地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
国際博物館の日(International Museum Day):世界屈指のロマネスク美術コレクションが凄いカタルーニャ州美術館(MNAC)
毎年5月18日は「国際博物館の日」という事で、その同じ週の土曜日は世界中で40を超える国や地域の美術館、博物館(3,000以上)が入場無料になり、我が街バルセロナでも市内に点在する50以上の美術館、博物館が午前1時まで入場無料になるという、美術館好きには堪らない企画が開催され、真夜中まで美術を楽しむ人達で賑わっていました。



週末の夕暮れ時に、ちょっと着飾って恋人や友達と街中に繰り出し、日が暮れるまで命一杯楽しむ。そんな彼らを後押しするかの様に公共側が様々な企画を用意している。そんな光景を目の当たりにすると、「やっぱり地中海の住民達というのは人生の楽しみ方を知ってるよなー」と思わずにはいられません。っていうか、この地域の人達ほど、街を自由に使いこなし、どんな時でも人生を謳歌する事を忘れない、いや、人生を楽しむ事に執念を燃やしている民族はいないのでは?と、心の底からそう思う程なんですね。



かく言う僕も昨日は夜中まで美術館をハシゴしてたんだけど、真夜中に訪れる美術館というのは昼とは又違った幻想的な雰囲気を醸し出してて、特にリチャード・ロジャース設計のバルセロナ現代美術館(MACBA)なんて昼夜で全く違った顔を見せてくれるから驚きです。



全面ガラス張りのファサードからは、スロープを上り下りする人達の影が浮き彫りになり、それ自体がまるで芸術作品であるかの様ですらあります。



今回僕がバルセロナ現代美術館を訪れたのは23時くらい(イタリア人達の間でも「本場ナポリの味を忠実に再現している!」と評判のイタリアンレストランでマルガリータを軽く頬張った後)だったのですが、ディナー前の時間を利用して昨日最初に訪れた美術館がコチラです:



じゃーん、モンジュイックの丘の上に堂々と聳え立つカタルーニャ州美術館(MNAC)。世界屈指のロマネスク美術の宝庫であるこの美術館については、当ブログではことある毎に言及してきました(地中海ブログ:カタルーニャ美術館(Museu Nacional d’Art de Catalunya(MNAC))開館75周年記念展覧会:ドラゴンの違いに見るヨーロッパとアジアの違い、地中海ブログ:ロマネスク美術と地中海:カタルーニャ、トゥールーズ、ピサ、1120−1180(Romanesque art and the mediterranean, catalonia, Toulouse and Pisa, 1120-1180))。ちなみにこの美術館、最近館長さんが変わって、現在は元ピカソ美術館で敏腕を振るっていたペペさんが館長を務めています(地中海ブログ:バルセロナ・ピカソ美術館の企画展:「秘められたイメージ:ピカソと春画」その1:ピカソ美術館が好企画展を連発する裏事情)。そんなカタルーニャ州美術館が誇る、というかカタルーニャが誇る必見のお宝中のお宝がコチラ:



ピレネーの山奥にひっそりと佇むロマネスク教会の祭壇に掲げられていた、息を飲むほど美しい壁画や祭具の数々なんですね。



カタルーニャ州美術館にはこの様な素晴らしいロマネスク時代の芸術作品が「これでもか!」と言うくらい沢山収蔵されているんだけど、この裏にはちょっとした逸話が隠されていて、と言うのも、それまで山奥の中で殆ど見捨てられ、手入れもされていなかったロマネスク教会から、良く言えば「それらの芸術作品を後世に残す為に」、悪く言えば「元あった場所からそれらの壁画を引き剥がしてきた」と、そう言う事が出来るからなんです。勿論剥ぎ取られた壁画があった場所には瓜二つの作品が描き直され、今でもロマネスク教会を訪れる人々に唯一無二の体験を提供してくれていますし、美術館に運ばれたオリジナルの方は、丁寧に修復した上で、美術館内に教会の空間構成を忠実に再現しつつ我々の目を楽しませてくれていると、まあ、そういう訳なんです。



美術館内に再現された空間構成なんだけど、特に教会のアプス部分が丁寧に創り込まれ、その前に建つと、現地の教会においてロマネスクの壁画や祭具などが「どの様に配置されていたのか?」が直感的に分かる様に工夫がされています。裏側から見ると、こんな感じ:



そしてこの様な素晴らしい壁画と共に見逃せないのがコチラです:



何とも素晴らしい祭壇画の数々なんですね。この祭壇画なんて、当時の処刑方法を描いたものだと思うんだけど、ロマネスク風にデフォルメ化されてると、これが結構笑えたりする。



これなんて「煮えたぎる鍋の中に放り込まれるー!」っていう何とも恐ろしい地獄絵なんだけど、こうして見ると、二人でお風呂に入ってるみたいで何とも微笑ましい(笑)。もしくはコチラ:



なんかノコギリで切られてるし‥‥。

さて、今でこそロマネスク教会やロマネスク美術といったものは「カタルーニャが世界に誇るお宝」という事になってるんだけど、実はカタルーニャがそんなお宝を発見したのは意外にもごく最近、20世紀に入ってからの事だと言ったら皆さん驚かれるでしょうか?

国際的に知られているのは、モデルニスモ期の建築家プッチ・イ・カダファルクが1909年から1918年にかけて著した大著「カタルーニャのロマネスク建築」という本かな。これが「カタルーニャのロマネスク研究の基礎を築いた」という事になっていて、かのフェルナン・ブローデルも「地中海」の中でカダファルクのこの本に言及してるくらいですからね。ちなみに僕はこの本のオリジナルが欲しくて、数年前、古本屋をぶらぶらしていた時に偶々見つけたんだけど、3,000ユーロ(日本円で30万円相当)とか言う高値が付いていてビックリした覚えがあります。



で、ここからが面白い所なんだけど、確かにプッチ・イ・カダファルクはその大著によってロマネスク研究の基礎を築いたって事になってるんだけど、実はそれ以前にロマネスク研究の筋道を付けた人物がいたという事は意外と知られていません。何を隠そう、その人物こそドメネク・イ・ムンタネールだったのです(地中海ブログ:リュイス・ドメネク・イ・ムンタネール(Lluis Domenech i Montaner)によるモデルニスモ建築の傑作、サンパウ病院(Hospital de la San Pau):病院へ行こう!どんな病気も直ぐに治るような気にさせてくれるくらい雰囲気の良い病院、地中海ブログ:リュイス・ドメネク・イ・ムンタネール(Lluis Domenech I Montaner)の傑作、カタルーニャ音楽堂:コーディネーターとしての建築家の役割を再確認させてくれる名建築)。



ドメネク・イ・ムンタネールと言えば、ガウディのライバルでありカタルーニャ音楽堂やサン・パウ病院など数々の傑作を生み出してきたモデルニスモ建築の巨匠中の巨匠として知られているんだけど、そんな彼は実は大変熱心な研究者としての顔も持っていて、その功績の一つがカタルーニャの山奥に眠っていたロマネスクの価値を見出したって事だったのです(注意:これは別に彼が最初にロマネスクを発見したと言っている訳ではありません)。



記録に残っている所では1879年にバルセロナ近郊のサンクガットの修道院に調査に行った記述があったり、そのちょっと後(1893年の4月、10月、11月)にはカタルーニャ地方の南西方面へロマネスク教会を訪ねる旅行をしてたりします。

それ以来、彼は若手建築家などを同伴しては、ちょくちょく現地調査に行き、写真やスケッチを残してたりするんだけど、その記録がちょっと凄いんです!何が凄いって、当時のカタルーニャにおいてロマネスクが如何に扱われていたのか、どんな待遇を受けていたかという事が明白な写真が目白押しだからなんですね。例えばコチラ;



この写真は、数あるロマネスク芸術の中でも最高峰に位置するサン・クリメント教会の「全能者キリスト」の壁画なんだけど、そのお宝中のお宝の上に、何か訳の分からない異物が、まるでその絵画を隠すかの様に蔓延り付いているのがはっきりと見えるかと思います。



コチラはその部分の拡大写真。本当ならアプスの奥に下記の様な素晴らしい壁画が見えるはずなんだけど、5つ程の三角形の尖塔みたいなものが邪魔してその壁画が見えなくなっているのが分かるかと思います。



これは一例でしかないんだけど、この様な驚くべき事態が当時のカタルーニャ社会では普通に行われていたという事なんですよ!ここでは「何故こんな事が行われたのか?」の詳細には立ち入りませんが、一つだけ言っておくと、この写真こそ、我々の価値観と言うものが如何に短い間に変わっていくのか?という事の動かぬ証拠だと思います。だからこそ我々は「歴史を学ぶ必要性があるのだ」という事を思い出させてくれますね。



この様な、息を呑むほどのお宝で一杯のカタルーニャ博物館のコレクションは大きく分けて3つの分野に分かれています。今日紹介したロマネスク部門はそれらの内の一つでしかありません。それに加えて2階にはラモン・カザスを初めとするコレ又素晴らしい絵画やジョセップ・リモナのうっとりする様な彫刻群などのコレクションがザックザック!バルセロナに来られたら必見の美術館である事は間違いないと思います。

それにしてもロマネスク美術は見れば見るほど新たな発見があります。「それがロマネスク美術の醍醐味なのかなー」とか思いつつ、今年の国際博物館の日は過ぎていきました。
| スペイン美術 | 03:48 | comments(3) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
世界一美しい図書館:ポンペウ・ファブラ大学(Universitat Pompeu Fabra)図書館の一般立ち入り禁止エリアに入ってきた
所用でポンペウ・ファブラ大学のメインキャンパス(Ciutadella)へ行ってきました。



カタルーニャ州政府の強いバックアップにより設立されたポンペウ・ファブラ大学については今まで事ある毎に言及してきたんだけど、それらのエントリでは、経済学部やバイオ医療、もしくはテクノロジー分野といった、南ヨーロッパ随一のレベルを誇る各学部のプログラムや、その方針、はたまたバルセロナの都市戦略との関係性などに焦点を当てて書いてきたんですね(地中海ブログ:22@地域が生み出すシナジー:バルセロナ情報局(Institut Municipal d'Informatica (IMI))、バルセロナ・メディア財団(Fundacio Barcelona Media)とポンペウ・ファブラ大学(Universitat Pompeu Fabra)の新校舎、地中海ブログ: カタルーニャの打ち出した新しい都市戦略:バイオ医療( BioPol, BioRegio)、地中海ブログ:初音ミクに使われている技術って、メイド・イン・カタルーニャだったのか!って話)。

1990年に設立されたポンペウ・ファブラ大学のメインキャンパスが位置しているCiutadella Vila Olimpicaとは、日本語で「オリンピック村」を意味します。そう、このエリアは1992年のバルセロナオリンピックが開催された際に「選手村」として開発された地区であり、オリンピックが終わった暁にはそれら選手達が滞在していた集合住宅がソーシャルハウジングとして低価格で売り出され、住宅不足に悩んでいたバルセロナ市における新しい居住エリアに変換される事が決まっていたエリアだったのです。つまりこの大学はこの新しいエリアに求心性と魅力を付与する為に「戦略的に創り出された」、云わば、バルセロナの都市戦略上に載っている「戦略の賜物」と見る事が出来るんですね。



オリオル・ボイーガスが全体計画を行った選手村は、バルセロナの都市形態に多大なる影響を与えている、19世紀に創り出されたセルダブロックに沿った形で配置計画がされています。ポンペウ・ファブラ大学のメインキャンパスも実は同じ建築家(ボイーガス)により設計された事などから、このセルダブロックに沿う形で基本計画がされているのが一つの特徴となっているんだけど、それが顕著に見られるのがコチラです:



そう、この校舎、ど真ん中に大変印象的な中庭が「デーン」と取られ、この中庭こそが、このCiutadellaキャンパスに独特のアイデンティティを与えているんですね。



上の写真は現政権が最近打ち出した教育費削減政策に対して怒った学生達が、街中をデモ行進する前にこの空間に集まり、活発に打ち合わせをしている様子。「公共空間とは市民が集まって討議し、権力に対して行動を起こす場所であり、その急先鋒は何時の時代も学生なんだなー」という事を思い出させてくれる、正にそんな光景です。

さて、ではこの中庭のアイデアは一体何処から来たのか?と言うとですね、それが上述したセルダブロックなんだけど、バルセロナを上空から見るとその状況が良く分かるかと思います:



各ブロックの真ん中には大きな大きな中庭が取られ、その中庭がそこに住む住民達専用の憩いの場として利用されていたり、それらの中庭を一般市民にも開放しようというコンセプトから、バルセロナ市役所がセルダブロック中庭開放計画を実施していたりするという事は以前のエントリで書いた通りです(地中海ブログ:出版界の大手、グスタボ・ジリ(Editorial Gustavo Gili)社屋のオープンハウスその2:カタルーニャにおける近代建築の傑作)。



で、ですね、ここからが今日の本題なんだけど、実はこのポンペウ・ファブラ大学のメインキャンパス、(普通の大学と同様に)専用の大学図書館を持っているのですが、この図書館が凄いんです!僕は職業柄、ヨーロッパ中を飛び回り、行った先々で色々な建築を見てるんだけど、そんな僕の目から見ても、「これほど美しい図書館には滅多にお目に掛かれるものじゃ無いのでは?」と思う程の質なんですよ!その一方で、この大変美しい図書館の存在は地元カタラン人達の間でもそれほど知られているとは言えません。

何故か?

何故ならこの図書館は特別なルートを通って行かなくてはならず、事前情報無しで見つけ出す事は非常に困難だからなんです。その概要については以前のエントリで何度か書いてきたのですが(地中海ブログ:ポンペウ・ファブラ大学図書館(Unversitat Pompeu Fabra))、「どうやって行ったらいいのですか?」等の質問を結構受け取るので、詳細な行き方などを改めて記しておこうと思います。

注意:この図書館は公立大学に属している為、誰でも訪れる事が出来ます。写真撮影も特に禁止されてはいませんが、その際は勉強している学生さん達の迷惑にならない様に心掛けましょう。結構みんな真剣に勉強しているので。

先ずはポンペウ・ファブラ大学へ来たら、地下一階にある図書館の入り口を入ります:



そこに広がっている風景はごく普通の大学図書館という感じなのですが、そこを突っ切って空間なりに奥へ奥へと歩いて行きます。



右折、左折を何度か繰り返したその突き当たりには上方へと向かう階段が現れるので、そこを上ります:



そこを上り切って少し歩くと、前方に「DIPOSIT DE LES AIGUES IUHJVV」と書かれた表示板とガラス扉が現れます。ちなみにDIPOSIT DE LES AIGUESとはカタラン語で貯水庫という意味‥‥そうなんです!世界一美しい図書館とは、実は昔の貯水庫を改修した図書館の事だったんですね!そんな世にも珍しい図書館の秘密の扉を入ると、そこに展開しているのがこの風景:



じゃーん、元貯水庫を改修したというだけあって、「これでもか!」というくらい高い天井と、その天井を足下でしっかりと支えている柱の対比が素晴らしい!



それらの柱は、まるで森の中に佇む大木の様であり、その木々の間に降り注ぐ光の粒子が、荒々しいレンガの表面に当たって、神々しく視覚化されているのを見る事が出来ます。この様な光の視覚化の手法は、バロック建築が細かい彫刻郡を天窓の下に配置し、繊細な彫刻の彫り込みによって出来る「光と影」で光の粒子を視覚化していたり(地中海ブログ:ベルニーニ(Bernini)の彫刻その3:サンタンドレア・アル・クィリナーレ教会(Sant'Andrea al Quirinale):彫刻と建築の見事なアンサンブル)、もしくはル・トロネの修道院が地元で採れる、表面がザラザラの粗い石によって達成していたりといった手法と大変似通っていますね(地中海ブログ:プロヴァンス旅行その5:ル・トロネ修道院(Abbaye du Thoronet)の回廊に見る光について)。 



で、ですね、この図書館、学生や一般の人達が入れるのは2階までとなってるんだけど、何を隠そう、許可された人しか入る事が許されない3階部分が存在するんですね。3階部分には貴重な図書や特別閲覧室などが配置されている為、それらの重要性を考えて、この階へのアクセスは厳しく制限されていると、そういう事らしい‥‥。ついこの間、サンティアゴ大聖堂から12世紀の写本が盗まれたばかりですしね(地中海ブログ:スペインの石川五右衛門こと、伝説的な大泥棒のインタビュー記事:サンティアゴ大聖堂から盗まれたカリクストゥス写本について)。かく言う僕も今まで一回も入った事が無かったんだけど、つい先日、偶々知り合いが行くというのでついて行ったら何と入る事が出来ちゃいました!これこそ本当にマンモス・ラッチー(笑)。多分、と言うか絶対本邦初公開のポンペウ・ファブラ大学図書館3階部分にはこんな風景が広がっています:



大空間を支えるアーチが連続する、非常に密度の高い空間の登場です。



この図書館の閲覧室の風景は、足下(一階部分)からは何度となく見てるんだけど、3階からの眺めには又違ったものがあります。



こちらは知る人ぞ知る、ヨーロッパ歴史界の重鎮、ジョセップ・フォンターナ氏の研究室(地中海ブログ:イグナシ・デ・ソラ・モラレス( Ignasi de Sola-Morales)とテラン・ヴァーグ(terrain vague))。おー、流石に一番良い場所に陣取ってらっしゃいますね。って言うか、彼だからこそ、こんな良い場所に居ても誰も文句言わないんだろうなー。そして今回どうしても見たかったのがコチラです:



天井の曲がり方と、そこに描かれた模様です。



この模様、下から見ている時は、「あー、なんか書いてあるなー」ぐらいにしか思わなかったんだけど、こうして真近で見ると、結構丁寧に描かれている事が分かります。 何が描かれているのかはサッパリ分からないけれど、元貯水庫だった事を考えると、貯めてある水を悪い細菌などから守る悪魔払いの魔除けとか、おまじないとか、そんな感じなのかなー?と言う気がしないでもないかな。そしてここから見える風景で見逃せないのがコチラです:



絶妙なカーブをした天井同士が重なり合う連続アーチの登場〜:



ここで見る事が出来る連続アーチ空間は一階からでは絶対に味わう事が出来ない、大変不思議な感覚を我々に与えてくれます。「この感覚、何処かで味わった事があったなー」とか思ってたら、この空間だった:



そう、ガウディ設計のサンタ・テレサ学院のパラボラ空間の質に非常に近いものを感じるんですね(地中海ブログ:オープンハウスその4:ガウディのパラボラ空間が堪能出来る、サンタ・テレサ学院(Collegi de les Teresianes))。良く知られている様に、ガウディのあの独特の造形は地元カタルーニャで育まれたカタラン・ボールトを基礎に発展していったモノなんだけど、ここの空間に身を置いていると、ガウディという希有な建築家が何故この地から生まれてきたのか?いや、この地だからこそ生まれる事が出来たんじゃないのか?という事を、書物からではなく、5感を通して味わう事が出来ます。それ程までに素晴らしい空間なんですよ!

最近は忙しくてナカナカゆっくりと建築を見て回る暇も無い日々が続いてるんだけど、久しぶりに質の高い空間に身を置き、大変心が満たされた時間を過ごす事が出来ました。
| 建築 | 00:01 | comments(4) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
(速報)フランス大統領選はオランド氏が勝利:ヨーロッパの都市における公共空間の重要性を垣間見た
たった今、ヨーロッパ中が注目していたフランス大統領選の結果が出ました。結果は51-52%を獲得したオランド(Hollande)氏の勝利に終わりました。



詳しい選挙結果などは明日の新聞を待つ事として、今回の選挙をテレビで見ていて非常に印象的だったのは、オランド氏の勝利が確定すると同時に、途方も無い数の人々が街中の公共空間に集まり出し、そこでシャンパンを開けたり、抱き合いながら勝利を祝ったりと、正にワールドカップ顔負けの祝祭が繰り広げられていた光景だったんですね。



これを見ていて、「政治が生きてるなー」と思うと同時に、「この様な空間の使い方、都市の使い方って、とってもヨーロッパ的だなー」と思っちゃいました。

スペインの哲学者、オルテガ・イ・ガセットの言葉にこんなものがあります:

「人は家の中にいるために家を創る。そして人は、家から出る為に、同じ様に家から出てきた人達と会う為に都市を創る」
“la ciutat, pero, es funda per sortir de casa i reunir-se amb altra gent que tambe ha sortit”. (Ortega y Gasset)

ヨーロッパ都市における公共空間とは、単なる住居と住居の間に空いている空間、もしくは目的地から目的地へと向かう為の単なる街路なのではありません。そこは人々が集う場所であり、共に喜ぶ場所であり、討議を通して民主主義が花咲く場所でもあるのです。故にその都市の公共空間の賑わい具合を見れば、その都市にはどれだけ活気があるのか?その都市はどれくらい豊かなのかを感じ取る事が出来るんですね。

今回のフランス大統領選で垣間見られた人々の反応は、フランスという国の豊かさ、そしてそこに住む人々の底力を見せ付けただけなのではなく、正にパブリックスペースの真の力、「都市は我々のものである」という現象が垣間見られた瞬間でもあったのです。
| ヨーロッパ都市政策 | 07:30 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
ヨーロッパの公立大学の授業料について、その2:スペインの教育システムの裏にある考え方
先週月曜日(4月23日)はバルセロナの街中が真っ赤なバラの花で埋め尽くされる、一年の内で最もロマンチックな日、サン・ジョルディの祝日でした(サン・ジョルディについてはコチラ:地中海ブログ:サン・ジョルディ(Sant Jordi)とカタルーニャ(Catalunya)その2、地中海ブログ:カタルーニャにとって一年で最もロマンチックな日、サン・ジョルディ(Sant Jordi))。



2月14日のバレンタインデーを「チョコレート会社のプロモーションだ!」と毛嫌いしているカタルーニャ人達は、女性が男性に本を贈り、男性は女性に真っ赤なバラの花を贈るという古くからこの地に伝わるサン・ジョルディの伝統を「カタルーニャのバレンタイン」と定義し、毎年復活祭が終わる頃、まるで街全体が春の到来を喜んでいるかの様な、そんな見事な風景を立ち上がらせます。



この風景を目にするのは今年で11回目なんだけど、今回個人的に大発見だったのは、カタルーニャ州政府の強いバックアップで創られた大学、ポンペウ・ファブラ大学では4月23日には一切授業が無くって、完全なる休日扱いだったって事かな(ポンペウ・ファブラ大学についてはコチラ:ポンペウ・ファブラ大学図書館(Unversitat Pompeu Fabra)、地中海ブログ:22@地域が生み出すシナジー:バルセロナ情報局(Institut Municipal d'Informatica (IMI))、バルセロナ・メディア財団(Fundacio Barcelona Media)とポンペウ・ファブラ大学(Universitat Pompeu Fabra)の新校舎)。バルセロナ市役所に居た時は「お昼まで働いて午後からは街中にバラの花と本を買いに行こう!」っていう勤務時間体制だったし、去年偶々立ち寄ったカタルーニャ工科大学も4月23日は普通に授業してるっぽかった事を思えば、ポンペウ・ファブラ大学のカレンダーはちょっと異色だと言っても良い様な気がします。流石にカタラン色が強い大学だなー。



ちなみにサン・ジョルディの伝説とは全く関係が無い「本」という要素が何故4月23日のお祭りに入ってきたのか?という事については以前のエントリで書いた通りです(地中海ブログ:サン・ジョルディ(Sant Jordi)とカタルーニャ(Catalunya))。手短に言うと、4月23日は「ドン・キホーテ」を書いたセルバンテスの命日であり、世界の文豪シェイクスピアの誕生日に当たる為、「じゃあ、いっその事、一緒にしちゃえ!」みたいなノリだったと、まあ、そんな所です(笑)。

さて、そんな街中がお祭り気分に酔いしれていた矢先、スペイン教育界を揺るがす大ニュースが飛び込んできました。それが:

来年度から公立大学の授業料をアップする!」

という現政権が打ち出した新しい政策だったんですね。当ブログでは事ある毎にスペインの教育事情、ひいてはヨーロッパ各国の大学事情なんかを度々レポートしてきたんだけど、それらは主に単位振替の話や、実際に現地の大学ではどんな授業が行われているのか?はたまた、最近スペインで増えてきた「なんちゃってマスターコースには引っ掛からないでね」って言う様な話題を提供してきたんですね。その中でも非常に問い合わせが多かったのが何を隠そう大学の授業料の記事なんです(地中海ブログ:ヨーロッパの公立大学の授業料について)。

ざっくり言うと、ヨーロッパの公立大学のシステムっていうのは授業料の観点から3つのグループに分ける事が出来て、第一のグループは「授業料無料グループ」。ここにはキプロス共和国、チェコ共和国、アイルランド、マルタ、ノルウェー、スロバキア、スロベニア、スウェーデンといった国々が入ってきます。ちなみにスウェーデンでは授業料無料なのに加えて、大学に行ったら毎月約300ユーロ相当の奨学金が貰えるらしい(驚)。

第二のグループは「授業料有料グループ」で、ここにはスペイン、ベルギー、オランダと言った国々が入ってきます。例えばオランダの公立大学の年間授業料は1,500ユーロくらい、スイスはちょっと高くて1,200―2,900ユーロという事でした。

そして最後のグループは「各大学が授業料を決める事が出来るっていうシステム」を採用している国々で、ここにはイギリスやイタリアといった国々が該当します。ちなみにイギリスでは、キャメロン首相の「授業料を上げる」政策を巡ってロンドンで大暴動が起こっていたのは記憶に新しい所ですね。

こんな状況を目の当たりにすると、我々日本人の目には「ヨーロッパの大学、や、安い!」とか思いがちなんだけど、その辺はヨーロッパの一般家庭の平均収入というパラメーターを一緒に見る必要があるかなー。ちなみにスペインの月当たりの平均収入は1,500ユーロ(日本円で15万円)前後、最低賃金は600ユーロ(6万円)付近を行ったり来たりしているという状況。だから去年、スペインの公立大学の博士課程後期の授業料を「200ユーロ(2万円)から400ユーロ(4万円)に引上げる」っていう政策を政府が発表した時には、それこそ未だかつて無い程のデモがスペインの各都市の大学を中心に起こった程でした。

その様な背景の下、今回又々「大学の授業料値上げ!」という事態になった訳なんだけど、一体全体今回はどれくらい上げるのか?というとですね、その割合、実に前年比(最大)で66%!

‥‥スペインの公立大学の授業料というのは一人の学生が1年間に学習するのに掛る総コストの内、何パーセントを各学生が負担しなければならないか?と言う事を基準にして決まっています(各自治州によって違う)。その割合が現在は約10%から15%程度なんだけど、それが今回の値上げで15%から25%程度に引上げられると言うのが基本方針らしい。そうすると各学生が負担する授業料は平均で66%跳ね上がるという事なんだそうです。

もっと具体的に言うと、例えばカタルーニャ工科大学でオーディオビジュアル学科を先攻しようと思ったら、今年の年間授業料は1,050ユーロ(11万円くらい)だったのに、来年からは1,750ユーロ(18万円くらい)に跳ね上がるって言う事なんですね。最も安いと言われている社会学コースでは現在の909ユーロから1,515ユーロに、逆に最も高いと言われている医学部では1,426ユーロから2,376ユーロに跳ね上がるんだそうです。



で、ですね、ここからがスペインの教育システムの面白い所なんだけど、スペインでは小学校から大学まで、日本の様に「一学年みんなで入学してみんなで卒業しましょう」というコンセプトは存在しません。つまり「落第する」という事が頻繁に起こり、それが普通だと考えられているシステムを採っています。

何故か?

何故なら、子供というのは千差万別なのだから、理解が早い子も居れば遅い子もいる。一回の授業で分かる子も入れば、2回くらいやらなきゃ分からない子もいる。だから無理して100人が100人同じスピードで物事を学ばなくてもいいんじゃないの?っていう考え方が裏に潜んでいるからです。

これは深読みすれば、常に、人生において「選択肢」が与えられ、例え人生で失敗してしまっても「やり直せる」という道があるという事を小さい内から身を以て学ばせているという事を指し示しています。もっと言っちゃうと、人生に疲れたら、少しくらい休んで充電してから、又社会に帰ってくればいいじゃん!っていう考え方が社会全体に浸透していると見る事も出来るんですね。



実は前回のエントリで書いた、バルサのペップ・グアルディオラ監督の辞任理由、「あれは非常にスペインらしいなー」とか思って先週の辞任会見を見ていました。彼は会見でバルサの監督を退任する理由について:

「辞任します。単純な理由ですよ:もう空っぽなんです‥‥。これ以上クラブにも選手達にも何もしてあげられる事がないんです。サッカーへの情熱を取り戻す為にエネルギーを蓄え、自分自身を充電する必要があると、そう判断しました」
“Me voy. La razon es muy simple: estoy vacio. Siento que ya no puedo dar mas, necesito llenarme de energia”

と語っていました(地中海ブログ:バルサのグアルディオラ(Josep Guardiola)監督辞任会見)。つまり、もうエネルギーを使い果たしてアップアップになってしまったので、一度戦線を離脱して心を休め、しっかりと充電して帰ってきますと、彼はそう言っている訳ですよ。そしてそれは何も彼の様なエリートだけが特別なのではなくて、企業に勤めるサラリーマンから、その辺のバルで働いてるおっちゃんまで、スペイン人達は皆、人生が一本道ではない事、そこから外れても違う道が絶対にあると言う事、人生に疲れたら少しくらい休んでも良いし、それが普通だという事を知っているんですね。勿論、今、スペインは大不況で全く雇用が無い状況である事は確かなんだけど、元々スペインという国の根底にある教育、ひいては社会にはそれくらいの許容力が存在し、人々の間には人生に対する「ある種の余裕」みたいなモノが存在するので、この社会では失業率が驚くほど高くなっても「街中の人々の顔はそれ程沈み込む事は無く、寧ろ前向きに明るく生きていけるのかなー」と、10年以上この地に住んで漸く最近そういう事に気が付き始めました。というか、今頃になって漸くそういう事を感じる事が出来る様になってきました。

‥‥あ、あれ、今日は先日発表されたスペインの大学授業料について書く筈だったんだけど、何故か話が脱線してしまった‥‥。天気も良くなって来た事だし、まあ、たまにはいっか(笑)。
| 大学・研究 | 18:19 | comments(6) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
バルサのグアルディオラ(Josep Guardiola)監督辞任会見
一昨日(金曜日)13:30分の事だったのですが、かねてから噂されていたペップ・グアルディオラ氏のバルサ監督辞任記者会見が行われました。2時間遅れで始まった記者会見の生中継(地元のテレビ局TV3)を同僚のカタラン人達と一緒に見ていたのですが、会場には数えきれないくらいの報道陣に加え、最前列には神妙な面持ちのバルサ現役選手達の姿なども映し出され、多くのカタラン人達がこのテレビ中継に齧り付いていた事だろうと思います。



当然の如く、翌日の新聞の一面は何処を見てもグアルディオラ氏の辞任会見記事で埋まりまくり、カタルーニャ地方の大衆紙(El Periodico)などは数ページに渡ってグアルディオラ氏の特集記事を組む程に。まあ、バルサというチームがカタルーニャ社会、ひいてはスペイン社会に与えるインパクトの強さを考えれば当たり前と言えば当たり前なんですけどね(地中海ブログ:FC Barcelona(バルサ)のマーケティングがスゴイ:バルサ・ミュージアムに見る正に「ゴールは偶然の産物ではない」)。



ちなみに上の写真はバルサが2009年に欧州チャンピオンズリーグ優勝をローマで決めた時の写真。上述したEl Periodicoはこの写真を用いて「グアルディオラよ、永遠に」と題された特集を組んでいました。ミケランジェロが描いた「アダムの創造」に引っ掛けた、こんなフォト・モンタージュが世間を賑わせていたのも今となっては良い思い出かな:



そんなカタルーニャ中が注目していたグアルディオラ氏の口から語られたバルサ監督辞任の理由は以下の通りです:

「辞任します。単純な理由ですよ:もう空っぽなんです‥‥これ以上クラブにも選手達にも何もしてあげられる事がないんです。サッカーへの情熱を取り戻す為にエネルギーを蓄え、自分自身を充電する必要があると、そう判断しました」
“Me voy. La razon es muy simple: estoy vacio. Siento que ya no puedo dar mas, necesito llenarme de energia”

「昨年の10月にRosselとZubiには私の辞任が近いだろう事は伝えていました。でも、選手達には言えませんでした。」
“En octubre les dije a Rosell y Zubi que veia mi final cercano. Pero no podria decirselo a los jugadores”

「新しい監督は上手くやると思います。何も心配する必要はありません。Titoは、私がバルサに与えられないだろう事を成し遂げてくると、そう信じています。」
 “El que viene lo hara muy bien, no tengais miedo. Tito dara a los jugadores las cosas que yo ya no podria darles”

このグアルディオラ氏の決断に対して、バルサの現役選手達がSNSで一斉にコメントを発表しています:



Carles Puyol: @Carles5puyol

「ペップ、本当にありがとう!僕達に進むべき道を示してくれて‥‥」
“Muchas gracias por todo, Pep! Nos has ensenado el camino… Un abrazo muy fuerte”

Gerard Pique: @3gerardpique

「本当に多くのものをありがとう、ペップ‥‥数え切れない程の勝利、幸せ、そしてサッカーで満ち満ちた4年間を」
“Muchas gracias Pep por darnos tanto… Cuatro anos llenos de victorias, de alegrias y, sobre todo, de lecciones de futbol”

Dani Alves: @DaniAlvesD2

「ペップは僕達、みんなの人生に多大なる影響を与えてくれた‥‥それは単にサッカーだけの話じゃなくて、人間として、そして個人として僕達を導いてくれたんだ。本当にありがとう」 “Darle las gracias por lo que ha aportado a nuestras vida y no solo futbolisticamente, tambien humanamente y personalmente”

Guaja Villa: @Guaje7Villa

「一緒に過ごす事の出来た2年間、バルサに齎してくれた単なるタイトル以上のもの‥‥ありがとうペップ。そしてTito!監督就任おめでとう。あなた以上の後任はいない!僕はそう思う」
“Gracias a Pep por estos dos anos juntos y por lo que le has dado al Bare mas alla de titulos. Y enhorabuena a Tito. Nadie major que tu!”

Andres Iniesta: @andresiniesta8

「今日、ミスターバルサが重大発表をした。今は只々彼、そして彼がこの数年率いてきたチームの皆に「ありがとう」と言いたい。未だ今期の試合が残っている事を忘れちゃダメだけどね。」
“Hoy nos ha dado la noticia el mister y solo darle las gracias a el y a su equipo por estos anos, sin olvidar que aun queda temporada”

Cesc: @cesc4official

「小さい頃からの憧れでありアイドル、そして僕の閃きの源泉だったペップ。一緒に素敵な時間を過ごしてくれて本当にありがとう。一生忘れない。」
“Pep, mi idolo desde pequenoy mi inspiracion como entrenador. Gracias por el tiempo compartido. Lo valorare siempre”.

記者会見会場に現れなかったメッシはFacebookでこんなコメントを発表しています:

「僕のプロ選手としてのキャリア、そして僕の人生において彼が与えてくれた掛け替えのないもの、計り知れないものに対して心から彼に「ありがとう」と言いたい。今の僕のこの気持ち、抑え切れない感情の高ぶりがあるので、今日の記者会見には同席しない事にするよ。記者達は僕ら選手達が見せるだろう悲しい表情をシャッターに収めようとする事は分かり切ってるからね‥‥そしてそんな悲しい表情、それは僕にとって誰にも見られたくない一面なんだ」
“Quiero agradecer de todo Corazon a Pep lo mucho que me ha dado en mi carrera professional y personal. Debido a esta emotividad que siento, preferi no estar presente en la rueda de prensa, sobre todo porque se que ellos buscaran los rostros de pena de los jugadores y esto es algo que he decidido no demostrar”

4年間本当にお疲れ様でした。沢山の夢をありがとう!
| バルセロナ都市 | 18:20 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
ゾウ狩り旅行がバレて謝罪するスペイン国王(王室)の裏に見え隠れするもの
スペインの石油大手レプソル(REPSOL)の子会社YPF国有化問題(アルゼンチンのフェルナンデス大統領発表)で揺れに揺れてるスペイン国内なんだけど、そんな中、それと同等、もしくはそれ以上の大ニュースが舞い込んできました。それがコチラ:

 

“Lo siento mucho. Me he equivocado y no volvera a ocurrir”
「本当に申し訳ない。私が間違っていた。二度とこの様な事は起こさない。」

そう、何と現スペイン国王、フアン・カルロス1世がスペイン国民に正式に謝罪するという、スペイン始まって以来の出来事が起こってしまったんですね。そんなもんだから、昨日の新聞の一面は何処もその話題で持ち切り:



ほぼ全紙、一面には神妙な面持ちで会見に臨む国王の姿と、そんな彼の口から発せられた11語の言葉を掲載しています。

何故こんな事態になってしまったのかと言うとですね、実はスペインの王様、昔から狩猟が大好きで、先週末からアフリカのボツアナに「ゾウ狩り」に出掛けていたんだけど、狩猟中に転んで股関節を折ってしまい、急遽マドリッドのUSP San Jose病院で緊急手術を受ける羽目に。折れた部分に人工関節を入れるなど、結構大変な手術だったらしいんだけど、手術は大成功を収め、お見舞いに行ったフェリペ皇太子は、「(国王は)お腹が空いたと言っていたものの、とても元気だった」と記者団に語るなど、順調に回復している様子が伝えられていました。

で、問題はここからなんだけど、実は今回のゾウ狩り旅行、完全なる「お忍び旅行」だった為、国民は勿論の事、政府関係者ですら殆ど知らされておらず、偶然の事故で「偶々発覚してしまった」という経緯に加え、スペイン国民は当然の事ながら、「みんなが緊縮財政で大変な時に、王様は豪遊して一体何やってんだ!」と声高に叫び、未だかつて無いほどにスペイン王室に冷たい視線が向けられるという事態となっているんですね。

現スペイン国王であるフアン・カルロス1世という人は、フランコ独裁政権後、スペイン民主化移行に際して大変大きな貢献をした事などから、スペイン国民の間で非常に人気のある存在となっていて、メディアに彼の批判が表立って載る事は今まで滅多にありませんでした。それ程までに国民に愛され、敬われている存在なのです。そんな彼が前代未聞の批判に晒されている理由は主に以下の3点:



一点目は(上述した様に)未だかつて無い程の経済危機に襲われているスペイン、特に若者の失業率が50%を超え、公務員などは10%近くの給与カット、私企業も厳しい状況を強いられている中、国王は国民の税金を使って一体何をやっているんだ!という当然の指摘が挙げられます(先日行われたゼネストについてはコチラ:地中海ブログ:スペインで行われたゼネスト(2012)について)。今日の新聞によると、ゾウ狩りをするのに掛かった費用や滞在費などはボツワナ国の王族関係者が負担した(どうやら招待旅行だったらしい)という事なのですが、「お金が何処から出ているか」という事よりも、やはりこの様に国が苦しんでいる状況下において、「一人で豪遊していた」という点に国民の怒りの矛先は向いている模様です。ちなみにホンの一ヶ月前、国王はこんな事をおっしゃっていました:

「スペインの若者達の失業率の事を考えると、眠れない夜もある。」
“Hay noches que el paro juvenile me quita el sueno.”(14/03/2012)

そして2点目は(王室ウォッチャーの僕も知らなかったんだけど(笑))フアン・カルロス1世はWWFの名誉総裁を務めていたという事が挙げられます。WWFと言えばパンダのマークで有名な世界自然保護基金。そんな、動物を保護する為の団体の名誉総裁ともあろうお方が「ゾウ狩り」ときたもんだから、王様が入院している病院の前には長―いデモ隊が毎日の様に押し掛け、最終的には4万人もの人達が国王の名誉総裁辞職要求に署名をしたそうです。スペインの新聞には連日こんな写真が掲載されまくっていました:



と、まあ、ここまでは日本を含む各国で昨日あたりからバンバン報道されていると思うので、テレビなんかで見た事ある人も多いとは思うんだけど、僕が見る所、今回の問題は結構根の深い問題を含んでいて、今回の事件を通して更なる深みに嵌っていくんじゃないのかなー?と思ったりしちゃいます。

それが3つ目の点なんだけど、実はですね、昨年末辺りからスペイン王室ではトラブルが続いており、それらを何とか解消しようとする王様と、それとは裏腹に様々な問題を運んでくる王室メンバーとの綱引き状態だったんですね。で、今回の一件は正にその綱引きに終止符を打ち、王室の信頼を一気に失墜させる事態となったと見る事が出来ます。

そんなスペイン王室の権威失墜の発端を作ったのがこの人:



スペイン国王夫妻の次女、クリスティーナ王女の夫であり、元ハンドボールのプロ選手、イニャーキ・ウルダンガリン(Inaki Urdangarin)氏です。実は彼、数年前からESADE(バルセロナにある超有名ビジネススクール)の恩師と一緒に非営利団体Noos財団を共同運営してたんだけど、昨年末、グルテル事件と呼ばれるバレンシア自治州やマドリッド自治州政府に絡んだ癒着や贈収賄を捜査していた検察特捜部によって汚職が発覚。公金500万ユーロ以上を流用した疑いが掛けられるまでに発展してしまいました。

王室メンバーが検察に起訴されるという前代未聞の事態を前に、スペイン王室の対処はかなり手早くって、数日後には国王フアン・カルロス1世の名で

「ウルダンガリン氏が私的に行っている活動は王室とは全く無関係。今後、王室の公務に彼は参加させない」

という異例の見解を発表するまでになったんですね。又、事を重く見たスペイン王室は、コレ又前代未聞の王室の年間予算を国民に公表するという決断を下すまでに至ります。ちなみに王様の年収は日本円で3千万くらい、皇太子の年収は王様の半分で、1500万円程度となっています。もう一つちなみにスペインの首相の年収は800万円程度で、これはカタルーニャ州政府大統領の給料の半分程度だと言う事は以前のエントリで書いた通りです(地中海ブログ:スペインの各自治州政府大統領の給料について)。

このような「王室の透明性」を強調すべく必至に努力を続けてきたんだけど、先週にはスペイン国王の孫(フロイラン王子)が誤って自分の足を銃で撃って負傷し、父親が監督責任を問われるという不祥事が起きたばかり。そんな中で、今回の事件へ繋がっていったという訳なんです。

つまりは、今回王様が引き起こしてしまった事件は、去年から溜まりに溜まっていた王室の「汚されたイメージ」にとどめの一撃を指した事件だと位置付ける事が出来るんですね。

フアン・カルロス1世の異例の謝罪会見の裏には、実はこの様な背景が横たわっています。もっと言っちゃうと、今回のゾウ狩りのスケジュールや費用などは、先日公開された王室の経費には一切含まれていませんでした。つまり今回の一件は、「王室が隠れて豪遊している氷山の一角」と国民が疑い始めるという、正に負のスパイラルに落下していく、そのキッカケとなりかねないという王室の焦りが見え隠れしているのです。「スペインの国王が頭を下げた」という事は、「謝罪しなければならないくらいまで、スペイン王室は追い込まれている」と見る事さえ出来るのですから。

今回の一件は、言葉としては11語、時間にして実に4秒という大変短い時間だったのですが、これはスペイン史上初めての事であり、歴史に残る瞬間となった事は間違いありません。 この言葉が真実であり、これからスペイン王室が変わっていく事を願うばかりです。
| スペイン政治 | 17:11 | comments(2) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
スペインの新聞(La Vanguardia)のオマケが凄い!ダリ、ミロ、ガウディなど12種類のマグカップ
先月末にサマータイムに移行してからというもの、日に日に暖かくなってきているのが毎日の生活の中で感じられ、テラス席で楽しむワインと海産物がこの上なく美味しいハイシーズンに向かっていく、スペインは正にその喜びの真っただ中にいます。



そんな中、先週金曜日の事、休憩がてら何時も行くカフェでコーヒー飲んでたら、知り合いのバルセロナ市役所IT局長さんにバッタリ!「あー、久しぶり!」とか言いつつ世間話してたら、何故かそのまま某市とのプロジェクト会議に参加する事に。「あ、あれ?」みたいなー。結局そのまま2時間くらい欧州プロジェクトの打ち合わせに付き合わされてしまった‥‥。「なんかついてないなー」とか思ってたら、偶然にもその日は13日の金曜日(苦笑)‥‥って言っても、スペインで縁起が悪いのは「13日の金曜日」じゃなくて「13日の火曜日」って事になってるんですけどね(理由は不明。イタリアでは13日の木曜日という噂も)。

そんなこんなで今週も一週間が過ぎていき、待ちに待ってた日曜日の到来です!実はですね、最近ちょっとした楽しみがあって、地元の新聞(La Vanguardia)がやってる「毎週日曜日に新聞を買って、ダリ、ミロ、ガウディなんかのマグカップを貰っちゃおー」っていう抱き合わせ企画に嵌りまくってるんですね。昔からオマケとかに弱いんだよなー(笑)。で、どうなっているかというと、日曜日に新聞を買って、その新聞に付いてるクーポン+1ユーロをキオスクのおじさんに渡すとその場でマグカップと交換してくれるっていう至極単純なシステム。それが欲しいが為に、毎週せっせと新聞を買ってたんだけど、実は昨日その企画が最終回を迎え、最初から最後まで見事に12個全部揃える事が出来ちゃいました!おめでとー(パチ、パチ、パチ)。そんな僕の汗と努力の結晶がコチラです:



じゃーん!うーん、12個ものマグカップが揃った風景は壮観そのもの!カタルーニャが誇る芸術界の巨匠達、ダリもいればミロもいる!素晴らしいの一言!数多ある作品の中でも、個人的に一番気に入ってるのはコレかな:



ジョアン・ミロ(Joan Miro)が1978年に描いた「人、鳥、星(Personaje, Pajaro, Estrellas)」のマグカップです。淡い青色がマグカップのデザインに凄くマッチしてる素敵な一品に仕上がっています。逆に思い入れがあるのはコチラ:



アントニ・タピエス(Antoni Tapies)が1972年に描いた「カタルーニャ組曲(Suite Catalana)」です。このマグカップが発売された翌週、現代美術の巨匠であるタピエスは他界してしまいました。スペイン中が悲しみに包まれる中、La Vanguardia紙は急遽このマグカップを再度土曜日の新聞のオマケにする事を決定。多くのスペイン人達が買い求めた一品となったんですね。そしてコチラ:



サルバドール・ダリ(Salvador Dali)が1953年に創った「心臓の宝石(El corazon real)」。この作品はバルセロナから電車で3時間程行った町(フィゲラス)にある「ダリ宝石美術館」に所蔵されてるんだけど、個人的にこの作品は傑作中の傑作だと思います。もしカタルーニャに来られる事があったら是非足を延ばして見に行って頂きたい一品です(実際に動いてる姿はコチラ:地中海ブログ:知られざる美術館、ダリ宝石美術館:動く心臓の宝石はダリの傑作だと思う)。



アントニ・ガウディ(Antoni Gaudi)のサグラダファミリア(Sagrada familia)。サグラダファミリアについては今更何も言う事は無いんだけど、昨年完成した内部空間は一見の価値ありかなとか思う(地中海ブログ:まるで森林の中に居るかの様な建築:サグラダファミリアの内部空間)。その他にもスペインを代表する芸術作品が目白押し:



アントニ・ガウディのカサ・バトリョ(カサ・バトリョについてはコチラ:地中海ブログ:ガウディ建築の傑作、カサ・バトリョ(Casa Batllo)その1:カサ・バトリョに展開する物語を見ていて思う事)。



サルバドール・ダリ(Salvador Dali)が1949年に創った「時の目(El Ojo del Tiempo)」。



アントニ・タピエス(Antoni Tapies)が1990年に描いた「4つの年代(Las cuatro cronicas)」。



アントニ・ガウディ(Antoni Gaudi)の「グエル公園(Parque Guell)」。



サルバドール・ダリ(Salvador Dali)が1961年に創った「時の象(El elefante espacial)」。



ジョアン・ミロ(Joan Miro)が1974年に描いた「星空に向かって羽ばたく人々の手(Manos volando hacia las constelaciones)」。



アントニ・タピエス(Antoni Tapies)が1991年に描いた「椅子(Silla)」。



ジョアン・ミロ(Joan Miro)が1968年に描いた「お日様の元の主人公(Personaje delante del sol)」。

こんな魅力的な作品が目白押しの12個のマグカップなんだけど、スペイン人と言えども12個集めた人はそれほどいないのではないでしょうか?っていうか、普通はこんなマニアックな事しないってだけだと思うんですけどね(笑)。10年後くらいに鑑定団に出せるかなとか密かに思ってます(笑)。
| バルセロナ日常 | 17:10 | comments(8) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
スペインのTwitterフォロワー数国内ランキングを見て思った事:スペインではサッカーが生活のリズムを作っているという事について
先週半ば辺りからスペインを含むキリスト教国は復活祭(イースター)の連休に入っています(って言っても今日で終わりなんですけどね)。復活祭というのはキリスト教国においては大変重要な年中行事となってて、と言うのもイエス・キリストが十字架にかけられて亡くなり、その3日後に復活した事を記念するという、数あるキリスト教の名場面の中でも最もドラマチックな瞬間を祝う期間となっているからです。



故にこれらの場面を題材にそれこそ数えきれないくらいの名画が今まで書かれてきたんだけど、ラファエッロが描いた「キリストの変容」はキリストが復活し、その後、天に昇っていく正にその瞬間を捉えた傑作だと言う事は以前のエントリで書いた通りです(地中海ブログ:幸福の画家、ラファエロ・サンツィオ(Raffaello Sanzio):キリストの変容(Trasfigurazione))。ラファエロ、やっぱり良いな〜。

そんな中、先週金曜日はイエス・キリストが十字架に掛けられて亡くなってしまった「聖金曜日」だったので、「その受難と死を皆で分かち合おう」というコンセプトの下、街中のお店というお店が閉まり、街全体が悲しみに包まれる日‥‥という事になっていました。ちなみにフランコ独裁政権下のスペインでは、聖金曜日にはお店を開店する事を厳しく禁止し、ラジオではクラッシック音楽だけを流し、国民に「悲しむ事」を強制していたらしい。



もう一つちなみに、カタルーニャでは伝統的に「モナ・デ・パスクワ」と呼ばれる、ゆで卵が入ったパンケーキ(通称ゆで卵ケーキ(苦笑))を復活祭の翌日に家族みんなで食べるという習慣があります。



最近の流行では、バルサ模様のチョコレートケーキや、漫画のキャラクターに模したものなど様々なバリエーションが出てきているのですが、伝統的なモナ・デ・パスクワにはチョコレートで形作られた卵じゃなくて、本物のゆで卵が入ってて、ケーキと一緒に食べるのにはちょっと困る(苦笑)という状況になっちゃったりするんですね。



と言う訳で、店頭に並んだ色とりどりのケーキを見つつ、何時もの様にクロワッサンとコーヒーで朝食をとりながら新聞を読んでたら、ちょっと面白い記事が目に飛び込んで来ました。それがコレ:「世界におけるTwitter利用状況」という記事なんです。

その記事によると、世界で一番Twitterが使われているのはアメリカで、その数なんと、107,7万人!第二位はブラジルで33,3万人。日本は第三位(29,9万人)に付けてるんだそうです。スペインはというと、インド(13万人)とメキシコ(11万人)のちょっと下、カナダ(7,5万人)の上の世界第9位で、利用者は8,5万人らしい。スペインが世界第9位というのも驚きだったんだけど、それよりも何よりも、僕にとって圧倒的に面白かったのはスペインにおける「国内フォロワー数ランキング」でした。それがコチラ:

1. Alejandro Sanz: 5,325,922
2. Real Madrid: 4,091,809
3. David Bisbal: 3,004,734
4. Andres Iniesta: 2,851,302
5. Cesc Fabregas: 2,811,863
6. Gerard Pique: 2,488,351
7. Carles Puyol: 2,481,731
8. FC Barcelona: 2,103,131
9. Sergio Ramos: 2,070,276
10. Xabi Alonso: 1,990,031

何が面白いって、ランキングベスト10の内、実に8人もがサッカー関係者で占められているという驚きの事実がです。む、む、む‥‥これはスペインという国の一つの側面を現しているかの様で非常に興味深いなー。

バルセロナに住んでいると日常生活における「サッカーの影響力」というものの凄まじさを感じずにはいられません。試合が有る時は勿論、無い時にだって「3人寄ればサッカーの話」というくらいサッカー好きで知られている民族、カタラン人。伝統の一戦、バルセロナ対マドリッドの試合がある日なんかには、街全体が何だか朝からソワソワしてるみたいだし、勝ったら勝ったで街中に花火が上がりまくり、中心街は朝までお祭り騒ぎ。で、決まって次の日は11時くらいまでは仕事場には誰も来ない‥‥みたいな(笑)。

その様な状況が社会全体を包み込んだ文化にまで昇華している国、それがスペインという国なのです。もっと言っちゃうと、スペインにおける生活のリズムというのは正にサッカーと共にあると言っても過言ではないんですね。そう、この街では一年がサッカーと共に始まり、サッカーと共に終わっていくという状況が垣間見られるのです(バルサについてはコチラ:地中海ブログ:FC Barcelona(バルサ)のマーケティングがスゴイ:バルサ・ミュージアムに見る正に「ゴールは偶然の産物ではない」)。



かつて我々の生活にリズムを付けていたのは一年の節目節目に行われるお祭りや祝祭などでした。豊穣を祝うお祭りや、季節の変わり目に設定されていた祝祭というのは、農作物に感謝をしたり、願掛けをするというのは勿論の事、朝から晩まで同じ様な作業しかしない極めて平坦になりがちな我々の生活に「楽しみ」を提供する大変重要な役目をも担っていたんですね。



その様な、ローカルに根ざした祝祭というのは、その土地土地の影響を色濃く受け、独自に発展してきたものであるが故に、その土地の特徴を含んだ表象行為として現れる事となりました。そして我々はそれらの違いを「文化」と呼んだりしてきた訳です。



しかしですね、都市間競争が激しさを増し、「観光」が都市の主要モーターになるにつれ、かつては生活のリズムを刻んでいた祝祭などが、何時の間にか、観光客を惹き付ける一つの道具に変わってしまったという状況を我々は目の当たりにしています。先週から今週にかけてヨーロッパ全土で行われている復活祭のパレードが正にその良い例だと思うのですが、今ではその「一風変わったお祭り」を一目見ようと、世界中から観光客が押し寄せるという状況になっているんですね。



そんな「村民や住民達の為の祝祭」が、「観光客達の目を楽しませる為の見世物」に変わってしまった現代社会において、実は未だにローカルに我々の生活に楽しみを与え、そして我々の社会のリズムを作っているのは、もしかしたら、現在最もグローバルに展開している、それこそグローバリゼーションの申し子と言っても過言ではない「サッカーのリーグなのかもしれない」とさえ思えてきます。大体スペイン人って、6月とか7月頃にリーグの優勝が決まったら、「あー、今年も一年が終わったなー」とか思ってるぽいですからね(笑)。当然そこからは全く仕事にならず、8月の1ヶ月の夏休みに突入〜!みたいな(笑)。

そんな、日常生活の中で感じる事の出来る「感覚」をきちんとした数字で定量化するというのは結構難しい事で、今回のTwitterのフォロワー数というのは、正にその良い一例かなとか思っちゃいました。つまりはそのフォロワー数が社会の中におけるサッカーの影響力みたいなものを現しているという意味において。

さあ、春の長期連休も終わり、明日からは又忙しい日々が始まります。日も長くなってきた事だし、がんばっていこうかな。
| バルセロナ都市 | 03:38 | comments(0) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
スペインで行われたゼネスト(2012)について
先週木曜日(3月29日)、スペイン全土でゼネストが行われました。



「ゼネスト」と聞いてもピンとこない人もいるかと思うので、一応Wikipediaから引用しておくと:

「ゼネラル・ストライキ(general strike)とは労働者が団結して行う労働争議の一形態で、一企業や組織によるストライキではなく全国的な規模で行われるストライキのことである。略してゼネスト。総同盟罷業ともいう。また、ある特定の地域や都市において様々な産業が一斉にストライキを行う場合もゼネストと呼ばれることがある。」

となっています。

今回スペインで行われたゼネスト(民主化後としては8回目)においては、労働組合側の発表で100万人以上、スペイン政府の発表では80万人を動員したという報道がされていたんだけど、僕が実際に街に出て体験した所によると、「労働者が団結しておこなった」というレベルにまでは至ってなかったかなーと言うのが正直な所かと思います。



と言うか、日本を含め世界各地で大々的に報道されたという注目度とは裏腹に、さほど注目する所が無かった点、もしくは「この特徴の無さ」みたいな所こそが、今回のゼネストの特徴と言えるのでは?とさえ思ってしまった程なんですね。



先ずは基本的な情報を押さえておくと、今回ゼネストが行われた発端は現政権が国会で承認した労働法改正法にあるという点を指摘しておきたいと思います。民衆党のラホイ首相は近年の経済危機を背景に、かなり大胆な法改正に踏み切りました。それが国民の間で頗る評判が悪く、当然の事ながら労働組合側は怒り心頭、数回に渡る政府との話し合いにも関わらず今回のゼネスト開催という運びになったという訳なんですね。それを受けて政府側は一日前に Cristobal Montoro財務相が記者会見を開き:

「ゼネストが行われようが何をしようが、労働法の改正を撤回する事はない」

と言い切っていました。そういう事が分かってかどうなのか分からないけど、各種メディアが行った事前調査によると、実に69%もの人達が「今回のゼネストには参加しない」という意思表示をしていたという事は前回のエントリで書いた通りです。

という訳で、今回のゼネストはそんなに街を挙げて大規模に行われたという感じはなく、僕が住んでいるサグラダファミリア付近では、朝から普通にカフェもお店もやってたし、何より公共交通機関が殆ど普通に動いていたのは大きかったかなと思います。

その一方で、流石に中心街は様子がちょっと違ってて、カテドラル付近のお店なんかは殆どが閉まっていましたね。こういう非常時に地区間でこれだけの温度差があるというのはちょっと興味深い。



中にはこんな風に半分だけシャッターを開けて「根性でやってる所」もあったりとか。これはどういう事かというと、デモ隊が来たら急いでシャッターを閉めて、店が破壊されるのを防ぐと、まあ、こんな所だろうと思います。そんな微笑ましい努力が見られる一方で、酷かったのがコチラです:



街中に散らかったゴミ!この日は朝から清掃業者がゼネストに入ってたもんだから、ゴミ収集車が来なくて、街路(特に中心市街地)がゴミだらけになっていたんですね。これは酷かった。「街路&ゴミ」というキーワードを聞いて思い出されるのはイタリア南部の都市、ナポリだと思うんだけど、「ナポリって毎日こんな感じなんだー」とか思うと、ちょっとゾッとするかな。っていうか、幾らピザが美味しくても絶対行きたくないかも(苦笑)。



ランブラス通りに面したマクドナルドなんかも、厳重体制の元、シャッターを閉めまくって営業していましたしね。

こんな感じで今回のゼネストについてはこれくらいしか書く事がないんだけど、その一方で、ゼネストとは全く関係がない所で「違う事件が起こっていた」という事については十分に分析する必要が有る気がします。それが一部の若者達による暴走です。



街中でゴミ箱を燃やしたり,公共物を破壊したり、もうやりたい放題。



その日の夜中、ゼネストが収まった後に中心街を歩いてみたら、こんな光景に出くわしたりしました:



バス停崩壊‥‥みたいな(悲)。そんな中でも今回一番被害を被ってしまったのがコチラです:



バルセロナ市内のカタルーニャ広場近くに位置するウルキナオナ駅前のスターバックスです。グローバル企業の急先鋒という事で目を付けられたと思うんだけど、それにしてもコレは酷い。ガラスを叩き割られた上に火を付けられ、店舗は使い物にならない有様。

 

このビデオとか見ると、「本当にここはバルセロナか?」と思うほど悲しくなってきます。

何がまずいって、この日は労働者達が自分達の怒りや不満をデモという形をとって表明する為の日であって、若者達が日常の不満を暴力で明示する日じゃないという事なんですね。そしてこの様な、ゼネストとは全く関係がない場面が取り上げられ、これが全世界に報道された結果、この映像が今回のゼネストの印象になってしまった‥‥というのは何とも情けない話だと思います。しかもそんな悲しい出来事が、伝統的に労働者の街として知られているバルセロナで起こってしまった‥‥。



上述した様に、今回スペイン全土で組織されたゼネストに関してはハッキリ言ってそれほど言う事は無いし、分析する内容も特にありません。その一方で、それに便乗してバルセロナで起こってしまった暴動に関しては重く受け止めるべきであり、「何故こんな事が起こってしまったのか?」、「何故この様な暴動が、バルセロナ(だけで)引き起こされてしまったのか?」と言う事は、我々バルセロナ市民一人一人が深く考える必要がある事だと思います。

そこにこそ、現在のスペインという国が抱えている「隠された闇」があるに違いないのだから。
| スペイン政治 | 04:27 | comments(9) | - | このエントリーをはてなブックマークに追加
アンダルシア州議会選挙2012:選挙の裏側に見えるもの
昨日のアンダルシア州とアストゥリアス州議会選挙から一夜明けた今日、数々の詳細データが出揃うに伴い、スペインの各政党が今回の選挙で成し得た事、成し得なかった事の全貌が明らかになってきました。



昨日の速報でお伝えした様に(地中海ブログ:(速報)アンダルシア州議会選挙2012:民衆党(PP)の勝利、しかしスペイン労働党(PSOE)が連立を組んで政権に留まる可能性あり)、アンダルシア州議会選挙において民衆党(PP)は最多議席数(50議席)を獲得し、選挙には勝利したのですが絶対過半数(55議席)には至らず、社会労働党(PSOE 47議席)と左派連合(IU 12議席)との間で連立政権が組まれる事が予想されています。反対に、アストゥリアス州議会選挙では、PSOEが最多議席数(16議席)を獲得したのですが、絶対過半数(23議席)は勿論、他党との間に連立を組む事が難しいと予想され、右派に政権を譲り渡す事になるだろうという結果に終わっているんですね。

これらの選挙結果をどう読むか?

今回の選挙結果を分析していて先ず思った事は、アンダルシア州における左派の根強い人気です。前々回のエントリで書いたのですが、選挙前に出揃っていた各種メディアの予想では、どれもこれも「民衆党の絶対過半数間違い無し!歴史的な勝利を収める!」というのが一般的な見方でした。実際、民衆党にはそれを成し遂げるだけの勢いがあったとも思います。だからこそ、各種メディアは「スペイン労働党の牙城崩れる!」みたいな記事を連発していたのですが、蓋を開けてみればそれとは全く違う現実が横たわっていた‥‥。

では何故民衆党には票が集まらなかったのか?

先ず一つ目の理由として考えられる事は、民衆党が打ち出してきた数々の政策に対する不支持という事が挙げられると思います。つまりは緊縮財政の影響による(病院や学校など)基本的公共サービスの質的低下や、労働法改正などへの州民の不支持が今回の得票数に現れているという見方なんですね。今回の選挙では3ヶ月前に行われた総選挙に比べ、民衆党は実に400万票をも失いました。

そしてもう一つ考えられる理由が、(上述した様に)アンダルシア州民の間に深く根付く左派人気だと思うのですが、これは今回の投票率と深く関係していると見る事が出来て、つまりは、今まで社会労働党に票を入れていた人が昨今の同党のデイ堕落振りに嫌気がさし、かと言って民衆党には入れたくない、だから「まあ、今回は投票に行かずに家でテレビでも見るか」と、こうなったと言えると思います(ちなみに今回の投票率は前回の選挙(2008の時は72.7%)に比べて大幅に下がり66.2%となっています)。故に社会労働党が失った9議席分の票は民衆党に流れてはいません。では、それら社会労働党の票が何処に流れたかというと、それが今回の選挙の特徴である、左派連合の躍進に関連付けられると思います。前回の選挙に比べ2倍の議席数(12議席)を獲得し、更には社会労働党の政権維持にとってなくてはならない存在となった彼らこそが、今回の選挙の真の勝利者と言えなくもないかな。

これら全ての事を考慮すると、スペイン社会労働党は(アンダルシア州議会で)9議席を失いながらも、勢いに乗りまくる民衆党の絶対過半数を食い止め、アンダルシア州で再び政権に着く可能性が残されるという、「本質的には勝利」と言っても過言では無い結果を残す事に成功しました。更にアストゥリアス州議会選挙で最多議席数を獲得したと言う事を考え合わせると、昨年の総選挙以来、歴史的大敗を喫し、立ち直れないくらいの傷を負ってしまった社会労働党に回復の兆しが見えてきたのかな?という気がしないでもありません。

さて、ここまでは主にスペイン国内の動きを見てきたのですが、一転、今回の選挙結果を欧州各国はどう見ているか?



上の写真は数週間前に行われたユーロ会議において、ルクセンブルク大公国の首相、ジャン=クロード・ユンケル(Jean-Claude Juncker)氏が、スペインの経財相、Luis De Guindos氏に(冗談で)挨拶代わりの首占めをしてる所なんだけど、この写真は無意識ながらも欧州の本音が出ていて、時代の空気を良く表しているが故に歴史に残る一枚かなと思います。

数年前、「ネットとテレビの融合」が騒がれていた時、ホリエモンが発した「テレビはなくなる」って言う発言に対して、フジテレビの日枝会長が:

「(テレビは)なくなっちゃ困るんだよ」

と言っていたのが思い出されます。つまり「なくならない」とは言ってなくて、「なくなっちゃ困る」と言った所が大変印象的だったんですね。つまりこの発言は「テレビがインターネットに取って代わられたら金儲けが出来なくなる」という意味ではなく、「テレビと結び付いたライススタイルが壊されたら困る」という、ある種の時代の空気の様なものを無意識の内に発していたと、この発言を聞いた時、僕はそう思いました。

同様に、上の写真は現在のヨーロッパにおけるスペインの立ち位置、そしてヨーロッパ各国の態度を非常に良く現していると思います。そして同時に、今回の選挙結果を前に、メルケル独首相やモンティ伊首相なんかの苦笑いは想像に難くありません。

と言うのも、彼らは今回の選挙で民衆党が圧倒的な勝利を収め、スペインの財政赤字削減改革を一気に押し進める事が出来るだろうという予想図を描き、それを基に今後数ヶ月の計画案を練っていただろうからです。と言うか、上にも書いた通り、今回の選挙では誰しもが民衆党の絶対的勝利を確信していましたからね。それがコケたとなると、もう一度、どうやってスペインの改革を押し進めるか?という戦略を練り直す必要があるだろうし、その一方で、世界的に「スペインの改革が又ストップするかも」という不安が広がり、経済活動に影響を及ぼす事は免れない気がしてなりません。そうならない事を願うばかりなんですけどね。
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