、市街地へのアクセッシビリティの問題だと思うんですね。

それは現代都市が競って自分の所に誘致しようとしているハブ空港になればなるほど、その傾向が強いと思います。つまり空港が大きく多機能になればなるほど、空港内で完結するのではなく、市街地と空港のアクセッシビリティの良し悪しが空港評価に影響力を持ってくると言う事です。何故ならハブになればなるほどトランジットの問題が出てくるからなんですね。

例えば、空港内ショッピングが幾ら充実しているからといったって、空港に3時間釘付けはちょっときつい。そんな時、街まで足を伸ばしてみるかという思いが頭をよぎるけれど、中心街まで1時間とかだと行き帰りに2時間取られてしまって残り1時間。だったら「やめよー」という事になる。しかし中心街まで30分以下なら行き帰りで1時間。残り2時間は十分に遊べるので「じゃ、行くか」という事になる。そしてそれは空港選びに多大なる影響を及ぼします。

実際、僕は上記のような理由でなるべくフランクフルト国際空港(Frankfurt International Airport)を選ぶ事にしています。何故なら以前のエントリで書いたように、ヨーロッパにおいてフランクフルトほど機能効率を考えて創られた空港は他に無いんじゃないかというくらい空港から都市へのアクセッシビリティが良いからです。

フランクフルト国際空港から中心街までは電車で15分。その電車が10分から15分おきに頻繁に運行しています。空港・中心街間の行き帰りに1時間見ておけば十分といったアクセッシビリティの良さです。そうすると当然のようにトランジットの時間を利用して街に繰り出して昼食やコーヒー、街中散策をするといったシナリオが頭に浮かぶ事となります。更に、シュテーデル美術館(Das Stadel)に足を延ばしてフェルメール(Vermeer)の「地理学者(Der Geograph)」を見て来ると言うことも十分に実現可能なシナリオです。(以前、フランクフルトに行った時に正確に時間を計った結果はこちら

これは些細な事のようでいて、実は都市の経済活動においては非常に重要であると言えると思うんですね。空港にお金を落としてもらう事は勿論として、普通なら通り過ぎるだけの客に如何に都市にまで足を運ばせるか?ひいては、如何に都市内でお金を落としていってもらうか?

そのような認識を都市戦略に取り入れ実践しているのがバルセロナ都市戦略です。そこの所に自覚的だからこそ、新しいハブ空港の建設と同時に空港と市街地を結ぶ高速列車の建設を急ピッチで進めている訳です。

更にバルセロナには空港と並ぶもう一つの重要な都市間モビリティの要素、バルセロナ港があります。この空港と港という2つのエレメントがインフラで結ばれた時、都市は多大なる競争力を持つ事となります。(その良い例がアムステルダム)それを知っていたからこそマドリッドは高速列車建設に「うん」と言わなかった訳ですね。

更にバルセロナは現在、22@BCNに見られるように旧工業地帯を知識型社会へ移行させる為の核として戦略的にIT関連企業や文化産業を優先誘致しています。(切り札になっているのは容積率緩和でITやデザイン関係企業が立地する場合には270%まで容積率を緩和する政策を打ち出しています)。

空港とアクセシビリティ、知識型社会への移行という2つの軸の交点により創出されたのが、以前のエントリでも書いたポンペウ・ファブラ大学(Pompeu Fabra University)情報技術学部(Dept. Tecnoloogies de la informacion i les comunicaciones)新棟誘致の例。

知識型社会において、街全体の戦略性を高める為には大学との連携が欠かせないのは言うまでもありません。逆にグローバルに展開する企業や大学にとっては、何処の都市にフィジカルに立地するかという決定に大きな影響を与えるのが都市の快適性。この場合の快適性とは気候や食事のおいしさなどの居住性から他都市へのモビリティやアクセッシビリティをも含んでいます。

このような観点で見た時の「都市に立地したいランキング」がヨーロッパでは良く発表され、それが都市の競争力の指標として語られます。前回発表された時は、一位がロンドン、2位がパリ、3位がフランクフルト、4位がバルセロナ、5位がブルッセルと続いていました。

さて、前述のポンペウ・ファブラ大学の情報技術学部新棟に選ばれたのは旧市街地に立地していたフランカ駅(Estacio de Franca)でした。今までほとんど使われていなかったフランカ駅の屋社を買い取ってそこを学部棟にしちゃったんですね。位置としては旧市街にありながらも海のまん前という好立地。更にその後カタルーニャ州政府とバルセロナ市役所の後押しによって、空港からの直通列車が開通、30分おきに運行し空港まで30分で運んでくれます。

ここで想定されているシナリオはこんな感じ。

IT関連会社の研究員が大学で講義を依頼された時。空港に降り立ち、直通電車で大学棟まで30分で来る。駅を出た所が講義棟なので駅から大学までの移動時間は無し。講義後、目の前のバルセロナ港に面したレストランで海の幸を堪能する。昼食後、歩いて5分の所にある旧市街を散策。飛行機のチェックイン1時間前まで市街地を散策し、大学構内にある駅から30分で空港に到着というシナリオ。

こんなアクセッシビリティの良さが手伝って今ではYahoo研究所(Yahoo Research)Barcelona Mediaといったグローバル企業がこの棟に居住する事となり、その結果この棟では頻繁にインターナショナルな論客を招いてカンファレンスが行われています。

注目すべきなのは、このような都市へのアクセッシビリティを価値観だと認識し、都市が都市戦略を都市計画に反映させ、且つ、世界の企業がそれを競争力と見なしているという事です。前述した新聞に各空港の乗客利用数を指標とした空港ランキングが載っていました。それによると、

1. Hartsfield-Jackson: Atlanta, U.S.: 84.846.639
2. O'Hare International: chicago, U.S.: 77.028.134
3. London Heathrow: London, U.K.: 67.880.753
4. Tokyo Haneda: Tokyo, Japan: 65.810.672
5. LosAngels: Los Angels, U.S.: 61.041.066
6. Dallas-Forth Worth: Dallas, U.S.: 60.226.138
7. Pari, Charles de Gaulle: Paris, France: 56.849.567
8. Fransfurt: Fransfurt, Germany: 52.810.683
9. Pekin Capital: Pekin, China: 48.654.770
10. Denver: Denver, U.S.: 47.325.016
11. McCarran: Las Vegas, U.S.: 46.193.329
12. Amsterdam Schiphol: Amsterdam, Holanda: 46.065.719
13. Madrid Barajas: Madrid, Spain: 45.501.168
14. Hong Kong: Hong Kong, China: 43.857.908
15. John F.Kennedy: N.Y., U.S.: 43.762.282

しかし「何人の人が空港を利用したか」という指標が示す空港の規模だけの指標では空港の利便性はもはや図れない時代が来ているのではないのではしょうか?特に都市間のモビリティを確保する空港を都市発展の要に置く都市戦略上に据えた場合、それを都市との間のアクセッシビリティで測る事が必要となってきていると思います。そのような指標を視野に入れた時、上述のランキングはがらりと変わるはずです。そしてそれこそが現代都市における空港の真の価値を反映していると思います。
| 都市アクセッシビリティ | 23:26 | comments(2) | trackbacks(2) | このエントリーをはてなブックマークに追加
セント・パンクラス駅(St Pancras International)
イギリスとヨーロッパ大陸を結ぶ国際高速列車:ユーロスターの発着駅がウォータールー駅(Waterloo)からセント・パンクラス駅(St Pancras International)に代わるそうです。ウォータール駅と言えばその大変斬新なデザインで知られていますよね。敢えて構造を見せるデザインで外側に走っていた骨組みがガラスの皮膜を堺に切り返すように内側に入り込むデザインはかなり趣味が良い。年末はロンドンへ行く予定なのでこの建築は絶対に見たいリストに入っています。

さて、今日のテーマはアクセッシビリティです。旅行に行くと空港から中心街までのアクセッシビリティを何時も計ります。何故かというとそれがその都市の「生活の質」を計る一つの指標に成り得ると思うからです。同時に都市の競争力を測る指標にもなる。鉄道というのは言うまでも無く都市生活に欠かせません。ロンドンからパリまでは414kmで2時間15分。と言う事は朝ロンドンを出て午前中会議をして夕方には帰宅というシナリオが十分に考えられる。僕の場合はそれが飛行機になって、良くやるのが朝バルセロナを出てフランクフルトの空港で会議。夕方帰国というやつ。でも飛行機だと大概2時間前くらいには空港に居なきゃいけないから結局時間を食う事になってしまう。その点、ユーロスターという選択肢があるとどれだけ楽か?と言う事をふと考えてしまう。

ロンドンからアムステルダムが494kmで4時間59分。リールまで205kmで1時間19分。ブルッセルまで328kmで1時間51分。マルセイユまで1192kmで6時間15分。そう考えると東京―大阪間(550km)を2時間30分で走る新幹線が如何にすごいかが分かる。

これを聞いて黙っていられないのがスペイン人。特に最近のスペイン国鉄の不安定な運行に飽き飽きしているカタラン人の怒りはこの記事によって頂点っぽい。バルセロナからトルトサまで152kmで3時間45分。プッチャラダ(Puigcerda)まで150kmで3時間10分。プウトボウ(Portbou)まで162,1kmで2時間30分。セビリアまで1046kmで11時間。ラコルーニャまで1118kmで16時間11分。

これはヒドイ。というかスペインの第三世界側面丸出し。
| 都市アクセッシビリティ | 05:55 | comments(0) | trackbacks(35) | このエントリーをはてなブックマークに追加
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