地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
全米で最も美しい大学ランキング・ベスト10にランクインしているボストン郊外にある超名門女子大、ウェルズリー大学について
忙しい‥‥非常に忙しい!そして寒い!!



先週末ボストンには史上最強クラスのBlizzard(雪嵐)なるものがやってきて猛威を振るいまくってたんだけど、つい3ヶ月前にはコレ又史上最強クラスのハリケーンが来たばかりだったし、ある意味今年は当たり年なのでしょうか?(苦笑)。



今回の雪嵐到来(金曜日の深夜)の為に、MITでは金曜日の授業は全てキャンセル、大学は全面閉鎖という事態に追い込まれてしまいました。当然の如く公共交通機関も金曜日の午後4時でストップし、更にマサチューセッツ州知事の緊急事態宣言と共に、「16時以降、道路を自動車で走ったり駐車したりしたら罰金を科せます」みたいな宣言が出されるまでに。どうやらこれは、自家用車で走ってて事故を起こしたり渋滞とかしちゃうと雪かき機や救急車などの緊急車両の邪魔になるからと言う事らしい。「街自体はかなり脆弱でも、そういうノウハウだけは一応持ってるんだな‥‥」という事を発見(笑)。



ちなみに僕は、夜はカフェに行ってコーヒーを飲まないと落ち着かない性格なので、猛吹雪の中、近くのカフェに行こうと外に出たら10秒で真っ白になりました(笑)。それにもめげず、風速60メートルくらいの嵐の中、いつもなら歩いて5分も掛からないカフェに15分も掛けて行ったのに、行ってみたらその日は臨時休業でガッカリ。まあ、そりゃそうでしょうね(苦笑)。



さて、Twitterの方では結構流しているのですが、先週末ボストン郊外にあるウェルズリー大学(Wellesley College)で日本文化に焦点を当てたお祭り、「雪祭り」なるものが開催されていました。「ウェルズリー大学とは一体何か?」と言うとですね、ハーバード大学やコロンビア大学などと言ったアイビーリーグに対抗して創られた(?)セブンシスターズという7つの東部私立名門女子大の1つで、リベラルアーツカレッジランキングでは毎年上位5位以内に入る超名門校だそうです(Wikipediaより)。ヘェー。ヘェー、ヘェー。

セブンシスターズって、聖闘士星矢とかに絶対出てきそうな名前なんだけど(笑)、ちょっと調べてみたら卒業生にはヒラリー・クリントンや、ロザリンド・クラウス(美術批評家)がいるじゃないですかー!



「ロザリンド・クラウスと言えば、「オリジナリティと反復」、「視覚的無意識」そして「ピカソ論」なんか良く読んだなー‥‥」という事を思い出します。そうか!確か彼女はハーバード大学でPh.Dを取ってるから、学部時代はウェルズリー大学で過ごしたと言う訳ですね。って言うか、彼女がウェルズリー大学出身だって知ってる人ってあまりいないんじゃないかな?

そんなの聞いた事無いし、個人的には大発見なのですが‥‥。多分彼女は学部時代からハーバードに通ってて、そこで直接(彼女の師にあたる)クレメント・グリーンバーグに会ったって事だと思います。ロザリンド・クラウスがグリーンバーグに初めて会った時、「な、何?君がロザリンド・クラウスか?君の書いた文章から、私は少なくとも(今の君の年齢よりも)10歳は年上だと思ってた」みたいな事を言われたというのは良く知られている伝説ですけどね。



ちなみにオタク君達の集まりであるMITは、この超エリート女子大と50年も前から大変親密な関係にあるらしく、大学間の単位交換は勿論の事、両大学を結ぶシャトルバスが出ていたり、映画やミュージカルなど様々なイベントを共同開催したりしているんですね。冬休み期間中には、MITの学生センターでホラー系のミュージカルが行われてて、何故だか知らないけど、MITとウェルズリー大学の学生だけは入場料が割引になったりしていました(笑)。これは「MITのオタクの皆さん、がんばってウェルズリー大学の女の子達を誘ってくださいね」という大学側からの粋な計らいなのか?とか思ってちょっと笑ったww

さて、上述した様に、最近の僕のスケジュールは本当に一杯一杯で、やらなきゃいけない事が溜まりに溜まっている為、せっかく誘ってもらった雪祭りも泣く泣くキャンセルする事に(悲)。と言う訳で、今回はウェルズリー大学のキャンパスを訪れる事が出来なかったんだけど、実はですね、このキャンパスがちょっと凄いんです!何が凄いって、この大学、「全米で最も美しい大学キャンパス、ベスト10」なるものらしいんですよね(驚)。

そもそも僕がこの大学を訪れたのは全くの偶然でした。



1月2日にイェール大学へ行こうと思い、朝一番の列車に乗ろうとした所、エンジントラブルで電車が全く動かず‥‥。で、1時間待たされた後、やっと動いたかと思いきや、30分くらい走った所で今度はまさかの車輪の故障(悲)。その後館内アナウンスが流れ、「2時間後に緊急車両が来るので、それに乗り換えてください」とか何とか(怒)。この時点でもう既にお昼前だったので、片道2時間30分も掛かるイェール大学に行くのは泣く泣く断念。で、全く予定が開いてしまったその日の午後を埋め合わせる為に、「何処か近場で良い所無いかなー?」と探していた所、僕の頭をよぎったのがウェルズリー大学だったという訳なんです。理由は簡単で、この大学、スペイン建築界の巨匠ラファエロ・モネオ設計の美術館を所有しているからなんですね。



とは言ってもラファエロ・モネオのデザインはそんなに好きではないので、「まあ、一応見ておくか」くらいのかなり軽い気持ちで来たのですが、来てみてビックリ!モネオの美術館どころの話じゃなくって、そのキャンパスの圧倒的な美しさに魅了されちゃったと言う訳なんです。

と言う訳で先ずは行き方から。一番簡単なのは、MITの正門前から両大学を繋ぐシャトルバスが出ているので、それに乗っていけば45分程で到着しちゃいます。ちなみに料金は片道3ドルでMITかウェルズリーのIDを持っていれば無料で乗れます。



もしくはボストン市内のSouth Stationから電車に乗って30分という手もあります。その場合の最寄り駅はWellesley Square駅で、電車を降りたら真ん前にある大通りを、今乗ってきた電車と同じ方向に進みます。



歩く事5分、交差点の向こう側に「ウェルズリー大学」と書かれた看板が見えてくると思います。ここが正門。



で、取り合えず門を入って道なりに進んでいくと、くねくね道を抜けたその先に視界が「パッ」と開ける広場に出るんだけど、そこに展開しているのがこの風景:



じゃーん!1875年に開校されたというウェルズリー大学のど真ん中に聳え立つ、歴史の重みを感じさせるに十分な校舎の登場〜。重厚なレンガ造りの塔に、真っ白な雪化粧が本当に良く似合います。



この大学の基本的な建築スタイルは、橙色のレンガ造に緑色の屋根、もしくはグレーの尖塔の組み合わせとなっていますね。まあ、つまりはアメリカの典型的な大学で良く見掛けるデザインなんだけど、その中でもこのウェルズリー大学のキャンパスを特別なものにしている要素、それがここに広がる広大な自然なんですね。



緑溢れる自然の中にゆったりと配置された校舎の数々。



木々の間からチラチラ見えるレンガ造の建築。



自然が創り出した美と、人間が創り出した美が「これでもか!」と言うくらいのハーモニーを醸し出し、我々の心に直接訴えかけてくるかの様ですらあります。その中でも本当に素晴らしいと思ったのがコチラです:



そう、何とこの大学、敷地内に大きな大きな湖があるんです!これが結構大きくて、岸辺に沿って歩いてみたんだけど、一周するのに1時間半近くも掛かってしまいました。



反対側へ渡った所から見える、レンガ造の校舎を背景にした湖の醸し出す雰囲気は格別です。「この風景を見る為だけにここに来てもいい」、そう僕に思わせてくれる程の質がこの空間には存在します。



ちなみにこの大学は寮制になっているらしく、一度は住んでみたいと思わせてくれる様な素敵な建築があちらこちらに点在していました。



そして日が暮れてくるとこんな感じ:



夕暮れ時の風景に言葉はいりません‥‥。



今まで世界中で様々な絵画作品を見てきたんだけど、自然が創り出す夕焼けの美しさに対抗出来る様な創作物は一枚も無かった様に思います。



‥‥人間という生き物は、こんな圧倒的な自然の美、「掛替えの無い一瞬」を、何とか2次元のキャンパスに留めておこうとあらゆる手段(手法)を編み出し、そしてこれからも編み出して行く事でしょう。



それは例えば、光のエッセンスだけを取り出してみたり(ターナー)、現実そのままというよりは、寧ろ5感で感じたままの印象を大事にしたり(ルノアール、モネ)、はたまた人物や風景を一度分解して、その後にもう一度再構成してみたり(ピカソ)‥‥。



これら全ての試みは、「写真」とは全く違う形で美を捉えようという試み、云わば、「現実の美しさを一分の狂いも無く完璧に捉えてしまう事の出来る写真」を「人間の創造力で超えてみよう」という試みなんですね。



なんとかして自然の神秘の片鱗をキャンパスに再現しようとする、その努力、その工夫‥‥そんな人間の「果てしない創造力/想像力」にこそ僕は感動してしまいます(地中海ブログ:ガリシア旅行その8:アルヴァロ・シザの建築:セラルヴェス現代美術館(Museu de Arte Contemporanes, Fundacao de Serralves):人間の想像力/創造力とは)。



‥‥こんな美しい風景の前に佇んでいると、このウェルズリー大学に展開している風景は、アメリカという国、ひいてはニューイングランドというこの地方に古くから伝わる社会文化的なものを、正に一撃の下に視覚化してくれている‥‥そんな気がしてくるから不思議です。



そう、ここに広がっている風景は、この広大なアメリカという国が生んだ教育システムと、それが要求した建築、そしてニューイングランドという大変厳しい気候の中で育まれた社会文化、それら3つの軸が交わる上にしか存在し得ない大変希有な存在であり、この地方の表象となっているのです。

そういう意味において、ウェルズリー大学のキャンパスはボストンに来たら絶対に見るべきものの1つ、訪れるべき場所の1つに数えられると僕は思います。そして欲を言えば、それは雪が降った次の日、もしくは雪が積もっている風景を見に来るのがベストかな?とも思います。何故ならボストンという地方を特徴付けている要素の1つは、正にこの大変美しい雪化粧だと思うからです。ボストンに来たのにこの風景を見ないなんて勿体無い!

超おすすめです!
| 建築の歩き方 | 05:49 | comments(6) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
ルイス・カーンのフィリップ・エクセター・アカデミー図書館(Phillips Exeter Academy Library):もの凄いものを見てしまったパート1:行き方
あー忙しい。渡米して3ヶ月‥‥気が付いて見れば早いものでボストンでの生活も残す所あと3ヶ月弱となってしまった訳なのですが、最近は論文やら各種記事の締め切りに加え、メディア関連の仕事やヨーロッパの諸都市と一緒にプロジェクトを立ち上げたりと、何かと忙しくなってきた今日この頃です。



年末に向かうにつれてボストンは段々と寒くなってきて、正に「雨が夜更け過ぎに雪へと変わる」日もチラホラ出てきたくらいなんだけど、そんな中、先日遂にあの伝説の建築を訪れる機会に恵まれちゃいました!そう、学生時代から憧れ、「一生の内に一度は絶対訪れたい!」と思っていた建築、それがコチラです:



じゃーん!泣く子も黙るルイス・カーンの傑作、エクセター図書館なんですね。建築デザインに関わる者なら「知らぬものはいない」というくらい知られまくってる超有名建築。その割に僕の周りで行った事がある人は皆無、ネットを見ていても実際に訪れた人はそう多く無いのでは?と思われます。僕は基本的に建築を評価する時は、出来るだけ現場を訪れて自分の五感をフル活用した上で批評しようと努めています。何故かと言うと、最近の建築というのは写真うつりが非常に良いものが多くて‥‥と言うか、写真にカッコ良く収める為だけにデザインされた建築が非常に多いと思うからです。カーンと言えども自分の眼で実際に見るまでは信じられません!という訳で今回もはるばる行って来たという訳なんです。



ボストン市内から電車で1時間ほどの所にあるこの図書館は、一日に電車が5本程度しか止まらない小さな小さな村に位置しているのですが、どうやらこの図書館が所属している高校は全米でも指折りのエリート校らしく、アメリカ人なら誰しもその名を聞いた事があるっていう超有名校らしいんですね。しかしですね、そんな「アメリカ人の間にだけ有名だった」という状況に劇的な変化が起こったのがつい数年前の事。その立役者がこの人です:



そう、Facebookの創業者、マーク・ザッカーバーグ。実はですね、「プログラミングの天才」としてハーバード大学に入学する前から既に有名だったザッカーバーグが高校三年生の時に引っ越してきた高校こそ、このフィリップ・エクセター・アカデミーに他ならなかったのです!ヘェー、ヘェー、ヘェー。



そんな有名校とは露知らず、僕は今回初めてこの高校を訪れたんだけど、緑豊かな敷地の中にレンガ造りの大変美しい校舎群が大変見事にレイアウトされている姿にちょっと感動すらしました。



個人的には正にこれこそ心に思い描いていたアメリカの学園生活そのものって感じでしょうか(笑)。



こんな緑に溢れまくってるキャンパスの一角にあるのが今日のお題であり建築史に名を残す傑作中の傑作、ルイス・カーンのエクセター図書館なんだけど、訪れてみた感想を一言で言うと:

「物凄いものを見てしまった!」

って所だと思います。こんな感想を持ったのは、ポルトにあるアルヴァロ・シザのセラルヴェス美術館を初めて訪れた時(地中海ブログ:ガリシア旅行その8:アルヴァロ・シザの建築:セラルヴェス現代美術館(Museu de Arte Contemporanes, Fundacao de Serralves):人間の想像力/創造力とは)、そしてカルロ・スカルパのカルテルヴェッキオを始めとした一連の建築作品群を訪れた時以来の事かもしれません(地中海ブログ:カルロ・スカルパ(Carlo Scarpa)の建築その3:カステルヴェッキオ(Castelvecchio):空間の建築家カルロ・スカルパ:ものすごいものを見てしまったパート2)。それほど素晴らしい空間がここには広がっているんですよ!

詳しい空間分析などは次回のエントリに譲る事として、今回はこの建築への行き方から。ボストンからエクセター(Exeter)へはボストン北駅(Boston North Station)から一日に5本電車が出ている模様です。僕が行った時は:

Boston-Exeter
9:05; 11:35; 17:00; 18:45; 23:00

Exeter-Boston
6:43; 9:21; 14:09; 15:52; 20:14


というスケジュールでした。料金は往復で32ドル(これらは全て2012年12月現在の情報です。出発時刻、到着時刻などは頻繁に変わると思われるので、コチラのページで確認される事をお勧めします)。乗車切符はウェブから予約出来るんだけど、僕は駅で直接購入しました。という訳で朝一番の電車に乗ってレッツゴー!

電車の中はwifiが飛んでいてネットも出来たんだけど、折角だから外の景色を楽しむ事に。何でかって、実はボストンから遠出したのは今回が初めてだったので、アメリカ郊外の景色を楽しんだという訳なんです。感想は‥‥特に何もなかった(笑)。ボストン郊外は紅葉が奇麗という事で有名らしいんだけど、もう紅葉の季節は終わっちゃいましたしね(悲)。



そんなこんなで1時間ちょっとでエクセター駅に到着〜。ホームへ降りたら、先程乗ってきた電車の進行方向と同じ方向に歩を進めます:



そうすると何件かのお店が建ち並んだ風景に出会すんだけど、そのお店の並びに沿って歩いていくと、右手前方にガソリンスタンドが見えてくるので、そこを右手に折れます:



後はこの道をひたすら真っ直ぐに歩くだけ。10分も歩けば左手方向に何やらレンガ作りの校舎の様なものが見えてくる筈:



ここが今回目指すべきエクセター高校の敷地です。ここに到着したら、何処からでも良いので右手に曲がって校舎の中を突っ切ります:



美しい中庭を眺めながら少し小高い丘を上ると、一本の道路にぶち当たります。



その向こうに見える四角形のレンガ造りの建物、あれこそ今回目指すべき建築、ルイス・カーンのエクセター図書館です。

ルイス・カーンのフィリップ・エクセター・アカデミー図書館(Phillips Exeter Academy Library):もの凄いものを見てしまったパート2:全く同じファサードが4つデザインされた深い理由に続く。
| 建築の歩き方 | 12:36 | comments(3) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
I.M.ペイはやっぱり天才だと思う:ジョンハンコックタワーを見て
早いもので、ボストンへ来て今日で丁度一週間が経ってしまいました。最初の一週間は、IDカードを作ったり、色んな所に必要書類を提出しに行ったり、住む部屋を探したりと、それこそあっと言う間に時間が過ぎて行き、「何かをする」というよりは、新しい生活リズムに慣れる事で今は精一杯って感じです。



毎朝、チャールズ川に掛かる長―い橋を渡るのが日課になっているのですが、この橋からの眺めは結構壮快。



向こう岸に見えるのがMITの広大なキャンパスなんだけど、それらを背景として週末なんかには真っ白なヨットが出たりして、何気に気持ち良さそうです。朝方や夕方なんかには、この橋をジョギングしてる人を多く見掛けるんだけど、こっちに来て少し驚いたのは、結構みんな運動とかしてて、「健康には気を使ってるっぽい」って言う事を発見したって事かな。

当ブログでは散々書いてきたんだけど、スペインでは心臓の手術をしようが腎臓を移植しようが殆どの場合が無料なのに対して(スペインの医療保険に関してはコチラ:地中海ブログ:スペインの医療システムについて:歯医者の場合、地中海ブログ:ヨーロッパ各国の導入している医療システムについて、地中海ブログ:健康ツーリズム:スペインの誇る医療サービスの盲点を突いた、グローバリゼーションの闇)、アメリカでの医療費は結構高く付くというのは良く知られた事実だと思います。

そういう事を考え合わせると、実はアメリカ人(もしくはアメリカに住んでる人)って、病気になったりしたら医療費が高いから、普段からなるべく病気にならない様に心掛けてるんじゃないのかな?スペインは全く逆で、病院へは何回行ったってタダだから、用も無いのに行く人が多い(笑)。もしくは仕事をずる休みする為だけに行ったりとかも結構ある(地中海ブログ:スペインの管制官仮病騒動の裏側に見えるもの:実は裏で糸を引いてたのはスペイン政府じゃないの?って話)。

さて、MITのキャンパスにはエーロ・サーリネンやらフランク・ゲーリーやらスティーブン・ホールやらと言った、大変魅力的な近現代建築が溢れまくってるんだけど、上述した様に今週は結構忙しかったので、それらをじっくり見る事は全く出来ず(悲)。その代わりと言っては何なんだけど、街中へ日用品を買いに行くついでに、ボストンの中心部に建っているI.M.ペイ設計によるジョンハンコックタワーを見てきました。



市内の何処に居ても、どこからでも見えるこのジョン・ハンコックタワーは、正にこの街のランドマークと言うに相応しい存在かなと思います。



真っ青な空に「すくっ」と立った、その佇まいが先ずは非常に美しいですね。この建築の佇まいをここまで美しくみせているデザイン上のテクニックは色々あって、例えばこの建築の基本平面が単なる長方形じゃなくって、ハスに構えた形になってるとか、プロポーションにかなり気を使ってるとか、まあ書き出せば本当に長くなっちゃうんだけど、その中でもこの建築の一番の見所はコチラです:



そう、この建築の側面に上から下まで一直線に入ってるスリットなんですね。明らかにこのスリットがこの建築に独特のアイデンティティを与え、世界中の何処にも無い、唯一無二の存在にしている根源でもあります。と言うか、たったコレだけの操作で、この平凡な長方形をここまで特別なものにする事が出来る、そのデザイン力の方に我々は驚嘆すべきなのです。

一体、何がそんなに凄いのか?



えっとですね、I.M.ペイがここでやっている事、それは光を用いた造形なんですね。このスリットのガラス面にちょっと角度が付いている事から、ここだけ光の反射具合が異なり、あたかもここに一筋の光の線が走っているかの様に見えます。



しかもそれが時間と共に刻一刻と変化していく‥‥。



例えば上の写真は午前中に取った写真なんだけど、太陽光が反対側から入って来ているので、スリットは黒ずんで沈黙しているのが見て取れるかと思います。



それが午後になり、太陽が動くにつれて、このビルの側面に段々と光の線が描き出されて行く訳ですよ!



しかもその光の線が時間と共に刻一刻と太さを変え、又色彩をも変えていく‥‥。



これはアルヴァロ・シザがセラルヴェス現代美術館で見せた、あの魔術の様な光の扱い方、そして光による空間の造形と同類だと僕は思います。シザの場合は、「白い壁は光を良く反射する」という性質を用いて、前面の真っ白な壁に一旦太陽光を当てておき、その反射光をアプローチ空間に落とす事によって、あたかもエントランスアプローチ自身が、「おいで、おいで」と言っているかの様な空間が実現されていたんですね(地中海ブログ:ガリシア旅行その8:アルヴァロ・シザの建築:セラルヴェス現代美術館(Museu de Arte Contemporanes, Fundacao de Serralves):人間の想像力/創造力とは)。



前にも書いたと思うんだけど、やはりI.M.ペイという人のデザイン力、特に造形力には目を見張るものがあると思うなー。ルーブルのガラスのピラミッドは言うまでもなく、以前ベルリンで見たドイツ歴史博物館の、あのくるくる階段の造形には本当に度肝を抜かれた事を今でもハッキリと覚えています。ちなみに、その時の印象を僕はこんな風に書いているんですね:

「‥‥そもそも何故彼はこんな形を良いと思ってしまえるのか。普通こんな形、綺麗だとは思いませんよね。シザもそうなのですが、彼らの建築の魅力はダサイ形とキレイな形の不思議な均衡にあると思う。ちょっと間違えるとダサイ形になる一歩手前にとどまる事によって異様な魅力を獲得しているというような。こういうのって最近流行の一筆書きのミニマルな建築をデザインするのとは次元の違う造詣感覚が必 要だと思うんですね。やはり彼は他の人とはちょっと違う造詣感覚を持ち、形に対する感覚がかなり鋭いのかも知れない。」(地中海ブログ:I.M.Pei (アイ・エム・ペイ)について)

当時の僕はI.M.ペイのデザインした建築を2つしか見ていなかったので、彼の形に対する独特な感性等、「もしかしたらこのドイツの博物館が偶然なのかもしれない」と半信半疑だったのですが、今回彼の3つ目の建築を実際に訪れてみる事で、彼に対する僕の評価は増々固まりつつあります。



建築は表象文化です。その地方に根付く社会文化、もしくはそこに住む人々が心の底で思っていながらもなかなか形に出来なかった集団的無意識を一撃の下に表す行為、それが建築であり、そういう事が出来る能力を持った人達の事を我々は建築家と呼んできたんですね。

そういう意味において、今の僕は未だアメリカに来て1週間足らずなので、この国の社会文化は勿論の事、「この地に建っている建築が一体何を表しているのか?」、「ここに住む人達のどんな価値観を表象しているのか?」という事をハッキリと読み取る事は出来ないし、分析する事も出来ません。

その国や地方に住んだ事も無いのに、あたかもそこに建ってる建築=その地方の表象文化が分かったかの様な、そんな事を言うのだけは常々避けたいと、そう思っています。それこそ僕がスペインのカタルーニャという世界的に見てもかなり独特な地域に腰を据えて住む事によって得る事の出来た視点でもあるのだから。

と言う訳で、これからの数ヶ月間、この国に住み、この国の社会文化に触れる事によって、この国に展開している建築を出来るだけ読み解いていこうと思っています。乞うご期待!
| 建築の歩き方 | 09:53 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
建築の歩き方:ルイジアナ美術館(Louisiana Museum of Modern Art)その1:行き方
コペンハーゲン中央駅から電車で約30分ほど郊外に行った所にあるルイジアナ美術館に行ってきました。



今回国際会議が行われたスウェーデンでは日が暮れるのがとても早く、午後4時頃には既に辺りが暗くなり始めるので、一日の活動時間がかなり限られてきます。その上、金曜日(27日)の午後にはバルセロナでどうしても外せないミーティングが入っていた為、最終日はとても興味のあったセッションだけ見て帰る事に。で、急いで乗った電車が遅れて危うく飛行機を逃しそうになるっていうハプニングがあったんだけど、どうにか滑り込みでセーフ(汗)。



更に本会議が始まる前日の午前中はパリとスイスそしてバルセロナをスカイプで繋いで打ち合わせ。更に更にその直後には、コペンハーゲンから僕が居る街までわざわざ来てくれたコペンハーゲン市役所の人達とちょっとした話し合いが入っていたので、比較的自由に時間が取れたのは本会議が始まる前日の午後だけだったんですね。つまりその日しかルイジアナ美術館に行くチャンスが無かったので、かなりの急ぎ足で行って来たという訳なんです。



「せっかく行くんだから、ゆっくり見たいよなー」とかブツブツ言いながらも、今思えば最高のコンディションで美術館訪問が出来たかな。と言うのも、この時期の北欧というのは天気の悪い日が非常に多いみたいで、今週一週間の内で晴れたのは月曜日と火曜日だけだったんですね。つまり偶然にも僕が着いた日と、ルイジアナ美術館に行った日だけが晴れていたと、そういう事になる訳なんです。



さて、そんな「運」にも助けられた今回の美術館訪問だったんだけど、これが非常に良かった!って言うか、美術館を訪れて「絵画や彫刻といった収蔵品に」ではなく、久しぶりにその「空間構成に」感動しました。もっと具体的に言うと、コレクションを最高の状態で見せる為に考えられた空間のデザイン、そして緑豊かな自然環境をも取り込んだ、その見事な配置計画と視線制御、人工物と自然物との一体感に感動したというべきか。



と言う訳で、今回から2回に渡ってこのルイジアナ美術館について書いていこうと思うのですが、今日はルイジアナ美術館への行き方を紹介したいと思います。つまり久しぶりの「建築の歩き方」という訳です(パチ、パチ、パチ〜)。



最寄りの駅に着いてからの案内表示など、かなり分かり易いので迷う事は先ず無いとは思うんだけど、この美術館の入り口は「え、こんな所にあるの?」っていうくらい普通の住宅街の中にある事などから、初めての人にとっては歩いてる途中で、「本当にこっちであってるのかな?」と不安になる事は間違いありません。まあ、それがこの美術館の魅力の一つでもあるのですが、その辺りの事情については次回詳しく書きます。



先ずはコペンハーゲン中央駅、もしくは空港からHelsingor方面へ向かう電車へと乗り込みます。ここが先ずは一番重要な点だと思います。決してマルメ(Malmö)方面への電車に乗らない様に!ちなみにマルメ方面の電車に乗ってしまうと、欧州一長い橋(全長16キロ)を見られるっていう特典は付いてくるんだけど、全く逆方向へ行ってしまうので、「間違えた!」と分かったらすかさず引き返しましょう。コペンハーゲン中央駅からHelsingor方面へは一時間に3本程度(毎時13分, 33分, 53分)の電車が出ている模様です(2012年1月現在)。



目指すべき最寄り駅はHumlebaekという駅。コペンハーゲン中央駅からは30分程度の所にあります。車内ではデンマーク語でしか放送が入らないので、各車両の入り口ドアの上にある表示板で次の駅が何処なのかを確認しておくと良いでしょう。



で、着いたら、電車の進行方向に向かって右手、つまり電車から降りた方向に真っすぐ進みます。



ここで既に「ルイジアナ美術館こっち」みたいな表示が出ているのですが、一応目印としては、オレンジ色の雁行した建物が左手前方に見えるはずです。そのオレンジ色の建物を通り越すと広い道に出ます。



ここでも「ルイジアナ美術館こっち」みたいな案内表示が出ているのですが、この道にぶち当たったら左手に折れましょう。あとはひたすらこの道を進んでいくだけなのですが、これが本当に普通の道で、さっぱり美術館のありそうな雰囲気じゃない為、不安になる事間違い無しなんですね。



ほら、こんな家とかが両脇に並んでるくらいですから。まあ、でも騙されたと思ってどんどん進んで行くと、その内、右手前方に「ルイジアナ美術館こっち」っていう表示と、右手方向へと続く道が見えてきます。



言われるがままにそこを右折すると、両脇に車が沢山停まっている風景に出くわすはずです。



するとそのちょっと先の方に、「何か妙に人が家の中に沢山入っていくなー」とか思ったら、あれ、展覧会のポスターが貼ってある‥‥。



そうなんです、この一見何の変哲も無い住宅らしきものが、かの有名なルイジアナ美術館の入り口になっているんですね!そしてこの「何気ない風景」こそ、このルイジアナ美術館という空間構成が醸し出す「物語」の序章でもあるのです。

ルイジアナ美術館その2:ジャコメッティの間はちょっと凄いに続く。
| 建築の歩き方 | 20:25 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
エドゥアルド・ソウト・デ・モウラの建築:ポウザーダ・サンタ・マリア・ド・ボウロ(Pousada de Santa Maria do Bouro):行き方とレストラン情報
前々回のエントリで少しだけ言及したのですが、今回僕がガリシア地方とポルトガル北部を訪れた理由は、他でもない、今年のプリツカー賞受賞者であるエドゥアルド・ソウト・デ・モウラという人の建築を実際にこの目で確かめたかったからなんですね(地中海ブログ:エドゥアルド・ソウト・デ・モウラ(Eduardo Souto de Moura)のインタビュー記事)。



勿論彼の建築は幾つか見て回った事はあったんだけど、当時は(10年程前)、はっきり言って「そんなに感動しなかった」と言うのが率直な感想でした。何故なら彼の建築には空間がある様には見えなかったし、その空間を通して人間の深い部分に語りかけてくる「何か」があるとは僕には思えなかったからです。



その一方で、彼の建築に対する姿勢からは「何かしら学ぶ所があったかな」とは思いました。と言うのも、彼は殆どの作品を通して同じ事しかやってないんだけど、つまりは「穴を掘ってそこに建築を挿入する」、彼がやってるのは唯それだけ。彼のこの手法は建築の規模が違ってもそれ程変わる事がなくって、初期の住宅作品から最近完成したブラガのスタジアムまで、ほぼ一貫されていると思います。この事を指して、「ソウト・デ・モウラは同じ事しかやらない」と、彼の事を批判をする人が沢山いるけれど、僕はそれはそれで建築家としての一つの姿勢だと思うんですね。つまり、「一緒の事やってて悪いかー!」みたいな。



同じ事をやり続けるという事は、ある意味、常に新しい事をやる程簡単な事ではありません。新しい事をやり続けるっていうのも又、大変な創造力が必要なのは確かなんだけど、そんな事が出来るのは極々一部の人だけであって、大半の人っていうのは、自分の創造に自信が無いから直ぐ目移りして、目新しい物、奇を衒ったものへと流れていく訳ですよ。その一方で、一つの事をやり続けるっていうのは、自分の創造力/想像力に相当の自信と覚悟が無いとやれないと思うんですね。そういう意味において、ソウト・デ・モウラからは「建築家としての気概」みたいなものを学んだと、そう言えるかな?というのが彼に対する印象でした。

まあ、そんな訳で、今回から3回くらいに渡って、ソウト・デ・モウラ特集をやりたいと思うんだけど、「ソウト・デ・モウラと言ったらコレでしょ!」と言う訳で、彼の代表作の一つである、ポウザーダ・サンタ・マリア・ド・ボウロに行って来ました。



この修道院と教会は12世紀に建てられたシトー派のもので、一時期荒廃していたんだけど、それをソウト・デ・モウラが10数年の歳月をかけて修復し、見事、ポウサーダ(国が経営する5つ星ホテル)として甦らせたんですね。その評判はナカナカのもので、かの伊東豊雄さんなんか10年前にポルトに来られた際に、わざわざこの修道院を見に行って、「ソウト・デ・モウラという建築家はヨーロッパでは5本の指に入るほど優れた建築家だ!」とか何とかおっしゃっていました。

そんな素晴らしい修道院なんだけど、実はこの修道院、物凄く行きづらい所に建ってて、最寄の都市ブラガからバスで1時間弱かかる上に、そのバスの本数が一日にそれ程走って無いんですね。今回僕は車で行ったのですが、「公共交通機関で行きたい!」という人の為に、僕が知りえた情報をここに記しておきたいと思います。以下に記すのは、ブラガ市内にあるバス停から出発する、Geres行きのバスの時刻表(2011年8月現在の情報)です。今の時点でこの時刻表は最新のものなのですが、念の為、行かれる前に必ずホテルやツーリスト・インフォメーションなどでバスの時間を確認する事をお勧めします。



このGeres行きのバスに乗って45分くらい行った所にあるバス停、Pousada Santa Maria do Bouroで降りると直ぐ目の前が目的の建築なんだけど、初めて行く上にポルトガル語が 分からない日本人の皆さんにはちょっとしんどいかな?と思うので、バスに乗る時に運転 手さんに写真付きの建築を見せながら、「ここに行きたいんだー!」と言ってみましょう。 そうすれば(運が良ければ)目的地に着いた時に知らせてくれるかもしれません。

行きの時刻表
BRAGA発
7:10
7:25
7:55
8:30
9:15
10:00
10:45
12:05
12:45
13:30
14:30
15:15
16:05
16:35
17:05
17:35
18:05
18:40
19:10
20:00



で、問題は帰りなのですが、来る時に降りたバス停らしきものの反対側に、これ又バス停らしきものがある事はあるのですが、何処にも時刻表が無い・・・。仕方が無いのでそのバス停の目の前にあったお店のおばあちゃんに聞いてみたら、「えー、バスの時刻表、そんなの無いよ」とかあっさり言われた(笑)。「時刻表が無いって、どういう事?」とか思ったんだけど、ここはポルトガル、しかも殆ど人が住んでない様な山の中・・・まあ、しょうが無いか(悲)。そうこうしてたら、そのおばあちゃんが裏覚えの記憶で、「えーっと、バスね、確か、8時に出て、次は9時20分で・・・おとうちゃーん、10時台のバスって何時がだったけ?」なんて始めた(笑)。「まあ、無いよりはましかな」と思うので、一応その時聞いた時刻表をここに載せて置きます。しかしくれぐれもあまり信用はしない様に!一番確実なのは乗ってきたバスの運転手さんに聞く事ですね:

帰りの時刻表
Pousada Santa Maria do Bouro発
6:30
7:05
7:50
8:35
9:15
10:30
12:30
13:50
14:40
16:40
17:40
18:40

で、もう一つ重要なのがレストラン情報なのですが、と言うのもこの辺りにはナカナカ良いと思われるレストランが無さそうだったのですが、その中でも一軒良さそうなのを直ぐ近くに見付けたので入ってみました:



中は凄く賑わってて、見た所満席だったので、「ちょっと待とうかな」とか思ってたら、「じゃあ二階へどうぞ」みたいな感じで、2階席に通された:



うーん、広いし、綺麗だし、何より見晴らしが抜群!「ラッキー」とか思いつつ、早速メニューを見せてもらったんだけど、これが安いの何のって。さすがポルトガル!で、今回僕が頼んだ一品目がコチラです:



Sopa de Legumes
ポルトガルの定番メニュー、野菜のスープです。沢山の野菜と共に長時間煮込んである為、味が非常に濃厚で、とっても体に良さそう(笑)。何より、このスープこそ「ポルトガルの故郷の味」って感じで、これを飲むと「ポルトガルに来たなー」って感じになるから不思議です。そして今日のメインがコチラです:



Vitela asada a minhota
口の中に入れると、とろけるくらいにまで煮込んである牛肉なんだけど、何よりも、このご飯と酸味の利いたポルトガル独特のサラダが本当に美味しい!この様なオカズ+ご飯+サラダって言う組み合わせはポルトガルの典型的なメニューなんですね。スペインとは全く違う料理と味付けだけど、本当に美味しい。



デザートは机に所狭しと並んだケーキなどの中から選べるんだけど、今日は自家製プリンを頼んでみました:



これ又濃厚な味で非常に美味しい。と言う訳で大満足。で、気になるお値段の方なのですが、これだけ食べて、何と一人10ユーロ!安い、非常に安い!何気なく入ったレストランだったけど、非常に良かった。と言ってもわざわざ料理を食べにここまで来る程のレストランとは思えないけど、もしこの辺境の地にある建築を見に行くんだったら是非お勧めしたいレストランですね。

RESTAURANTE CRUZEIRO
Adress:Largo do Terreiro, No.316, Bouro (Santa Maria)
Tel: 253-371115
Email: restcruzeiro@sapo.pt

エドゥワルド・ソウト・デ・モウラの建築:ポウザーダ・サンタ・マリア・ド・ボウロその2:必要なくなった建築を壊すのではなく、修復してもう一度蘇らせるという選択肢に続く。
| 建築の歩き方 | 05:36 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
バルセロナ北図書館(Biblioteca de la Zona Nord)
最近バルセロナでは(寂しい事に)「わざわざ時間を作ってまで見に行きたい!」と思わせてくれる様な建築がナカナカ建たないのですが、そんな中、先日の新聞(La Vanguardia, 24 de Abril 2010)にチラッと紹介されていた新しい図書館の写真が今も僕の心をくすぐっています。



本当に小さな切抜き写真だったのでコレだけでは何とも言えなかったのですが、妙に気になる・・・そんな事を思い続けて早2ヶ月・・・。最近天気も良い事だし、みんな、夏時間の仕事パターンに入ってて3時くらいには事務所に誰も居なくなる事が多いし・・・と言う訳で、午後の時間を使って、久しぶりに建築ツアーに行ってきました。

ちょっと余談なんですけど、お天気がこの上なく良くなるこの時期にはスペインでは多くの企業が夏時間を導入します。「夏時間とは何か?」と言うと、朝ちょっと早く来て、涼しい午前中に集中して仕事を片付けて、暑くなる午後からは休憩しようっていう、ある意味すごい発想のアイデアなんですね。大抵の場合、夏時間の仕事は朝8時から始まって午後3時には終わりって所が多いんじゃないのかな?で、その後は家に帰ってちょっと遅めのランチを取ったり、サンドイッチをかじって、そのままビーチに繰り出したり、昼寝したり、その辺は人それぞれだと思います。



ちなみに僕が前に勤めていた機関は事務所がビーチの真ん前にあるという最高のロケーションだったので、事務所の人達はみんな迷わずビーチに繰り出していました(上の写真は僕の机から毎朝見えた朝日が昇る風景:地中海ブログ:明日から夏休み)。そして夕方くらい(7時とか8時とか)になると事務所へ帰ってきて着替えるんだけど、みんな、ビキニやタオルなんかをミーティングルームに掛けて帰るもんだから、ある時中央政府からやってきた大臣の、「ハ、ハ、ハ、バルセロナっ子は元気が良いな!」と言うコメントにはディレクター一同、苦笑いしましたけどね。

さて、そんなこんなで、図書館の場所をネットで確認してバスと地下鉄を乗り継いで行って来たのですが、最寄の地下鉄の駅を出た瞬間、目の前に広がる風景を見て、一瞬ヒヤリ!!



「あれ、ここって・・・メリディアナ地区???みたいな(冷汗)」
バルセロナには絶対に近寄っちゃいけない地区っていうのが幾つかあるんだけど、この地区は正にその中の一つなんですね。バルセロナの端の端、辺境に位置している事から、移民&貧困率が非常に高く、カタラン人からさえも恐れられている程なんです。最初、「マジで帰ろかな?」とか思ったんだけど、折角こんな遠くまで来た事だし、僕の危険レーダーもそんなに赤信号を発信してないし、「気を付けながら行ってみよう」と言う事で、行って来ました(良い子の皆さんは絶対に真似しない事をお奨めします)。


最寄の地下鉄を出て3分程歩くと、それらしき建築が見えてきます:



第一印象としては、ちょっと小高い丘の上に、地形に沿って、ものすごく謙虚に建っている様に見えますね。



基本的なプランとしては、2層に積み上げられた長方形が上と下とでジグザグを創り出しながらズレる事によって、丘の地形に合わせつつ、動きを醸し出しているかの様です。その為、建築自体が周囲に対して強調し過ぎる事も無く、かと言って、ダイナミックさも失っていない、ナカナカ見事なバランスを保っている様に見えます。



更に、この建築の主役とも言うべき2層になっている本体にくっついているエレベータ部分が、あたかもこの建築の「余韻部分」の様な扱いになっている様に見えない事も無い・・・かな。普通こういうのって、槙さんのTEPIAの外部階段みたいに扱うのがスマートだと思うんだけど、この建築では斜めに走っている階段が邪魔ですね。



まあ、それでも、この2層にズレた部分が創り出す「空の切り取り方」、そして見る角度によって全く違った風景が建ち現れる所なんていうのは結構面白い。



入り口は2層の本体にぽっかりと開いた洞窟の様な、非常にさっぱりしたものになっています。そして中に入った所がコチラ:



ナカナカに気持の良い空間に仕上がっていると思います。ロケーションが丘の上と言う事に加えて、ほぼ全面ガラス張りなので、空間に光が燦燦と降り注いでくるんですね。しかも2層吹き抜けの大空間の中に、宙に浮いた様な2階部分を創り出す事によって、「空間」を創り出そうという意識が見られる。



ここの階段なんかも、動きがあって、ナカナカ面白かった。

最近は実物よりも写真の方が良い建築なんかが増えてきて、実物を見るとがっかりすると言う事も多々あるのですが、そんな中で、この建築はそれなりに良かったかな?という印象を持っています。作者が誰なのか知らなかったので、さっきネットで調べてみたら、Rafael Pereza Leozと言う建築家がデザインしたらしいと言う事が分かりました。聞いた事が無い建築家なので、もしかしたら若手なのかな?もうちょっと、彼らの作品を見てみたい気もします。
| 建築の歩き方 | 20:22 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
プロヴァンス旅行その3:シトー会についてとル・トロネ修道院(Abbaye du Thoronet)の行き方
前回のエントリで書いた様に、ル・トロネ修道院は深−い、深―い、それこそ「まっくろくろすけ」が出て来てもおかしく無い様な森の中に隠れるように佇んでいるのですが、何故かと言うと、この修道院を建てた「シトー会」には、「修道院は人里離れた場所に建てなくてはならない」って言う厳しい掟があったからなんですね。



シトー会(Cistercian Order)と言うのは当時全盛を極めていたクリュニー派に対峙するようにして創設(1098)されたカトリック教会に属する修道会で、敬意、服従、清貧などをモットーにした厳格な生活をする事で知られている、自分にも他人も厳しい、超几帳面&真面目集団だったようです(僕の勝手なイメージ)。彼らの生活がどれくらい厳しかったかと言うと、食事は日に12回程度で茹で野菜くらいしか食べなかったとか、毎日午前2時前には起きて働いていたとか、もう、想像を絶するような数々の伝説が残っている程なんですね。だからシトー会の人達の平均寿命は当時の平均寿命と比べても極端に低くて、28歳を過ぎて生きる人は稀だったとか何とか。

そんなシトー会の人々は、とにかく贅沢をする事を「悪」と見做していたらしく、食べるモノから着るモノは勿論の事、生活習慣や建築にまで、その矛先は向けられていたそうです。だから、当時は彫刻なんかで教会堂を飾る事によって神の教えの荘厳さや美しさを表そうとするのが普通だったんだけど、シトー会の人達は、「装飾?そんなの贅沢だ!」と言う事で、彼らが建てた修道院には殆ど装飾らしい装飾が無いのが特徴となったと、まあ、そういう事らしいです。(多分厳密に言うと、良く言われている様に、シトー会建築=シンプル建築という程単純な話では無いような気がします。と言うのも、ロマネスク建築はそれが建てられた土地の文化を吸収して、その地方の特徴を兼ね備えるという特性がある様式なので。もしかしたら、シトー派3姉妹の建築の特徴は、プロヴァンス地方の特徴と言えるのかもしれないんだけど、それは又、別の話・・・)。

僕にとって興味深いのは、彼らは装飾は否定してるんだけど、その建築が表す空間の美は否定しなかったと言う点ですね。結論として、「我々の建築は美しくなければならない。しかしその美しさは装飾によるのではなくて、空間そのものが表す美であるべきだ!」とかいう、何処かで聞いた事があるような事を考えてったぽい。

つまり、800年後に起こる近代建築の理念の先取りをしていたのがシトー会だと考える事も出来ちゃう訳で、近代建築の巨匠であるコルビジェなんかは、ラ・トゥーレットを設計する為に何度もこの修道院に通って実測をしていたと言う逸話なんかはなんとも面白いものだと思います。

もう一つ重要な点は、シトー会の修道院は全て修道士の人達が石を一つずつ積み上げて創った、正真正銘の手創り修道院だという点です。しかもこんなに綺麗に積んでるし!



かなり几帳面だった様です(笑)。それに真面目。何ってたって、クリュニー派の人達のように、力仕事はアルバイトを雇ってやらせたりはしなかったらしいですから。つまり、重たい石を山に切り出しに行ったのも彼らだし、その硬い石を磨き上げたのも積み上げたのも彼らだと言う事です。そんな、創った人の顔が見えると、この修道院を訪問する時の印象や見方も又違って見えるというものです。

さて、こんな人里離れまくった森の奥の奥にあるル・トロネ修道院なのですが、詳しい感想や解説などは次回以降に回すとして、今回は行き方を紹介したいと思います。

一番簡単な行き方は、やはりレンタカーですね。「TomTomLe Thoronetと入力してゴー」が一番効率的且つ経済的な行き方だと思います。

しかし、とは言っても、みんながみんな、ヨーロッパでレンタカーを借りられる環境にある訳では無いのも又確か。と言う訳で、ル・トロネ村にある観光案内所で「公共交通機関で修道院に行く方法は無いか?」と聞いた所、以下の方法が良いのではという回答を頂きました。

その1
Les Arcs Draguignan(
最寄の村)までは電車が来ているので、そこまでは電車で来てそこからタクシーという方法。この場合のタクシーの料金は片道45ユーロくらいなのでは?と言う事も教えてもらいました(この値段はあくまでも観光案内所の女性の個人的な意見なので、あくまでも参考程度にしておいてください)。

その2:
Les Arcs Draguignan
からLe Cannet des Maures(小さな村)までバスが出ているので、その村までバスで行って、そこからタクシーと言う方法。この場合のタクシー料金は片道30ユーロ前後なのではと言う事でした(こちらもあくまでも目安と言う事でお願いします)。

下記はル・トロネ修道院とル・トロネ村の観光案内所の連絡先詳細です。ちなみにル・トロネ修道院の受付の女の子は英語は話せないけど聞き取りは何とか出来る様子で、こちらが英語で話すと、言ってる事を理解してフランス語で返事をしてくれます。反対にル・トロネ観光案内所の女の子は英語もOKでした。

ル・トロネ修道院(Abbaye du Thoronet
Tel:(33)0494604390

Fax:(33)0494604399

Web:www.monuments-nationaux.fr


開館時間(20106月現在)
4
1日から930日まで
月曜日から土曜日
:10am-6:30pm
日曜日
:10am-12pm, 2:00pm-6:30pm
10
1日から331日まで
月曜日から土曜日
:10am-1:00pm, 2:00pm-5:00pm
日曜日
:10am-12pm, 2:00pm-5:00pm

お休み:11日、51日、111日、1111日、1225
入場料
:7ユーロ

ル・トロネ観光案内所
Tel:(33)0494601094


プロヴァンス旅行その4:ル・トロネ修道院(Abbaye du Thoronet)の窓に見る神業的デザインに続く。
| 建築の歩き方 | 22:55 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
リュイス・ドメネク・イ・ムンタネール(Lluis Domenech i Montaner)によるモデルニスモ建築の傑作、サンパウ病院(Hospital de la San Pau):病院へ行こう!どんな病気も直ぐに治るような気にさせてくれるくらい雰囲気の良い病院
今週の土曜日から日曜日にかけて、カタルーニャモデルニスモ建築の至宝であり世界遺産にも登録されているサンパウ病院の内部空間(一部)が一般公開されています。



サンパウ病院(Hospital de la San Pau)は、ガウディのライバルであり当時のスペイン建築界の巨匠でもあったリュイス・ドメネク・イ・ムンタネール(Lluis Domenech I Montaner)がデザインした、カタルーニャ音楽堂と肩を並べるカタルーニャが誇るモデルニスモ建築の傑作中の傑作です。(カタルーニャ音楽堂についてはコチラ:地中海ブログ:リュイス・ドメネク・イ・ムンタネール(Lluis Domenech i Montaner)の傑作、カタルーニャ音楽堂:コーディネーターとしての建築家の役割を再確認させてくれる名建築)。

元々この病院は1401年に現在のカタルーニャ図書館(Biblioteca de Catalunya)が入っている建物にSant Creu i Sant Pau病院として設立されたのですが、その後数百年が経過する内に、市内で急増する患者等の需要に応え切れなくなってきた事などから、1902年に今の場所に移されたという経緯があります。その時全体計画を任されたのが、リュイス・ドメネク・イ・ムンタネールだったと言う訳なんですね(サンパウ病院の歴史についてはコチラ:地中海ブログ:ドメネク・イ・ムンタネール(Lluis Domenech I Montaner)によるサン・パウ病院(Hospital de la Sant Pau)の横に新しい病院棟完成)。



そんな歴史ある由緒正しいサンパウ病院なのですが、実は2009年からその機能を一掃し、新たなるシンボルとして生まれ変わらせるべく、大規模な修復工事が始まっています。と言うのも、このモデルニスモ建築の傑作を「地中海同盟」の拠点の一つにしようという動きがあるからです。

地中海同盟の常設事務局がバルセロナに置かれる事は既に何度か当ブログでお伝えしてきた通りなのですが、それに伴い集まってくるであろう国際機関や企業、研究センターなどをどうするのか?実はその点が長い間不明確で、バルセロナにとっては大問題でした。(地中海ブログ:地中海連合(Union pour la Mediterranee)の常設事務局はバルセロナに)。そこへ名乗りを上げたのが、病院としての機能を終える事が決まっていたサンパウ病院だったと言う訳です。今日はその修復工事の一部が完了したので、是非市民の皆さんに見てもらおうと、まあ、こういう事らしいです。



地中海の青い空にものすごく映えるオレンジ色の正面ファサード。前回来た時(約1年前)は左翼が修復中で工事シートが掛かってたんだけど、今回は右翼に掛かっていました。



近くに寄ると良く分かるんだけど、彫刻やらモザイク、ステンドグラスのアンサンブルが素晴らしいですね。これら諸芸術が一体となり建築に統合される事によって、まるでこの建築自身が「都市の喜び」を表象しているかの様です。そしてこの点こそが、同時期にヨーロッパ各地で華開いたアール・ヌーヴォーとカタルーニャで謳歌したモデルニスモの一番の大きな違いだと僕は思います。つまり前者が世紀末の退廃的な様相を呈しているのに対して、カタルーニャモデルニスモは、まるで、その全体で「生きる喜び」を表現しているかの様な印象を受けるからです(地中海ブログ:ウィーン旅行その7:グスタフ・クリムト(Gustav Klimt)の「接吻(The Kiss)」に見る「愛するという事」)。そんな事を思いながら、正面エントランスを潜り、イヨイヨ中へと入っていきます。そこで遭遇する空間がコチラ:



上空へと我々を誘う上昇感溢れる大変気持ちの良い大階段です。



螺旋を描きつつ、手すりの長さを「短」から「長」へと変化させる事によって、圧倒的な上昇感を創り出す事に成功しています。そしてふと上を見上げると、この天井:



眩暈を引き起こすかの様な見事な装飾天井です。なるほどー、最下段の少しキックした短い手すりから始まった運動が螺旋系に上昇し、最後はこの天井で帰結するという物語かー。大変ドラマチックですね。

さて、この素晴らしい階段ホールを昇り切り、左手に折れると、この建築のメインホールに辿り着くのですが、そこがココ:



天井が高く、至る所に装飾が施された極めて格調高い空間に仕上がっています。



天井は勿論カタランボールト。カタランボールトの曲線とアーチが交わって、大変魅力的なハーモニーを醸し出していますね。そして面白かったのがこの柱のデザインです:



上半分が四角くて重量のあるデザインになっているのに対して、下半分は円柱+モザイクで彩られている事から、大変軽い感じを受けます。このコンビネーションは面白いなー。そしてこの部屋から眺める事が出来る病院の中庭側の風景がコレマタ絶景:



正に緑の中に佇む病院と言う感じですね。



実はこの病院は上の全体計画図が示す様に、沢山の独立したパビリオンが中庭を介して寄り添う様に集まってひとつの病院を構成しているのですが、その各パビリオンの間に溢れんばかりの木々を配置する事によって、大変爽やかな雰囲気を創り出す事に成功しています。ココには僕達が「病院」と聞いて、連想するような陰気くささや暗さと言ったイメージは全くありません。こんな楽しげな明るい病院だったら、病気もさぞかし早く治るんだろうなー。病は気からって言うし。正に「病院へ行こう!」(笑)。



さて、この配置計画に際して、大変面白い展示がされていました。実はこれら独立して建てられているパビリオンは全て地下道で繋がっていて、一見バラバラに見える部分の集合が、全体で一つの病院として機能しているらしいんですね。つまりドメネク・イ・ムンタネールは病院と言う施設を巨大な一つの建物としてデザインしたのではなく、各々の部分をネットワークで繋ぎ、各部位に違う機能を宛がう事によって、全体として動く一つの生物の様にデザインする事を目指していたんだそうです。

今でこそ、インターネットやソーシャル・ネットワーク、もしくはネットワーク理論なんかに熱い注目が集まり、それまで知られていた一極集中型モデルだけではなく、多極構造モデルの存在が明らかになりつつあるんだけど、100年も前に既に同じ様な事を考えて、実際に建築をデザインしていた人がいたなんて、ものすごく新鮮な驚きでした。



ちなみに各パビリオンの中はこんな感じで大部屋になっていて、当時はココに十分な間隔を取りながら、患者さんのベッドが置かれていたんだそうです。今は各パビリオンにはサンパウ病院の歴史や、この建築の街との関わりなどを示す展覧会場となっていたりするのですが、将来的にはココに上述した地中海同盟関連の企業などが入るものだと思われます。そんな中でも面白かったのがこのパビリオン:



彫刻やモザイク、ステンドグラスなどがどのように修復されているのか?を実演を交えて説明していました。

こんな素晴らしい環境の中で、これからバルセロナが「地中海の首都」としてどのような活躍をしていくのか?ちょっと創造してみただけでも、心がウキウキしてきませんか?
| 建築の歩き方 | 19:42 | comments(10) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
ウィーン旅行(Vienna / Wien)その2:スティーブン・ホール(Steven Holl)の建築:ロイジウム(LOISIUM Kellerwelt):行き方
ウィーン(Vienna / Wien)とその周辺にはどうしても見たかった建築が幾つかあったのですが、その一つがスティーブン・ホール(Steven Holl)によるワイン博物館のロイジウム・ビジター・センター(LOISIUM Kellerwelt)です。



スティーブン・ホールの建築は幸運にも今までに2つ訪れる事が出来ました。一つはアムステルダム(Amsterdam)にあるサルファティ・ ストラートのオフィス(Sarphatistraat, 1996-2000)。



5年程前にアムステルダムを訪れた際、偶然前を通りかかりレストランかと思って入った建物がこのオフィスだったんですね。最近流行りのスター建築家にデザインさせたビュッフェ式のレストランだとばかり思い込んで普通に食べてましたが、食事を終えて出て行く時に「どうやらココは社員食堂らしい」という事に気が付きました。(さっきネットで知ったのですが、どうやら最近は関係者以外立ち入り禁止みたいですね。当時はお金を払えば誰でも食べられる様子でした。)

その時まで、はっきり言ってスティーブン・ホールには全く興味がありませんでした。元々このオフィスだって訪れるつもりでは無かったし。彼については一応、1997年にエー・アンド・ユーから出版された「知覚の問題ー建築の現象学(Questions of Perception, Phenomenology of Architecture)」という小冊子を読んでいたのですが、「また、頭でっかちの理論ガチガチタイプが出てきたな」というのが僕のホールに対する印象だったんですね。

しかしですね、そんな印象は実際に彼の建物を訪れる事によって大きく変わる事となりました。



入った瞬間に感じる、ある種の建築だけが持つ空間の質。とにかく光が素晴らしかった。大小様々な大きさの窓から入ってくる光のハーモニーとでも言うのでしょうか。ここで見たものはそれまでに体験した事の無かった類の空間だったんですね。



白で統一された内部と、窓を通してちらりと見える外部を覆っているあの緑色のパンチングメタルの見事な組み合わせ。少し間違えれば確実に悪趣味に陥るような派手な緑が、ココでは全く正反対にさわやかな感じすら醸し出していたんですね。これこそデザイン力の賜物!しかも夜になるとその大小様々な窓から漏れる色とりどりの光が、まるでこの建築を宝石箱のように輝かせていました。



そんな思いを抱きながら仕事で2年前に訪れたヘルシンキ(Helsinki)にて、彼の手掛けたヘルシンキ現代美術館を見て、これまたビックリ。



「彼は派手な事を大雑把にやるような見せ掛けの建築家では無くて、派手に見えるその建築の裏には非常に丁寧で洗練された溢れんばかりのデザインセンスが光っている建築家である」という、その思いは確信に変わりました。



この建築では特に「スパッ」と切られた断面のデザインとそれらの線が織り成す「空の切り取り方」が非常に素晴らしい。この辺りの事については以前のエントリ、モスラの断面勝負:Steven Holl (スティーブン・ホール): キアズマ (フィンランド現代美術館)で詳しく書きました。

そんな体験をしているものだから、小さいとは言えどもホールの作品は是非見たいと思った次第なんですね。

さて、先ずは何時ものように「建築の歩き方」から。

今回訪れた建築はウィーン市内ではなくて電車を乗り継いで1時間15分くらいの所に位置する小さな町、ランゲンロイス(Langenlois)にあります。この町はオーストリアで最もワイナリーの集まる町であり、オーストリアを代表する葡萄品種、グリューナー・フェルトリーナ(Gruner Veltliner)の産地でもあるそうです。という訳で、この町の売りは当然ワイン。ワイン以外は取り立てて何も無いので、ワインへの力の入れ様は相当なものです。それは、こんな小さな町が一つの建物を建てる為にわざわざアメリカからスティーブン・ホールのような大物を呼んだ事にも見て取れますよね。

さて、ウィーン市内から先ずは地下鉄に乗ってフランツ・ヨーゼフ駅(Wien Franz-Josefs-Bahnhof)まで行きます。そこからクレムス(Krems a.d. Donau)行きの列車に乗ってハーデァスドルフ駅(Hadersdorf am Kamp)で下り、そこでホルン(Horn)行きのローカル線に乗り換えてランゲンロイス駅(Langenlois)で降ります。乗換えを考慮して時刻表を見ると、どうやら一時間に一本程度はあるようです。(下記に2008年9月現在の時刻表の一部を転載しておきます。突然の変更等が予想されますので、必ず出発前に鉄道会社のホームページ等でご確認ください。)

行き:
フランツ・ヨーゼフ駅発:6:51: 7:51: 8:25: 9:51: 10:51; 11:51

ハーデァスドルフ駅着 :7:54: 8:47: 9:25: 10:46: 11:46: 12:46

ハーデァスドルフ駅発 :7:57: 8:51: 9:51: 11:14: 11:51: 13:14

ランゲンロイス駅着  :8:04: 9:00: 10:00: 11:21: 12:00: 13:21

帰り:
ランゲンロイス駅発  :12:59: 14:59: 15:59: 16:59: 18:00: 19:00

ハーデァスドルフ駅着 :13:05: 15:05: 16:05: 17:05: 18:06: 19:06

ハーデァスドルフ駅発 :13:11: 15:11: 16:08: 17:09: 18:11: 19:11:

フランツ・ヨーゼフ駅着:14:04: 16:04: 17:04: 18:04: 19:04: 20:04

料金は片道約12ユーロでした。電車は2階建てのトイレ付き。かなり大きな列車であまり乗客はおらず自由に席が選べました。揺れ、騒音共に少なく極めて快適な列車の旅が体験出来ます。

最初に下りる駅、ハーデァスドルフ駅(Hadersdorf am Kamp)は本当に小さな駅で注意していないと通り過ぎてしまいます。オーストリア鉄道はかなり時間に正確なので、あらかじめ到着時刻を確認しておいて、自分が下りる駅かどうか?を見極めるのが良いかもしれません。



これが最初に下りるハーデァスドルフ駅(Hadersdorf am Kamp)の風景です。はっきり言って何にもありません。目の前に止まっている2両編成の小さな列車が次に乗る各駅停車のホルン(Horn)行きです。

発車時間近くになったら運転手が列車に乗り込むので一応本当にホルン行きでランゲンロイスに止まるかどうか聞いてみましょう。この小さな列車に揺られること約10分、目的地のランゲンロイスに到着します。



ハーデァスドルフ駅からは2つ目です。一つ目の駅(Gobeisburg)は止まる電車と止まらない電車があるようなので注意してください。



さて、電車を下りて線路を渡り駅を出ると正面に「ロイジウム(LOISIUM)こっち」みたいな看板があります。



それに従って道を真っ直ぐ行きます。



するとその道の突き当たりに又同じ様な看板があり今度は左に曲がるように支持があります。

このようにロイジウム・ビジター・センターに到着するまで案内表示があるので、先ず道に迷う事は無いと思います。ちなみに駅から到着までに曲がる道の数は6つで、2つ目と3つ目の間の緩いカーブを描いている道路の左手には下記のようなキリストの像があります。



更に最後の曲がり角の前には下記のような黄色い建物が見えるはずです。



駅から目的地までの所用時間は約10分です。もし迷ったら歩いている人に道を聞いてみましょう。オーストリア人は基本的に親切な人が多くて、聞けば真摯に答えてくれます。

さて、最後の曲がり角を曲がると下記のような風景が見えるはずです。



写真正面に見えるのはスティーブン・ホール設計のホテルで、左手方向に見えるのが目的のワイン博物館のロイジウム・ビジター・センター(LOISIUM Kellerwelt)です。

ウィーン旅行その2:スティーブン・ホールの建築:ファサードに見る建築デザインの本質に続く。
| 建築の歩き方 | 22:51 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
エンリック・ミラージェス(Enric Miralles)の建築その1:バラニャ市民会館(Centro Civico de Hostalets de Balenya):行き方
バルセロナから電車で1時間程の所にある小さな街、バラニャ−ホスタレッツ(Balenya-Els Hostalets)に行ってきました。目的はカタルーニャが世界に誇る建築家、エンリック・ミラージェス(Enric Miralles)の生前の傑作、バラニャ市民会館(Centro Civico de Hostalets de Balenya)を見る為です。二川さんが鉄骨が組まれただけの建設途中の状態を見て「コレは傑作だ」と直感し大ショックを受けたというのはこの建築のただならぬ質を表すエピソードだと思います。

ミラージェスが日本で騒がれるようになったのは丁度僕が学生の頃の事で、卒業設計をしている時に、渡辺純さんが「コレ良いよー」とか言われながらエル・クロッキース(El Croquies)を貸してくれたのを今でも覚えています。でも正直言って日本に居る時はミラージェスの建築にはそんなに惹かれなかったんですね。今日訪れたバラニャ市民会館だってクロッキースを見ていた時は、形としては面白いと思ったけどそれ以上のモノが見えませんでした。つまり形遊びで終わってる印象を持っていました。何よりあのグネグネ感の意味が僕にはさっぱり分からなかった。

しかしですね、そんなかなりネガティブな印象は実際に彼の建築を訪れてみて180度変わりました。彼の建築はシザの建築同様、写真には写らない何かしらの質のようなモノ、口では到底説明出来ない何かを持っています。これが建築の面白さであり、怖さでもある。やはり建築は実際に訪れて見ない事には絶対に分からない。こういう生身の体験こそグーグルには絶対に解決出来ない問題であり、ウェブ万能時代において最大限に価値のある情報なんでしょうね。そういう意味でお金と時間をかけて今ヨーロッパに身を置いている事は今後の僕の人生にとって確実に意味のある事だと思っています。

さて、今日は毎回恒例の「建築の歩き方」から。
先ずこの村に行く手段としては鉄道か車と言う事になりますが、ほとんどの人は前者でしょうね。と言う事でバルセロナから電車で行くバラニャの旅を紹介します。

目的地のバラニャは方向としてはカタルーニャ地方の観光地であるリポイ(Ripoll)やビック(Vic)の線上に乗っています。バルセロナ市内からリポイ行きかビック行きの電車に乗る事になるのですが、これらの電車が発車する駅は市内に3箇所:カタルーニャ駅(Barcelona-Pl. Catalunya)、サンツ駅(Barcelona-Sants)、そしてアルク・デ・トリュンフォ駅(Barcelona-Arc de Triomf)です。これらの駅からバラニャを通る電車は1時間に2本程度出ているようです。電車は約1時間20分程で目的地に着くのですが、問題はバラニャ市民会館の開放時間です。

電話で確認した所、見学の為の一般公開は木曜日と金曜日の朝9時から14時までと制限されているとの事でした(2008年5月現在)。見学に最低1時間は見るとして逆算すると、例えばバルセロナサンツ駅を7:15、7:57、8:27、9:17、9:30、10:20、11:06に出て、到着がそれぞれ、8:37、9:07、9:47、10:52、11:40、12:20着となりますね(時刻表は頻繁に変わりますので、詳細は必ず駅で確認してください)。帰りも同様に1時間に2本程度はバルセロナ行き(ホスピタレット(L'Hospitalet)行き)があります。



さて、駅に着いたら先ずは電車の進行方向を向いて進みます。



するとトンネルらしきものがあるのでくぐりましょう。





くぐった直ぐの所がT字で突き当たりになっているので、そこを右に曲がります。あとはこの道をひたすら真っ直ぐ進むだけです。



5分程歩くと右手側にコンクリの建物が見え壁面に大きく「Ajuntament De Balenya」と書かれた建物が見えると思います。ココが目指す建築です。入り口は壁に沿って左手に回った所にあります。

エンリック・ミラージェス(Enric Miralles)の建築その2:バラニャ市民会館(Centro Civico de Hostalets de Balenya)に見る建築の質:社会文化の表象としての建築:ミラージェスの場合に続く。

追記:

2012年6月にこの建築を再び訪れたのですが、開館時間に若干の変更がありました。月曜から金曜の9時から14時まで、午後は月曜日のみ17時から19時となっていました。一応念の為に行く前に電話で確認する事をお勧めします。又、電車の時刻なのですが、こちらは年毎に少しずつ変わる様ですので、カタルーニャ近郊鉄道のページで確認してください。
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