地中海ブログ

地中海都市バルセロナから日本人というフィルターを通したヨーロッパの社会文化をお送りします。
バルセロナ賃貸住宅価格事情と新築価格事情
今日の新聞(La Vanguardia, 1 de Julio, 2008: Los Alquileres frenan)にバルセロナにおける賃貸住宅価格事情が載っていました。スペインにおいてテロ、移民そして住宅は3大問題だと言われています。「そんな大げさな」とか思われるかもしれませんが、バルセロナにおける住宅事情を真近で見ていると、様相は正に戦争そのものです。3ヶ月毎に発表される賃貸住宅価格は、ほとんど馬鹿げた数字のごとく上昇を続け、平均賃貸価格が1000ユーロを超え最低賃金の約2倍、スペイン平均賃金をも上回るまでに上昇し、市民の生活を圧迫していました。

そんな状況にもようやくブレーキが掛かり始めたのが今期です。年明けから続いていた明らかなスペイン経済の危機に対して、サパテロ首相(Jose Luis Rodriguez Zapatero)は「失速しているだけだ」を連発し、どうにもならない状況に対してようやく「経済危機」を認めたのは先週の事でした。そして今期、こんな大不況とインフラの中においてさえも上昇を続けていた賃貸価格にも「失速の波」はようやく影響を及ぼし始めました。(これは逆に言うと、それほどスペイン経済の危機は深刻だという事ですね。賃貸価格が下がり始めたからと言って、単純に手放しで喜んではいられません。)

今日の新聞によると今年最初の四半期(1,2,3月)の賃貸価格は2007年に比べて2%低下したそうです。「なんだー、たった2%かー」なんて思いがちですが、2007年最後期(10,11,12月)の上昇率は17,8%。つまり実質20%価格落ちした事になります。2007年通年比較では少し落ちて上昇率は13,6%。それでも15,6%価格落ちしています。

何故価格減少が起こったのか?一つには勿論だけどバルセロナ大都市圏の諸都市の住宅価格が市内よりも安く、バルセロナ市内との連結が非常に良いという事情が挙げられるんですね。例えば以前のエントリで書いた移民都市、ホスピタレット市(L'Hospitalet de Llobregat)の平均賃貸価格は月961ユーロ。バルセロナから電車で30−40分程の所にある比較的裕福な層が多く住むサバデル(Sabadell)が924ユーロ、テラサ(Terrassa)が939ユーロとなっています。

タラッサには僕が以前行ってたCatedra UNESCOがあるので、よく知っているのですが、非常に美しい町です。一応大学(カタルーニャ工科大学(Universidad Politecnica de Catalunya))があり、小さいながらも文化施設は充実していて賑わいのある街です。

さてバルセロナ市内に目を移し、より詳細に価格変動を見てみます。市内平均賃貸価格は2%減少で月1020,39ユーロ。(ちなみに賃貸物件の平均平方メートルは71m2です。)市内で一番価格が落ちているのが歴史的中心地区であるCiutat Vellaで2007年最後4半期(10,11,12月)に比べて7,3%落ち、月876,23ユーロとなっています。

続いて減少幅が大きいのがSant Martiで6.2%減少で月883,84ユーロ。Graciaは4,8%減の984ユーロ。Sarria-Sant Gervasiは3,2%減の1260,95ユーロとなっています。

反対に価格が上昇しているのはEixampleで3%増加の1160,17ユーロ。Nou Barrisが5,5%増加の902,51ユーロ。Horta-Guinardoが3,3%増加の907,49ユーロとなっています。

2007年最後期(10,11,12月)には全10街区の内、1000ユーロを越えた地区が実に5つだったのに対して、今期は3つになりました。

バルセロナ市内街区別賃貸価格リスト
街区名   賃貸価格  上昇(減少)率  平方メートル辺り賃貸価格

平均賃貸価格1020,39Euro -2% 15,56Euro
Sarria-Sant Gervasi 1260,95Euro -3,2%, 15,87 Euro
Les corts 1184,29 Euro -1,1%, 15,71Euro
Eixample 1160,17Euro +3%, 15,68Euro
Gracia 984,59Euro -4,8%, 15,87Euro
Sant Marti 979,99Euro -6,2% 15,06Euro
Sants-Montjuic 935,62Euro -2,1% 16,06Euro
Horta-Guinardo 907,49Euro +3,3% 15,65Euro
Nou Barris 902,51Euro +5,5% 15,65Euro
Sant Andreu 883,84Euro -0,3% 13,64Euro
Ciutat Vella 876,23Euro -7,3% 15,99Euro

このような賃貸価格状況の変化に対して新築住宅価格の状況も変化を起こしています。

先ず1998年から続いてきた新築住宅価格上昇に今年初めてストップが掛かりました。2008年1月から6月までの統計によると、その減少率1,2%。住宅価格があまりにも高くなり過ぎた為に、もう誰も買おうとしなくなってしまったんですね。

新築住宅価格をスペイン都市別に見ると一番高額なのはバルセロナ(Barcelona)で4,527€/m2。一番高額な都市が首都じゃないところがこの国の面白い所。しかも2番手でも無いし・・・。2番手に付けているのはバスク地方の都市、サン・セバスチャン(San Sebastian)で4,035€/m2。ラファエロ・モネオ(Rafael Moneo)が手がけた海沿いのあるオーディトリアムがある事で有名ですね。あと海岸沿いにあるチリダ(Eduardo Chillida)の彫刻も。3番手にやっと首都登場。マドリッド(Madrid)3,916€/m2。

逆にスペインで最も新築住宅が安い地域はポンテベドラ(Pontevedra)で1,484€/m2。その次がバダホス(Badajoz)で1,525€/m2。続いてルーゴ(Lugo)1,547€/m2。ルーゴと言えば友達のマルティン君(Martin)の出身地だったっけ。

バルセロナ市内での新築住宅変動を見るとこんな感じ。

Sarria-St.Gervasi 6,3%
Ciutat Vella 3,8%
Nou Barris 3,3%
St.Marti 2,1%
St.Andreu 1,2%
Gracia 0,4%
Eixample 0,3%
Sants-Montjuic -3,4%
Les Corts -4,1%
Horta-Guinardo -4,5%

Sarria-St.Gervasi 地区の価格上昇は何時もの事として、Nou BarrisやSt.Martiの新築価格が上がっている所が面白い。このエリアは市内において移民が集中している地域なんですね。反対にGraciaやEixample、Les Cortsで住宅価格が下がっている。これらの地域は学生に特に人気がある事から価格は市内でもトップクラス。それでも若者がこぞって住みたがる事から、落ち着いて住みたい層には敬遠されているという事か。それが価格に反映していると見なす事も出来ますね。

今期のデータ(1,2,3月)で住宅(賃貸)価格にスペイン経済の危機の影響が出始めました。次期(4,5,6月)辺りから影響はもっと顕著になるものと思われます。大注目です。
| バルセロナ都市 | 21:39 | comments(0) | - | ↑PAGE TOP
観光客の移動軌跡: Digital footprinting: uncovering the presence and movements of people from user-generated content by Fabien Girardin
先日行われたICINGワークショップ発表者の中で明らかに異彩を放っていたのはFabien Girardin君でした。他の発表者が「ユビキタス社会」などの標語の下にマクロで抽象的な話を展開する一方で、彼の発表は具体的なミクロなデータに基ついた現実的なものだったんですね。

彼は何をやっているかというと、観光客の軌跡を追跡する研究を行っているんですね。観光客の移動軌跡の研究という分野は勿論、歩行者の移動軌跡研究の一部に含められます。

前に書いたようにこの分野の一番の武器は「パーソントリップ調査」です。この調査は都市圏をゾーンに分けた上で、そこに住む人の中から3%ほどを統計学的に抽出して諸活動についてアンケート調査を行います。このようにして都市圏での人の動き方というのがある程度把握可能となる訳です。

この調査の問題点としては、
1.ゾーニフィケーションの範囲が数キロx数キロと非常に広い事からゾーンからゾーンへと移動する人の軌跡をある程度把握する事は可能ですが、ゾーン内において、どの道を用いているのか?と言ったような街路レベルでの行動把握は無理だという点。

2.都市圏を調査対象として全人口の数パーセントを抽出する事から、この調査には莫大な費用がかかります。故にそれほど頻繁に行う事は財政上出来ないんですね。ちなみにバルセロナの場合は一回の調査に1.5 M Euroで5年おきに行われています。ヘルシンキの場合には2M Euroで約8年おきです。という事は利用可能な調査情報というのは直ぐに古くなり、現実には対応する事が出来ないという事態が起こります。

上述のような問題点を踏まえた上で僕達がICINGで提案したのがパーソントリップ調査を補う手法としての「携帯電話トラッキング手法」でした。基本アイデアは非常に単純で、携帯電話の位置情報を抽出する事により、パーソントリップの欠点であった時空間情報の粗さを補完しようという事なんですね。都市には携帯通話の為のアンテナが張り巡らされていて、一つのアンテナのカバー範囲は約500メートル(地域による)。そしてケータイが一つのアンテナからもう一つのアンテナに移動する時、信号のやり取りをするので位置情報は携帯電話会社に保存されているんですね。

もしこの手法を実現する事が出来れば、それはパーソントリップ調査に比べて時空間情報の質が明らかに上がる事となります。特に時間情報に関してはほぼリアルタイムで把握可能です。(約30分の遅れあり)そして、この手法は「部分的」には既に実現されています。それがMIT SENSEable City LabWikicity関連プロジェクトだという事は以前に書きました。

Ratti, C., Pulselli, R. M., Williams, S., and Frenchman, D. 2006. Mobile landscapes: Using location data from cell-phones for urban analysis. Environment and Planning B: Planning and Design, 33(5):727 – 748.

Calabrese, F., Ratti, C., Real Time Rome. Networks and Communication Studies, vol. 20, nos. 3 & 4, 2006, pp. 247–258.


ビジュアルインパクトがかなり強いこの研究は「携帯電話トラッキング」という分かり易い主題と相まってとても有名になってしまいました。しかしですね、以前のエントリでも書きましたがMITがやっているのは「ケータイトラッキング」では無いんですね。彼らが抽出しているのは、アンテナ内で通話を行っている人の通話密度情報です。そしてこの情報にはアンテナからアンテナへの移動情報(ハンド・オーバー情報)は含まれて居ません。

つまりWikicityからパーソントリップ調査を補完する経路情報を抽出する事は不可能なんですね。僕達がICINGで行った提案には勿論、このハンドオーバー情報も含まれています。そして500メートル四方という携帯電話アンテナでも拾え切れない経路選択情報を補完する為にBluetoothトラッキング手法を組み合わせています。(今回のワークショップで僕が発表したのがこのBluetoothトラッキング手法とそこから得られた生データです)。このBluetoothトラッキングでは人の軌跡をおよそ10メート以下の誤差で知る事が出来ます。それはパーソントリップ調査や携帯トラッキングに比べるとほとんどピンポイントだと言っても良いと思います。

さてこのような歩行者軌跡調査の伝統手法から言ってもファビアン君の調査研究はかなり異質な所を突いていると言う事が出来ると思います。

Girardin, F., Dal Fiore, F., Blat, J., and Ratti, C. (2007). Understanding of tourist dynamics from explicitly disclosed location information. In The 4th International Symposium on LBS & TeleCartography.

先ず彼が研究対象としているのが観光客だという点。当ブログで何度か問題にしているように現代都市において観光というのは必要不可欠なファクターに成長しました。観光無しでは都市経営はほとんど不可能だと言っても良い所まで来ていると思います。その一方で観光が都市に引き起こす弊害も、もはや目を瞑る事が出来ない所まで来ているのも事実なんですね。そして今の所、このような観光による弊害をコントロールする手法は存在しません。

何故か?幾つかの要因が考えられるのですが、一つには観光客のデータの取りにくさというのが挙げられるかと思われます。例えば現在のパーソントリップ調査は居住地ベースで平均的な一日を想定して行われているので、非日常的な出来事である観光などは勿論含まれていません。更に観光は季節などによる変動が大きい事から現行の調査方法では対応が難しいんですね。このようなデータが無いという問題に加えて、仮にデータがあったとしてもミクロスケールで観光客の動きを捉えられるかどうかは大変疑問です。

ファビアン君の研究はこのような状況に一石を投じるものだと見なす事が出来ます。

システムとしては非常に簡単。世界最大級のフォト・アーカイブであるFlickerに投稿された写真についているジオ・リファレンス(時空間情報)から、ある個人がどの都市を訪れ、都市内のどのモニュメントを訪れたかという事が分かります。更にタグには時間情報も付いている事から、ある観光客の移動軌跡がトラッキング出来てしまうと、こういうわけです。

彼の巧い所は、このデータを個人データとして扱うのではなく、集団データとして扱っている所です。「何処の誰だかは知らないけど、地球上の何処かに存在する誰かの軌跡データであり、それらが集積したらこんな地図が出来ちゃいました」と言って、見せられるバルセロナの観光客密度地図は説得力満点。

更に巧いのは、これらのデータはユーザー・ジェネレイトだという事ですね。ファビアン君は何もしないでもデータは世界中の人々によって蓄積されていく。人々が自分のアーカイブを良くしようと写真を沢山投稿すればするほど、ファビアン君の観光客データは充実していくわけですよ。

問題はカリブレーションでしょうね。ある観光客が本当にその経路を通っているのかどうか?という部分は疑いが無いにしても、一体何人の観光客が実際に写真を撮っているのか?というデータは必要でしょうね。

しかしこれは難しそうだなー。

しかも写真を撮った人の内、一体何パーセントの人がFlickerに写真をアップしているのか?といった問題は又別ですからね。更に言っちゃうと、あるモニュメントで写真を取った人がある特定のモニュメントに行く確率と実際に行った人の全体に占める割合、それとFlickerから得られた特定経路との一致パーセントなどなど。

興味深い研究故に疑問が一杯浮かんでくる。
未だ僕達はスタート地点に立ったばかりだという事ですね。
| 大学・研究 | 21:43 | comments(0) | - | ↑PAGE TOP
ICING最終イベント:ePractice.euワークショップ
今週の水曜から金曜にかけてICINGプロジェクトの一環として行われたePractice.euのイベントに参加してきました。ePractice.euというのは何かというと、まあ早い話が各国・各都市に散らばっている専門家同士が知り合う機会を提供する場、もしくはお互いのプロジェクトを発表する場をオンライン・オフラインで創り出すプラットフォームのようなものですね。このような場が公共の資金で積極的に創出されているという事は非常にありがたい。今の時代、インターネットで幾らでも情報は探せるけど、「イザ一緒にプロジェクトを」、と言った時にはオフラインでの信頼がモノを言うという事は言うまでも無い事です。

さて、今回のワークショップ兼カンファレンスを実質的にオーガナイズしたのはバルセロナ市役所内情報部門責任者のJさんと彼の秘書Cちゃん、そして僕です。大規模なイベントをオーガナイズするのは初めての経験だったのでかなり苦労しました。裏を言っちゃうと、結構てこずったのがゲストスピーカーの人選でした。せっかくの機会だから世界中から未来都市に関して提言を行っている人達を呼ぼうと言うのは当然の事だったんですけど、膨大な候補者の中から人選をするのもコレマタ大変だったんですね。そこで候補者を絞り込んでいく為に、取り合えずアジア・ヨーロッパ・アメリカの三大陸からそれぞれ一人ずつ代表者を選ぼうという事になりました。そしてその代表者にそれぞれの大陸で進行しているプロジェクトを語ってもらい、それらを比較する事によって今世界で何が起こっているかの輪郭を掴もうという事になりました。

アジアから来て頂いたのはユビキタス社会の実現に向けた巨大プロジェクトが目白押しの韓国からJu Young Byunさん。現在韓国で進行中のu-Cityプロジェクトについて語って頂きました。

U-city vision and projects in Korea
Mr.Ju Young Byun(Directore of u-City Policy Division of IFEZ, Korea)

驚いたのはその規模。街を丸ごと一つ創ってしまうくらいの巨大プロジェクトに潤沢な資金が注入されている。規模が大きい事から話は勿論マクロな方向からになっていて、個人的にはもう少しミクロな部分、具体的にどんなセンサーを使うのか?と言った部分が聞きたかったのですが、未来都市にかける韓国の意気込みが良く伝わってきました。

ヨーロッパから来て頂いたのはLiving Lab EuropeからEsteve Almirallさん。知識型エコノミーの中におけるインノベーションの重要性とそれに伴って勃興してきたシティ・リージョンの形成という話は違う文脈における僕の興味の在る所なので、非常に興味深く聞く事が出来ました。

How ICING fits with the European Network of Living Labs
Mr.Esteve Almirall(CatLab,i2Cat “member of the European Network of Living Lab”)

そしてアメリカから来てもらったのがMIT SENSEable CIty Labに在籍するFabien Girardin君。彼の研究は以前のエントリでも少し紹介しましたが、既存の交通調査などでカバー出来ていない非日常交通の実態や観光客の導線などをコレまでには考えられない程のミクロレベルで実現しています。

From sentient to responsive cities
Mr.Fabien Girardin(PhD candidate at UPF and Research Associate at the MIT SENSEable City Lab)

具体的に言うと世界最大のフォトアーカイブであるFlickerに投稿された写真に付けられたタグ情報などから、観光客がどのように都市を動き回ったかをピンポイントでトラッキングしているんですね。



彼の手法は非常に賢い。まるで個人が自分の為にブログを運営して質を高めようと努めているその裏で、実は僕達はグーグルに奉仕させられている、正にそんな感じ。自分のプロフィールを良くしようとFlickerに沢山写真を投稿すればするほど、自動的にFabien君のトラッキングシステムの質も上がって行くと言ったような。会場に居た何人の人が彼の手法の本質を深く理解出来たかどうかは分かりませんが、ビジュアルインパクトの強さから沢山の人が彼の研究に興味を持ってくれたようでした。

そして僕はというと、ICINGプロジェクトの一環として進められているBluetoothを用いたリアルタイム交通センサーとそれを実際に用いたバルセロナにおけるプロジェクトを紹介させてもらいました。

New tools for Urban Traffic Management
Mr.Yuji Yoshimura(BCN Ecologia Urbana, Project Coordinator)

僕のプレゼンは実際のデータを用いたものだったので分かりやすかったせいか、終わった後のコーヒーブレイクで沢山の人達から質問やらコラボレーションの可能性やらについて聞かれました。



とりあえず個人的にはプレゼンには大満足。そしてイベントにも大満足。あとは9月の欧州委員会の前での発表を残すのみで明日からはその準備と新たなる欧州プロジェクトの創出プロセスに追われる事になりそうです。
| EUプロジェクト | 18:14 | comments(0) | - | ↑PAGE TOP
Epractice プレゼンテーション終わる
ここ数週間はEUプロジェクトのパブリック・プレゼンテーションの為に本当に忙しくて土日も潰して働いていました。勿論ブログをアップする余裕なんて無かったわけで、それが2週間程ブログをアップしなかった理由です。

欧州委員会とヨーロッパ各都市から集まった代表の前でのプレゼンはかなり緊張しましたが、それもたった今終わりました。

詳細は後日書く事として、とにかく今日は休憩です。
| EUプロジェクト | 23:36 | comments(0) | - | ↑PAGE TOP
リスボン条約:アイルランド国民投票批准否決とEUプロジェクト
昨日(13日)アイルランド(Ireland)がリスボン条約批准を国民投票で否決したというニュースが飛び込んできました。リスボン条約とは27加盟国に拡大した為に沸き上がってきた諸問題を、EU意思決定手続きの効率化やEU大統領(EU理事会常任議長職)の創設など、既存の基本条約を改正する事によって解決しようとしたもので、2005年にフランスとオランダで国民投票により否決された欧州憲法条約の延長上に位置するEUの2度目の挑戦でした。

今日の新聞(La Vanguardia, 14 Junio 2008)によるとアイルランドの国民投票参加率は53,1%。その内、反対が53,4%、賛成が46,6%。条約の発効には加盟国全部の批准が必要な為、アイルランドの「NO」を受けてEUの機構改革はストップしてしまいました。アイルランドを除く26カ国は国民投票ではなく議会で承認する予定。何故かというと、2005年の苦い経験から政治的に確実に解決出来る議会を選んだんですね。既に18カ国が批准・批准承認を終えており、残る8カ国も速やかに承認する模様。何故アイルランドは国民投票をしたのか?というと、同国憲法規定で国民投票をしなければならなかったらしいです。

それにしてもこの批准否決でアイルランドはEU内でものすごく過酷な立場に立たされる事となってしまいました。元々ボロボロだった経済をEUへの参加をきっかけにして「ケルティック・タイガー(Celtic Tigre)」と呼ばれるまでの驚異的な成長を遂げ、世界で最も競争力の高い経済圏にまでなった今、その恩を忘れて今度はEUの敵に回るのかと。

今回の出来事は僕にとっても人事ではありません。何故なら僕が担当しているEUプロジェクトのプロジェクトリーダーは何を隠そうダブリン市(Dublín City Council)ダブリン工科大学(Dublin Institute of Technology)だからです。それに加えてダブリンを拠点とする多数の私企業やアイルランド政府とも一緒に苦楽を共にしています。更に偶然と言えば偶然なんだけれど、今月末にはユーロシティ会議(Eurocity)を含む、欧州委員会との直接ミーティングがバルセロナで予定されてもいるんですね。

欧州加盟各国から300人程の政治家や関連企業人を招きプロジェクトの進行状況を発表するその場では、ダブリンや僕達に逆風が吹くのは必死。もしくは反対に政治的には失敗したけど、プロジェクトレベル(草の根的)では協力して欧州の統合を進めよう、という方向に動くのか。どちらにしても、今月末にかけて忙しくなりそうです。
| EUプロジェクト | 18:43 | - | - | ↑PAGE TOP
ザブングル
昨日のエントリに続いてサブカルネタです。
今日はコレ、ザブングル。



僕が小さい頃一番好きだった漫画。コレも20年ぶりくらいに見るけど、今見て驚くのはその構図とデザインの良さ。このオープニングを見ているとヴァーチャルリアリティなどでごまかすのではない、デザインの本質みたいな所で勝負しているのが良く分かる。

例えば出だしの所は主人公が逆行に照らされながら佇むシーンで始まります。その後、戦艦があちらから来るのを眺め、通り過ぎるのと同時にこちらに振り向く。振り向く2秒後に戦艦の風を受けた髪がなびく。よく考えたらこのシーンには色んな矛盾があって、例えばこんなに早いスピードで太陽が昇るはずが無いとか。そんな事は直ぐに分かるけれど、妙なリアリティがある。

当時は今みたいにコンピュータが発達していなかったので、知恵とデザインセンスで如何にリアリティを出すか、かっこ良くするかを競っていたのだと思います。だから自然とデザイン的に見て質の高い作品が多く出揃った時代だったんですね。

ヴァーチャル・リアリティを駆使すれば良い作品が出来る、新しいテクノロジーを使えば新しい空間が出来ると安易に考えるのは僕は絶対違うと思う。昔のアニメなどはその事をものすごく良く教えてくれます。

こういう作品を見る事を是非建築学科の学生さんにお勧めしますね。
| サブカル | 22:49 | comments(0) | - | ↑PAGE TOP
まいっちんぐマチコ先生
20年ぶりくらいに見ました。伝説の教師、マチコ先生。
「まいっちんぐ」ですからね。
今日見てビックリしたのは、オープニングでマチコ先生、フラメンコ踊ってるんですね。この当時からフラメンコにはラテン=情熱的=セクシーみたいな印象があったのかな?
それにしてもすごい漫画だったなー。いけないルナ先生、あぶないルナ先生と並んでベストスリーですね。

| サブカル | 22:30 | comments(0) | - | ↑PAGE TOP
都市アクセッシビリティ:ヨーロッパの高速鉄道網状況
今日の新聞(La Vanguardia, 8 Junio 2008)にヨーロッパの高速鉄道網の比較情報が載っていました。というのも今年3月に開通したバルセロナ(Barcelona)ーマドリッド(Madrid)間のAVE(Alta Velocidad Espanola)のおかげでスペインは現在ヨーロッパにおいて鉄道網の充実度が第二位らしいんですね。




La Vanguardia, 8 Junio 2008, P2, Vivir

上の図で赤いラインが時速300キロ以上の高速鉄道で繋がれている所。ほとんどの地域をカバーしているグレーのラインは時速200キロ以下の普通電車が走っている所です。
このような図で見ると良く分かるのですが、やはり圧倒的に高速鉄道網が発達しているのはパリを中心としたフランスですね。パリ(Paris)ーロンドン(Londres)間、パリ(Paris)ーマルセイユ(Marsella)間、パリ(Paris)ーブルッセル(Bruselas)間など南北東西に鉄道網が伸びている事が分かります。

そして(驚くべき事に)マドリッドを中心とするイベリア半島も鉄道網が発達しているのが見て取れます。以前はマドリッド(Madrid)―セビリア(Sevilla)間しか敷かれていなかった鉄道網がサラゴサ(Zaragoza)を通りバルセロナまで延びた事によって一気にヨーロッパのトップ集団の仲間入りを果たしました。マドリッドーセビリア間はセビリア万博が開かれた1992年に開通したのですが、どう考えてもスペインで最優先すべきだったのはマドリッド(Madrid)ーバルセロナ(Barcelona)間のはず。そんな事はサルでも分かっていたんだけど、それが出来なかったのが有名なマドリッドとバルセロナのいがみ合い・・・なんて面白い国だ。

そして今バルセロナが一生懸命構築しようとしているのが、バルセロナ(Barcelona)ーパリ(Paris)間なんですね。軸線としてはバルセロナ(Barcelona)ーモンペリエ(Montpellier)ーリヨン(Lyon)ーパリ(Paris)となるのですが、この内パリ(Paris)ーモンペリエ(Montpellier)間はすでに開通している事から問題はバルセロナ(Barcelona)ーモンペリエ(Montpellier)間と言う事になります。まあ、それも時間の問題か。

しかしこう見ると、大西洋の弧であるビルバオ(Bilbao)ーパリ(Paris)間というのは地形的に言ってとても素直な提案のように思えます。ビルバオ(Bilbao)ーボルドー(Burdeos)ーパリ(Paris)という軸ですね。ビルバオ(Bilbao)ービーゴ(Vigo)間は優先順位としては多分最下位に近いと思うけど、ポルトガル側のオポルト(Oporto)ービーゴ(Vigo)は十分に有り得る。ただポルトガル側としては最優先はリスボン(Lisboa)ーマドリッド(Madrid)間でしょうけどね。

さて興味深いのは各国の料金比較です。

下記がスペインの主要都市を結ぶAVEの料金表:

Barcelona-Madrid, 621km 106 euros: 2:38 horas
Madrid-Zaragoza, 306km 50,9 euros: 1:21 horas
Madrid-Valladolid, 180km 32,5 euros: 1:02 horas
Madrid-Sevilla, 471km 74,6 euros: 2:30 horas
Madrid-Malaga, 498 km 78,6 euros: 2:35 horas

それに対してヨーロッパの主要都市間の鉄道料金表がこちら:
Paris-Londres, 383km 231,75 euros: 2:26 horas
Colonia-Frankfurt, 177 km 61 euros: 1:20 horas
Berlin-Hannover, 185 km 58 euros: 1:40 horas
Hannover-Wurzburgo, 327 km 76 euros: 2:00 horas
Paris-Bruselas, 300 km 82 euros: 1:22 horas
Paris-Amsterdam, 490km 105 euros: 4:11 horas
Roma-Florencia, 252 km 51 euros: 1:30 horas

更にコレが走行距離を料金で割ったキロ当たりの料金:

Barcelona-Madrid: 0,17 euro
Madrid-Sevilla: 0,16 euro
Madrid-Malaga: 0,16 euro
Madrid-Valladolid: 0,18 euro

Roma-Florencia: 0,20 euro
Paris-Londres: 0,60 euro
Paris-Amsterdam: 0,21 euro
Berlin-Hannover: 0,31 euro

以前から感じていた事なのですが、こうして数字で見るとAVEがヨーロッパ諸国に比べて圧倒的に安いのが分かりますね。
| 都市アクセッシビリティ | 20:28 | comments(0) | - | ↑PAGE TOP
エンリック・ミラージェス(Enric Miralles)の建築その3:バラニャ市民会館(Centro Civico de Hostalets de Balenya)に見る建築の質:実際に建築を訪れる事の大切さ
前回のエントリ、エンリック・ミラージェス(Enric Miralles)の建築その2:バラニャ市民会館(Centro Civico de Hostalets de Balenya)に見る建築の質:社会文化の表象としての建築:ミラージェスの場合、前々回のエントリ、エンリック・ミラージェス(Enric Miralles)の建築その1:バラニャ市民会館(Centro Civico de Hostalets de Balenya):行き方の続きです。

周りをぐるっと取り巻いているコンクリートの壁に沿って回り込むとエントランスに出ます。



3つの直線が少しずつズレながら上昇していくという表現を取っています。



一瞬見ただけで彼がこの建築で何がやりたかったのかが良く分かる。そしてそれが成功しているように見受けられます。まるで鉄骨が競って天に昇っていくようだ。大変ノビノビとしていますね。

そして外観で彼が最もやりたかったのがこちらからの眺め:



ビシッと決まっている。文句無くかっこいい。さてここで僕が注目したのが最上部の軒先です。



最下部の鉄骨と2番目の鉄骨は水平に並んでいるのですが、最上部の先端だけは少し下がっているように見受けられます。ほら、ココですね。



コレを見た時に思い出したのが槙さんがやられた東京体育館です。





東京体育館って2枚の葉っぱが互いに寄り添うように空間を包んでいて、あたかも内側から膨らんでくるような表現をとられていますが、あのデザインのポイントは外観のスカイラインを構成している沢山の線のうち最後の線がホンの少しだけ上がっている事だと思います。



そうまるで日本のお城のように。そうする事で全ての線が下に流されたまま終わるのではなくて、何かしら「ピシッ」としたスカイラインを形成する事が出来るんですね。リズムで言うと、「下、下、上」みたいな。

ミラージェスの場合はこっちから見ると良く分かるのですが、最上部の線は最初は上がり気味で最後部で少し下がっている事が分かります。



つまり上述の槙さんの場合とは全く逆バージョンなんですね。リズムで言うと「上(水平)、上(水平)、下」になります。目的は勿論、上に向いたまま流すのではなくてスカイラインを引き締める為です。一見大雑把に見える彼のデザインですが、その大雑把に見える表現を支えているのが、実はこのような繊細なテクニックなんですね。

さて、この形態ですが、エル・クロッキースの序文でウィリアム・カーティス(William J. R. Curtis)が指摘している通り、ココには明らかにロシア・アヴァンギャルド、コンスタンチン・メルニコフ(Konstantin Melnikov)の影響が見受けられます。


Konstantin Melnikov’s Soviet Pavilion at the Paris International Exhibition of Decorative Arts 1925 Model reconstruction by Henry Milner

だからどうしたという声が飛んできそうですが・・・。まあ、しかし以前のエントリ、アントニ・ガウディ(Antoni Gaudi)の建築:コロニア・グエル(Colonia Guell)その2:コロニア・グエルの形態と逆さ吊り構造模型で書いたように、建築のモデルが何処から来たかはあまり重要ではなくて、その建築が模倣を通り越して建築家の創造力と混ざり合わさった末に彼の建築に「ふっ」と成っている事が重要なんですね。

さて、そんな事を思いながらイヨイヨ中へ。この建築の見所空間は何と言っても3つの巨大な鉄骨が螺旋を描きながら上っていく大空間です。それがコレ:



週末にお祭りがあるのかなんなのか分からないのですが、天井にシーツのようなものが掛かっていて肝心の上昇空間が見えずらい・・・・。





それでも3つの天井が強い直線のスカイラインを切り取りながら上昇していっている様は圧巻です。そしてその内部空間があたかも膨らんできたかのように、外部空間の表現と見事な一致を見せている。見事な建築です。
| 建築 | 12:17 | comments(0) | - | ↑PAGE TOP
マニュエル・ボルハ・ビジェル(Manuel J. Borja-Villel)の都市戦略:国立ソフィア王妃芸術センター(Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofia)を通した21世紀の美術館の在り方
以前のエントリ、美術の商品化と公共空間: Manuel J. Borja-Villelで紹介したバルセロナ現代美術館(Museo de Arte Contemporaneo de Barcelona(MACBA))元館長で現在はマドリッドの国立ソフィア王妃芸術センター(Museo Nacional Centro de Arte Reina Sofia)の館長に抜擢されたマニュエル・ボルハ・ビジェル(Manuel J. Borja-Villel)の大変に興味深いロングインタビューが先週日曜日の新聞(1/6/2008 El Pais semanal)に載っていたので紹介したいと思います。

前に書いたように彼の主張は都市の中に美術館を通した公共空間を創り出す事と、その空間とアートを用いて行われる教育の重要性です。前回引用した記事の中で彼はこんな風に発言しています。

「私は向こう3年間でレイナソフィア美術館の中に一つの都市を創りたい。」

" Me gustaría crear en tres anos una ciudad dentro del Reina Sofía", Manuel J. Borja-Villel, P26, 10 de febrero del 2008, La Vangurdia


この彼の戦略とオリンピックを契機としたバルセロナ都市戦略との間の同質性については前回のエントリで指摘した通りです。そして彼がこのようなプロジェクトを推進している裏には、彼が近年大変に憂いている美術の商品化と美術館の商業センター化・エンターテイメント化という我々の社会が不可避的に向かっている状況に対する危機感があるんですね。

「美術館は商業センターになってしまった。」
“ Los museo se han pasado a ser como centros comerciales”( Manuel Borja-Villel, p38, 1 de Junio de 2008,El pais semanal)


このような状況に対しての彼なりの戦略の一つが上述の「都市の中に都市を創る」だったわけですが、今日のインタビューには彼の戦略を形作っている深い所の思想というか、スペイン人である彼が不可避的に受けてしまう影響のようなものが垣間見えています。

僕が注目した彼のマニフェストがコレ:
「レイナソフィアを南のセンターにする」という発言です。

"... Borja-Villel llega al Reina Sofia para convertirlo en el referente del arte contemporaneo del sur", p38, 1 de Junio de 2008,El pais semanal)

一見見落としてしまいがちな発言なのですが、この短い一文の中には沢山の意図や歴史、社会文化から出て来た必然とも言える思考が見え隠れしているんですね。

先ず彼はヨーロッパを北と南に分けた上で彼の美術館戦略を構想しています。その時の基盤となっているのが北と南では人々の生活の特徴が違うという、結構当たり前の事実です。ではどう違うのか?彼は北に属する人々の特徴として「目」の優位性とそれに基つく視覚化・視覚性を挙げ、それに対して南に属する人々の特徴を「対話」に求めます。

「北はもっと図像的であり、鮮やかさが重要であり、体に対して目に特権性が与えられている。その一方で南、特に地中海においては口述の文化、そして体の動きの文化が存在する。」

"El norte es mas icónico, la visualidad es importante, se ha privilegiado el ojo sobre el cuerpo. En el sur, sobre todo en el Mediterráneo, hay una cultura de oralidad, del movimiento del cuerpo.", p42


20世紀が視覚の時代であるというのは誰しも納得する所だと思います。例えばコレとか:

オリジナリティと反復―ロザリンド・クラウス美術評論集: ロザリンド・E. クラウス, (Rosalind E. Krauss, The Originality of the Avant-Garde and Other Modernist Myths. Cambridge, Mass.: MIT Press, 1985)

その一方で南の都市、地中海に属する都市の特徴として「対話」が挙げられるというのはあまり聞かれない事だとは思います。この点についてイタリア都市のスペシャリスト、宗田さんはこう述べられています:

「・・・政治を理念の産物とせず、自己の生活の仕組みから考える現実的且つ合理的な国民でもある。したがって、みずからの経済的な成功と万人に暮らしやすい町という二つの方向を調整することに熱心である。そのための議論を市民同士が延々と続ける能力をもっている。この議論、すなわち延々と続ける対話が、イタリアのまちつくりの最大の特色である。・・・」
P14
にぎわいを呼ぶイタリアのまちつくり、歴史的景観の再生と商業政策、宗田好史


北の視覚性に対する南の対話性、目の優位に対する口と耳の優位。このようなそれぞれの地域によって人々の住まい方や生活の仕方が違う為に、自ずと美術館のモデルも違ってくるという話になるわけです。

ココで彼が非常に巧いのはどちらの文化が優れているとか劣っているとか言わずにそれぞれは補完関係にあるという話に持ち込む所なんですね。

それを具体的にする為に提案されているアイデアが「ネットワークとしての美術館」という概念です。要約するとテート(Tate Modern)やモーマ(MOMA)が世界モデルとして有名コレクションを集め、彼ら独自の道を歩んでいる時に、ワザワザ我々も同じ道を歩む必要は無い。そうではなくて、彼らが提供出来ていない分野に磨きをかけて別の道を歩もう。そうすればお互いに補完関係として尊重し合い、共存繁栄していく事が出来る、とこういうわけです。

彼がこのように主張する時、僕はそこに80年代から90年代にかけて展開されたバルセロナ都市戦略の影を見ずにはいられません。バルセロナ都市戦略の場合は1989年にDATARによって出版されたブルーバナナ(Blue Banana)の分析に基ついて、地中海の弧の中心になる事を目指しその後、バルセロナプロセス(Barcelona Process)などで地中海連携を主導しています。

Brunet,Roger(1989): Les Villes Europeennes, Rapport pour la DATAR, Reclus, La Documentation Francaise.

ジョルディ・ボージャ(Jordi Borja)は当時を回想してこんな風に述べています:

「・・・私たちが「バルセロナ第一次戦略計画」を立てた時、一連の文化施設は絶対に不可欠なものとして盛り込み、ヨーロッパ南部でいちばん魅力的な都市にしようと考えました。・・・われわれの望んでいた文化的なプログラムには、1500万人の人口が必要でした。どう考えてもバルセロナにも、その周辺にも、カタロニア全土を見渡しても、1500万という数字は出てこない。・・・そこで私達は、人口1500万という数字が見込めるところまで範囲を広げていき、最終的にはこの広域圏全体(地中海の弧(Arc Mediterranean))をターゲットにしました。」
p318
ジョルディ・ボージャ、都市はグローバリゼーションにいかに応答するか


余談ですが、ビルバオ(Bilbao)の場合はブルーバナナで示されたもう一つの弧である大西洋の弧(Arc Atlantic)の中心になる事を目指したんですね。

もう一つ注目すべき点が美術館は人々の体験や意見を交換する場所である公共空間になるべきだという提案です。地中海都市における公共空間の重要性というのは様々な論客によって様々に語られています。

例えば岡部さんはこんな風に述べられています:

「単純化して言えば、北が身近な緑を守るためなのに対して、南は高密度でこじんまりとした都市を守るために、既存の都市構造を尊重した都市連携を指向している。南の都市にとってにぎわいのある広場のような公共空間は、観光資源だけでなく、優先すべき公益なのだ。」P208-209

岡部明子「サステイナブルシティ、EUの地域・環境戦略」


公共空間の議論で僕にとって興味深いのは、では一体何故地中海都市において公共空間がこれほどまで重要視されているのか?という事なんですね。僕が考える理由は正に今日マニュエル・ボルハが語っている事の中に多大なるヒントが隠されています。それが目よりも対話を重視するという文化的特長であり、そこから生じた「延々と議論を続ける能力」です。これら人々の特徴と地中海都市の特徴である気候条件が交差するその交点に「公共空間の重要性」という地中海都市の特徴が浮かび上がってくるんだと思います。

延々と議論をする事が出来る能力を持つ人々が他の人々と出会い、激論を交わす場所こそが、毎日のように天気が続き、夜遅くまで日が沈まない気候を最大限に利用し発展してきた都市内の公共空間だからです。

先ほどの岡部さんの文章はこう続きます:

「・・・気候風土と文化的背景の違いにより、北の市民が環境負荷や緑を住環境評価の基準とする傾向があるのに対して、南の市民は都市的な質を重要視する。住環境で自然をとるか、都市的魅力をとるのか―南北で異なるふたつの価値観が、欧州都市の多様性を担保している一面がある。」P208-209

このような地域による違いが我々の世界を多様にし生活を豊かなものにしているわけです。ヨーロッパに居るとこのような多様性の大切さ、それによる人生の楽しみを実感する事が出来ます。僕もこのような多様性に貢献出来る仕事をする立場に居る事をとても誇りに思っています。
| スペイン美術 | 23:46 | comments(0) | - | ↑PAGE TOP