地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
TBSの「セカイはいま、バルセロナ「観光客減らせ!」のワケ」について思うこと。

なんか先週、TBSで「セカイは今、バルセロナ「観光客減らせ!」のワケ」という番組が放送され、それが結構な反響を呼んでいるということで、僕のところにも各種メディアや自治体、研究者の方々などからの問い合わせが殺到しています。

バルセロナの観光政策とその行き過ぎた成功、そしてその結果引き起こされている市民生活への弊害については当ブログでは度々指摘してきたところです。下記に纏めておきましたので、興味のある方はこちらをご覧下さい:

観光MICEとオープンデータ:2020に向けて、バルセロナの失敗の学ぶ、データ活用による都市観光の未来

観光とチープエコノミー:ライアンエアー(Ryanair)などの格安航空機が都市にもたらす弊害

バルセロナの中心市街地で新たな現象が起こりつつある予感がするその1:ジェントリフィケーションとその向こう側

都市の闇:ヴェネチア(Venezia)の裏の顔とジェントリフィケーション(Gentrification)

エンターテイメント社会におけるチープ観光がもたらす弊害:観光のローコスト化による観光客の質の変化:Salouの場合

「観光が引き起こす弊害」という問題については、もう既に2008年の段階でその兆候が見えていました。今から10年も前のことです。更に言えば、2年前には横浜にて「バルセロナの失敗から学ぶ観光政策」というシンポジウムを開催したのですが、時期が早過ぎたらしく、「2020年の東京オリンピックに向けてインバウンドを目指してるのに、なに言ってるんだ、この人は?」みたいな感じで殆ど誰も理解してくれませんでした(苦笑)。そんな中、唯一興味を持ってくれたのが、国際大学GLOCOMの庄司さんで、翌年のバルセロナ・スマートシティエキスポにまで足を運んでくれたり、僕がコーディネートしたバルセロナ市役所副市長や幹部クラスとのスペシャル・セッションの最中も熱心にメモを取られたりと、「あー、さすがだなー」と思わされたりしたのは良い思い出です。

まあ、僕に言わせれば現在のバルセロナが観光に成功し過ぎてしまって、その弊害が出始めるだろうなんてことは、論理的に考えていけば普通に導き出せる答えだったので、そんなに驚きではないのですが、TBSもどうせだったら現在のバルセロナがその弊害に対してどういう対応策を考えているのか、「どの方向に舵を切ろうとしているのか?」など、そういうところまで踏み込んで取材してくれれば良かったのに、、、と個人的には思います。

ちょっと意地悪なことを言ってしまうと、今回のTBSの元ネタは上述した僕のブログだということは丸分かりで、放送された最後のコメント、「オリンピックを控えた日本では外国からの観光客の誘致を進めていますが、観光客を増やすことだけを優先してきたバルセロナの失敗から学ぶべきことは多いと感じました」っていうのは僕のブログ記事そのままですからね(笑)。っていうか、ネタは丸パクリって分かってるんだから、最後の表現くらい変えればいいのに、、、(苦笑)。

バルセロナの名誉の為に少しだけ補足しておくと、一応この分野では世界トップを走っている都市なので、「観光客にやられっぱなしで黙っている」なんてことはしていません。僕の目から見ると、むしろかなり積極的に革新的な政策を打ち出しています。バルセロナの背後で都市戦略を創っている人達も勿論知っていますし、彼らは来月ボストンに来て僕と色々と打ち合わせをすることになっていたりもするんですよねー。

我々の世界は常に動いていて、状況は刻一刻と変わっていっています。そこに見えている表面的な変化ではなく、もっと深いところにある構造的な変化を敏感に察知しながらも、そこから常に5年先、10年先の都市の姿を想像すること。その想像に基づいて、いまから打つべき最善の手を創造できる人達が少なからずいるということ。

そのような「想像力」と「創造力」が必要な時代に、我々は突入しているのです。

P.S.

最近は夏休みということもあって、MITには小中高校生がひっきりなしに観光に来てるんだけど、先日廊下を歩いてたら、やたらと「写真撮らせて下さい!」リクエストが多い日がありました。最初は何が起こったのかさっぱり分からなかったんだけど、写真を撮った後に何気なく聞いてみたら、「科学者(サイエンティスト)とピカチューのギャップが面白かったから」とか言われてしまい。。。

それでもなんの事か良く分からなくて、、、突っ込んで聞いてみたら、どうやらその日僕が着てたTシャツがピカチューだったらしい(驚)。「え、そ、そんな筈は無い!」とか思って、トイレに行って鏡を見てみたら、「ほ、ほんとだー。ピカチューだ!!」。

い、いや、このあいだ偶々ユニクロに行った時に適当に黒いTシャツを選んで買ったら、それが任天堂とのコラボTシャツで図柄がピカチューだったみたいです(笑)。 言われるまで全く気が付かなかった(汗)。

ちなみにMITの研究室の多くはこんな感じでガラス張りになってて、檻の中に閉じ込められている我々の姿を「まるで珍しい生き物が生息しているかの様に」観光客の皆さんが覗いていきますww

| 都市戦略 | 08:24 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
シティ・リージョンという考え方その2:エレスンド・リージョンの要、交通インフラの重要性と利便性について:宇宙戦艦ヤマトのコックピットの様なフェリーにちょっと驚いた
前回のエントリの続きです。今回バルセロナからの直行便で到着したのが、スカンジナビア航空の拠点であり、ヨーロッパのハブ空港の一つとして知られるコペンハーゲン国際空港です。でも、まあ、ハブ空港とは言っても、デンマークの人口は400万人足らず、コペンハーゲンに限って見れば50万人強、つまりは国単位で見ても中京圏に及ばない程なので、ハブ空港という割には「結構こぢんまりしてるな」っていうのが僕の第一印象かな。



飛行機を降りた直ぐの待合ロビーは全面がガラスで覆われ且つ、要所要所に木材が使われている為、開放的であると共に、非常に暖かみのある空間となっています。


スペイン語でSolは太陽、Marは海。つまりこのバスは「太陽と青い海」行き

北欧の人達と聞いて真っ先に僕が思い浮かべるのは、太陽と青い空を求めて南欧に来ては、それこそ真っ赤に日焼けするまでビーチで寝転がってる姿なんだけど、そんなイメージが頭の片隅に媚びり付いてるものだから、一面ガラス張りのデザインとか見てしまうと、彼らにとっては「短い日照時間の間に降り注ぐお日様の光ほど大切なものはないんだろうなー」と、そう思ってしまいます。



さて、空港という機能は都市間競争が日に日に激しさを増す中において現代都市にとっては無くてはならない機能であり、空港の効率性こそが正に「都市の命運を握っている」と言っても過言ではない時代に我々は突入してきています。もっと言っちゃうと、都市が自身の空港との関係をどう戦略的に位置付けているのか?空港から市内まではどんな交通機関が利用可能で、どれくらいの頻度で運行され、何分で着くのか?等が非常に重要な問題として浮上してきているんですね。そしてこの様な都市へのアクセッシビリティは確実に我々の「生活の質」に影響を与え始めてすらいます。

この様な観点に立脚しつつ、当ブログでは事ある毎に各都市のアクセッシビリティ評価というものを試みてきました(地中海ブログ:都市化する空港と効率指標としてのアクセッシビリティ)。と言う訳で、今回はコペンハーゲンのアクセッシビリティ評価をしてみたいと思います。



先ずコペンハーゲン国際空港においては、空港に到着して税関を出た直ぐの所に電車乗り場があります。しかも地下鉄、バス、タクシーと、コペンハーゲン市内まで行く手段は全部整ってますね。今回は電車を選んだのですが、市内までの料金は36,00 DKK、つまり日本円で500円あまり(2012年1月現在)。これは安い!



とか思いつつ、電車を待っていると直ぐに来た。しかも時刻通り!どうやら空港とコペンハーゲン市内を結ぶ電車は15分おきくらいに出てるそうです。電車の外見は素晴らしく汚かったんだけど(笑)、車内は清潔そのものに保たれていました。こういう時、一つの指標となるのがトイレの清潔度だと思うんだけど、デンマークの車内トイレ、もうピカピカ!「さすが北欧」とか思ってたら、何かアナウンスが流れてきた:

ポンポンパンポーン、もう間もなくコペンハーゲン中央駅です」

「あ、あれ?未だ10分ちょいしか経ってないよ?」。そ、そーなんです!実はコペンハーゲン国際空港からコペンハーゲン中央駅までは何と所要時間10–15分程度で着いてしまうんですね。これは早い!今まで僕が見てきた中でも最高ランクに位置する程のアクセッシビリティの高さです。その近さに加え、頻度は10−15分おき、値段は500円程度‥‥ハッキリ言って今までナンバーワンの座を守ってきたフランクフルト国際空港と同等と言っても過言ではありません。 



さて、今回は特別編として、コペンハーゲンとスウェーデンを結んでいるスンド海峡を渡ってみる事にしました。何故なら公共交通機関のインフラ整備とその効率性こそ、エレスンド・リージョンの要だと思われるからです。


上の写真はコペンハーゲン中央駅

先ずはコペンハーゲン側からスウェーデン側の中心的な都市、マルメ(Malmö)へと電車で移動してみる事にします。僕が電車に乗ったのが午後17時過ぎ、と言う訳で外はもう真っ暗。本当なら見る事が出来る、両国間を繋いでいる欧州一長い橋も何も見えない‥‥(悲)。その代わりと言っては何だけど、車内を見渡すと、明らかに仕事帰りの人達でごった返しているのが分かりました。つまり皆、コペンハーゲンで働いて、住宅価格の安くて福祉が整っているマルメ(スウェーデン)に暮らしてるって事の現れだと捉える事も出来るんですね。

この問題については統計を取った訳ではなく、あくまでも僕が電車に乗り合わせた際の感想でしかないので詳しい事は言えないのですが、一つだけハッキリした事、それは2カ国間を渡る際にはパスポートチェックも何も無かったという事です。まるで普通の電車に乗ってるみたいに、すんなりとスウェーデン側へと入れてしまいました。つまりは2カ国間を移動する際の障壁や煩わしさはゼロだったという事です。

そして翌日、今度はエレスンド・リージョンを上の方で結んでいる公共交通機関を試してみる事に。こちらの方は、今回僕が滞在しているHelsingborgから対岸のHelsingorまでフェリーで渡る事となります。



Helsingborg側のフェリー乗り場は電車の駅と一緒になってるんだけど、この駅のデザインが結構目を惹いたかな。フェリーは片道35SEK、日本円で約400円くらい。このフェリーは約15分おきに出てるみたいです。



フェリー乗り場に到着して待つ事5分、「船が着いたよー」みたいなサインが出て、デッキを渡ってフェリーへと乗り込みます。



思えば船に乗るのも結構久しぶり。動いてない船の上で欧州委員会の人達と船上ディナーっていうのは2年くらい前にあった気がするけど(地中海ブログ:ロンドン出張その2:船上ディナー)、動くフェリーに乗るのは10年くらい前にジブラルタル海峡を見ながらモロッコへ渡った時以来かも。という訳で、船に乗るっていうだけで結構ドキドキしてきたりする。で、乗ってみてビックリ!



豪華客船並みじゃないですかー!す、凄い!カフェやレストランは勿論の事、お土産コーナーの充実振りとか目を見張るばかり!勿論、船内は清潔そのもので、デザインも細部までゆき届いています。



って、その豪華さに目を奪われてたんだけど、あ、あれ、ここでもパスポートチェック無かった‥‥普通に乗船してしまいました。



面白かったのは、やっぱり船の上というのは、何処の国にも属していない様な、ある意味無国籍な曖昧な空間なので、カフェやレストランなどの料金表示はデンマークとスウェーデン両方の通貨表示がしてあった事ですね。



自由席だったので、勿論陣取った席はど真ん中の一番前!で、ちょっと見てください!



まるで宇宙戦艦ヤマトの操縦席並みじゃないですかー!ガラスと窓枠が「くの字」にカクカクって曲がったその全面ガラス張りの操縦席からは見事な地平線が見渡せます。



今日は空が冴え渡ってて、気持の良いくらい青い空が高い!!そして到着〜。



こちらでも普通に船を降りて、普通にデンマーク側の駅へと入って行けました。つまりパスポートチェックも何も無し!ちなみにココまでの所要時間は20分弱。

これは凄い!エレスンド・リージョンの要、両国間を結ぶインフラの利便性は噂以上でした。この様な非常に効率の良い利便性があるからこそ、人々が2カ国間を自由に行き来し、この地域を一体とする事に成功しているのでしょうね。そしてこの様なインフラの存在こそ、地域を一つに纏め上げる事によって「一つの都市だけでは決して創り出す事の出来ない競争力」を創出するシティ・リージョンという考え方を担保している「縁の下の力持ち」なのです。

これらの事は勿論書籍で読んで知ってはいたんだけど、知識というのは実体験してみて初めて自分の血となり肉となるのだと思います。そういう意味において、今回の体験は僕の人生にとって掛替えの無い出来事であり、この上ない財産となったと思います。
| 都市戦略 | 07:13 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
シティ・リージョンという考え方その1:スンド海峡のエレスンド・リージョンについて
前回のエントリで少しだけ書いたのですが、実は昨日からデンマークとスウェーデンに来ています。



目的は今日から開かれているe-Tourism(新しいテクノロジーを活用した観光リサーチ、観光体験そして観光が都市に与える影響などを探る為の新しい手法の提案など)に関する国際会議に出席する為なのですが、今回はゲストとしてお呼ばれしちゃいました。最近、都市計画や建築、もしくは交通に関する国際会議に招かれる事は(大変喜ばしい事ながら)多くなってきたのですが、観光分野からお声が掛かるのは今回が初めて!何でかって、まあ理由は分かってて、現在僕が仕事の方で進めている「ルーブル美術館の歩行者計画」の為なんですね。今まで表立って発表してはこなかったんだけど、実はルーブル美術館とはもうかれこれ2年くらい付き合ってて、パリとバルセロナを行ったり来たりしています。



この計画の詳細については次回以降のエントリに譲る事として、今日は僕が北欧に来るに当たって直面した非常に興味深い現象について少し書いてみようと思います。それは主催者から2ヶ月ほど前に受け取った一通のメールから既に始まっていました:

「クロワッサンさん、来月末に行われる国際会議、前回のメールでお知らせした様に、スウェーデンのHelsingborgという街で行われます。Helsingborgは国としてはスウェーデンに属しているのですが、スンド海峡を挟んだこの辺りはデンマークとの間で公共交通機関が非常に発達しているので、ストックホルム(スウェーデンの首都)に飛んでそこから電車で来るよりも、コペンハーゲン(デンマークの首都)に飛んでそこから電車で来た方が近いですよ。ご参考までに」



そうなんです!実は、今回の国際会議の舞台となっているHelsingborgという街は、国としてはスウェーデンに属しているのですが、この街が立地している辺りはコペンハーゲンを中心としたデンマーク側との社会経済的な結び付きが非常に強く、フィジカルにも欧州一長い橋(全長16キロ)やフェリー等によって結ばれている為、自国の首都に飛んで、そこから電車を使うよりも、隣国のコペンハーゲンに飛んで、そこから電車で行った方がよっぽど早いという一風変わった地域となっているんです。

‥‥っと、ここまで読んできて「あれっ?」って思った人はかなり勘がいい。

そう、実はHelsingbrogという小さな街は、シティ・リージョンで有名なエレスンド(Oresund)・リージョンに属している街なんですよ!

先ず「シティ・リージョンとは一体何か?」と言うとですね、グローバリゼーションが進行し、都市間競争が激化する最中において、パリやロンドンなどといったメガロポリス(=都市を際限無く拡大する事によって競争力を維持する)のではなく、都市の機能を分散させ、その間を発達したインフラ(高速鉄道など)で結ぶ事によって、地域(リージョン)として大都市(メガロポリス)に匹敵する様な競争力を創り出そうという考え方なんです。

では一体何故シティ・リージョンはそれ程までに注目されているのか?

それはシティ・リージョンという考え方が環境問題をも取り込んだ、正にサステイナブルシティの一つの可能性を指し示していると考えられているからです。つまりネットワークの力によって大都市に負けずとも劣らない競争力を創り出す一方で、各都市に注目してみれば、小都市(コンパクトな都市)の強みを生かして緑溢れる環境、メガロポリスでは絶対に実現する事が出来ない「環境的な質」で人々の「生活の質」を向上させ、正にその事によって「緑の競争力」を売りにしていこうという考え方なんですね。



具体的にはオランダのランドスタット、スペインのバスク地方を中心とする都市戦略、そして地中海を共有する様々な都市で創り出されつつある「地中海の弧」などが挙げられるかと思います。特に地中海の弧については当ブログでは散々書いてきたし(地中海ブログ:Euroregion(ユーロリージョン)とカタルーニャの都市戦略:バイオ医療を核としたクラスター形成、地中海ブログ:地中海の弧の連結問題:ペルピニャン−フィゲラス−バルセロナ間の高速鉄道連結計画の裏に見えるもの)、ビルバオのグッゲンハイムの大成功の裏にある都市戦略についても、事ある毎に言及してきました(地中海ブログ:バルセロナの新たなる都市戦略:ビルバオから学ぶバルセロナ都市圏再生の曙、地中海ブログ:ビルバオ・グッゲンハイム効果とジェントリフィケーション)。又、2年くらい前に行ったアムステルダムについての記事の中でも、ランドスタットの事を書いたと思います(地中海ブログ:アムステルダム出張:如何に訪問者にスキマの時間を使って街へ出るというインセンティブを働かせるか?:スキポール空港(Schiphol Airport)の場合、地中海ブログ:欧州工科大学院 (European Institute of Innovation and Technology)の鼓動その2:ネットワーク型システムに基づくシティ・リージョンのようなコンセプトを持つ大学院)。

つまり僕はヨーロッパにおけるシティ・リージョンという現象についてはかなり気を配っている方だと思うんだけど、そんな中でも絶対に訪れたかったのが、このデンマークとスウェーデンの間に広がっているエレスンドだったのです。



何故か?

それは此の地域が達成した地域間協力体制(シティ・リージョン)が、2カ国間の恊働であるにも関わらず、他エリアの追随を許さないほど成功しているという事(普通は一カ国の中の他地域間の交渉でも困難なのに、違う国同士の交渉を巧く纏め上げたという意味において)、架空のアイデアで終わるのではなく、実際に市民の日常生活に多大なる影響を与えているという事、そして何より此の地方が伝統的に育んできた空間計画が巧い事噛み合う事によって、見事な程の空間バランスを達成しているという事が挙げられるかと思います。我らが岡部明子さんもこんな風に書いてらっしゃいます:

「地域発展戦略を成功させるためには、競争力がなくてはならない。他地域からのアクセスや地域内アクセスのよさなど利便性が求められることはいうまでもない。グローバルに競争力のある経済基盤も欠かせない。これらの恵まれた競争条件に加えて広義の空間バランスを競争力に生かそうとしている点が、エレスンド・リージョンの興味深いところだ。」岡部明子、サステイナブルシティ、p207

という訳で今回この地を訪れるに当たって、「せっかく行くんだから、その辺の事も調べてみたいなー」と思ってた所、僕が何かしらのアクションを起こす前に、今回の国際会議の主催者から上述の様なメールを受け取ったという訳なんです。つまりこの出来事が指し示している事、それはそのエリアに住む人達にとっては、2カ国間を行ったり来たりする事が、日常茶飯事になっているという事の証だと思います。

その様なモビリティの高さ、効率の良さについて実際に驚くべき体験してきたので、次回のエントリで詳しく追っていきたいと思います。

シティ・リージョンという考え方その2:エレスンド・リージョンの要、交通インフラの重要性と効率性について:宇宙戦艦ヤマトのコックピットの様なフェリーにちょっと驚いたに続く。
| 都市戦略 | 06:09 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
バルセロナで国連関連のワークショップ始まる:バルセロナの忘れられた地区大発見!
前回のエントリで少しだけ書いたのですが、昨日から始まった国連関連のワークショップをオーガナイズする為に、ここの所、かなり忙しい毎日が続いています。先週は「ポッキーの日」という事でスペインのポッキー、MIKADOを齧りながら資料とか作ってたんだけど、今週はそれどころじゃ無くなってきた‥‥。って言うか、僕があっち行ったりこっち行ったり、はたまたプレゼンの用意なんかで謀殺されてる中、「お先に〜」とか言って帰って行く同僚のイタリア人とか、どう考えてもオカシイでしょ?彼ら曰く:

「今週は私達イタリア人にとっては特別な週なの。何てたって、念願だったベルルスコーニがやっと政権を去ったんだから!今週一週間は毎日ピザでお祝いよ!」

‥‥とは言ってなかったけど(笑)、絶対そんな言い訳するイタリア人とかいそうだよなー。まあ、その気持ちも分からないでも無いですけどね。

まあ、良いや。で、先ず始めに「このワークショップは一体なんなのか?」と言うとですね、バルセロナのとある大学のマスターコースの一環として、国連の一機関であるUN-Habitatを巻き込みながら、「バルセロナの忘れ去られた一地区」を開発する為の調査分析を行うという、(僕的には)かなり驚きの内容のワークショップなんですね(バルセロナのマスターコースの裏事情についてはコチラ:地中海ブログ:バルセロナに出来た新しい建築学校その2:Barcelona Institute of Architecture:バルセロナ建築スクールの諸問題)。何故驚きかというと、2ヶ月程前にメールでこの話を最初に聞いた時は、「まあ、教育の一環なのかな」とか思ってたんだけど、ミーティングに行ってみたらよく知ってる市当局の面々やら州政府からは大臣なんかも来てたりして、調査分析という名目の裏には結構大きなプロジェクトが見え隠れしているからなんです。その土台を作る為のモビリティに関する調査をしたいと言う事で(市役所経由で)僕の所に連絡が来た訳なんだけど、具体的にはデータの収集と現状分析、更にはそれらデータのビジュアリゼーションなどを「ワークショップという形を取りつつやってくれないか?」という結構無茶な注文が来ちゃいました(苦笑)。

で、その準備の為に先週から現地を何度か訪れてるんだけど、これが(意外にも)結構興味深くって、正に「バルセロナの新たな顔発見!」みたいな瞬間が毎日の様に訪れています。というのも、バルセロナの外れに位置するこのエリアには、中心街から連結している公共交通機関も非常に少なくて、バルセロナ出身のカタラン人ですら「今まで近寄った事すら無い」という人が殆どなのでは?と思うからなんですね。更に更に、今回のワークショップの調査地区というのは、図書館や病院なんかが多く集まっている、この地区の中でも比較的開発されているエリアなのではなくて、そこから更に山の中に入っていったエリアというから驚きです。そんな奥の奥に広がっていた風景がコチラ:



バルセロナ市内とはにわかには信じられない様な大自然!これ、一応市内ですよ、市内!!



更に驚くべき事に、この地区の至る所には、昔作られた橋や、前世紀のモニュメントなんかが数多く残っていて、まるでここだけ「時」がストップしてしまったかの様な、そんな風景が広がっていました。



見晴らしも最高!で、面白かったのは、このエリアにはモニュメントなどフィジカルな遺構だけでなく、昔ながらの習慣が居住者の間に保持されていると言う点でした。



というのも歩き疲れたので、11時ぐらいに休憩がてら近くのカフェに入ったら、11時にも関わらず、みんな普通のランチらしきをガッツリ食べていたからです。勿論ワインもガブ飲み。スペインでは昼食が14時と少し遅めなので、11時くらいにカフェでコーヒーとサンドイッチなどの軽食を取るのが普通なのですが、昔の人達、特に肉体労働を主とする労働者の人達などは、ランチ前の軽食にもしっかりランチ級のご飯とワインでお腹を満たしていたそうなのです。本で読んで知ってはいたんだけど、実際に見るのは初めてでした。

さて、ここからはちょっとした裏話なんだけど、このワークショップの裏側にあるもの、その隙間からチラチラ見えるものこそ、現在のバルセロナ市役所の右派政権の打ち出したい新しい政策です。

今年の5月に約32年振りに(初めて)労働左派から政権を奪った右派政権は、このバルセロナ市内における忘れ去られた地区を新しい集客エリア、つまりは市内から人々を惹き付ける事の出来る「新しい中心」に位置付けようとしています(バルセロナの政権交代についてはコチラ:地中海ブログ:スペイン統一地方選挙2011:バルセロナに革命起こる)。もっとハッキリ言っちゃうと、この辺りに残されているモニュメントを修復して観光要素にしたり、もしくはノーマン・フォスターの塔が位置する山手エリアへの新しい入り口にしたりして、グリーンツーリズムの新しい拠点にしようと試みているんですね。

では何故ここにUN-Habitatが関わってきているのか?

ここが結構キーだと思うんだけど、実はですね、現在のUN-Habitatの事務局長は1997年から9年間、バルセロナ市長を勤めたJoan Clos氏なんですね。



そう、バルセロナのカーニバルで、山車のど真ん中で踊りまくってたジョアン市長は今、国連に身を置いているんですね。まあ、カタラン人が世界中に張り巡らされたネットワークを使って国際機関を都市開発に巻き込んじゃおうっていうこの手法自体はバルセロナでは結構典型的で伝統的な手法だったりするので今更驚きではありません。この辺は流石に巧いとしか言いようがないなー。

僕はこの計画にはモビリティの視点、特に歩行者分析という視点から関わっているので、見放された地区に何かしらの集客装置が創り出され、それによってその地区の公共空間に賑わいが出たり、生活の質が向上したりする事には大賛成と言う立場を取っています。しかしですね、個人的な意見を言わせてもらうと、「バルセロナ市が何故今このエリアを開発するのか?」という理由、つまりは大きな枠組み=「バルセロナの都市戦略の中におけるこの計画の位置付け」みたいなモノがちょっと良く見えないかな。

まあ、計画は始まったばかりだし、もう少し深く関わってみると、又新しい展望が見えてくるかもしれない‥‥と言う期待を持ちつつ、もうちょっと見守る事にしてみよう。
| 都市戦略 | 21:19 | comments(4) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
スペインのコンペ事情と欧州文化都市決定の裏に見え隠れするもの
あー、今週も忙しかった。そして何より暑かった!!もう何時の間にか、本格的な夏到来って感じなんですけどー。

昨日のお昼は交通計画の世界的権威、Jさんと市内のレストランでランチしてたら、偶然にもカタルーニャ工科大学の学長とバッタリ!「よー、久しぶり、元気〜?一杯飲む〜」みたいな、何時会っても、全くもって学長とは思えない軽いノリなんだよな、この人!



夜は夜で、友達の日本人建築家の家でタイ風カレーを御馳走になったんだけど、最近バスク地方の美術館コンペに勝利した彼らの気になる話題と言えば、やはりスペインのコンペ事情らしい。特につい先日発表になった2016年の欧州文化都市開催決定の影響は大きいらしく、下馬評では当選が確実視されていたにも関わらず落選してしまったコルドバ市で、決定していた文化施設のプロジェクトなんかが次々にオジャンになっているんだとか何とか。

日本では全く報じられていないので、知らない人多しの事だとは思うのですが、「欧州文化都市と一体何か?」と言うとですね、欧州委員会が選定した都市で、一年間に渡り、集中的に各種の文化行事を展開するって言う、その名の通り、「欧州の文化の首都」になると言うイベントの事なんですね。このイベントが設立された当初、はっきり言って「そんなの面倒くさーい」みたいな感じで、どこの都市も敬遠しがちだったのですが、イザ行事が始まってみると、その集客効果と観光客が落としていってくれる経済効果の凄まじさ、そして何より都市のマーケティング効果に気が付いた欧州中の都市が、今では競ってその地位を奪い合うと言う激烈な競争へと変貌を遂げたと言う背景があります。

そんな状況の中、先週水曜日に5年後(2016年)の欧州文化都市開催都市の発表が欧州委員会の方からあったばかりだったんだけど、実は今回は最後の最後で大どんでん返しがあり、当選が確実視されていたコルドバ市が負けて、全く予想されていなかったサンセバスチャン市が当選すると言う結果に終っちゃった訳ですよ!

では何故、サンセバスチャンが勝ったのか?

うーん、ここからは僕の勝手な予想なんだけど、多分、現在のスペインの経済危機を考慮するならば、文化にお金を回す余裕が全く無い中で、果たして本当にコルドバと言う小さい街に、欧州文化都市を開催出来るだけの余力があるのだろうか?と言う懸念が欧州委員会の中にあったからじゃないのかな?



コルドバと言う都市は人口30万人程度の小さな町で、確かに世界的に有名なメスキータがある事はあるんだけど、言ってみればそれだけ。ホテルの数だってたかが知れています。何よりアンダルシア地方と言うのは、スペインの中でも最も経済的疲弊が激しい地域として、スペインは勿論、欧州中にその悪名が響き渡る所となっているんですね。



その一方で、サンセバスチャンと言う都市は、王族やブルジョア階級の避暑地として知られていて、云わ場スペインの高級リゾーチ地な訳ですよ。つまり資金的には最も豊富なエリアの一つであり、サンセバスチャンを開催都市にしておけば、直前になって「やっぱり出来ませんでした!」みたいな事は起こりにくい、と、まあ、こういう安全パイを欧州委員会が取ったと言う事なんじゃないのかな?

もう一つ気になる点が、ETAとの関連が指摘されているBilduと言う政党が先々月の選挙で史上初めてバスク地方の政権を握ると言う画期的な出来事が起きたばかりだったんだけど、この政治的な動きと今回の欧州委員会の決定には何かしらの関連があるのでは?と言うのが大勢の見方となっています。ちなみにこの決定に怒り心頭のZaragoza市の市長は「欧州委員会の判定には疑念を感じる。再検討を要請する為に法的手段に訴える覚悟だ」と裁判に持ち込む事をも示唆してたりもするんですね。

そんな大どんでん返しを食らって堪らないのがコルドバ市なんだけど、実はスペインではここ数年、経済危機の影響を受けて建築コンペの数が激減してたりして、文化施設のコンペなんか殆ど無いに等しいくらいだったのに、コルドバでは、それが結構開催されていたんですね。理由は勿論、2016年の欧州文化都市に通ると言う前提の下、市役所始め、政府なんかもバックアップ体制を敷いてたんだけど、それが崩されちゃって、今までのコンペはみんなオジャン!

もう一つ次いでだから言っちゃうと、実は先日、スペインのガリシア地方の都市、ア・コルーニャ市において、鉄道駅周辺の開発を含む大々的な国際コンペの結果が発表されました。伊東豊雄、MVRDV、ラフェエロ・モネオなど、なみいるスター建築家を押しのけて1等に輝いたのは地元出身の建築家で、それがちょっとしたニュースにもなったんだけど、そのコンペの経緯を見ていてちょっとした昔話を思い出しちゃいました。

あれは今から丁度5年くらい前の事、僕が未だバルセロナ市役所のとある機関に勤めていた時の事だったのですが、当時から既にかなりの有名人だったジョアン・ブスケッツと言う都市計画家が突然訪ねてきて、なんか急にミーティングをするからと言う事で僕もその席に呼ばると言う事がありました。ジョアン・ブスケッツと言うのはバルセロナの都市計画に深―く関わっている人で、今ではハーバード大学の教授に就任している程、世界的に名の通った都市計画家です。彼の手がけた作品として有名なのは、トレド市の保存と再開発計画なんかがあります(地中海ブログ:マドリッド旅行その4:ラペーニャ&エリアス・トーレス(Jose Antonio Martinez Lapena and Elias Torres)の建築その1、地中海ブログ:あまり知られていないバルセロナ近郊にある名建築:ラペーニャ&エリアス・トーレスによるCastelldefels城へと続くアプローチ空間)。

で、その時彼が持ってきたのが、何を隠そう、ア・コルーニャ市の都市戦略と再開発の基本構想だったんですよね。それから1年ちょっとの間、色々とやり取りをしながらも案を練っていったんだけど、今回のコンペはその時の基本構想が下地になっていると思われます(それ以来、僕は関わっていないので確定的ではないのですが)。

あれから5年・・・あの時、全く何の案も無い白紙の状態だった再開発地区に、今では世界中から沢山の応募が寄せられ、段々と形になっていってるのかと思うとちょっと感慨深いものがありますね。

昨日の夜は、暑い中、辛くて美味しいカレーを食べながらも、そんな昔話を思い出しちゃいました。
| 都市戦略 | 21:32 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
スペイン高速鉄道(AVE)開通3周年記念:高速鉄道と言うインフラが日常化している国としてない国の違い
先週日曜日220日はマドリッド−バルセロナ間の高速鉄道(AVE)開通3周年記念日でした。



日常生活には欠かせないインフラの一つであり、我々の生活の質の豊かさを測る一つの指標とも成り得る高速鉄道網については、それらが引き起こす社会文化的なインパクトの強さや、僕自身の乗車体験など、当ブログでは事ある毎にその状況などレポートしてきました(地中海ブログ:高速鉄道敷設に見る都市戦略、地中海ブログ:マドリッド旅行その1:高速鉄道(Alta Velocidad Espanola:AVE)に乗ってきました、地中海ブログ:スペイン高速鉄道(Alta Velocidad Espanola:AVE)バルセロナマドリッド間開通一周年記念、地中海ブログ:マドリッド出張:スペイン高速鉄道(AVE)、ファーストクラス初体験)。

今では大成功を収めているマドリッド−バルセロナ間の高速鉄道なのですが、実はスペインで初めて高速鉄道が敷設されたのは1992年のマドリッド−セビリア間だったと言う事はあまり知られてはいません。って言うか、経済発展を促進する為に、普通なら首都と第二都市を最初に結ぶって言うのが定石だとは思うんだけど、マドリッドとバルセロナにとっては経済発展なんかよりも、意地と意地の張り合いの方がよっぽど大事らしく、その後16年もの間、両都市が結ばれる事は無かったんですね(苦笑)。バルサ対レアルマドリッドの試合が代理戦争と言われている所以です。そんな両都市にようやく高速鉄道が引かれた当時、それが引き起こす社会的変化を大変巧く纏めていたのが、何時もお世話になってはいるんだけど、あんまりパッとしない記事ばかりを載せているLa Vanguardia紙:

「高速鉄道の効用は、ある利用者層の心を捉えた。以前はピストン空輸路線が 最も相応しかったビジネスマンである。その一方で、激安旅客機はバックパッカー達を運んでいる。以前は普通電車に乗っていた者達である。つまり、会社役員 AVE、バックパッカーは飛行機(という逆転現象が起こっているのである。)

" El impacto de la alta velocidad ha captado a un perfil de usuario- hombre de negocios-que era mas propio del puente aereo, mientras que los vuelos baratos se llevan a los que antes iban en tren. Ejecutivos al AVE, mochileros al avion"(La Vanguardia, p5, 25 de noviembre 2008)(地中海ブログ:スペイン高速鉄道に見る社会変化の兆しより)

「やれば出来るんだから、普段からちゃんとした記事書いてよね(笑)」って、それは、まあ冗談なんだけど、3周年記念を迎えた先週日曜日の新聞(La Vanguardia 20 de febrero 2011)には、「何故AVEがこれ程までに成功しているのか?」と言う事を分析した大変面白い記事が載っていました。

そこにはスペインの高速鉄道網は全人口の70%をカバーしている事、敷設距離で言ったらヨーロッパでは第一位、世界的に見ても3番手にランキングされている事など、「スペインは高速鉄道先進国」だって事が、「これでもか!」って強調されていたんだけど、それよりも何よりも、僕にとって大変面白かったのは、「何故にAVEがこれ程までに成功したのか?」って言う「利用者の声」みたいな情報でした。

それによると、利用者の皆さんが最も評価しているのは、AVEの出発/到着時間の正確さなんだそうです。この事は僕自身の体験からも既に証明済みで、今まで何十回と乗った中では、出発/到着共に1分も遅れる事は無かったんですね。って言うか、予定時刻よりも早く着くって事の方が多くって、魂消たと言うのが本音です。ちなみにAVEが時間通りに到着する確率は98.54%らしい。そしてこの数字は世界第二位の座を占めているらしく、第一位は当然の事ながら日本!その確率は99.0%!!恐るべし日本の技術。

さて、ここまで書いてくると、「電車が定刻通りに来るなんて当たり前じゃないか!」って言う日本の皆さんの声が聞こえてきそうなのですが、友達との待ち合わせは勿論、仕事の待ち合わせにだって平気で遅れてくるスペイン社会からしたら、電車が定刻通りに来るって言うのは、殆ど奇跡みたいなもんなんですよね。と言うか、グローバルスタンダードでは、電車が定刻通りに来る日本の方が「普通じゃない」と言う事は知っておいても良いと思います。

もう一つ僕が面白いなと思ったデータが、「各国の高速鉄道の車内でどんなサービスが利用可能か?」って言う比較データだったんだけど、それによると、スペインやフランス、イギリスの高速鉄道なんかでは、社内サービスが大変充実していて、それらの国々では新聞や雑誌、ビデオや音楽のサービスは勿論の事、駅でのパーキングなんかまで利用可能になっていると言う事でした。

逆にこの様なサービスが殆ど無いのが日本の新幹線‥‥って書かれてた(本当かどうかは不明。長い事乗ってないからなー)。

この記事のコンテクストからして、「日本の新幹線は定刻通りに着くし、運行スピードも半端無い。でもサービスがなってないんだよねー」みたいな感じで、批判的な意味合いを込めてるっぽいんだけど、でもコレって、日本では新幹線を利用するのが日常化していて、それはあたかもヨーロッパで言う所の地下鉄の利用とそう変わらない所まで浸透していると言う事なんじゃ無いのかな?つまりは日本人にとっては新幹線って言うのは、地下鉄の延長線上にあるものであって、そんな日常生活の一部となっている地下鉄に、映画や定食なんて言う特別なサービスを期待する人はいないって事なんじゃ無いのだろうか?


反対にヨーロッパではまだまだ高速鉄道って言うのは、一昔前の日本の飛行機の様に、「飛行機に乗って何処かへお出かけする」って言うくらいの特別な意味合いを持っていて、未だにそれが日常生活へ十分に浸透していないと言う事なのでは?とか思ったりする訳ですよ。つまりは両者の間には目には見えないけど、「これくらいの違いがあるのでは?」と言う事の現れだと思うんですよね。

新しい技術と言うのは開発されてからそれが市民の間に浸透する期間、そしてそれが日常生活の一部になるまでにはかなりの時間がかかります。そう考えると、やっぱり日本って言うのは、欧州と比べて、まだまだ一歩も二歩も先に行っているんだなーと思わざるを得ませんね。国内では「日本はダメだダメだ」とか言われてるけど、外から見てると、そんな事全然無い気がする。今の日本に必要なのは自信ですね。ガンバレ日本!!
| 都市戦略 | 05:08 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
大型イベント誘致戦略に見るエンターテイメント性と都市のイメージ:GSMA2011(Mobile World Congress2011)
今週バルセロナでは世界最大規模の携帯電話の祭典、Mobile World Congressが国際見本市会場にて行われていました。

この祭典、20年程前(1987年以来)から南フランスのカンヌを舞台に行われていたのですが、つい5年程前(2007年以降)からはその舞台をバルセロナに移し、この数日間だけは「地中海の首都」が世界中の携帯関連の研究者や起業家達の熱い視線を独占する事に成功しています。一応僕は今まで携帯電話関連の仕事をする機会が数回あり、スペインのNTTこと、テレフォニカと何度かプロジェクトを立ち上げた事があるのですが、それよりも何よりも、今回のイベントが僕にとって大変興味深いのは、「何故にバルセロナ市はこのイベントをそんなにも必死になって誘致しているのか?」と言う市政側から見た誘致戦略、もしくは都市戦略みたいな観点の方なんですね(それについては今までのエントリで散々書いて来た通りなので興味のある方はコチラ:地中海ブログ:バルセロナのイベント発展型都市戦略とGSMA2010(Mobile World Congress 2010)、地中海ブログ:バルセロナのイベント発展型都市戦略とGSMA(Mobile World Congress 2009))。

一言で言っちゃうと、4日間で5万人もの人を集めるイベント故に、そこに落ちるお金も半端じゃ無くて、この様な短期イベントを効率的に誘致する事が出来るかどうか如何によっては、かなりの見返りが期待出来ると、まあ、こういう訳です。ちなみに去年までのデータを並べてみるとこんな感じ:

2007

入場者数:
52千人
経済効果:
150億円

2008

入場者数:
5万5千人
経済効果:
170億円

2009

入場者数:
47千人
経済効果:???


2010

入場者数:
49千人
経済効果:
220億円

4
日間で220億円相当のお金が落ちるという事は、1日で50億円以上ですから、このイベントのインパクトがどれだけ強いかが分かるかと思います。では今年はどうだったのか?と言うとですね、何と今年は入場者数の新記録を更新し、4日間で6万人もの人々が訪れたと言う事でした。6万人ですよ、6万人!カンヌ時代の最高入場者数は35千人(34900人)と言う事ですから、5年間で倍近くになった訳ですね。詳しい経済効果のデータはまだ出てないのですが、「230億円を超える事は確実なのでは?」と見られています。

さて、問題はここからなんだけど、こんな「都市にとって大変美味しいイベント」を他の諸都市が放っておくはずが無く、再来年からの5年間の契約を巡って、もう既にヨーロッパの各都市がイベント誘致に動き出しています。候補となっているのは、パリ、ミュンヘン、ミラノそしてバルセロナの4都市なんだけど、一昨日の新聞に、これら各都市のホテルの数や一泊の値段、イベント会場の規模や位置、そして年間観光客数なんかの詳細データを比較した記事が載っていました(El Pais, 17 de Febrero 2011)。その中でも僕の目を惹いたのは2つのデータ、空港から市内へのタクシーの値段と気候条件でした:

パリ
オルセー空港−市内間:
27ユーロ
シャルル•ド•ゴール空港−市内間:
43ユーロ
2
月の気温は1−7度で月に9日程の雨

ミュンヘン
空港−市内間:
5060ユーロ
2
月の気温はマイナス4度から3度で、月に9日程の雨

ミラノ
マルペンサ空港−市内間:
60ユーロ
2
月の気温は08度で、月に7日程の雨

バルセロナ
空港−市内間:
24ユーロ
2
月の気温は712度で、月に5日程の雨

何故空港から市内までのタクシー料金が重要なのか?と言うとですね、市内へのアクセッシビリティと言うのは、「その都市の効率性を表す一つの指標」であり、ひいては「その都市の生活の質の豊かさを測る指標の一つ」と成り得ると思うからです(地中海ブログ:アムステルダム出張:如何に訪問者にスキマの時間を使って街へ出るというインセンティブを働かせるか?:スキポール空港(Schiphol Airport)の場合、地中海ブログ:フランクフルト旅行その1:フランクフルト(Frankfurt)に見る都市の未来)。

そういう観点で見ると、バルセロナとパリが機能的には優れてるかなとは思うんだけど、逆にミラノやミュンヘンの60ユーロって言うのは、ちょっと救いがたい気がする。まあ、携帯電話の祭典に来る人達って言うのは、自家用ジェットに乗ってくる様な人達なので、60ユーロって言うのは彼らにとってはコーヒー一杯くらいに考えてるのかもしれないんですけどね(苦笑)。

そしてこの都市のアクセッシビリティ以上に重要だと思われるポイントが、僕が今回注目したもう一つのデータ、都市の気候条件なんだけど、これはもう明らかにバルセロナが頭一つ抜けています。2月だから何処でも寒いのは当たり前なんだけど、バルセロナ以外はどの都市も0度に近いですからね。そして何よりも、ヨーロッパ中で雨模様が多いこの時期に、地中海が提供してくれる高く澄み切った青空は何ものにも代え難い気がする。

実はこれらの点って見落とされがちで、バカにされがちなんだけど、結構本質的な事なんじゃないのかな?今日の新聞には、これらの誘致を巡る4都市について、「参加者の声」みたいな感じで、海外からイベントに駆け付けた人達のインタビューが載ってたんだけど、その内の一人の意見が結構的を得てる様な気がしました:

「太陽、美味しいご飯、そしてバルセロナの人達とモデルニスモの建築群‥‥ここ数日間の体験は何者にも代え難い体験だったわ」

国際会議や国際カンファレンスで重要なのって、勿論、その都市の交通インフラがキチンとしてるか?とか、ホテルの数が確保されてるか?とか、そういう最低条件みたいなのは当たり前としても、それ以上に重要になってくるのは、その都市が提供してくれる「エンターテイメント的な要素」だと思うんですね。何故ならその様な国際会議や国際プロジェクトで一番重要なのは、プレゼンや会議の内容と同等に、ランチやディナー、そしてカフェでのおしゃべりだったりするからです。実はそういう所で大事な商談なんかが決まって行く事の方が多い様な気がする‥‥。そういう舞台にビーチがあったり、気持ちが良い程晴れていたり、もしくは美味しいワインと海産物が並んでたりしていたら、それらがポジティブに働く事はあっても、ネガティブに働く事は先ず無いんじゃ無いのかな?

その様な「良いイメージ」を植え付けられた人達が、自分の都市に帰って行き、同僚なんかに、「ねえ、会議どうだった?」とか聞かれて、「バルセロナ最高だった」なんて言うと、それがそのままバルセロナの広告に成る訳ですよ。正に実写版、ソーシャルネットワークによる広告なり(笑)。


まあ、それは冗談だとしても、都市のエンターテイメント性が、その都市にとっての大変重要な付加価値であり競争力になって行く事は間違いありません。何故なら僕達の社会は全てがエンターテイメントになって行く社会に向かっているのだから。そういう意味で言うと、バルセロナ程、競争力のある都市はナカナカ無いんじゃないでしょうか?ちなみにこの携帯電話の祭典が行われていた3日目の事だったのですが、バルサ対アーセナルの試合があり、バルセロナ中がこの試合の行方を見守っていました。そんな事も手伝って、今回の参加者達にはかなり良い印象を残したのでは?と思います。

次回の開催都市の発表は春先になるそうですが、何処の都市になるのか?今から非常に楽しみです!
| 都市戦略 | 07:11 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
チュニジアやエジプトのデモでSNS革命と言うイメージが捏造されていったのは一体何故なのか?
前回のエントリで書いた様に、先週バルセロナではレストランや映画館、美術館などが半額以下になるイベント、Barcelona Oportunity Weekを開催してたんだけど、各種メディアを独占していたのは先々週に引き続き、チュニジアを発端としたジャスミン革命、そしてエジプトのデモの動向でした。スペインのメディアでは連日連夜このニュースばかりで、時間が経つにつれ、周辺諸国を含めたかなり詳しいデータに加え、専門家達の分析なんかもそろそろ出揃いつつあります。新しいテクノロジーと市民運動なんかのエキスパートで、2004年に携帯メール(SMS)により組織された草の根的なネットワークが、当時のスペインの選挙に与えた影響(多分、SNSと直接民主主義関連の話としては世界初!)を分析したマニュエル・カステルは:

Wiki革命は、デジタルネットワークと象徴的な(フィジカルな)広場の交差上に出現した新しいタイプの公共空間で行われる」

“La wikirevolucion tiene lugar en el Nuevo espacio public resultante de la conexion entre redes digitales y plazas simboicas” (Manuel Castells, Comunicacion y revolucion, La Vanguardia 5 de Febrero 2011)


なんて言葉を使って、今回の出来事を分析しています(地中海ブログ:
東さんの「SNS直接民主制」とかマニュエル・カステル(Manuel Castells)Movilizacionとか)。もしくは、つい先日発売になった「フェイスブック:若き天才の野望:5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた」の著者、David Kirkpatrickはスペインの新聞のインタビューに答えながら:

「ソーシャルネットワークは市民を活動家に変える」


“La red social convierte al ciudadano en activista” (David Kirkpatrick, La Vanguardia 3 de febrero 2011)


みたいな事言ってたりして、他の言論とか読んでても、どれもコレも今回の革命の根幹には、「近年広がりつつあるソーシャルネットワーク(
SNS)の影響が多大にある」って言う、目新しく、そして魅力的なアイデアがチラチラ見え隠れしている様な気がするんですね。

確かに今回の出来事に決定的な役割を果たしたのは
FacebookTwitterなんかのSNSって言う事は間違い無くて、そのポイントは見逃せないと思うんだけど、でも、あたかもそれらだけで、今回の革命が成し遂げられたと言うのには、ちょっと誇張がある様な気がしてなりません。

先ずアラブ諸国が置かれている状況って言うものの背景をキッチリ読まなきゃいけないと思うんだけど、そもそもチュニジアやエジプトではここ数年間、かなりの数のデモなんかが行われていて、例えばエジプトの場合では、過去
3年間で3000回以上のデモが行われ、去年の46日には、大規模なゼネストが決行されたりしてる訳ですよ。つまり今回の革命に至るまでにはそれなりの土壌があって、市民の怒りみたいなものが既に爆発寸前だった。その土壌自体がSNSで作られた訳では無いと言う、当たり前の事実を先ずは認識する必要があるかと思われるんですね。

更に「
SNS革命論」に拍車をかけていると思われるのが、これらの国々における人口構成の特異性だと思うんだけど、これらの国々では、国民の平均年齢が驚く程若いんですよね。超高齢化社会とか言ってる日本とは全く逆の状況にあるとさえ言えるんじゃないのかな?

国名:平均年齢(平均寿命):
29歳から14歳までの若者が全人口に占める割合

チュニジア:30(76): 27.2%
アルジェリア:27(74): 31.4%
モロッコ:27(76): 28.1%
エジプト:24(72): 28.6%
リビア:24(77): 27.9%
シリア:22(74): 30.7%
ヨルダン:22(80): 29.0%
イエメン:18(63): 29.8%


イエメンなんて、平均年齢
18歳ですからね。今回問題になってるエジプトも平均年齢は24歳と言う驚くべき状況!そしてこれら14歳から29歳までの若者が全人口に占める割合は、どの国でも30%近くに上る事も特筆しておいて良いのかもしれません。更に、これらの国々における識字率なんだけど、モロッコとイエメンを除く他の国々は比較的高いと言っても良いかな:

国名:識字率


スペイン:97.9%
ヨルダン:89.9%
リビア:82.6%
シリア:79.6%
チュニジア:74.3%
エジプト:71.4%
アルジェリア:69.9%
モロッコ:52.3%
イエメン:50.2%


つまりは、若者が多くを占めるって言う事実と、若者=ネットを使いこなす世代って言うイメージ、そして最近弾頭してきた新しいタイプのネットワーク=ソーシャルネットワークが世界を変える事が出来るって言う人々の願望なんかが相まって、今回の
SNS革命論が捏造されていったのでは無いのでしょうか?何故ならそういう説明が一番簡単で分かりやすいし、何よりこれこそ世界の人々が「見たかったもの」だからなんですね。丁度今、「Facebookがどの様に創られていったか?」って言う映画が世界的に流行ってる事も、このイメージの創出に一役買ったのかもしれません。

まあ、とは言っても、
SNSが決定的な役割を果たしたって言う側面がある事に変わりは無いとは思うんですけどね。

それよりも何よりも、個人的に大変気になったのは、今回の事件が浮き彫りにしてしまった、「地中海におけるバルセロナの影響力の弱さ」と言う点の方ですね。


当ブログでは数年前からバルセロナが地中海の首都になっていく動きをずっと追って来ました(地中海ブログ:
地中海連合(Union pour la Mediterranee)の常設事務局はバルセロナに)。元々スペインと言う国は、モロッコとの外交上、アフリカ周辺諸国の動きには敏感と言う事もあって、地中海諸国の情報と言うのは日頃から結構入ってくるんだけど、逆に言うと、そういう情報を得ていながら、地中海のリーダーとして、今回の混乱に対して何も発言出来ていないのはちょっと頂けないかな。

そんな点、誰も気が付いてはいないだろうけど、今回の一連の出来事の副産物と言っても良い様なこの点が、僕にとっては一番の収穫だったのかもしれません(苦笑)。
| 都市戦略 | 05:47 | comments(3) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
Barcelona Oportunity Weekに見るバルセロナの都市戦略
今週バルセロナではレストランやホテル、美術館や映画館などが一斉に半額(もしくはそれ以下)になるイベント、Barcelona Oportunity Weekを開催しています。



このイベント、一体どういうモノかと言うとですね、「普段は高すぎてとても入れない様な星付きレストランを市民の皆さんに楽しんでもらおう」とか、「市内にある様々な魅力的な文化施設を是非この機会に知ってもらおう」とか、まあ、こう言う趣旨の下に始められた、バルセロナ市全体を挙げてのお祭りなんですね。

このイベントの為に作られたホームページで、今回割引になる様々なサービスを見る事が出来るんだけど、その中には、市内にある1星レストランGaigが25ユーロと言う破格の値段でコース料理を提供していたり、市内の美術館や博物館などが時間帯によって無料開放されていたりと、一般市民の人達にとって大変魅力的なプログラムとなっています。

かく言う僕も、「この機会を利用するっきゃ無い!」って訳で、今週火曜日に市内の映画館で催されていた、「1枚の入場券で2人入場可」って言う超お得なプロモーションを使って、今話題の映画、「ソーシャルネットワーク」を見てきました。

 

この映画は(日本以外の)世界中で大旋風を巻き起こしているFacebookが、一体どのように創り出されていったのか?そしてそこに渦巻いている人々の欲望や裏側などを描いたって言う超話題作なんだけど、見に行ってみた感想は‥‥ここでコメントする程でも無かったかな。唯一点だけ‥‥友達は大事にしようと思いました(笑)。

さて今回、Barcelona Oportunity Weekに実際に参加してみて僕が「凄いな」と感じた点は以下の2点:

先ず一点目は、このイベントには、ホテルやレストラン、映画館など、実に様々な業種の人達が参加していると言う点が挙げられます。そしてこの点こそが、Barcelona Oportunity Weekを特別な地位に押し上げていると思うんだけど、つまりは、「街全体を巻き込んだ」と言う所に、先ずは最初の重要なポイントがあると思うんですね。そして、そんな事が出来てしまうバルセロナの底力と言うものには、何時も感心させられてしまいます。



実は最近、バルセロナではこの手のイベントが結構企画されてて、去年の12月前半には、バルセロナの目抜き通り、グラシア大通りに軒を構える数多くの服飾関係のお店などが、夜の12時まで店を開けると言う、The Shopping Night Barcelonaと言うイベントが開催されていました。



お店の中ではシャンパンやワインが振る舞われたり、大通り側には仮設のディスコなどが設けられ、夜遅くまで若者などで大層な賑わいを見せていました。

近年これらのイベントが頻繁に催される背景には勿論、昨今の経済危機の影響などから、「今までの様に単にモノを売ってるだけでは駄目だ!」って言う業界側の焦りみたいなモノが垣間見えるんだけど、それ以上に、僕の目には、その背後に横たわってる「バルセロナ市の都市戦略」みたいなものが映り込んできます。

「それが一体何なのか?」を考えるには、昔、ジョルディ・ボージャが言っていたこの言葉を思い出す必要があります:

「都市を売り出すと言う事が良く話題に上りますが、その最大の売りは、市民でなければなりません。‥‥そして市民自らが誇りを持つ事を忘れてはいけません。」

そう、今回のイベントは、正に、そんな自分の住んでいる都市の魅力を知って貰う事を通して、市民自身の魅力を高めるって言う狙いがあるんじゃないのかな?

そして、「都市の重要な経済活動は工業でも、サービス業でも、金融でもない。それは“おしゃべり”だ」って言う、ピーター・リースの言葉に表されている様に、そんな自分の都市の魅力を良く分かった市民達が、他の都市の住民に、「どんなに自分の都市が素晴らしいか」を口コミで伝える事程、効果的な広告はありません.

そう考えると、今回のイベントは、実は相当手の込んだバルセロナの都市戦略と考える事も出来るのでは無いのでしょうか?

それは、高速鉄道を引くとか、ある地域を文化の集積地にするとか、そういう分かり易く、そして直接的に結果が見える様な計画なのではなくて、「市民に働きかける」って言う、かなり間接的な戦略なんだけど、実はこういう地道な働きかけこそが、都市にとってのかけがえの無い財産になると思うんですよね。何故なら、その都市にとっての最大の財産は、その都市に住む市民に他ならないのだから。
| 都市戦略 | 06:54 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
バルセロナの都市戦略:ローマ法王のサグラダファミリア訪問の裏側に見えるもの
 昨日から今日にかけて世界各国のメディアが大々的に報じている様に、今週日曜日、サグラダファミリアにてローマ法王ベネディクト16世による献堂式が行われました。これにより、1882年に教会の建設が始められて以来、128年の時を経て、終にサグラダファミリアが正式な教会として法王庁に認められたんですね。



この極めて重大なイベントの為に、サグラダファミリアの周りは数日前から通行禁止になったり、沢山の警察官が厳重な警備をしたりする中、一目でもローマ法王の姿を見ようと、街頭にはスペイン中から集まってきた信者や野次馬で、正にお祭り騒ぎの様相を呈していたんですね(地中海ブログ:スペインのニートはニニ(Ni Ni)と言うらしい:世界のニート事情



かく云う僕も、スペイン人達の波の中に紛れ込んでた一人だったんだけど、ローマ法王を乗せた車の姿があちら側に「チラッと見えたかな」と思ったら、ものすごいスピードで目の前を通り過ぎていって、ゆっくりと手とか振りながら通り過ぎるものだとばかり思い込んでた人達にとっては、「一体何が何だかよく分からなかった」と言うのが本音じゃないかな?と思います。法王を乗せた車のスピードが本当に速くって、それを体験したスペイン人達の間では:

「(レーシングドライバーの)フェルナンド・アロンソ並みに早かった (es Fernando Alonso)

とか言う冗談が囁かれていた程だったんですね(笑)。

さて、今回のローマ法王のバルセロナ訪問に関して、実際に参加した立場から現地の状況など踏まえて僕が感じた事を3つ程、メモ程度に書いておこうと思います。

一つ目は、今回の訪問がバルセロナ市に与えるインパクトについて。

バルセロナと言う都市は、「大型イベントを誘致する事によって発展を促してきた都市である」と言う事は以前のエントリで散々書いた通りで、その典型が1992年のオリンピックや2004年のフォーラム2004、もしくは近年バルセロナが力を入れている世界最大の携帯電話の祭典GSMAだったりする訳なのですが、都市戦略と言う観点から見た場合、今回のローマ法王の訪問も実はこれらと同じライン上に乗っける事が出来ると思います(地中海ブログ:バルセロナのイベント発展型都市戦略とGSMA2010(Mobile World Congress 2010))。

そういう観点で見た時の、今回の訪問に関するバルセロナの真の目的は主に3つ。

一つ目はガウディ、そしてサグラダファミリアと言うブランドを用いた話題作りです。つまり、ガウディによってデザインされ、彼の死後何十年も作り続けられているサグラダファミリアが、ようやく教会として認められると言う話題を作り上げる事によって、世界各国のメディアの注目を集めちゃおうと、まあ、こういう訳ですね。実際、昨日から今日にかけて、サグラダファミリア、そしてバルセロナと言う都市が、これ程までに世界中のメディアを賑わせた事は、ここ数年では僕の記憶にはありません。

2点目は、当然の事ながら、このイベントを通した経済効果です。これだけ注目度が高いと、各国からのメディア関係者だけでなく、スペイン中からもカトリック信者が集まってくるので、市内のレストランやお土産屋さんに落としていってもらえるお金も相当なものになって、それが回りまわって都市の収入を増やすと言う淡い期待を抱いていたとしても何も不思議じゃありません。実際、昨日の夜のニュースでやってた街頭インタビューでは、ここ数日の市内ホテルはほぼ満杯と言う状況だったそうです。しかしながら、その一方で、レストランやバー、お土産屋さんなどでは、はっきり言って、思った程の収入は無かったのだとか。今日の新聞によると、今回の訪問で世界中で約6021本の記事が書かれ、それを広告に換算すると約73億円(66.5Mユーロ)の経済効果があったと予測されているのですが、「一体この数字が何処から来たのか良く分からない」と言うのが、実際の市民の意見だと思いますね。

それとは逆に、今回のローマ法王のスペイン訪問で明らかになった事、それはスペインには思ったほどのカトリック信者がいないと言う事実なんじゃないのかな?



当初の予想では、サグラダファミリアの周りに用意された4万席が全て埋まり、街頭に溢れるであろう人達の為にミサの状況を映し出す大型モニターが何台も備え付けられたり、それでも入りきらない人達の為に闘牛場が開放されたりしたんだけど、実際蓋を開けてみたら、今回の行事に駆けつけたのは10万人程度だったと言う数字が出ているんですね(まあ、何時もの様に各々の機関が発表した数字の間には大きな開きがあって、市役所やバチカン側は25万人が駆け付け今回の訪問は大成功だったとか言ってるんですけどね)。

実は今回のローマ法王訪問は、バルセロナ市がガウディの素晴らしさ、サグラダファミリアの素晴らしさを世界にアピールする事に大成功したその一方で、バチカン側にとっては、「スペインにカトリック信者はあまりいない」と言う、結構ネガティブなイメージを残しちゃったんじゃないのか?と思う訳ですよ。

そしてもう一点、これが今回のバルセロナ市が被った最も大きい便益だったかもしれないんだけど、それは、市民の間に「実はサグラダファミリアは美しい教会だ」と言う事を、テレビの生中継などを通して知らしめた事だと思います。



大体ですね、バルセロナに子供の頃から住んでいて、サグラダファミリアに行った事がある人なんて、殆どいないんですよね。「えー、そうなの?」とか思うかもしれないけど、そういう時は反対の状況を考えてみればいい。「名古屋に住んでて、名古屋城に行く人ってどれくらいいますか?」って話と同じ訳ですよ!バルセロナ市民の間では、サグラダファミリアなんて、「子供の頃の遠足で入ったのが最後」とか、「何年か前に内部写真を新聞で見かけた」と言うのがせいぜいな所で、実際に足を運んだ人なんてごく少数なはず。しかもローマ法王の訪問に合わせて、ここ数ヶ月は「なんとしても天井だけは完成させるんだ」みたいな勢いで作っていたので、テレビに映し出された内部空間を見て「アレ?内部ってあんなに素敵だったけ?」って思った市民は少なく無いはずです。かくいう僕も、「あれ、内部ってこんなに出来てたっけ?」と、かなり驚いた市民の内の一人だったんですね。そしてそれらの多くの人は、こう思ったはず:

「あんなに素晴らしい教会なら、是非今度行ってみるか」と。

今回のローマ法王のバルセロナ訪問の一番の成果は、実はこのような「自分の都市の美しさ、素晴らしさを、市民に再発見させた」、その点に尽きるんじゃないのかな?その事に比べたら、経済効果なんて、どうでもいい事の様にすら思えてきます。何故ならその都市で一番の売りにしなけらばならないもの、それはそこに住む市民自身の輝きにあるのだから。

追記:
翌日の新聞(La Vanguardia 9 de Noviembre 2010)によると、サグラダファミリアを訪れる観光客数がピークだったのは2007年で、その数283万人。100万人を超えたのが1997年で、200万人を超えたのが2002年。丁度、ガウディイヤーとかやってた年ですね。2007年以降は減少を続けてて、273万人、2009年は232万人だったと言う事です。
| 都市戦略 | 04:53 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
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