地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
Super Science High Schools(SSH):スーパー・サイエンス・ハイスクール:バルセロナ
年末、一時帰国を利用して日本の3つの都市で、それぞれテーマの異なる3つの講演会をさせて頂きました。その第一弾が、大阪市立都島工業高校における「スーパー・サイエンス・ハイスクール(Super Science High-School)」講演会です。
←この高校、二川幸夫さんのご出身校だそうです。



スーパー・サイエンス・ハイスクールとは一体何か?
Wikipediaによると:

「スーパーサイエンスハイスクールとは文部科学省が科学技術や理科・数学教育を重点的に行う高校を指定する制度のことである。SSHと略記される。…(中略)… 目的は「高等学校及び中高一貫教育校における理科・数学に重点を置いたカリキュラムの開発、大学や研究機関等との効果的な連携方策についての研究を推進し、将来有為な科学技術系人材の育成に資する」

とあります。

まあ簡単な話が、将来日本の科学(サイエンス)と技術(テクノロジー)を背負っていく人材を、(大学からではなく)高校という早い段階から育ててしまおうという取り組みなんだと思います。その一環で、実際に海外で働いている人達を招いて生の声を聞いてみよう、それらの話を高校生の皆さんに聞いてもらうことによって、海外へ興味を持ってもらうキッケケにしようということで僕に声が掛かったんだと思います(このお話を頂いたのは今から丁度1年前、2015年3月のことでした)。



この様な高校の研修というのはボストンには結構あって、というのもやはり、MITは工学系では世界一、更にボストンにはハーバード大学やウェルズリー大学など著名大学がひしめき合っているということもあり、「高校が研修という目的の為にボストンを選ぶ」というのは非常に無難な選択となっているからです(地中海ブログ:全米で最も美しい大学ランキング・ベスト10にランクインしているボストン郊外にある超名門女子大、ウェルズリー大学について、地中海ブログ:ハーバード大学の自然史博物館で飛行石を発見してしまった件)。



逆に言うと、高校が研修先にバルセロナを選ぶというのはそれほど普通のことではありません。というのも、バルセロナには世界ランキングに登場する様な著名大学はありませんし、学術系で世界をリードしている、、、と思われる分野もそれほど多くないと思われるからです(地中海ブログ:スペインの大学ランキング:総合ランキングではなく、学部間で競い合うというシステム)。
←というか、そういう評価軸とは別のものさしで動いているというだけなんですけどね。。。



しかしですね、バルセロナは、セルダを始め、歴史的に大変優れた科学者、技術者を輩出した都市であるというだけではなく、ローマ時代から脈々と続いている人類の軌跡が、「ヨーロッパの知」といった形で街角に体現されているということを鑑みるにつけ、「高校生の研修先としてバルセロナという街は大変優れているのでは、、、」と思わずにはいられません。



そう、バルセロナという都市の魅力は、街全体が「集まって住むという喜びに満ち溢れていること」、そういう人間の根源に関わる部分を、書籍からの知識ではなく、その土地に生きる人々の生活に触れることによって「体験として知ることが出来る」という点なのです(地中海ブログ:バルセロナ・オープンハウス2013:その地域に建つ建築(情報)をオープンにしていくということ、地中海ブログ:ガリシア地方で過ごすバカンス:田舎に滞在することを通して学ぶこと)。

今回、大阪市立都島工業高校さんがバルセロナを研修先として選んでくれたこと、そしてその様な試みに少しでも参加出来たことは僕の人生にとっても非常に稀有な体験だったと思います。



……丁度この文章を書いているいま、「研修から無事に帰ってきました」という報告メールを受け取りました。そして「生徒たちは、初めてのバルセロナに非常に興味を持った様子でした」とも書かれていました。

何年か経って、この時の体験のことを一瞬でも思い出してくれたら、講師としてそんなに嬉しいことはありません。

今回のバルセロナでの体験が、大阪市立都島工業高校の皆さんの人生にとって有意義なものであったことを心から祈っています。
| 大学・研究 | 09:42 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
海外で建築を仕事にする2:都市・ランドスケープ編、発売!
僕が第3章(テクノロジーとモビリティをデザインする)を担当させて頂いた「海外で建築を仕事にする2:都市・ランドスケープ編」という書籍が、学芸出版社から先日発売されました!
←パチパチパチ〜。



このお話を頂いたのが昨年11月頃のこと。その後、文章を練るのは勿論のこと、掲載図版の許可を関係各所に取り付けに行ったり、待っても待っても全く来ない返信にヤキモキしたりと、結構四苦八苦した中での執筆だっただけに、Amazonなんかで出版されているのを見るに付け、すごく感慨深かったりします。

非常に粘り強く僕の文章を校正してくれた担当編集さんには心から感謝したいと思います。

どうもありがとうございました!
←以前のエントリでも書いたんだけど、書籍や学術論文って、僕一人の力だけでは到底出来上がらないものであって、みんなの助けがあったからこそ出版まで漕ぎ着けたんだと、心からそう思っています(地中海ブログ:ルーヴル美術館、来館者調査/分析:学術論文がファイナンシャルタイムズに紹介されました)。


記の写真は全て、約12年ぶりにバルセロナ市内で行われた「カー・フリー・デー」の写真です(10月17日)。「車の騒音が無いと、どれだけ快適か?」ということを市民に体感してもらおうという好企画)

この書籍はですね、海外で都市計画やランドスケープなどを仕事にしている人達(日本人)が16人集まって、それぞれの仕事のこと、その職にどうやって就いたのかという裏話、その国や地域の社会文化のことなどをそれぞれのスタイルで書き綴っているエッセイ集となっています。僕の章は、バルセロナでの仕事のこと、今まで携わってきたプロジェクトの話、更にはバルセロナ都市生態学庁(バルセロナ市役所)への就職秘話や、カタラン社会の中で生きていく喜びや苦しみなどについても書いていたりするんですね。


(普段は車両でいっぱいの都市の大動脈も、今日は子供達の遊び場に)

最初の草稿の段階では(当ブログの様な)軽いノリで、「ラテン社会に暮らす楽しみ」とかを思いっきり書き散らしていたんだけど、「ラテン社会のお話は大変面白いのですが、それは想定内なので、、、」と担当編集の方にバッサリ切られ(笑)、そのおかげもあって、当ブログとは一味違う真面目なスタイルで、しかし読み易く、また読み応えのある内容に仕上がったと自負しています。
←繰り返しますが、これは全て担当編集さんのお力添えのおかげです。

そんな学芸出版さんには、僕の紹介文としてこんなことを書いて頂きました:

「登場する16人の中で、 建築家の職能へのありふれたイメージから一番離れた仕事をしておられるのが、吉村有司さんかもしれません。エッセイの冒頭でも、"モビリティ"や"ネットワーク"、"データ分析"などをキーワードとする自分の仕事を、初対面の人に伝えることの難しさが綴られています。

…中略…

吉村さんのユニークな仕事ぶりを、プロジェクトのメモやスケッチも通して垣間見ることができ、建築家の仕事への印象が大きく変わります。」



(「都市の主役は我々人である」ということを思い出させてくれる風景)

さて、全編を通して読んでみた第一印象、それは「世の中、いろんな人がいるなー」ということに尽きると思います。ある人は大都会ニューヨークのど真ん中でパブリックスペースのデザインに関わっていたり、ある人はアフリカで測量していたり、正直言ってこんなに沢山の日本人が海外で都市計画やランドスケープに関わっているなんて想像もしていませんでした。

そして多分、ここがこの書籍の最も重要なポイントだと思います。

「海外で建築を仕事にする」=「世界で働いている建築家」と聞くと、誰しも「スター建築家の事務所で働いている」ということを想像すると思うんですね。で、そういう情報って結構内輪では共有されていて、例えば「シザ事務所には今日本人がxxxx人在籍していて、スティーブン・ホールの事務所にはxxxxさんがいらっしゃるけど、今月もう一人入ってくるらしい、、、」みたいに、世界の有名建築事務所で働いている「日本人建築家分布図」みたいなものは、比較的パッと頭に浮かぶと思います(地中海ブログ:アルヴァロ・シザ(Alvaro Siza)のインタビュー記事:シザ建築の特徴は一体何処からきたのか?)。


(このイベントことを知らずに、何処からか迷い込んでしまった車両が、いかにも申し訳なさそうにしている様子が笑える)

しかしですね、その一方で「海外で都市計画、ランドスケープに携わっている日本人建築家の分布図」というのはそう簡単には想像出来ません。というのも「都市計画やランドスケープといった仕事をどの事務所が扱っているのか」という所から考え始めなければならないので、定期的にメディアに載ったりする「建築作品」とそれを扱った「建築事務所」ほど、その所在が自明ではないということが言えると思うからです。

実際、今回の企画書とその執筆陣のリストを見るまで、世界のどんな事務所で誰が何をしているのかなんてことは、(少なくとも僕は)さっぱり知りませんでした。更に、それら執筆者の所属は十人十色で、かたや個人事務所に所属している人もいれば、かたやNPOで働いている人もいたり、はたまた僕のように市役所や州政府といった公的機関で働いている人もいたりと、本当にバラバラ!それらを眺めてみるだけでも、今回の書籍は手に取る価値があると、僕はそう思います。


(街路は一つのパブリックスペース(公共空間)です。そう考えると、都市にはまだまだ可能性が残っている気がする)

その様な違いの一方で、全ての執筆者に共通すること、それは扱っている物件のスケールが大規模だということだと思います。まあ都市計画やランドスケープなので当たり前と言えば当たり前なんだけど、東京ドーム8個分の人工湖を創っていたり(別所力さん)、よく分かんないけど、アフリカに測量しに行ったりと(長谷川真紀さん)、色んな意味でスケールが大きい、大きい(笑)。


(街路とパブリックスペースがゆるやかに繋がっている様子)

個人的には、ニューヨークで都市生態学を研究・実践されている原田芳樹さんのエッセイが一番面白かったかな。

「都市を生態学的に捉える」という視点は僕の根底にあるコンセプトでもあり(僕はバルセロナ都市生態学庁の出身!)、制御系インフラとして緑地をデザインすること、更には都市機能改善の為に緑地を都市内に戦略的に配置していくという、ある種の「都市戦略」の考え方はものすごく共感出来るものがあります(地中海ブログ:何故バルセロナオリンピックは成功したのか?:まとめ)。


(街路のど真ん中に機材を持ち込んで、勝手にコンサートをし始めた(笑))

また、別所力さんはご自身のエッセイの中で、「莫大な予算を注ぎ込んで作るオリンピック施設には批判もあるが」と前置きされつつ、「バルセロナの例のように、オリンピック後もパブリック・オープンスペースとして活気を見せる例はある」と書かれていたり、「スペインのガウディ」(保清人)という文字が見えたりと、我が街バルセロナに影響を受けた人達が多い事も、大変嬉しい発見でした。


(椅子を持ち込んで、くつろいでいる人達もいる)

編著者の福岡孝則さんは、「あとがき」でこんなことを述べられています:

「海外で学び、働くことは何か特別なプログラムが用意されているわけではない。大切なのは、自分が立つ場所とそこに流れる時間、出会った人間を最大限に生かして、自分を掘り下げることだ…‥」

そう、海外で生活をする、仕事をするということは、その地に住む人達との出会いや触れ合いを通して、自分にしか創り上げることが出来ないプログラムをゼロから組み上げ、その価値を信じてひたすら歩み続けることだと思います。

それは世の中の絶対多数の人達が決めた価値に「単に乗っかる」ことではなく、自分だけが見出すことが出来た価値をひたすら信じていくという、大変困難な道でもあるんですね(地中海ブログ:ヨーロッパの公立大学の授業料について、その2:スペインの教育システムの裏にある考え方)。‥‥どんなに叩かれようが、どんなに無視されようが、自分の信じた価値をひたすら追求していく不屈の精神…‥それは、ある種の「狂気」と言えるのかもしれません。しかし建築の深み、建築の可能性とは、そんな狂気にも似た絶えまぬ歩みの中からこそ発見されるのではないでしょうか?

この書籍に収録されている16本のエッセイは、それら一人一人の執筆者が自らの人生を掛けて紡ぎ上げた物語であり、各々が信じたものへの絶えまぬ情熱であり、その歩みの先にある「未開拓のフィールドへの可能性」だったりします。

そう、この書籍全体を通して伝わってくるもの、それは「我々建築家に残されたフィールドはまだまだ広い」という確信に満ちたメッセージなのです。

「世界はチャンスで満たされている」(田根剛)

この書籍を通して、そんなチャンスを感じてもらえれば、共著者としてこれ以上嬉しいことはありません。

この本が、一人でも多くの人の心に響くことを切に願っています。
| 大学・研究 | 05:42 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
ルーヴル美術館、来館者調査/分析:学術論文がファイナンシャルタイムズに紹介されました。
先週のことなのですが、昨年末に発表したルーヴル美術館来館者調査に関する学術論文(地中海ブログ:ルーヴル美術館、来館者調査/分析:学術論文第一弾、出ました!)がファイナンシャルタイムズ(英国)に紹介されました。



僕の論文を紹介してくれたのは、スマートシティの世界的権威として知られているカルロ・ラッティさん。



ゴダールの映画のワンシーンを引用しつつ、「今までにない画期的なシステムであり、今後の博物館/美術館の来館者の行動において新たなる知見をもたらすものと期待される」みたいな感じで話してくれています。

何を隠そうカルロさん、去年の3月に京都で行われたスマートシティ国際会議にキースピーカーとして招かれ、すでに来日済み。そんなカルロさんは2004年、スペース・シンタックス(Space Syntax)の手法を批判した論文(Environment & Planning Bに掲載)で世に出てきたんだけど、科学的に得られた専門的な結果を、一般の人達(つまり素人の人達)に分かり易く読ませる「彼の技術」にはいつも唸らされます。ちなみに彼のスペース・シンタックスに関する論文が出た当時、Bill Hillier(スペース・シンタックスの創設者)とMicheal Batty(ロンドンにある空間分析研究所(CASA)の所長でありカルロさんの博論指導教官)の間で凄まじい論争が繰り広げられたことは記憶に新しいところだったりします。


(上の写真はスペインの新聞に紹介された記事)

ルーヴルの論文を発表してからというもの、様々な方面の方々から沢山のメールを頂き、この3ヶ月間で、スペイン、フランス、イタリアを含めた4カ国の主要紙や雑誌で紹介されるという大変嬉しい状況になりつつあります。

前にも書いたのですが、プロジェクトを立ち上げてセンサーを作って設置して、更には取得したビックデータを定量分析して論文に纏めてジャーナルに発表するのって、本当に、(本当に)大変で、僕一人の力では到底ここまで辿り着くことは出来ませんでした。

そんな苦労の甲斐あってか、いま博物館/美術館の分野でこれだけ世界的な話題になっているのは本当に嬉しいんだけど、それ以上に、今までお世話になった人達にほんの少しだけ恩返し出来た様な気がしていて、そちらの方が嬉しかったりします。
←いや、ほんと、お世話になったんですよ、みなさんに!

更に更に、欧米のいくつかの博物館からは「今後の来館者調査に関してご相談したいのですが、、、」みたいなお誘いが来ていたりして、忙しいなりにも大変嬉しい状況だったりするんですね。
←この手法が世界的なスタンダードになりつつあるかも‥‥という大風呂敷を広げてみよう(笑)。

ひょんなことから関わることになってしまったミラノ万博(今年の5月からミラノで万博が開催されるって知ってる人、どれだけいますか?こんなに盛り上がりに欠ける万博も珍しいのでは???)の有り得ない状況に頭が痛い今日この頃ではあるんだけど、とりあえず今日は、海産物(地中海の恵み)とワインで乾杯しよう。←ビール飲めないので(笑)。


| 大学・研究 | 22:28 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
ルーヴル美術館、来館者調査/分析:学術論文第一弾、出ました!


数年前から僕が独自に進めている、ルーヴル美術館(パリ)とのコレボレーション、その第一弾となる学術論文(ウェブ版)が、(やっと!)公開されました!!それに伴い、ルーヴル美術館とMITの協力の下、プロジェクトのwebページも創ったので、こちらも公開してみました。



今回掲載された論文のタイトルは「An analysis of visitors’ behavior in The Louvre Museum: a study using Bluetooth data:(邦訳)Bluetoothデータを用いた、ルーヴル美術館における来館者調査/分析」、掲載雑誌はEnvironment and Planning Bという、建築/都市計画/IT系ではトップを走る国際ジャーナルです。

年間来館者数世界一を誇る大規模美術館の代表格、ルーヴル美術館内において、来館者はいったい「どの様な作品を訪れているのか?」、「どの様な経路を通っているのか?」、はたまた「どの作品に何分くらい費やしているのか?」など、来館者の館内行動データが収集されたり分析されたりする事は非常に稀でした。

何故か?

何故ならそれらのデータを収集/分析する為には、「一人一人の来館者を個別にトラッキングする」、もしくは「来館者に個別インタビューやアンケートを行う」という様な手法に限られていた為に、莫大な調査費(人件費)が掛かるという理由などから敬遠されがちだったんですね。 ←少し考えてみれば分かることなのですが、ルーヴルの様な大規模美術館において、一人の来館者を入口から出口まで調査しようと思ったら、一人につき何時間もついて回らなければならなくなってしまうのです。



「この様な事態を克服し、なるべく人の手に頼らずに来館者の行動データを大規模スケールで収集する方法は無いものか‥‥?」

これが第一に掲げた問題提議でした(←論文の主軸となるリサーチ・クエスチョンとは違います)。そんな背景から僕が提案したのが、Bluetoothセンサーを用いたデータ収集法であり、この手法を用いる事によって、今までは非常に困難だった大規模美術館内における来館者の行動データを自動収集することが可能となったのです。更に、それら収集されたデータを定量的に解析する事によって、これまでは知られていなかった来館者の行動パターンを抽出し、「それら来館者の行動が如何に空間構造に影響を受けているか」、それを掘り下げることを試みました。 ←ちなみに複雑系ネットワーク分析のスペシャリスト集団、バラバシ・ラボとの恊働も実現しました。



思えばルーヴル美術館とのコラボレーションを始めたのは2010年春のこと。それまではバルセロナ市を中心とした都市内のモビリティを専門に扱っていたのですが(地中海ブログ:バルセロナのバス路線変更プロジェクト担当してたけど、何か質問ある?バルセロナの都市形態を最大限活かした都市モビリティ計画、地中海ブログ:グラシア地区祭り:バルセロナの歩行者空間プロジェクトの責任者だったけど、何か質問ある?)、「そろそろ建築内部の歩行者分析もしてみたいなー」と思っていた所、知り合い経由でルーヴル美術館側からアプローチが!



正直言って、最初はあまり乗り気じゃ無かったんだけど、紆余曲折を経てこのオファーを受ける事に。それからというもの、研究計画を練り、自分でセンサーを創り出し、ルーヴル美術館の休館日(主に火曜日)にそれらセンサーを要所要所に配置し、数ヶ月に渡ってデータを取り続け、取得したデータを整理し、適切なコードを書きつつ統計的に解析し、更にはそれらの結果をきちんとした論文に纏める‥‥という一連の作業を通して、ようやく自分がやりたい事に一歩近づけた様な気がします。

とりあえず今日は、バルセロナでクロワッサンが一番美味しいと噂のカフェ、ESCRIBAにて、コーヒーとクロワッサンで一人で勝手に乾杯しよう!(←僕、ビール飲めないので(笑))。



論文概要:
都市観光が隆盛を極める中、各都市の美術館/博物館には毎日大量の観光客が押し寄せ、空間的なキャパシティーを凌駕する「超混雑化」という現象を引き起こしている。特定の作品に来館者が集中する高密度化は、来館者の博物館体験を劣化させる原因となる事がしばしば指摘されており、それらを緩和しようと様々な施策が試みられているのだが、それらを有効且つ適切に施行する為には、詳細で広範な事前調査が必要不可欠となっている。 本論文は、大規模美術館の代表格であるルーヴル美術館における来館者の行動分析を目的としている。特に、来館者の主要作品間の遷移移動とその確率分布、そして空間配置との間の相関分析を目的としている。データ収集法としては、来館者のプライバシーに十分配慮しながら設置されたBluetoothセンサーを用いる事が適切だと判断された。数ヶ月間に渡るデータ収集期間を経て、数百万というデータが集められ、それら大規模データを統計的に解析。一人一人の来館者が群衆となることによって引き起こされる館内混雑化のメカニズムが明らかにされたのである。 この論文が明らかにした所によると、短時間滞在者(1時間30分以下の滞在)と長時間滞在者(6時間以上)の館内行動は、我々が想像するよりも遥かに類似しているということが指し示された。長時間滞在者は、その滞在時間の長さから、複雑で多様なルートを選択すると推測されたのだが、実際には長時間滞在者も短時間滞在者も殆ど同じルートを通っていたのである。つまる所、長時間滞在者は只単に、短時間滞在者が滞在中に訪れる作品の数をホンの少し増やしたに過ぎなかったのだ。結果、両タイプの滞在者が通るルートは重複する事が殆どであり、それらの類似性/非類似性こそが、ルーヴル美術館内における来館者の不均等な空間配分の原因になっていたのである。これらの新たな知見は、今後の来館者の博物館体験の質を高める為のキーになると考えられている。

Abstract. Museums often suffer from so-called ‘hypercongestion’, wherein the number of visitors exceeds the capacity of the physical space of the museum. This can potentially be detrimental to the quality of visitors’ experiences, through disturbance by the behavior and presence of other visitors. Although this situation can be mitigated by managing visitors’ flow between spaces, a detailed analysis of visitor movement is required to realize fully and apply a proper solution to the problem. In this paper we analyze visitors’ sequential movements, the spatial layout, and the relationship between them in a largescale art museum―The Louvre Museum―using anonymized data collected through noninvasive Bluetooth sensors. This enables us to unveil some features of visitor behavior and spatial impact that shed some light on the mechanisms of museum overcrowding. The analysis reveals that the visiting styles of short-stay and long-stay visitors are not as significantly different as one might expect. Both types of visitors tend to visit a similar number of key locations in the museum while the longer-stay visitors just tend to do so more time extensively. In addition, we reveal that some ways of exploring the museum appear frequently for both types of visitors, although long-stay visitors might be expected to diversify much more, given the greater time spent in the museum. We suggest that these similarities and dissimilarities make for an uneven distribution of the number of visitors in the museum space. The findings increase the understanding of the unknown behaviors of visitors, which is key to improving the museum’s environment and visitor experience.
| 大学・研究 | 03:05 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
ボストン滞在記:今月からボストンに滞在します。
前回のエントリで少しだけ書いたのですが、今年の年末年始は14年ぶりに日本の実家でゆっくりと過ごすことが出来ました(地中海ブログ:多度大社から歩いて3分の所にある皇室御用達の鯉料理の老舗、大黒屋)。



僕の様な海外長期滞在組にとって日本滞在時の楽しみと言えば、毎週月曜日に発売される週刊少年ジャンプもさることながら(笑)、コンビニのシュークリームさえもひたすら美味しいと感じてしまう、大変質の高い日本のスイーツなんですね。喫茶店王国名古屋が誇るご当地カフェ、コメダ珈琲が提供してくれるモーニングサービスなんて、もう最高!



コーヒー一杯(約380円)でトースト一枚とゆで卵が付いてくる上に、パンの上にのっけるジャムかバターが選べちゃうっていう豪華っぷり(実は裏技があって、「ジャムとバター、両方ぬって!」って頼むと結構やってくれたりします(笑))。ちなみに下の写真が元横綱の若乃花が名古屋に来る度に食していたというシロノワール(のミニ版)です:



しかしですね、僕の長―いコメダ通いの経験と、知り合いに行ったアンケート調査によると、各店舗で出されるトーストには微妙な違いがあって、その中でも「一番美味しい!」と評判なのが、名古屋市守山区志段味図書館前にある志段味店なんだとか(かなり勝手な独断と偏見に基づいています(笑))。

では一体「何がそんなに違うのか?」というと、志段味店で出されるトーストは、焼き立てなのは勿論のこと、パンの表面が非常にパリッと焼けているのに中はホクホクという、モーニングサービスで出されるトーストにしては非常に良く出来ている点です。どうも聞いた所によると、コメダにパンを供給しているパン工場がこの近辺にあるらしく、志段味店は朝一番で仕入れる事が出来る為にパンが非常に美味しい‥‥という事らしいです(真相は謎ですが‥‥)。



この様な、全国津々浦々何処へ行っても同じメニューが出されるチェーン店と言えども、その地域特有の個性を吸い上げ、画一的になりがちな商品の中にも微妙な違いを生み出している点にこそ、僕は本当の意味でのグローバリゼーション、つまりはローカルなものが意味を持ってくる「グローカリゼーションという価値」を感じてしまいます(地中海ブログ:バルセロナで売ってるプリングルズの生ハム味に見るグローバルとローカルの問題)。



さて、私事で大変恐縮なのですが、私cruasan、2月1日から半年間、住み慣れたバルセロナを離れアメリカ東海岸はボストンにあるマサチューセッツ工科大学(MIT)に滞在することになりました。

「あれー、cruasanって去年の3月にボストンからバルセロナに帰ってくる時、「さよならボストン」とか言って、今生の別れのごとく書いてなかったっけー?!」‥‥って、おっしゃる通りでございます(笑)。



そう、一昨年の9月から半年間ボストンに滞在し、名残惜しみながらボストンを去る際には、「もうボストンに来る事は無いだろう!」くらいの勢いだったんだけど、また来る事になっちゃったんだからしょうがない(笑)。



では何故またボストンに来る事になったのか?

一番の要因は、大学の方から非常に魅力的で好条件なオファーがあった事が大きいかなと思います。工学系では世界一を誇るMITからこの様なオファーを頂けたのは非常に光栄なんだけど、それよりも何よりも、世界のトップに君臨し続ける為に、世界中から人材を集めようとするその執念、更にはその「囲い込みの上手さ」にはいつもながらに舌を巻いてしまいます。この点についてはアイビーリーグの受験戦争を例に出しながら以前少しだけ書きました(地中海ブログ:MITの学部合格発表は円周率に因んで毎年3月14日となっています:アイビーリーグ受験を横目で見ていて思った事)。



2つ目のポイントとしては、研究活動やビジネスを展開していくという観点においてボストンに短期的に滞在するのは非常に生産的だという事が挙げられます。

「短期的」というのがミソ。

以前の滞在で僕がこの街から受けた印象‥‥それは、ボストンという街はバルセロナの様に「長期的に住み込む」というよりは寧ろ、1−2年といった短期で滞在するのに向いているのでは?ということだったんですね。滞在時間が限られているからこそ人々は何事にも一生懸命になる事が出来、それが生活への充実感に繋がり、この街に対する非常にポジティブなイメージに昇華していくのです。言うなればそれは、足早に過ぎ去ってしまう「はかない青春」の様なもの‥‥と言うことが出来るかも知れません。



前回の滞在ではこの街に住むのが初めてだったという事もあり、「研究室がどの様に運営されているのか?」、「どの様な生活スタイルにしたら良いのか?」、「美味しいクロワッサンはあるのか?(笑)」など、よく分からないままに時間だけが過ぎていき、「気が付いた時には既に6ヶ月が経っていた」という状況でした。また研究面においては、「滞在中に結果を出さねば!」と焦っていた事もあり、最初から最後まで緊張した日々を送っていました。



しかしですね、今回の滞在は2回目という事もあり、ある程度こちらでの生活の仕方や研究室の様子などが分かっている為、それなりに心に余裕が持てる気がしています。



今回の滞在では研究活動もさる事ながら、前回は全く行けてなかったボストン市内巡りを始め、ニューヨークや東海岸の都市にも行ってみようかなと考えています。特にテキサス州にあるルイス・カーンの美術館やシカゴ周辺のフランク・ロイド・ライトの建築は是非見てみたい(地中海ブログ:ルイス・カーンのフィリップ・エクセター・アカデミー図書館(Phillips Exeter Academy Library):もの凄いものを見てしまったパート3:「本を読むとはどういう事か?」と言う根源を考えさせられた空間体験、地中海ブログ:ルイス・カーンのイェール大学英国美術研究センター(Center for British Art and Studies, Yale University)、地中海ブログ:ルイス・カーンのイェール大学アートギャラリー(Yale University Art Gallery))。

という訳で、「地中海ブログ」はまたもや「地中海」を離れてしまいますが、「地中海文化に慣れ親しんだ日本人の眼から見たアメリカの社会文化をお伝えする」というコンセプトのもと、ボストンでの生活や僕の眼から見たアメリカ社会の光と影、はたまた美味しいレストラン情報などを書き綴っていこうと思っています。

コンセプトは少し変わってしまいますが、もし宜しければ、当ブログの読者の皆さんにも、このまま引き続きご愛読して頂ければ幸いです。

そしてボストン在住の皆さん、また仲良くしてください!充実した毎日、新しい出逢いと発見、そして楽しい日々を期待しています!

さあ、ボストン生活の始まりです。
| 大学・研究 | 22:34 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
MITの学部合格発表は円周率に因んで毎年3月14日となっています:アイビーリーグ受験を横目で見ていて思った事
ボストンからバルセロナに帰ってきて早くも1週間が経ってしまいました。最初の一週間は、クロワッサンや海産物、生ハムやワインなど「ボストンではなかなか食べられなかった美味しいものをたらふく楽しむぞ!」と決めていたのですが、帰ってきた途端に酷い風邪に見舞われてしまい、この一週間は殆ど外出する事もままならず‥‥(悲)。



それでも唯一の救いだったのは、空港に着いたその足で、スーツケース2つを抱えながらバルセロナ市内でも最高のクロワッサンを出すカフェEscribaへ直行した事かな。6ヶ月ぶりに味わうクロワッサンとコーヒーはやっぱり最高でした。



もう1つ因みに、今週ももクロの新曲MVが発表され話題になってるんだけど、さっき少しだけ見た僕のファースト・インプレッションは「打つ手が早いなー」と言う所でしょうか。詳しくは次回以降のエントリで書こうと思ってるんだけど、エヴァンゲリオンを彷彿とさせる今回のMVでは、ももクロが現在抱えている悩み、そして今後の方向性みたいなものが表現されていると思います。

こういう時はキーワードで切っていくと分かり易いと思うんだけど、今回のツアーのタイトルは5TH DIMENSION。つまり5次元。5次元とは時間軸を持った4次元を超えた所にある「時間からはフリーになった次元」という事。そして今回公開された新曲MVの後半のハイライトである、「ももクロのメンバー全員の顔が仮面で覆われていて、アイドルのMVとしては珍しく顔が全く見えないという構成」がもう1つのキーワードとして挙げられるかなと思います。つまり、アイドルの象徴=顔が見えなくなっても=私達が成長しても(時間からはフリー)‥‥応援してくれますか?‥‥みたいな。



さて、今日は3月14日。日本ではホワイトデーと言う事で盛り上がってると思うんだけど、何を隠そう毎年3月14日はMITの学部の合格発表の日となっているんですね。



聞く所によると、ハーバード大学やコロンビア大学など他のアイビーリーグの合格発表は4月1日(エイプリルフール)らしいんだけど、MITだけは昔から3月14日になっているのだとか。

何故か?

何故なら3月14日は円周率(3.14)だからそれに因んでという全くオタッキーな理由かららしい(笑)。←これ聞いた時、かなり吹きました。



僕がこの事実を知ったのは全くの偶然でした。

去年の10月くらいの事、ひょんな事から仲良くなってしまったA君っていうアメリカ人がいたんだけど、その彼が今年大学受験するという事で、その一部始終を横目でチラチラと見ていたら、アイビーリーグ校受験に関して全く思いもよらなかった事実が段々と浮かび上がってきたという訳なんです。



先ずアメリカの大学の(非公式な)ビジネスモデルについて少し記しておいた方が良いと思うんだけど、僕が見る所によると、アメリカの私立大学では意図的に裕福な家庭の子をある程度優先的に入学させたり、時には多額の寄付金(もしくは両親が経営している企業からの研究資金提供など)と引き換えに子息の入学を許可するという様な風潮や傾向が見受けられます。これは勿論、大学側に問い合わせたって「公式見解」としては出て来ないと思うんだけど、ボストンもしくはアメリカでは誰でも知ってる「常識」だと思います。



その様な所から多額の寄付金を貰っておいて、そのお金を世界中からアプライしてくる「優秀なんだけどお金が無くて入学金が払えない学生達に奨学金として与える」という循環が行われているんですね。ちなみにアイビーリーグの大学の授業料は一年間で400万円くらいですから、普通の一般家庭のお子さん達ではなかなか支払う事が出来ない金額となっています。逆に言えば、「これくらいのお金を用意出来ないんだったら来なくていいよ」という足切りが既に働いていると言う事なんです。そういう金銭的な基準を設ける一方で、大学側も競争力を保つ為には世界トップクラスの学生達を確保する必要がある。そこで考え出されたのが、このビジネスモデルという訳なんです。

では、アメリカの大学はその様な優秀な学生をどうやって見分けるのか?つまり受験のシステムは一体どうなっているのか?

これが今日のテーマなんだけど、僕が驚いたのは以下の3点。

先ず第一点目に、アメリカの大学の入学試験というと「エッセイを書かなければならない」というのが有名だと思うんだけど、どうやらこれって受験の為に1本書けばいいっていうものじゃなくて、高校3年間を通して定期的に書いてきたエッセイ全てが審査対象になるらしいです。勿論最後のエッセイが占める比重が大きい事に変わりはないとは思うんだけど、最終的な評価は全体で、という事らしい。



2点目は入学希望者に面接が科せられると言う事。で、この面接がちょっと凄くって、と言うのも、面接って言っても10分や15分程度のものじゃなくて、2−3時間は当たり前、更に教授と一対一のガチ面接らしい。(基本的には30分がミニマムらしいんだけど、話してると大体2時間3時間くらいになるそうです)。

面接官はその大学の教授だったり、卒業生だったりとその大学に縁のある人が学校や会社、もしくはカフェなどで面接をするらしいんだけど、世間話に始まり、志望動機やちょっとした問題を吹っかけられたりと、とにかく様々な事を通して人間性を試されるんだとか。で、「凄いな!」と思うのは、大学の教授クラスの人達と、18歳の高校生が2時間も会話を持たせられるという事実。これは多分、「議論する力、会話する力」を見ているのかな?と思います。下記に記す通り、何を隠そうMITは(意外にも)理工系以外の部分、特にコミュニケーション能力の教育に異常な程の情熱を注いでいますから。



そして3点目、アメリカの大学受験というのは受験生の個人戦ではなく家族総出の団体戦だと言う点です。それこそ両親のコネやらなんやらを総動員して、子供を何とかアイビーリーグに入れようという、その情熱はちょっと凄いと思う。

例えば僕の知り合いの場合、MITに入る前から「MITに在籍」という既成事実を作っておいたり(そうする為には受験生自身の実力に加え、ご両親のコネが圧倒的に重要)、更にご両親が何度もMITを訪問し、時には講演会をして自分達の存在をアピールしたりと、正に様々な角度から攻めていくその姿には感動すら覚えました。



世界中から優秀な学生を集めようという積極的な姿勢、そして彼らを確保する為の資金を集めようという直向きさ、更にはそうする事によって大学の質やブランドを確保しようというそのどん欲さ。それら1つ1つの事が絡み合いながら、MITやハーバード大學などといった大学は、正に世界のトップに君臨し、その座を守り続けているのかなー?と、そんな事を思っちゃいました。

追記:

池上彰さんがボストンに大学の視察に来られたらしいんだけど、その中でMITがライティング能力とプレゼンテーション能力の教育に非常に力を入れているという所に驚かれていました。

その点は僕も実際に体験して非常に驚いた点だったんだけど、MITにはライティングセンターなる部門があって、ここには随時何人ものライティングとプレゼンテーションの専門家が駐在し、MIT関連の人なら誰でも(学部生、大学院生、研究員、教授、職員他)一週間に一回(1時間)予約を入れて相談に行く事が出来ます。

どんな事が相談出来るかと言うと、例えばライティングだったら、授業で出された宿題のレポートの作成から国際雑誌に投稿する学術論文まで、ありとあらゆる段階の、ありとあらゆる指導をしてくれるんですね。ちなみに僕も毎週1回づつこのライティングセンターにお世話になってて、論文の構成から英文のチェックまでしてもらっていました。

もう1つ因みに、池上さん、MITとハーバード大學だけでなくウェルズリー大学にも視察に行かれたと伺って、「さすが出来る男は違う!」とうなりましたね(地中海ブログ:全米で最も美しい大学ランキング・ベスト10にランクインしているボストン郊外にある超名門女子大、ウェルズリー大学について)。もしかしてMITから出てるピーターパンバス、通称「ネバーランドに連れてってくれるバス」に乗って行かれたのかなー?とか想像して、ちょっと笑った。
| 大学・研究 | 09:19 | comments(1) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
MITのシンボル、グレートドームがパックマンにハックされてる件
最近は毎朝、建築学部が入っている校舎の5階にあるカフェに行って、コーヒーを飲みながら朝食をとるって言うのが日課になりつつあるんだけど、今日、何時もの様にそこの窓から外を眺めていてビックリ!



「あ、あれ、ドームに何か絵が描いある‥‥。な、何だアレ?」とか思って、中庭の方に降りて行ったらコレ又ビックリ!



何と、MITのシンボル、グレートドームがパックマンにハックされてるじゃないですかー!



「こ、これがあの有名なMITハックかー!」という事に今気が付いた。そう、MITでは伝統的に「ハック」と呼ばれるゲリラ活動的なイタズラが時々行われるんだそうです。



有名な所では、1994年にドームの頂上にパトカーが設置されていたり(その時のパトカーはスタタ・センターに今でも展示されています:地中海ブログ:フランク・ゲーリーの建築その2:スタタ・センター(Stata Center)の内部空間)、はたまたドームが巨大なR2-D2に改装されていたり(1999)といった事が挙げられます。

思い掛けず歴史的瞬間を目にしてしまった感じでちょっと嬉しかった。
| 大学・研究 | 04:43 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
ボストン美術館に再現されているカタルーニャ・ロマネスク教会
今年はガウディが設計したカサ・ミラ(La Pedrera)が竣工して100周年になるらしく、先週末バルセロナでは曲がりくねったカサ・ミラのファサードに3Dマッピングを映写するという記念行事が行われていた模様です。
 

その様子が地元の新聞La Vanguardia紙にアップされていたので見てみたら、これが意外と面白かった!2ヶ月くらい前にはカサ・バトリョで、そのちょっと前にはサグラダファミリアで3Dマッピングがされたっていう報道がされてたと思うんだけど、最近流行ってるのかな、3Dマッピング?



さて、ボストンにはボストン美術館という世界有数の規模を誇る美術館があるのですが、毎週金曜日の午後にはこの美術館でゆったりと美術鑑賞をするって言うのが最近の僕の日課となりつつあります。



フランス印象派や古代彫刻、はたまたアジア美術コレクションなど世界各地から集められた素晴らしい作品が目白押しなんだけど、僕が毎週ココに通う理由、それは‥‥タダだからです(笑)。実はこの美術館、ボストン市内の幾つかの大学と提携を結んでいて、MITのIDを持っていると入館料が無料になるんですね(嬉)。



ちなみに一般入館料は幾らかっていうと、これが無茶苦茶高くて、その額なんと20ドル(驚)!いつもお世話になってるパリのルーブル美術館ですら15ユーロ、ヨーロッパ3大美術館に数えられるマドリッドのプラド美術館だって12ユーロなのにボストン美術館20ドルって、ちょっと取り過ぎじゃないですかね?まあ、それにしても「20ドルが無料になるのは大きい!」と言う訳で「行ける内に出来るだけ行っちゃおう」っていう貧乏根性丸出しの理由から(苦笑)毎週の様に通っているという訳なんです。



美術館がある場所は、これ又いつもお世話になってるNortheastern大学の真ん前。1876年開館というだけあって、結構格式高い建築が僕ら来館者を迎え入れてくれます。



何でもこの美術館、最近増改築されたらしく、現代美術の為の真新しい展示室があったり、緑に囲まれた中庭があったかと思うと、奇麗でお洒落なレストラン兼カフェに出会したりと、1日いても楽しめる空間構成になっているんですね。



その中でも僕が非常に驚いたのが(上の写真の)贅沢な大空間に配置されたレストラン兼カフェ。何がそんなに驚いたかって、金曜日の夜7時頃になると大音量のBGMが流れ出し、明らかに「ゆったりと美術鑑賞しに来たという格好じゃない人達」で溢れ出し、あっという間にクラブに変わっちゃうからなんです。「こんな美術館の使い方は見た事が無い」という意味において、結構斬新かなーとは思う。



一方収蔵品の方はどうかというと、この美術館の売りの1つは「充実したフランス印象派絵画」らしく、確かに2階には「印象派の部屋」なるものがあって、ルノアール、モネ、ゴッホなんかが所狭しと並べられてるんだけど、個人的には同じ部屋に展示してあったロダンの彫刻の方がよっぽど僕の眼を惹いたかな(ロダンについてはコチラ:地中海ブログ:パリ旅行その5:カミーユ・クローデル(Camille Claudel)の芸術:内なる感情を全体で表している彫刻作品、もしくは彼女の人生そのもの)。



あとはターナーが2点、前々から見たかったモネによる「ジャポネーゼ」は貸し出し中なのかどうなのか知らないけど、展示されてなくて残念と言った所。続いて古代彫刻の部門を歩いていたら珍しいものを発見。あ、あれはー:



アテナだー!何故アテナがこんな所に!6年程前、ギリシャに行った際にアテネ国立考古学博物館で見て以来でしょうか(地中海ブログ:ギリシャ旅行その2:パルテノン神殿とエレクティオン神殿)。



ルーブルにもローマ時代に創られたアテナの彫刻が一体所蔵されていたと思うんだけど、首から上が失われた状態だったと思います。ボストン美術館に所蔵されているアテナ像は、これまた紀元前2−3世紀に創られたもので、大きさは1メートルちょっとくらいと結構大きめ(ちなみにパルテノン神殿に飾られていたとされるオリジナルは12メートルくらいあったそうです)。まあ、両腕が無いので右手に持ってる筈の勝利の女神ニケと、左手に握ってる筈の盾は見られませんけどね。


(アテネ国立考古学博物館のアテナ像)
でも、やっぱりアテナとか見ると興奮するなー。正に気分は聖闘士星矢(笑)。と、こんな感じで盛り上がってきた所で、次はボストン美術館が世界に誇るお宝中のお宝に接近ー!それがコチラです:



そう、何を隠そうボストン美術館は日本美術のコレクションでは右に出るものがいないと言われる程、質量共に充実している事で知られているんですね。

「‥‥って言っても、実家の近くにある徳川園には結構通ってて、国宝級日本美術には結構眼が慣れてるんだけどなー」とか生意気な事を言っていたのも束の間、ハッキリ言って度肝を抜かれました!ヨーロッパの主要美術館は殆ど行ったと思うんだけど、これ程のコレクションは見た事がありません。流石、フェノロサと岡倉天心が収集に関わったってだけの事はある。ちなみに今僕が住んでいるアパートは、MITとハーバードの丁度真ん中にあるCentral Squareっていう広場の近く、BIGELOWという街路に住んでるんだけど、BIGELOWという名、どっかで聞いた事がある様な‥‥って思った人はかなり勘が良い。


(ウィリアム・スタージス・ビゲローさん)
そう、近代日本の黎明期にフェノロサと共に日本に滞在し、日本美術をこよなく愛したが故に、浮世絵や絵画だけでなく、漆工や刀剣甲冑などをも収集し、ボストン美術館のコレクションの基礎を築いた人物、ウィリアム・スタージス・ビゲローその人なのです!(どうでも良いボストンのマメ知識終わり)。

で、ですね、ボストン美術館の日本美術コレクションの一体何が凄いのかって、僕が非常に感動した理由がコチラです:



大仏像などを展示する為に、お寺の一角をそのまま再現しちゃってる所なんですね。この為だけに設えられた展示室は真っ暗になっていて、その暗闇の中で、大仏やら不動明王やらが影と共に浮かび上がる訳ですよ!



今まで数多くの美術館を訪れてきて思う事なのですが、美術作品というものは、それが元々置かれていた雰囲気の中で見るのと、美術館の真っ白な壁(ホワイトキューブ)に行儀良く掛けられているのを鑑賞するのとでは、伝わってくるメッセージが全く違うと思います。理由は至極簡単で、建築家を始め芸術家というのは、その作品が置かれるコンテクストを計算した上で作品を創作するからです。



それは特にヨーロッパの宗教画に言えると思うんだけど、例えば光と闇の劇的なコントラストが見所となっているカラヴァッジョの絵画を美術館の展示室の中で見るのと、暗闇が支配する教会の中で見るのとでは大変大きな違いがあるという事です(地中海ブログ:プラド美術館の成した歴史的大発見:ピーテル・ブリューゲルの新作発見)。



やっぱりカラヴァッジョの絵画と言うのは、それこそロウソクの明かりしか無い様な雰囲気の中で不意に出会すのが良いと思います。薄暗がりの中でスポットライトを当てられた人物だけが微かに浮かび上がっているという、そういう所を見ないと彼の絵の本質というのは分からないと思うんですね。



全く同じ事が日本美術にも言えて、大仏像や阿修羅像を煌々と照明が炊かれた展示室の中で見ても、その本質というのは全く理解出来ないと思います。それは一度でも日本のお寺を訪れ、あのひんやりとした空気の中で奥の方に鎮座している仏像の姿を見た事がある人なら誰しも感じる所。



もっと言っちゃうと、大仏像が金色で出来ている理由、それは真っ暗なお寺の一番奥に鎮座する事によって、入り口から入ってくる僅かな光をその身体全体で捉え、鈍く光る事で威厳を醸し出しているからなんですね。



そんな大仏像が「お寺というコンテクスト」を剥ぎ取られ、大仏様だけ日の元に晒されてしまったら、それこそ最近増えてきた中国系の100円ショップに並んでる金色の招き猫とそう変わらなくなってしまいます(苦笑)。

そして、そして、このボストン美術館の中で個人的に一番興味を惹かれたのがコチラです:



じゃーん、何とこの美術館、カタルーニャのお宝中のお宝、カタルーニャ・ロマネスクを所蔵しているのです!しかもロマネスク教会の壁ごと引き剥がしてきたらしい(苦笑)。作品プレートには、「Christ in Majesty with Symbols of the Four Evangelists, about 1150-1200」とある。ピレネーの山奥にある小さな「海の教会」の後陣から持ってきたものだそうです。



ロマネスクの保存方法については地元カタルーニャでも賛否両論が入り乱れてて、「雨風に露出している美術作品を引き剥がして展示室で保存する事がいいのか?」もしくは「美術作品と言えども元々あった場所からは動かさず、自然の理に任せて朽ちさせていく方が良いのか?」など非常に難しい所なのですが、展示方法という観点で見た場合、この様に教会堂の後陣を再現し、そこに壁画を展示するという方法は非常に秀逸だと思います(地中海ブログ:国際博物館の日:世界屈指のロマネスクコレクションが凄いカタルーニャ州美術館(MNAC))。



何故かと言うと、そうする事で、現地に行く事が難しい鑑賞者に少しでもロマネスク美術とそれが置かれていた雰囲気を理解してもらい、ロマネスクに関する鑑賞者の理解を多いに助ける事が出来ると思うからなんですね。



まあ、山奥の教会から壁画を引き剥がしてきたって事は(日本美術と同様)お宝流出と言えばそれまでなんだけど、カタルーニャに行く事の出来ない圧倒的多数のボストン市民の人達に、カタルーニャ・ロマネスクの素晴らしさを眼にしてもらう機会を与えているという意味においてボストン美術館には多謝したいですね。



このカタルーニャ・ロマネスクの前に展示されていたマリア像、実はカタルーニャのものではなくフランス地方のものであるって事には眼を瞑る事としよう(笑)。
| 大学・研究 | 11:38 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
リアル、エヴァンゲリオンの世界を体験してしまった:MITを含むケンブリッジ市の大停電
2012年11月29日午後4時半頃の事、研究室の電気がふっと消えた。偶々その時、僕はスカイプで打ち合わせ中だったんだけど、ネットも接続不可能に‥‥最初の内は:

「あ、停電か。」

くらいにしか思ってなかったんだけど、どうも様子がおかしい‥‥。5分経っても10分経っても電気が一向に復旧しない‥‥。いつもとは様子が違う事に気が付いたのか、周りもざわざわし始めてきた。11月下旬におけるボストンの日の入りは早くって、午後5時頃には辺りは暗くなり始めます。つまり電気が断たれた建物の中は真っ暗で何も見えないと言う事。明かりと言えば、パソコンのモニターと携帯電話の待ち受け画面の僅かな光くらい。そんな真っ暗闇の中に怪しく光る大小様々なモニターの光達が、緊迫感により一層拍車を掛ける。

1時間経過、未だ電気は普及しない。この辺りから懐中電灯を持った構内警察官(MIT POLIS)が慌ただしく廊下を行ったり来たりしているのが聞こえ始める。

僕の部屋は、ボストン市とケンブリッジ市を結ぶ主要道路(マサチューセッツ通り)に面してるんだけど、ふと外に眼をやると、街灯や信号まで停止しているらしく街中も真っ暗。明かりと言えば、車のライトと、赤く光るブレーキランプが果てしなく続いていて、かなり渋滞している事が分かるくらい。



停電から2時間が経過しようとした頃、ようやく電気が復旧。と同時にサーバーも復活したらしく、メールボックスにMITからメールが届く。内容はこんな感じ:

MITに起こった大停電について

関係者各位

現在ケンブリッジ市において大規模な停電が発生しています。キャンパス内では構内警察(MIT POLICE)が緊急事態に対応している真っ最中です。もし今、何らかの非常事態に直面し、緊急の助けが必要な場合など大至急MIT POLICEに連絡してください。電話番号はxxxxです。引き続き、状況をアップデートしていきます。


その30分後、更にこんなメールが届きました:

キャンパス内の電力復旧しました。

関係者各位

MITキャンパス内の電力が復旧しました。停電が起こっていた間、MITメディカル、MIT警察、MIT EMSやその他、無くてはならないサービスなどについてはバックアップ電力で運営していました。今の所キャンパス内において不測の事態は起こってはいません。しかしもし緊急事態に直面していたり、助けが必要な場合など、MIT警察に速やかにご連絡をお願いします。電話番号はxxxxです。引き続き、状況をアップデートしていきます。


実はこの日、午後5時半頃から(最近ボストンに出来た話題沸騰中の)二郎系ラーメンに行く約束をしていたので午後6時前後にCentral Squareの前を通り掛かったんだけど、そちらの方は未だ信号も復旧してないらしく真っ暗!何人もの警察官が交通整理をしている真っ最中でした。僕達は予定通りラーメンを食べ、帰ってきたのが午後7時30分頃。その時には街中の電気は殆ど復旧していました。

‥‥うーん、今回はちょっと凄い体験をしてしまった。



マサチューセッツ工科大学(MIT)と言えば、工学系大学としては世界最高峰、そんな世界中から選りすぐりの頭脳が集まり、見た事も無い様な最新設備で埋め尽くされている研究機関ですら、電気の供給が絶たれてしまったら「全く何も出来ないんだな」という事が露呈してしまったんですね。

それはもう「エヴァンゲリオン第捨参話、使徒、侵入」の世界そのものでした。

漫画の中では使徒と闘う為にありとあらゆるテクノロジーを注ぎ込み、人類最後の砦として極秘裏に建設されたNERV本部が電気を失いパニックに陥る様子がリアルに描き出されていました。そして今回はテクノロジー系最高峰の大学、MITのキャンパスが電力を失い、「電気を失うと一体どんな事が起こるのか?」という事が明らかにされてしまったと言う訳なのです。そう、一旦電気が失われてしまえば、我々はもう本当に何にも出来ないんですね。そしてそれはそのまま「我々の都市の脆弱性」をも露呈してしまった事件でもあったのです。

我々の生活の多くは電気に頼っている。逆に言えば、電気が無くては何も出来ない。我々はそんな社会の中に生きているのです。



電気が消えていた間、辺りは真っ暗で空を見上げてみれば、それこそ満天の星空、そう、まるで今年の夏、ガリシアのド田舎で見たペルセウス流星群を彷彿させるかの様な鮮やかな星空が広がっていました(地中海ブログ:スペインの田舎で見るペルセウス流星群)。でも、それでもやっぱり僕は真っ暗な闇よりは光があった方が落ち着くかな。と、同時にその様な自分にちょっと「ほっ」としたりもします。何故ならそれこそ僕が人間である証なのだから(地中海ブログ:ガリシア旅行その8:アルヴァロ・シザの建築:セラルヴェス現代美術館(Museu de Arte Contemporanes, Fundacao de Serralves):人間の想像力/創造力とは)。



あー、それにしても二郎系ラーメンは美味しかった。何て言ったって2年振りに食べたラーメンでしたから。又今度行こうっと。
| 大学・研究 | 11:37 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
サスキア・サッセンと世間話で盛り上がったディナー
一昨日から昨日に掛けて、都市の様々な場所から集められた大量データ(ビックデータ)をどの様に都市分析、都市デザイン、ひいては都市計画に生かすか?というテーマに焦点を当てた国際カンファレンス、URBAN CODEがMITで開かれていました。



近年のテクノロジーの発展、劇的なコストの低下、そしてそれら新たなテクノロジーの日常生活への浸透と言った様々な要因が重なり合った結果、携帯電話やクレジットカードなどから個人データを大量に取り出す事が可能となり、その中から有益なパターンを抽出し、都市サービスの質を向上させていこうという試みが世界各地で始まっています。



今回企画されたカンファレンスは、今までは私企業や1つの分野でのみ語られがちだったビックデータとその有効活用法を、「都市」や「公共」と言ったより広い範囲や観点から議論しちゃおうと言う、今まで有りそうでナカナカ無かった試みなんですね。



世界中から集まったその道のスペシャリスト達が2日間に渡って熱い議論を繰り広げた訳なんだけど、招集されたスピーカー達の中には、ヨーロッパ、アメリカの各都市のスマートシティ部門の責任者、世界銀行やBBVA(スペインの大手銀行)と言った金融関連の人達、雑誌エコノミストの編集者、そして勿論MITを中心とする様々なバックグランドを持ったアカデミックな人達なんかが含まれていました。



1つ1つの議論の中身やカンファレンスで浮かび上がった様々な問題、そしてそれらと僕の研究との関連性などについては物凄くテクニカルな内容になってしまうので詳細は次回のエントリに譲る事として、今回は全く予期せずして起こってしまったある種の「事件」について記そうと思います。



そのかなりスリリングな瞬間はカンファレンスの直ぐ後、近くのレストランにて開かれたディナー会場で起こってしまいました(ちなみに上の写真は今回のディナーで出された2皿目、タラのクリームソース和えぽかったけど、これがかなり美味しかった!何度でも繰り返すけど、ボストンの料理は思ってたほど酷くない(地中海ブログ:ボストンは牡蠣が美味しいという事を発見してしまった!:ネプチューンオイスター(Neptune Oyster)))。

僕がレストランに着いたのは午後20時30分頃の事、既に会場には30人弱のゲストの人達が集まっていて着々と席に着いている途中だったんだけど、と言うもの今回のディナーでは、会場に着いた順に各自が好きな席を取り、隣同士になった人達と会話を楽しむと言う方式が取られていたからなんですね。着いて間もなく、僕も空いている席を見つけてそこに陣取る事に。その間、挨拶がてら隣の人としゃべっていたら、突然後ろから

「ここ空いてますか?」

という女性の声が。特に気にもせず、

「ええ、空いてますよ」

と言った瞬間、その女性の顔を見てビックリ!あー、こ、この人はー:



サ、サスキア・サッセンだー!!!そう、何と偶然にもディナーの席がサスキア・サッセンと隣同士になってしまったんですよ!(サスキア・サッセンについて詳しく知りたい人はコチラ:地中海ブログ:サスキア・サッセン(Saskia Sassen)のインタビュー記事:グローバルシティというアイデアは何処から来たのか?)。



正直言って、最初の内は緊張でそれこそディナーどころじゃ無かったんだけど、実は彼女、あんな小難しい文章を書く割にはかなり気さくな方で、しかも良くしゃべる!一度しゃべり出したら止まらないタイプ。で、最初は一緒にいらしてた左隣に座った方としゃべってたんだけど、その話が一段落した所で僕の方を向いて:

Saskia:「どうも、初めましてサスキアです。どちらからいらっしゃったんですか?」 Cruasan:「初めまして、建築家のcruasanと申します。日本人なんですけど、実は12年くらい前からバルセロナに住んでます。」
Saskia:「え、バルセロナに住んでるの?じゃあスペイン語しゃべれるんじゃない?」(ここから既にスペイン語)
Cruasan:「ハイ(Si)」


と言う様な流れになり、そこからはスペイン語で堰を切った様にしゃべり出す彼女。そう、サスキアさんは元々オランダ出身なんだけど、とある事情から2歳の時にアルゼンチンに移住し、その後ロシアに行ったりロンドンに行ったりという事を繰り返した挙げ句、今では7カ国語を操れる様になったんだとか(驚)。そんな彼女の母国語は勿論スペイン語!と言う訳で、母国語を話す事が出来るリラックスした雰囲気がそうさせたのかどうかは分からないけど、ディナーの間中、ずーっとしゃべりっぱなし(笑)。しかも話題はグローバルシティとかそういう難しい話じゃなくて、誰もがしでかす日常の些細な出来事といった世間話って言うんだから笑えます。

多分、サスキア・サッセンとグローバル経済や都市の分極化の話などアカデミックな話をした事がある人は沢山いるとは思うけど、「昨日は何食べた」だの、「今週は沢山歩いた」だの、「ニューヨークの生活はどうだの」、日常の些細な事を話し込んだ人はなかなかいないんじゃないでしょうか?ハッキリ言って、今日ほど「スペイン語がしゃべれて良かったー」って思った事はありません。

全く予期していなかった出来事だったけど、何年も前からその著書を通して色んな事を学ばさせてもらったサスキア・サッセンと直に話しが出来た事は僕の人生にとって掛替えの無い体験となりました(地中海ブログ:もう一つの9月11日:カタルーニャの場合:グローバルの中に息づくローカリティ)。

翌日、彼女は何時もの様に忙しそうにノートパソコンを覗き込み、立食形式だったお昼を食べた後、かなりの早足でタクシーに乗り込んで行きました。

去り際にレセプションに居た僕に向かって言ってくれた「またね(Hasta Pronto!)」という言葉が今でも耳に残っています。今度はバルセロナでお会いしましょう!
| 大学・研究 | 01:33 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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