2008.11.09 Sunday
建築家、坂茂(Shigeru Ban):デザインの本質を見せ付ける見過ごされがちな彼のデザイン力
今日の新聞に坂茂さんの特集(Shigeru Ban:Arquitecto de Emergencia, El Pais semanal, p32-38)が載っていました。坂さんと言えば紙で建築を創る大変トリッキーな建築家としてヨーロッパでは良く知られています。今日の特集もその辺りの事をメインに書かれていて、特に彼が突然の災害や最貧国における住居の需要に経済的な材料と工法を用いる事によって見事に答えている旨が描かれていました。彼は世界が直面している大問題に彼の創造力を持って、今まで誰も成し得なかった方法で答えを出したんですね。
しかしですね、坂さんの建築をメディアが取り上げる時、紙で作られているというインパクトが強すぎて彼のもう一つの重要な側面が何時も見落とされている気がします。それが坂さんのデザイン力です。彼の大変トリッキーな「紙の建築」というアイデアを支えているのが実は大変繊細なデザイン力であるという事に言及している記事はあまり見かけません。
先ず、建築の主材料として紙を選ぶという点。コレは色んな所で言われているように低コストであり第三国の問題を解決出来るという、何処からどう見ても圧倒的に正しい選択で、ポリティカル・コレクトネスな訳です。紙を建築部材として実際に用いるまでには途方も無いお金と時間を費やした苦労があったと思うけど、出発点としてはこれ以上無いようなアイデアだと思います。
そしてこの「紙」という選択は世界的な視野で見た場合、彼のナショナリティーでありアイデンティティの拠り所である「日本人」と強く結び付いているとみなされます。それは日本人がそう思うかどうか?という問題ではなくて、ヨーロッパから見た時に彼らの中に「紙は日本文化に包含されている」という認識があるという事です。コレは世界の舞台で闘おうとしている建築家には非常に重要な事なんですね。何故なら建築とは社会文化の表象行為であり、その表象行為にはその建築家の育ったアイデンティティが強く関係してくるからです。
さて、ココまでなら売り出していこうとしている建築家の戦略計画としてMBAのクラスなら満点に近い回答だと思います。しかし坂さんが普通じゃなかったのはその戦略に加えて彼に普通じゃないデザイン力が備わっていたからです。
彼は彼が見出した「紙で建築を創る」というかけがえの無いアイデアを芸術品にまで磨き上げるデザイン力を有していました。それはよーく目を凝らして見ないと見えてこないような類のものです。特に「紙で建築」という普通の常識からはかけ離れた裏技を使っているのでそちらにばかり注意が要ってしまって、普通の人は勿論、建築家ですらナカナカ気が付かないのではないかと思います。
しかし彼のデザインから学ぶ事はかなり多い。ただの紙や筒が彼の手に掛かると輝きだすのだから不思議なんですね。どんなに醜いものでも普通の物でもやり方次第でこんなに美しくなるんだという事を僕は彼の建築デザインから学んだ気がします。そしてそれこそがデザインという行為です。美しく高い材料をふんだんに使えば誰だってそれ相応のデザインにはなります。
本物のデザインとは一見普通なんだけどちょっと違う、もしくは普通のモノを差異化する能力の事を言うんだと思うんですね。元々デザイン(Design)というのはサイン(sign)に否定語(de)が付いた単語であって、文字通り「サインを消す」という意味なのだから。
しかしですね、坂さんの建築をメディアが取り上げる時、紙で作られているというインパクトが強すぎて彼のもう一つの重要な側面が何時も見落とされている気がします。それが坂さんのデザイン力です。彼の大変トリッキーな「紙の建築」というアイデアを支えているのが実は大変繊細なデザイン力であるという事に言及している記事はあまり見かけません。
先ず、建築の主材料として紙を選ぶという点。コレは色んな所で言われているように低コストであり第三国の問題を解決出来るという、何処からどう見ても圧倒的に正しい選択で、ポリティカル・コレクトネスな訳です。紙を建築部材として実際に用いるまでには途方も無いお金と時間を費やした苦労があったと思うけど、出発点としてはこれ以上無いようなアイデアだと思います。
そしてこの「紙」という選択は世界的な視野で見た場合、彼のナショナリティーでありアイデンティティの拠り所である「日本人」と強く結び付いているとみなされます。それは日本人がそう思うかどうか?という問題ではなくて、ヨーロッパから見た時に彼らの中に「紙は日本文化に包含されている」という認識があるという事です。コレは世界の舞台で闘おうとしている建築家には非常に重要な事なんですね。何故なら建築とは社会文化の表象行為であり、その表象行為にはその建築家の育ったアイデンティティが強く関係してくるからです。
さて、ココまでなら売り出していこうとしている建築家の戦略計画としてMBAのクラスなら満点に近い回答だと思います。しかし坂さんが普通じゃなかったのはその戦略に加えて彼に普通じゃないデザイン力が備わっていたからです。
彼は彼が見出した「紙で建築を創る」というかけがえの無いアイデアを芸術品にまで磨き上げるデザイン力を有していました。それはよーく目を凝らして見ないと見えてこないような類のものです。特に「紙で建築」という普通の常識からはかけ離れた裏技を使っているのでそちらにばかり注意が要ってしまって、普通の人は勿論、建築家ですらナカナカ気が付かないのではないかと思います。
しかし彼のデザインから学ぶ事はかなり多い。ただの紙や筒が彼の手に掛かると輝きだすのだから不思議なんですね。どんなに醜いものでも普通の物でもやり方次第でこんなに美しくなるんだという事を僕は彼の建築デザインから学んだ気がします。そしてそれこそがデザインという行為です。美しく高い材料をふんだんに使えば誰だってそれ相応のデザインにはなります。
本物のデザインとは一見普通なんだけどちょっと違う、もしくは普通のモノを差異化する能力の事を言うんだと思うんですね。元々デザイン(Design)というのはサイン(sign)に否定語(de)が付いた単語であって、文字通り「サインを消す」という意味なのだから。